第4分科会「人権確立」報告 2007年11月03日

 

 人権分科会は運営委員、座長、2人の助言者金子匡良さん(高松短期大学専任講師)、湯浅誠さん(反貧困ネットワーク事務局長/NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長)の紹介からスタートしました。はじめに助言者からそれぞれ問題提起を受け、質疑意見発表に続きました。

実効的な人権救済の確立に向けて−金子匡良さん
 人権問題とは、法制度ができればすべて解決とはいきません。社会構造上の問題があります。一般的に、人権が侵害されたらどんな法律によって救済されるかといえば、憲法や民法があります。しかし、日常的には個別具体的なDV防止法、児童虐待防止法などが使われます。それらの法律は、もっとたくさん整備される必要があります。救済の方法としても賠償、謝罪、原状回復、再発防止、加害者の責任追及などたくさんあり、裁判に訴えたり、国や自治体、民間団体に頼ったりします。でも、現状では満足できる解決の方法はほとんどない。
 今後の課題として、1)幅広い人権救済法の制定、2)独立性のある人権機関の設置、3)児童虐待防止法、DV防止法のように特性に応じた救済法を個別的につくる、4)自治体に、地域に即した人権救済機関をつくる、5)国、自治体、NGOなどバラバラな活動をネットワークする、6)実践的人権教育を行う−と、子どものイジメ自殺や、部落差別貼り紙事件の例をもとに説明されました。
 会場からの質問では、「イジメが発生したら、自殺を防ぐ手段として学校から離すことも必要。現在、指導や相談はどう行われているか」(山形)。金子さんから「自治体でイジメホットラインが設置されているが、実際小学生が電話をかけて大人と話すことは難しいのでは。こちらから積極的にイジメはないか調べていく姿勢が大事」。
 「学校の人権教育は思いやり、自分を大切にとスローガン的な中身。自分の権利とそれを守る法律について体系的に教えられていない」(座長)の意見も出ました。

貧困襲来−湯浅 誠さん
 1995年より野宿・ホームレスの人たちの支援活動をしています。野宿者が一番困るのがアパートに入るための保証人です。
 “もやい”は連帯保証人の提供、貧困者一般の相談を受けている。今年は障がい者、シングルマザー、外国人労働者などと「反貧困ネットワーク」を立ち上げました。6年間で、1200世帯の保証人を提供(ちなみに都など行政機関は300〜400程度)、95%は保証人の世話にならず自力で生活しています。いま、貧困層は多様であらゆる層に及び、日本全体が貧困に入っています。貧困の連鎖となっています。「本人がしっかりすれば」済む問題ではありません。
 貧困が産み出される社会とは、教育課程、企業福祉、家族福祉、公的福祉、そして自分自身からの排除という五重の排除のある社会です。収入が少なくても家族が支えている人は貧困とはいえませんが、家族の支えもない人は貧困に直結しています。日本の福祉は家族、企業まかせ、その支えすらなくなれば公的福祉=生活保護しかありません。貧困とビンボーを区別しましょう。昔はビンボーだったと笑えますが、貧困は笑えません。貧困は単にお金がないだけでなくゆとりがありません。孤立。貧困はあってはいけないのが、世界の常識です。
 厚労省は生活保護基準の切り下げをやろうとしていますが、貧困のスパイラルが起きてしまいます。貧困をいかになくすか政策化し、社会全体の底上げをはかっていけば活力が出てきます。

 会場から「集団的差別」については、「人権救済法ができればいいのか。また、生活水準が生活保護より下がると、さらに生活保護が切り下げられる。これをどう考えるか」(座長)。
 金子さんから「アメリカでは法廷侮辱罪で収監できる。日本ももう少し裁判官に権限を与える必要がある。再発防止の人権教育にお金をかけるなど意識の醸成が必要」。湯浅さんは「アメリカでは毎年絶対貧困の基準を発表している。日本も厚労省は調べているようだが明らかにしていない。生活水準の向上をはかるべきなのに今、歴史的転換期にいる」としました。
 この他、「カナダの人権法について」(熊本)、「湯浅さんの活動、組織運営について」(埼玉)、「貧困とビンボーは同じではないか」(鹿児島)、「人権救済法の見通しは」(埼玉)の質問、意見が出ました。
 金子さんは「カナダの人権法は戦前に対する反省から1977年に成立。多文化主義が国是で一応人権先進国。『人権侵害救済法』の展望は暗い。民主党に重要性を認識してもらいたい。公明党も積極的なので、公明・民主党ラインをNGOがつないでいけないか」。
 湯浅さんは、「生活困窮者相手なので、受益者負担はムリ。手弁当で活動。去年は企業の社会負担を受けられた。行政の補助はいろいろあり、けった。パートナーシップも難しい」。
 日本では、積極的に貧困が生産されています。労働者派遣法の度重なる改正や、失業者の増大。
 経営者や国の自己責任こそ問わないといけないこと。政党の発言も共産党だけ。少なくとも野党社民・民主はワーキングプアの実態調査など堂々と質問してもらいたいこと。戦略的政策として考えてほしいこと。単にお金がない、経済的にということではないところで、貧困とビンボーを区別しましょう。擬似家族的、コミュニティ的あり方がなくなっていること。頼れる人間関係がないこと。また、湯浅さんの著書『貧困襲来』の巻末にはCDが付いており、“最低生活費”が調べられるソフトになっているので、いろいろなところで活用してほしいこと。著作権フリーですと話されました。
 最後に、運営委員の西島さんより「金子さん、湯浅さんから問題提起を受け、激発する差別事件は貧困ともリンクしている。国会も福田内閣に替り、人権調査会も立ち上げられた。600近い議会決議もあり、来年の通常国会に期待したい。今日の人権、貧困の学習を知識のための分科会に終わらせず、地域の活動に生かし、政治課題として政府に迫っていこう」と全体で確認し、終わりました。



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