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【報告】広島第3分科会/ヒバクシャを生まない世界に1―学習編―世界のヒバクシャの現状と連帯のために

2010年08月05日

会場:ワークピア広島
参加者:約160人(うち、初参加者約120人)

講師:豊崎博光さん(フォトジャーナリスト)
     振津かつみさん(医師)
海外ゲスト:メニュエル・F・ピノさん(米国・先住民アコマ族)

 初めに、フォトジャーナリストの豊崎博光さんから、「ヒバクシャ」という言葉は、放射能・放射線を受けた人を指していて、世界的に通用する言葉であるといった解説から入った。そして、広島・長崎だけでなく、ウラン鉱石を採ることで被曝してしまう現状と、これにかかわる人は、世界の先住民族であり、全体で30ヵ国においてウラン採掘が行われていること。また、大量の核廃棄物を捨てたままにしていることで、二重、三重と被害が拡大しているとの現状が報告された。その後、ジャーナリストの斉藤達雄さんが、ビキニ環礁と世界遺産の意味について触れられた。ビキニ諸島から住民を追い出し、核の実験場とした米国政府が、広島の原爆ドームを世界遺産にしようという動きが始まった際に反対したことや、原水禁運動の始まりが、第5福竜丸の被曝がきっかけであり、今日に至っていることなどである。

 続いて、米国の先住民活動家、メニュエル・F・ピノさんによる講演があった。具体的な内容として、(1)先住民の命である大地を犠牲にウラン採掘が行われている現状。(2)採掘による被曝の被害拡大。(3)採掘による自然破壊と野生動物や家畜への被害。(4)鉱山発掘と近隣の町への被害。(5)ウラン発掘被害の訴訟問題など多岐にわたり、体験談を踏まえ話された。印象に残ったのは、ウラン発掘から処分に至るまで被害があることと、先住民を含め、空・自然・大地・水・地下水などが、すべて被害を受けてきたということが報告された。

 次に、医師で「ウラン兵器禁止を求める国際連合」運営委員の振津かつみさんから、新たな被曝を許さない闘いについて講演があった。その中で、米国の先住民をはじめ、世界中の先住民族が苦しんでいる。ウラン開発の裏側で鉱山採掘の作業員が被曝し、周辺の町や自然に被害が及んでいるとの報告がなされた。
 振津さんは、ウラン採掘プロジェクトをやめさせるため、原子力産業や兵器としてウランを使用させないための運動が必要であると訴えた。そして、劣化ウラン兵器の禁止に向けて取り組みを強化し、世界の運動との連携も必要であると付け加えた。
 その後、参加者から特別報告に移り、茨城県東海村の臨界事故による健康被害の訴訟報告と、裁判の結果を受けた今後の活動について話があった。

質疑・討論について
1.ウラン採掘は、地下水の汚染を含め、廃棄方法についても問題がある。採掘を行う会社は、これをどう考えているのか知りたい。
回答:採掘会社は、地下水を飲み水として使用しないものと考えており、影響が出るとはあまり考えていない。この考えを改めさせるために、企業に対して水の大切さを訴えていく。放射能廃棄物は、埋めるだけの処置では安全が保たれない。

2.被曝した人々への被害の保障問題はどうなっているのか。
回答:放射線被曝者保障法では、労働者しか保障されないが、それでさえ、労働していた証明や、医師の証明がない限り難しい。1万5000人いると言われる被曝者のうち、5000人弱しか保障を受けられていないのが実態。

3.チャーチロック事故(先住民のいる地域で1979年に起きた放射能漏れ事故)は、スリーマイル事故よりも大きかったと記憶しているが、30年も忘れられ、放置されてきたのは先住民への差別があったのか。

回答:米国には、白人が優位であるとする人種差別がある。スリーマイルは白人、チャーチロックはインディオであるという背景があった。最近、先住民の被害にも注目が集まるようになった。目に見える被害と、見えない被害というものがある。

全体のまとめとして
 核の「平和利用」ということはあり得るのかという観点から、核のない世界へ運動をつなげなければならない。核開発の過程で被害は拡大している。このことは、地域の運動にとどまらず、世界規模での連帯が必要であり、今日の講演を通し、学んだことを生かしてほしい。多くの仲間へ運動の輪を広げていくことをまとめとした。
 最後に座長より、世界には3000万人とも言われる核被害者が存在している。被害者による世界大会が過去に2回開催された。今後、広島でも開催できるよう取り組んでいきたいとのコメントがあった。
hiroshima_3.JPG

発言するメニュエル・F・ピノさん

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