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日印原子力協定の締結に反対する声明

2010年06月28日

 NPT未加盟のインドへ、日本から原子力協力を可能にする協定の交渉開始が発表されたのに対して、原水禁では以下の声明を発表しました。また、長崎の被爆者5団体が発表した、対インド原子力協力協定反対書簡も掲載しました。

参考:

 

 


 

内閣総理大臣 菅 直人様
外務大臣 岡田 克也様
 

2010年6月25日

日印原子力協定の締結に反対する声明  

 6月25日、日本政府は、日本とインドとの間で原子力協定締結の交渉に入ると発表しました。また、菅直人首相はサミットの開かれているカナダでインドのシン首相と会談し、「両国が原子力協定締結の交渉に入ることを踏まえ、原子力分野の協力推進で一致した」とも報道されています。原水禁はNPT体制の形骸化に結びつく日印原子力協定の締結に反対します。

 1998年、日本も共同提案国となり、全会一致で決議された、国連安保理決議1172では、インド及びパキスタンに対し、「核兵器開発計画の中止」、「核兵器用の核分裂性物質の生産中止」を求め、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出の禁止」を求めています。今年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書でも、「すべての加盟国に対して、核関連輸出が直接的にせよ間接的にせよ、核兵器のまたその他の核爆発装置の開発を支援してはならない」ことを確認しています。

 また、インドは包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名していません。日本が促進をしているCTBTの発効要件国のうち未署名国は、インド、パキスタン、北朝鮮だけです。インドとの交渉では、少なくともCTBTへの署名、批准、インド国内の全ての核施設を査察の対象として、核兵器開発をやめさせることが前提となるべきです。そうでなければ、日本自ら提案した国連決議に反して、核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出につながる協定を結ぶことは許されません。

 原水禁は、NPT体制を強化し、核廃絶への道を開くために、2008年の米印原子力協定締結に反対してきました。

 NPTは、「未加盟国に対して原子力で協力しない」を基本原則としています。NPT未加盟国で核兵器を保有するインドに対する原子力協定の締結は、世界から核の恐怖を排除するために、5年ごとの運用検討会議を重ねてきたNPT体制を形骸化し、核兵器廃絶への道のりをより険しくすることとなります。インドが原子力の平和利用を主張するならば、核兵器を放棄して、NPTに加盟し、国際原子力委員会(IAEA)の管理下に入るべきであると確信します。原水禁は、そのことを日本政府がインドに強く求めることを要請します。

 原水禁は、日本政府が内外の要請に安易に応えることなく、核兵器廃絶の道を信念を持って進むことを要求し、インドがNPTに加盟することなく「日印原子力協定」の締結を行わないよう強く要請します。
 

原水爆禁止日本国民会議 議長 川野浩一


内閣総理大臣 菅 直人 様
(※岡田外務大臣、直嶋経済産業大臣にも送付)

核拡散防止条約(NPT)体制の崩壊につながる
「対印原子力協力協定」の締結構想を破棄せよ

先日、各紙は日本政府がインドの原子力開発に協力するため、標記の協定締結交渉入りを決定した旨、一斉に報じた。
何ということだ!・・・2010年NPT再検討会議が終了したばかりのこの時期に、しかも、世界で唯一の被爆国・日本がなすことか!
戦後65年、年老いた被爆者は「これが最後だ」と、いくつもの病を抱えながらもニューヨークで開かれた2010年NPT再検討会議に出席し、世界の多くの人たちに「一日も早い核兵器の廃絶を」、「長崎を最後の被爆地に」と訴えてきたばかりではないか。
改めていうまでもなく、インドは北朝鮮やイスラエルなどとともにNPTに加盟していない数少ない国の一つであり、核爆発実験を行った国である。NPTに加盟している国なら、原子力発電などによって産出するプルトニウムなどについても
国際原子力機関(IAEA)の管理下におかれるが、NPT未加盟国の場合、現状ではこうした制約もなく、供与された原子力技術が核兵器開発に使われないという保証は全くない。
NPT再検討会議の最終文書は被爆者の願いを十分に取り入れたとは思わないが、核兵器廃絶の方向性は明確に確認された。そして、我が国をはじめ核兵器廃絶を
求める多くの国々に、これからのより一層の努力が求められたところだ。
おりもおり、その直後に日本政府がNPTの根幹を揺るがす、このような協定の締結をどうしてできるのか?
いま、我が国がなすべきことは、インド政府に対し核兵器を早急に廃絶し、NPTに加盟するよう働きかけることではないか。それなしに、被爆国・日本がインドに原子力開発の協力を行うことは絶対に許されない。
もちろん2年前、ブッシュ前米政権による対インド戦略に当時の自公政権が便乗し、原発を積極的に売り込むため、米印原子力協力協定に賛成した経過はある。しかし、明白に政権は代わった。政権は民主党に移ったのである。国民の多くは、
民主党政権が自公政権そのままにインドとの原子力協力協定に走るのか、それとも言行一致、きちんと核兵器廃絶の道を歩むのかを見守っている。
菅内閣は、「対印原子力協力協定」の締結構想を直ちに撤回されるよう要求する。

2010年6月28日

長崎県被爆者手帳友愛会 会長 中島 正徳
財団法人長崎原爆被災者協議会 会長 谷口 稜曄
長崎原爆遺族会 会長 正林 克記
長崎県被爆者手帳友の会 会長 井原東洋一
長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会 議長 川野 浩一
 

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