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止めよう再処理!共同行動ニュース4/27号記事から

2011年04月27日

福島第一原発事故は「人災」だ!
事故原因の徹底究明を!

 2011年3月11日。マグニチュード9.0の巨大地震が東日本を襲い、巨大津波が発生し、多くの人々の命を奪いました。巨大地震は、東日本各地の原子力発電所や原子力施設を襲い、東通原発、六ヶ所核再処理工場、女川原発、福島第二原発、東海原発など、電源喪失により非常用電源などでかろうじてこの危機を凌ぎましたが、まさに紙一重の状態でした。しかし福島第一原発では、地震や津波による電源喪失で、原子炉の冷却機能を失い、原子炉の制御もできず、水素爆発、さらに使用済み核燃料の冷却不能を招き、核燃料の溶融を起こし、大気中や海中に多くの放射能をまき散らしました。さらに事故の収束に向けて作業員にも多大な被曝を強いています。
 この事故の原因を推進派は、「想定外の津波に襲われた」と喧伝していますが、大津波が起こることはかねてから指摘されていました。それを無視しつづけていたことと同時に、これまで「原発は絶対安全」として済ませてきた「驕り」によって、まさに起こるべくして起こった「人災」です。そして事故の責任は、長年に渡り原子力政策を推進してきた歴代政府や東京電力などの側にあります。「人災」だからこそ徹底した原因究明が求められます。利害関係者が一切入らない中立・公正な第三者機関の手による真相究明を図ることを私たちは望みます。

六ヶ所再処理工場は完全に破たん!
 福島原発事故により、東京電力は存続の危機にあります。そのことは、現在建設が進められている六ヶ所再処理工場の存亡にもかかわります。すでに再処理全体のコストは、18兆8000億円(うち再処理事業は11兆円)とされています。しかし、これもすべて順調にいくことが前提です。再処理工場の建設は、すでに18回も延期され、完成が2012年10月とずれ込んでいますが、それさえも今回の地震によりさらに延びることが濃厚です。それによりさらなる費用負担が増え、今回の地震により施設の安全性の確保(例えば電源喪失時の対応など)でさらに追加予算がかかろうとしています。他の核燃料サイクル施設も同様に追加コストが膨らんで行き、全体の経費が大きくなっていきます。これらの追加負担は、全て私たちの電力料金や税金などからまかなわれることになっています。
 今回の事故で六ヶ所再処理工場の建設を資金面でも大きく支えている東京電力の存亡が今後、再処理工場の建設や運転に資金面で大きな影響を与えます。すでに六ヶ所再処理工場は、電力業界から4000億円の増資を受けていますが、東電が今後十分な資金提供ができることが難しくなります。東京電力の崩壊は、これまで進めてきたプルトニウム利用政策の崩壊です。そのことは六ヶ所再処理工場だけでなく、高速増殖炉「もんじゅ」の開発(すでに9千億円以上もかかっていますが完成の目途がたっていません)にも影響を与えています。福島原発事故の補償や後始末で、これまでの原子力予算も大幅に抑えられることが十分予想されます。その中で巨額の資金を浪費するプルトニウム利用路線の撤退は避けて通れないものとなるはずです。 


懸念される原発事故による放射能の影響
被災地・宮城と福島を歩いて
 
 4月7日~8日にかけて東日本大震災で被害にあった宮城県と福島県を訪れ、被災地の状況を見てきました。合わせて福島では、放射線量を測定しました。宮城県内では、仙台市若林区、塩竃、松島などをめぐり、福島では、高い放射線を記録する飯舘村や20km内の避難区域の南相馬市小浜地区に入りました。

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巨大津波の威力にがく然とする
 宮城でも福島でも津波の被害を見て心底驚きました。集落が一瞬にして押し流された痕跡を目の当たりにしたとき、絶句して言葉がすぐに出ませんでした。広島・長崎の原爆投下後の写真は何度も見てきましたが、それと似たような光景が目の前にあったのです。立っていた場所から3km先の海岸線まで、壊滅した街の残骸が残る荒涼とした風景がずっと拡がっていました(仙台市若林区・写真1)。
 
 改めて地震という自然災害がもたらす破壊力の大きさを痛烈に実感させられました。福島第一原発事故による甚大な被害も合わせて考えると、人間は自然に対してもっと「謙虚」であるべきだとの思いを、実際に被災地に立って強く思いました。これまで、原発推進派は、「原発は絶対安全」と宣伝してきましたが、「絶対」などという言葉が、この光景を見たならば、いかにむなしいものであるかが実感させられます。推進派の科学技術の自然に対する「驕り」を感じずにはいられませんでした。 110427_0002.jpg
 塩竃では、いまだ流された船が被災後1ヵ月を経過しようとするこのときにも、そこかしこに打ち上げられたままでした(写真2)。松島では遺体が発見された現場も見ました。(写真3)。
 
 福島の南相馬市小浜地区では、集落の横を流れる太田川に沿って津波が押し寄せ、堤防を越えて、橋や住居をなぎ倒しながら、奧へ奧へと濁流が流れ込んでいった様子が想像できました(写真4)。今は避難地域とされて、住民が誰もいない町の中で、誰かに飼われていたとみられる猫が2匹近寄ってきました(写真5)。こうした小動物たちも今後、どのような運命をたどるのでしょうか。せっかく津波から逃れられたというのに……。
 
高い放射線量が観測された飯舘村
 今回、私たちは簡易放射線測定器を持って福島県に入り、各地で測定しました(写真6)。飯舘村は原発から30km以上離れた村で、このとき避難地域や屋内退避地区にはなっていませんでしたが、放射線量は場所によって避難地域(南相馬市小浜)や屋内退避区域よりも高い線量が出ていました。私たちが測った数値では、東京で1分間17カウントだったものが、飯舘村役場付近で約994カウントを数え、周辺の集落(川俣村)の側溝では東京の60倍の1,278カウントを超えるところがありました。それだけ放射能が周辺にばらまかれている証拠です。

   空間(地上1m位)で測るよりも地面や草むらのほうがはるかに高く、このことは外で遊ぶ子どもや動物たちがより強い放射能を受けやすいことを意味しています。これでは子どもを安心して遊ばせることはできませんし、体内被曝も心配です。20km圏内の海岸部(南相馬市小浜)では風の影響で拡散しているのか、線量そのものは比較的少なく、むしろ圏外の方が高いという状況が生まれていました。
 被災地訪問後、政府は原発から半径20km圏外で放射線の累積線量が年間20ミリシーベルトに達する地域を「計画的避難区域」に指定し、1ヵ月以内での退避を要請することを決めました。飯舘村の放射線量の高さは、ずっと問題になっていたにもかかわらず、後手に回った対応だと言わざるを得ません。110427_0003.jpg
 
保安院も認めた放射能放出の長期化
 4月4日、原水禁が福島原発事故に関わる申し入れを行った際(申し入れ書は原水禁HP参照)、対応に出た原子力安全・保安院の担当者は、事態の長期化及び放射能放出の長期化と拡散地域の拡大が懸念されていること述べていました。
 そして4月17日の東京電力の発表では、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少させるのに3ヵ月程度、それから原子炉を100℃未満の冷温停止と放射性物質の漏出を大幅に抑えるのに3~6ヵ月かかると発表しました。しかし、計画通りに事態が収束に向かうかどうかは、何ら具体性もなく、あくまで努力目標にしか見えません。保安院も認めているように放射能放出の長期化はもはや避けられず、避難民の早期帰宅はさらに困難になり、汚染地域の拡大も心配されています。 110427_0004.jpg

一刻も早い事態の収束を
 まさに今後が心配されます。政府は、原子力施設事故の深刻度を表す国際原子力事象評価尺度(INES)を、チェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7としました。政府や東電、そして推進派の学者は、放射能の放出量が「チェルノブイリ原発事故と比べて10分の1だ」などと言って、事故を過小評価しようと躍起になっています。しかし、現在に至っても事故が収束したわけでもなく、放射能放出は長期に渡って続き、被害が拡大していくことが明らかであり、具体的な被害の状況も、そう遠くないうちにチェルノブイリ原発事故を超えることさえ心配されます。そうなれば、今回の原発事故は、世界最大級の事故となってしまいます。だからこそ、一刻も早い事態の収束を願うばかりです。
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■止めよう再処理!共同行動ニュース4/27号(PDF)

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