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【66大会・報告】長崎第6分科会/ヒバクシャ2 学習編「日本の戦争責任と在外被爆者問題を考える」

2011年08月08日

 第6分科会は約30人の参加でほぼ船員が初参加でした。そのうち7人が原水禁世界大会に参加自体が初めてでした。

 最初に在外被爆者のカク・キフンさんから報告がありました。カクさんは原水禁の分科会にこれまで何度も報告されていますが、今回は初めて日本に来た経緯をお話しました。カクさんは1944年、韓国(植民地下の)の師範学校に通っていましたが、突如、軍に招集されました。カクさんは日本語ができ成績も優秀だったため、幹部候補生となり従軍しました。そして、1945年8月6日、被爆しました。カクさんは「無我夢中で走り、防空壕に入ったら、背中が熱いことに気付いた。背中の服が燃えており、後頭部から背中が火傷していた。3日間意識がなく昏睡状態だったが、何とか生き延びることができた」と被爆体験を語りました。カクさんは「戦争が終わって祖国が戻ってきた。国、言葉を奪われた者の気持ちを想像できますか」と会場の人たちに問いかけました。「国がなければ人格も言葉も何もかも奪われる」と強調しました。日本の植民地政策、そして植民地がいかなるものか、会場全体にいた参加者の胸に突き刺さりました。

 次に、在外被爆者のチャン・テホンさんが報告しました。チャンさんは中学1年のときに長崎で被爆をしました。現在、釜山に住むチャンさんは「被爆の体験を伝えることは難しい。いくら説明してもわかってもらえないときがある。被爆をした悔しさや怒りは経験した者しかわからないのだろうか」と、被爆体験を伝えていくことの難しさを訴えました。

 高實康稔さん(長崎大名誉教授)からは、「日本の戦争責任と在外被爆者問題を考える」という演題で、1時間報告をしていただきました。高實さんは、在外被爆者問題を時間軸に分けて説明しました。最初は1971年、被爆者援護を求めて不法入国した孫振斗さんにより、在外被爆者に目が向けられるようになったことです。孫さんは裁判により、被爆者援護の「国家補償的配慮」を引き出しました。しかし、旧厚生省からいわゆる「402通達」が出され、日本から出国したから援護が受けられないことになりました。次に、それを打ち破ったのが、冒頭に報告したカク・キフンさんの裁判です。カクさんたちの裁判により、2003年、ついに「402号通達」が廃止され、「ヒバクシャはどこにいてもヒバクシャ」ということが国で認められました。手帳申請の「来日用件」も最近になり、ようやく撤廃され、海外からも申請ができるようになりました。しかし、いまだ朝鮮民主主義人民共和国には、約300人のヒバクシャがいると見られますが、国交がないという理由で日本からの補償を受けていません。高實さんは「日本人のヒバクシャと在外被爆者は分けて考えないといけない。在外被爆者は植民地政策の中で日本につれてこられた。日本の侵略がなければ、彼らは被爆することはなかった。日本政府は、優先して在外被爆者を補償しなければならない。それは日本の道義的責任だ」と厳しく日本政府の対応を批判しました。

 質疑応答では、広島原水禁の金子哲夫さんから、今年の7月、訪朝して在外被爆者のお話を聞いたこと、在外被爆者の医療費は被爆者援護法ではなく、別な予算で組まれており、差別的な扱いを受けていることが報告されました。在朝被爆者は特に、医療の援助を求めているということでした。
 在外被爆者は医療費に16万5千円の上限があること、手帳取得に依然として2人の証人が必要であり、ハードルが高いことなど、課題がたくさん残されています。特に在朝被爆者に関しては、なんら補償がされていません。これは「被爆者」だけではなく、「慰安婦」、「強制連行」も同様にあてはまります。朝鮮に関しては、被爆者だけではなく、戦後補償や国交正常化という枠組みで取り組んでいかなければならない問題も含まれています。残された時間が多くありません。引き続き、在外被爆者の援護拡大を求めていかなければなりません。

(有田純也・北信越B/新潟)

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