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【68大会・報告】長崎第2分科会/脱原子力2―学習・交流編―再稼働問題と脱原発に向けたエネルギー政策の展開

2013年08月08日

長崎第2分科会 (2).JPG

講師:藤井石根さん(明治大学名誉教授)
 自然エネルギ-を中心に、冒頭、「原子炉は一端を火を着けたら消えない。冷やし続けなければならない。それに気づいた今だからやめるべき」と述べられた。

 2010年の世界の原発で発電量は3億7,500万KWで、自然エネルギ-開発の時間は立っていないが現在3億8,100万KWで原発と同じぐらいの容量を持っている。それ以降、2005年で55カ国~2010年で100カ国以上に増えている。開発費も300億ドルから1500億ドルと5倍になっている。特に中国など進めているが、ヨ-ロッパではドイツが脱原発、東南アジア・アフリカでも自然エネルギ-へ関心を向けている。ケニアの地熱発電4ギガW、(原発1基相当=1ギガW)、インド太陽光発電で20ギガWなど世界のこの流れに進む方向になっている。

 「自然エネルギ-は不安定」と否定されるが、広範囲による融通をし合えば平均化により解消できる。蓄電池の開発などで融通、あるいはパワ-の問題も解消できる。
 これを増やしていくため、国や自治体で①利用の将来目標値を示す②都市開発計画の自然エネルギ-の活用③自然エネルギ-利用の義務付け④税制上の控除や免除⑤公共交通機関など環境にやさしい点力の活用⑥電力会社を対象に画期的な政策導入⑦利用促進に寄与した情報提供・支援⑧補助金・助成金の充実をするべき。

 屋根の上の太陽光発電でNEの優位性として1年間で1件が1000KW/h で25,000円程度を売ることができ、国内で10億KW/hで250億円となる。これを続けることができれば産業を起こせる。環境問題もなく放射能もない。資源の枯渇もなくなる。現在23兆円ほど化石燃料を買っているがこれもなくなる。
最後に、自宅には7年ほど前から太陽光電池を設置し、月々の日数で売り買いは買った電力が2215KW/h、売った電力が3324KW/hで、東京電力に供給している。これを皆さんでやれば原発を使う必要もなくなるのではないだろうか。

講師:西尾漠さん(原子力資料情報室共同代表)
 来月で国内の原発はまたゼロになる。そこで再稼働となるが、12基が申請され審査も始まっている。その中には申請をしていないものもあり、30年を超えた原発では、審査をクリア-しても運転終了までの時間があまりない。基準に合わせるためには莫大な資金かかる。それを取り返せないから簡単に申請できない。しかし、政権交代で規制委員会に圧力もかかる中、最低限40年までという期限を守らせていくことが必要になっている。

 これから再稼働するものは、40年を過ぎたものでもさらに動かしたいとされるもので、世界一厳しい基準が逆に「伸ばさなければ電力会社がやっていけない」構図になっている。40年を超えて動かせるのかという事では40年以上稼働している原発は世界的に見ても実績はない。また新基準は第2、第3の福島が起こりうることを前提とした新しい規制にもなっている。重大事故が起こりうることとして、それが起きても拡大しないようになっている。防災計画にしても、今までは5Km、8Kmとなっていたものが30Kmまで広げている。そういう考え方でいいのかという事も一つある。しかし、現実問題として、今、再稼働しようとしている原発があり基準についての指摘はしながらも、最低限「今の基準を緩めることはさせない」それをきちんと守らせることが必要。
 核セキリュティ対策など管理していく事も検討されている。プルサ-マル、原発を動かせば使用済燃料がたまってくる。六ヶ所再処理が動けば可能かもしれないが破綻している。こういう事を追求しながら、止め続けることが必要。

 原発が止まっても停電にはならなかった。ここについて矛盾もでている。原発は止まってしまってもすぐに稼働できない。火力ならすぐに運転再開できる。現在、進める側と止める側ではっきりと分かれてきている中で再稼働を止め続け世論を高め、政策をきちんとしていくべきだ。

海外ゲスト:イ・サンホンさん
 福島に調査に入った時、皆、普通に生活していて、花見もしていた。しかし、実際測定すると国際的な許容基準の30倍だった。子供を保護する何らかの装備も与えていない。自分の知る先進国日本の姿ではなく調査を終え韓国に帰ることができず東京で抗議集会に参加してきた。それが反原発の原動力にもなっている。

 韓国の電力消費量は1991年8.9%、2010年で37.8%になった。電力消費量は急ピッチで増えた。その背景には原発があり原発は1991年の9基から2010年で23基に増えている。原発費用は国民の税金で賄われており電力も安いため国民たちが煽ってしまっていたとも言える。2030年には40基となる計画にもなっている。このままでは36基が日本海に接することになり、韓国の原発で問題が起きたら、日本の人はどこに逃げるのか。是非、日本の中から脱原発を実現し韓国にも要求をしてほしい。

 自分の住んでいる慶州は日本の奈良と姉妹都市であり、白維として都だった。現在26万人が住んでいて、古墳など世界文化遺産に指定されている。そこが現在韓国の原発の中心都市になっている。
30Km圏内では109万人が住んでいる。韓国の産業の中心が原発の両側にある。もし、福島の事故がここで起きたら109万人が避難することになる。

 設計図面は30年だった。政府は延長の方向だが世論を見ている状況で、IAEAは信用していないが、そのIAEAでさえ多くの指摘をしていった。10年周期のPSR検査項目も3項目削除された。さらにIAEAからの地震に関する指摘を受けているにも関わらず韓国政府は「停電事故はあり得ない」といっている。一方では韓国でも過去の地震によって大きな災害が起きた事例もあるし、地震から守るための韓国でもグレンィエという建設工法を行ってきている。また地下水への漏洩も検出されている。

海外ゲスト:イェンス・ケンツィアさん(ドイツ緑の党)
 ドイツでは福島事故を受け、原発事故を契機に段階的に原子力から再生可能なエネルギ-を使うという事をすでに決定している。

 ドイツにも原子力ロビ-はあった。ドイツで初めて商業的に原子力発電所が作られたのは50年前だった。70年代にはデモも行われた。長い間、反核運動を続けてきた経緯がある。勝利する時もあり負ける時もあった。原発をシャットダウンする最初の契機になったのは緑の党が与党となっていた2002年の「原子力発電所段階的廃止法」だった。しかし、2010年政権が交代し、保守党が「廃止法」を覆す行動にでてきた。そうした中で2012年に全ての党が「原発をなくそう」と動いた。国民の80%も参道する状況でもあった。

 具体的には2011年には8基を廃炉に、それから毎年1基ずつ、2021年に3基、2022年に3基ということですべての原発をなくしていくというものである。その間、原発ロビ-に対して様々な取り組みも行ってきた。デモ行進をはじめ、東京をはじめとした様々な国々でも同じような行動が行われうれしく思う。

 ポイントとしてしっかりと焦点を絞った形でのデモ行進も行っている。燃料を運ばせないため、鉄道・道路を取り囲みふさぐ形でも行った。完全な合法的な行動ではなかったが大きな影響を与えた。そうしたことをマスコミも取り上げ、メディアの注目により、動いたか、止まったかが注目を呼ぶようにもなった。

 また、緑の党は一貫して反核を訴えていた。そこに反核の市民が投票できる党にもなっていた。くわえて消費者にも訴えた。「段階的廃止をやるなら自分たちでやろう」という事を呼びかけるものでもあった。抗議なども重要なことだが、たんに反対するのではなく、代替え策として何が必要なのかを提示してきた。「代替物を示すことが重要」だということでもある。

 こうしたドイツでの取り組みが、そのまま日本で成功するかはわからないが、ドイツの場合、移行については準備期間が長くあった。1つ1つを10年かけてできるという事もあった。

各地からの報告

荒川譲さん(鹿児島県護憲平和フォ-ラム)
 伊方原発について電力が足りないといわれていたが実際は足りている。しかし、その後も巨額の赤字(3000億円)を理由に再稼働キャンペ-ンを行っている。全土で再稼働、伊方・川内原発が早いともいわれており、新基準では断層・火山について「問題なし」とされている。
 そういう中で、地元経済が重視をされ、自治体が大きな壁になってきている。これをどう突破するのかが課題であり、県民や市民から管型肩を発言してもらうことが必要だとおもう。
自分も自宅に太陽光発電を設置した。初期投資は210万円かかったが、支払った額より受け取った金額の方が多い。以前、諸先輩から「環境問題で運動する人はそれなりの自己負担が必要」と言われた事が思い出された。

山口さん(佐賀県原水禁)
 (玄海原発について)、冷却水漏れなど4基のトラブルが多発している。そんな中、使用済み核燃料の量を質問すると74%まできていた。六ヶ所村・もんじゅが動かなければ地元に据え置かなければならなくなる。この対策として3号機の貯蔵用プ-ルを改造して同じスペ-スでも倍近く貯蔵できるものが計画されたが危険な状態になるとしか考えられない。
 また、佐賀では「やらせメ-ル」問題があったが、知事の「企業として積極的に発言すべき」との発言が発端であるものの参考人招致での質問は否定され、知事の減給でうやむやにされようとしている。3.4号機の再稼働の申請をめぐり安全対策とともに特別委員会などで追及していく。
  また、九州電力などに対しても抗議行動など行ってきているが「気持ちは十分わかると」返答がされる。福島県民の本当に気持ちがわかるのであればン性について撤回をすべき。3・11の事故の現状を忘れずに、今の政権が再稼働や輸出する姿勢がある中で福島県民に寄り添う運動を強め、県議会を含め取り組みを強めていきたい。

 愛媛県議会・石川県議会議員からも伊方原発について、閉鎖性水域という事から、南海トラフなど福島原発と同様、それ以上の事故が起きれば、瀬戸内海全域に被害がおよぶことから、愛媛だけでなく大分県との共同行動を行うため共闘会議をほっそくしてきた。そこを基軸に要請書の提出や様々な行動を続けてきた。その中で、大分だけでなく山口県からの支持も得るようになり、愛媛・大分・山口の共闘会議へ発展してきている。訴訟関係ではすでに650名で3次を準備している。圏内集会をはじめ四国電力への要請行動など諸行動を計画している。
 1979年の説明では事故の確率は1/100万と言われていた。それが32年間で5基の炉心が損傷するような事故が起きている。再稼働は論理的にどう考えても納得いくものではない。各地域から運動を積み上げよう。
との報告を受けた。

【質問・意見・まとめ】
 時間的には余裕のない中でも2名から質問・意見を受け、1つには、化石燃料に対する対策の必要性も同時に進めていくべきとの意見。そしてドイツでの非暴力直訴行動について日本も学ぶべきとの意見。さらに原水禁として労働者被曝の問題を中心にすえるべきなどの意見が出された。
 最後に、牟田実運営委員より、まとめとして現在12基が再稼働の申請を行っている中で藤井さんからも「今後どうしていくのか」を含め世界的な自然エネルギ-への転換政策が離されていた。また、西尾さんからは、再稼働申請について古いものは申請できない電力会社の実情などにも触れられた。海外ゲストのイ・サンホンさんからは日本海に接する原発を含め韓国における原発事情が報告されていた。そしてドイツにおける反対運動を通じた自然エネルギ-への転換政策など出され。それは日本でも実現は可能ではないかという事が言われていたと思う。ここで学んだ事をぜひとも職場や地域に持ち帰り、各地から運動を追求していこうとしてまとめられ、第2分科会を終了した。

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