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【ニュースペーパー10月号】被爆二世への十分な対策を求め厚労省交渉―「援護法の対象に私たちを入れるべきだ」

2010年10月01日

全国被爆二世団体連絡協議会 事務局長 平野 克博

 私は、被爆者を親に持つ被爆二世です。私の母親は、原爆投下から2日後の8月8日、広島市で入市被爆をしました。私たち被爆二世は今、大変に中途半端な状況に置かれていると言えます。被爆者は、現実に被爆体験をしていますが、私たちに実体験はありません。

国による対策の不備が私たちを苦しめる
 被爆者には、「被爆者援護法」が適用され、十分とは言えませんが、政府が対策を行っています。しかし、私たち二世には、年に一度の「被爆二世検診」があるだけです。この検診内容は、尿検査や問診など実に簡単なものです。しかも、法的な位置付けもなく、単年度の予算措置によるものです。政府はこの検診を行う目的を、「被爆二世に対する不安の解消」としていますが、何の役にも立っていないのが現実です。こうした、政府の対策の不備が、私たちを中途半端な立場に追いやっているのだと言えます。
 広島と長崎に、放射線影響研究所(放影研)があります。ここは、被爆者や被爆二世への放射線の影響などを調査している機関で、日米両政府が資金を出し合っています。この放影研が2000年から07年まで8年かけて、親の受けた放射線の影響がその子どもの健康への影響の有無を調査しました。私たち、全国被爆二世団体連絡協議会は調査実施の前年に、この放影研と確認書を交わし、スタートしたものです。調査内容は、親の受けた被曝線量と子どもの生活習慣病(高血圧や糖尿病など)の発症率との関係を調査したものでした。
 結果は、07年2月28日に発表されました。それは、「現在のところ、親の受けた被曝線量と二世の健康への影響はほとんど見出せなかった」というものでした。すなわち、「現時点では、親の被爆が二世へ影響があるのかどうかは、はっきりわからない」ということです。

親の被爆との関係は明らかではないけれど
 世界中の多くの研究者は、ヒト以外の動植物では、放射線の次世代への影響を認めています。私たちの体験からしても、この調査結果は納得いかないことが多くあります。私のいとこも被爆二世ですが、急性白血病によって、30代で亡くなりました。私は3人兄弟でしたが、他の二人は死産でした。これらが、親の被爆と関係があるのかどうか明らかではありませんが疑いがある以上、十分な措置がとられるべきだと考えます。
 このような中で私たち被爆二世協は発足以来、「被爆者援護法の対象に私たち被爆二世を入れるべきだ」と訴え続けてきました。しかし国は、先の放影研の調査結果を盾に何の対策をとろうともしていません。私たちは、放射線の影響がはっきりないと言えないのなら、何らかの対策を取るべきだと主張しています。
 現在、被爆二世の平均年齢も50歳を超えました。私たちは喫緊の課題として政府に対し、「健康診断の中にガン検診を追加すること」を要求しています。また、日本の中に被爆二世の実態について、全く国は把握しようとしていません。そのようなことで、唯一の被爆国としての責任が果たされていると言えるのでしょうか。私たちは、「被爆二世実態調査」も要求しています。

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08年9月の日韓被爆二世交流会(福岡)

全国の被爆二世とともに粘り強く取り組む
 このような要求を持って9月30日に、私たちは今年二度目となる厚生労働省との交渉を行います。現在、各地で二世団体がつくられようとしています。今後、全国の被爆二世と手をつないで、私たちの要求を力強く政府に対して突きつけていこうと思っています。また、10月10日には韓国・釜山で9回目となる「日韓被爆二世交流会」を行います。
 さらに、二世による被爆体験継承の取り組みも重要です。
困難な状況が続きますが、粘り強く取り組みを続けていきたいと思っています。世界中で、二度とヒバクシャやヒバク二世をつくらせないために。

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