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被爆73周年原水爆禁止世界大会 福島大会 基調提案

2018年07月28日

原水爆禁止世界大会 福島大会 基調提案

原水爆禁止日本国民会議
事務局長 藤本泰成
 
 災害級とも言われる猛暑の続く中、「脱原発」に熱い熱い思いをもって、原水禁福島大会に参加された皆さまに、心から敬意を表します。ご紹介いただきました原水爆禁止日本国民会議・原水禁の事務局長藤本です。少しの時間をいただいて機長の提案をさせていただきます。時間の関係もあって全てに触れることは叶いません。詳細は、黄色の表紙の基調をご覧下さい。
 去る6月14日、東京電力の小早川社長は、内堀福島県知事と面会し、福島県楢葉町と富岡町にまたがる福島第二原発について、「廃炉に向けて検討に入りたい」と述べました。
 2011年3月11日に、過酷事故を起こした福島第一原発は6基、全ての廃炉が決定しており、第二原発の4基の廃炉決定によって、福島県には原発が無くなることとなります。
 福島第二原発は、東日本大震災で自動停止して以来、全く動いてはいませんでした。しかし、使用済み燃料プールには、約1万体の核燃料が保管されています。地元自治体が「全基廃炉」を求めていたにも関わらず、東電は、再稼働か、廃炉かの判断を先送りしてきました。
 今回の廃炉の決断は、再稼働には膨大な費用が見込まれることが最大の要因なのかもしれません。多くの人々には、遅きに失したとの思いがあると思いますが、しかし「脱原発」を求めて来た私たちは、「全基廃炉」の決断を心から歓迎したいと思います。
 東日本大震災、福島原発事故から1年を経過した2012年3月11日、福島県郡山市「開成山野球場」で、初めての「原発いらない!3.11福島県民大集会」が開かれました。県内・県外から1万6000人が参加し、「安心して暮らせる福島をとりもどそう」と「脱原発」への誓いを新たにしました。
 あの日、さようなら原発1000万人アクションの呼びかけ人、ノーベル賞作家の大江健三郎さんは、放射線量の高いグラウンドの中央に設けられたステージに立って、「原発事故を絶対に起こさない方法は、原発をなくすこと。私は、政府が原発の全廃を宣言し、子ども達が歓喜する姿を想像している。それは必ず出来る」と訴えました。
 まさに今、福島では原発が全廃されました。2012年の3月から毎年叫び続けた「原発のない福島を!」と声は7回、あの原発事故から7年を数えてやっと現実のものとなりました。大江さんが想像したように、福島は、子どもたちの歓喜の声で包まれているのでしょうか。
そうではありません!
 あの事故から、7年、様々な課題が、福島の県民を覆っています。事故を起こした福島第一原発では、放射能汚染水が増え続け、タンク増設の余地も限られてきています。溶融した燃料は、その存在する場所・状態など全く明らかになっていません。
 格納容器内は、1時間あたり500mSvとも言われる放射能に覆われ、1分も持たずに人間は死亡するような状態です。1号機の排気塔付近でも、1時間当たり約1500?Svと言われています。高い放射線量が事故の収束作業を拒んでいます。
 事故に伴う避難指示が、帰還困難区域を除いて全域で解除されて1年を過ぎました。しかし、故郷に帰還した住民の割合は、全体で15%と少しに止まっています。対象人口が最多の浪江町では3%超、富岡町も5%未満です。
 インフラの整備も追いつかず、除染したとはいっても全体の放射線量は、事故以前と比べものにはなりません。働き場所や学校の問題など、様々な要因は、若い世代ほど帰還できない状況を作り出しています。
 
 全国で、福島県内で、生活の再建と補償を求める、様々な動きがあります。東京電力は「裁判が紛争解決手続(ADR)」の和解案は、尊重すると表明していましたが、浪江町の住民1500人が訴えたADRに関しても、東電が和解案に拒否解答を繰り返し、手続が打ち切られています。事故の責任も回避し、和解にも応じようとしない東電の姿勢を許してはなりません。
 子どもたちの「甲状腺検査」では、199人が甲状腺がん又はがんの疑いとされ、163人が手術を受けています。「甲状腺調査サポート事業」が立ち上がりました。子どもたちの心的ケアも含めて、さらなる充実したサポートを求めなくてはなりません。加えて、福島県民には当時何らかの放射線被曝があったことは事実であり、そのことを基本にして、健康被害への包括的支援の充実が求められます。
 さる7月4日、名古屋高裁金沢支部、内藤正之裁判長は、大飯原発の運転差し止めを命じた2014年年5月の福井地裁判決を取り消し、住民側逆転敗訴の判決を言い渡しました。
 判決文は、「日本の法制度は、原発を一律に有害危険なものとして禁止せず、重大事故が生じて放射性物質が異常に放出される危険などに、適切に対処すべく管理、統制されていれば、原子力発電を行うことを認めている」「このような法制度を前提とする限り、原発の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって、それ自体で人格権を侵害するとはいえない」としたうえで、原子力規制委員会の審査によって、「大飯原発の危険性は社会通念上無視できる程度にまで管理・統制されている」と判断しました。
 福島原発事故の実相に触れず、その影響を全く顧みない、人間の生存というきわめて重要な命題に対して、何と薄っぺらな言葉なのか。今日、福島に立って心が痛みます。 福島原発事故から7年目の裁判所の判断は、2011年3月11日前の時点に逆戻りしてしまいました。
 私たちは、もう一度あの福井地裁判決を思い出さなくてはなりません。
 「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」
 私たちは、生きる事への深い洞察を、社会に関わる哲学をしっかりと持たなくてはなりません。
 忘れてはならないのです。福島原発事故を。
 忘れてはならないのです。原発事故のあった福島で、震災関連死が2227人を数え、被災県全体の全体の6割にも上ることを。
 忘れてはならないのです。7年を経過して未だ故郷に帰ることができないことを。
 私たちは、今ここに集まって「フクシマ」を忘れないことを、確認し会いたいと思います。そのことを申し上げ、原水禁世界大会・福島大会の基調提案と致します。

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