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止めよう再処理!共同行動ニュース5/25号記事から

2011年05月25日

核燃料サイクル路線の放棄と「人・物・金」すべての力を福島へ
福島第一原発の事態収拾にむけて全力を
 
出口の見えない福島原発事故
 3月11日に発生した東日本大地震によって、福島第一原発では世界の原子力史上最悪の事態が発生しました。現在1号機では炉心溶融が起こり、原子炉圧力容器底部に核燃料の大半が溶融し、落下して溜まっていることが発表されています。2号機、3号機も同じように、地震発生後の早い段階で炉心溶融が起こったこととされています。そのことは、早い段階で東京電力などでは認識されていたようです。
 現在1号機では、落下した核燃料は水没し、一部は露出していると推定されています。「今後、大規模な放射性物質の放出につながるような事象の進展はない」としていますが、あくまで推定した中での希望的観測でしかありません。事態はいまも厳しい状態であることには変わりません。この炉心溶融に事態を受けて、これまでの事態収束に向けた工程表(ロードマップ)も大幅に見直さざるをえなくなりましたが、なぜか収束期間の変更はなされないまま、来年1月頃の冷温停止状態(ステップ2)の目標を掲げています。
 しかし、毎日報道される福島原発の状況を見るたびに、工程表はあくまで努力目標であって、国民に期待感をもたらすだけで、実際の現場での作業との間での乖離が著しいように思われます。六ヶ所再処理工場の完工時期について18回も延期された例(それでも今も完成していない!)を見るまでもなく、これまでの原子力関連の工程がまともに進んだ試しがありません。妙な期待感を抱かせるだけで、国民の期待を裏切る結果が待っており、ますます原子力に対する信頼感を悪化させるだけです。あらためて政府や東電は事態の深刻さを国民に丁寧に説明すべきです。
 
深刻さを増す収束作業―増加する汚染水
 炉心溶融という事態を迎え、1号機で予定していた「水棺」作業は中止となり、新たな対応が迫られています。圧力容器内の溶融した核燃料に対して引き続き冷却水注入をしなければなりませんが、大量に発生している放射能に汚染された水の問題が大きくクローズアップされています。汚染した滞留水は増加傾向にあり、処理施設の建設が早急に求められています。
 それから、汚染した水を循環させて原子炉を冷却させようとする「循環注水冷却」の早期確立が求められていますが、それらの作業は順調にはすすんでいません。汚染水の増加と地下水への汚染拡大が心配されています。さらに、海洋への汚染も懸念されています。拡大する汚染水の問題の解決は後手後手に回っています。
 
深刻さを増す収集作業―労働者の問題
 それらの作業をする作業員についても大きな問題が山積しています。直接原子炉の内容を知る作業員は限られています。その方たちは、この間の事故処理で活躍されていますが、被曝線量が増え続けています。事故処理は長期戦になります。年間の作業者の被曝線量を50ミリシーベルトから100ミリシーベルトに引き上げましたが、それでも作業員の線量は蓄積され、限度を越えていく人たちが多くなっています。限度を超えれば仕事に従事できなくなり、一番心配されるのは現場で指揮できる人たちがいなくなることです。高放射線の中での作業は、短時間でしかなく、十分な作業を確保できるかどうかも心配です。
 さらに、健康問題も心配されます。これから夏を迎え、ますます高温多湿の中での作業は、多大な心身の消耗を招き、見えない放射能の恐怖とも戦わなければならず、労働者に多大な負担をかけるものです。また、労働者がよりよい仕事を遂行してもらうためにも、労働環境をよりよいものにすべきところ、いまだ食事やトイレ、風呂、睡眠といった基本的な労働環境の整備すら大きく遅れています。現場での放射能だけでなく、劣悪な労働環境の問題も早急に解決することを私たちは強く求めます。
 労働環境だけでなく、いま現場で働いている人々の多くは下請け労働者です。2次下請け、3次・・・6次、7次の労働者が現場に入っています。このような事態になってもまだピンハネが行われ、低賃金で被曝労働を行うことが要求させられる人がいるのです。被曝線量一杯に働かされ、線量を超えたら使い捨てされる方がいることを忘れてはなりません。彼らの人としての権利、労働者としての権利を守ることが重要です。被曝後の健康管理や就業保障など、国や東電がしっかり最後まで面倒をみることを強く求めます。彼らがいなければ、事態の収束はありません。だからこそ万全の態勢で臨んで欲しいと思います。

深刻さを増す作業環境
 夏を迎え、暑さや台風といったことも心配です。暑さは、さらに労働者に大きな負担を背負わせますが、台風は、放射能の拡散や汚染水の増加に拍車をかけます。汚染ガレキの撤去もままならない中で、台風の到来は、放射能を広範囲にまき散らします。夏から秋にかけての農産物への被害の拡大、海洋への汚染水の流出などによる漁業などへの打撃が心配されます。さらに20~30キロ圏外への汚染の拡大など食環境や住環境に大きな被害を発生することが考えられます。早期に対策を立てることが重要です。

すべての力を福島へ
 上記のほかにも、原発の再臨界や水素爆発など多くの問題を抱えています。それらを踏まえ、いま福島の事態の収束に全力を挙げることです。六ヶ所再処理工場や高速増殖炉もんじゅなど、いまでも原子力開発に多額な費用が投入されています。もんじゅはいまも維持費に1日5500万円もの税金が投入されています。
 今回の事故で、猛毒物質であるプルトニウムを使う核燃料サイクル計画が破たんしたものであることが、より鮮明になりました。破たんしたものに、これ以上資金の投入はムダでしかありません。いま必要なことは、福島原発事故の収束に向けて、あらゆる原子力予算を福島原発に投入することです。福島に「人・物・金」のすべてを投入し、国難といえるこの原発事故を乗り越えることが急務となっています。先のない原子力開発にこれ以上を関わることではなく、緊急事態の福島原発事故の収束に全力をあげることです。私たちはあらためて、政府や東電、そしてその他の電気事業者にそのことを特に強く求めるものです。


核燃料サイクル―見直しは当然!

 5月16日、菅直人首相は、衆院予算委員会で、原発にとどまっている使用済み核燃料の保管や取り扱いに関し、「サイクルに乗る形が取れていないことも含めて検討しなければならない」と述べました。菅首相の「核燃料サイクル見直し」は、国会や地元、電力業者などに波紋を投げかけ、地元の関係者は、「『見直し』とはどういう意味か」と戸惑いを隠せずにいる、との報道がなされました。
 しかし、冷静に考えれば、福島原発の事態を見れば、どこにいま核燃料サイクルを推進する声が上がっているのでしょうか。浜岡原発も全号機停止となり、新規原発予定地の上関原発(山口県)も県知事が埋め立て認可を白紙にすると発言、危険なMOX燃料を使う大間原発(青森県)も、東日本大震災後に本体工事が中断し工事再開について「もうしばらく時間がかかる」として現時点で見通しが立っていないことが明らかになっています。全体的に原発の新増設にブレーキがかかり、既存の原発でも耐震見直しなど全体的に原発そのものあり方について見直されようとする中で、核燃料サイクルの実施はあまりにも説得力に欠けるものです。白紙・見直しは当然で、冷静な議論が必要です。
 資源小国という「ドグマ」に、あまりにも縛られてきた私たちは、福島の事態を見ればわかりますが、原発や原子力施設には「絶対安全」が求められています。過酷事故は絶対起こしてはならないのです。しかし「安全神話」が崩壊したいま、「絶対」などありえません。特にプルトニウムを大量に抱える六ヶ所再処理工場は、どんな事故でも起こしてはいけないのです。しかし、神でない人間の技術に「絶対」はありません。いま英断が求められています。

■止めよう再処理!共同行動ニュース5/25号(PDF)

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