憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)開会総会
 大会基調提案 藤本泰成事務局長

   ただいま、ご紹介をいただきました、中央実行委員会の事務局長の藤本です。まずは、全国各地からお集まりいただきましたみなさまに対し、心から感謝を申し上げます。加えて、52回を数えます「憲法理念の実現をめざす全国大会」の開催を、快くお引き受けいただき、その労をおとりいただいております青森県平和労組会議の皆さまにも、心より感謝を申し上げます。

   少しのお時間をいただき、大会基調の提案を行なわせていただきたいと思います。お手元に、基調をお配りしております。詳細は、そちらでお読み取りいただきたいと思います。時間の関係もありますので、基調全体に触れることはかないませんが、基本的な部分と私の思いも含めて、ご提案いたします。

   アジア・太平洋戦争の敗戦から、70年を経過しました。1853年に旗艦サスケハナ号など4隻の米艦隊を率いてペリー提督が浦賀に来航して以来、先んじて近代社会を成立させた西欧諸国への憧憬を以て、近代資本主義社会の確立に日本は奔走しました。「脱亜入欧」の考え方の下、急速な近代化を進める日本は、その社会矛盾の解決を帝国主義的侵略に求め、台湾、朝鮮半島、南洋諸島などへの植民地支配と中国大陸への侵略戦争に明け暮れることとなりました。

   明治維新から70年以上、私たちは戦争を実感する時代に在ったのです。結果、日本人310万、アジア全体で2000万とも言われる犠牲の上に、1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾し無条件降伏を余儀なくされました。
   戦争に倦んだ私たちの先輩は、不戦と民主主義の日本国憲法を、心のそこからわき上がる喜びとともに受け入れ、新しい日本社会のスタートを切ったのです。

   日本国憲法は、日本人による戦争の被害を受けたアジア諸国への、日本人自身が選択した「約束」としての存在なのです。そして、その約束を将来にわたって守り続けることこそが日本人の責任なのです。

   戦後70年を迎えた今年は、憲法持つ意味が大きく問われた年になりました。安倍政権は、多くの反対を押し切り、「集団的自衛権」の行使を基本にした「戦争法」を、去る9月19日未明に強行成立させました。日米ガイドラインの改定に示された米国の要求、国連の安全保障政策における「普通の国」にならんとする外務官僚の要求、そして憲法を改正し再軍備に道を開くとしてきた日本の保守政治の主張を実現するために、立憲主義・民主主義・法治主義さえないがしろに、日本の市民社会の絶対的反対を押し切った、政治の暴挙と言えるものです。そして、先に成立した「特定秘密保護法」と相俟って、日本社会を戦前の物言えぬ社会へと作り替えていくものです。

   私たちは、1945年8月15日、あの敗戦の日を境にして、以前の70年と以後の70年を見つめ直さなくてはなりません。そして、自らの社会を選択しなくてはなりません。答えは明らかです。

   米国は、自らが招いたイスラム国(IS)の暴挙に対する「有志連合」の一員として日本を位置づけています。世界各国で引き起こされてきた「自爆テロ」の対象として、日本が位置づけられたと言っても過言ではありません。
   トルコやロシアの空爆参加、その後のロシア民間機の墜落など、中東情勢は混迷を極めています。日本の「戦争法」の成立が、米国とイスラム過激勢力との不毛な戦いに、日本が引きずり込まれる可能性を現実のものとしています。私たちは、「戦争法」の実働を許さず、その廃止を求めてとりくみをすすめなくてはなりません。自衛官を戦場に送ることなく、対話と協調をもとめ何事も平和的解決をめざす日本国憲法の理念を守らなければなりません。

   安倍政権は、米海兵隊普天間基地の代替施設として、辺野古沖の新基地建設を、沖縄県民、沖縄県知事の反対を圧殺して、強引にすすめています。知事の公有水面埋め立て申請の承認取り消しには、本来の法の目的を逸脱して自らが自らに不服審査を請求する、反対する名護市を無視し法の根拠もなく辺野古の地元3行政区に対して直接に補助金の交付を行うとするなど、恥も外聞もない行動に出ています。辺野古新基地建設に反対し、基地交付金によらない行政のあり方を求めて来た名護市民の思いを踏みにじり、地元市民の感情をもてあそぶ、卑劣な政治手法を許してはなりません。

   「戦争法」とそれに基づく自衛隊の世界展開を保障するために、2016年度の防衛費の概算要求額は、5兆911億円で、過去最大となってます。哨戒ヘリコプター17機で約1032億円、オスプレイ12機で約1321億円、最新鋭F35戦闘機6機で約1035億円、総計で2015年度予算を366億円上回るものです。
   一方で、日本社会の貧困は深刻な事態となっています。相対的貧困率は16.3%、非正規労働者も全体の4割を超えました。母子家庭の平均年収は約181万円、相対的貧困と言われるのが二人世帯で平均年収177万円以下、子どもたちの6人に一人が、一人親の6割が相対的貧困に陥っています。しかし、安倍政権は2013年以来、3段階で生活保護基準引き下げを行って来ました。社会保障費を削減する中での、防衛費の拡大は、安倍政権の本質を象徴しています。

   安倍政権の経済政策・アベノミクスは、急激な円安などによって、中小の多い輸入産業の衰退を、実質的賃下げを、正規労働者の縮減と非正規労働者の増大など、市民生活を直撃しています。
   今回の、新三本の矢も、成長率3%を必要とする、経済界からも疑問の声があがる2020年国内総生産600兆円、保育料を実施的に引き上げておいての出生率1.8%、特養の入所基準を引き上げながらの介護離職ゼロなど、何の根拠もなく耳障りの良い数字をあげつらう、選挙目当て、支持率回復目当てに、市民社会を愚弄するものです。

   バブル経済の崩壊以降、失われた10年とも20年とも言われる時代に、経済は低迷し1997年をピークに賃金は減少し、非正規雇用が増大してきました。社会の閉塞感は拡大し、排外主義や民族差別などによるヘイトスピーチの横行、ろうそく火災などに象徴される貧困の広がりや貧困故のネグレクトなどが社会問題化しています。そのような社会の変化に便乗し、利用しながら、国家主義的傾向を強める安倍政権の政治手法を、絶対に許すことはできません。

   「戦争法」の強行採決には、反対が多数を占め、およそ8割近くの市民がが説明不足としましたが、法の成立以降、安倍内閣の支持率は40〜45%へ回復しています。
   「戦争法」反対の運動が、しかし、市民社会の思いをくみ取れていない現状にあることを真摯に省みなくてはなりません。市民社会の中に、戦争反対のとりくみへの冷めた感情や反発が存在しないか、そのことをしっかりと見据えることが重要な視点となると考えます。生活者の窮乏は深刻で、きわめてきびしい生活実態があります。

   本年5月3日の憲法集会は、平和といのちと人権を!の下に、戦争・原発・貧困・差別を許さないと声を上げました。私たちの危機感はそこにあります。
   沖縄で、福島で、そして日本中で、「いのち」を粗末に扱う、人間の尊厳を奪う政策が進んでいます。

   日本の市民社会が、そのことに気づかないわけではありません。気づいていながらも、なお何かに期待しないではいられない現状に追い込まれているのだと思います。

   来夏に予定される参議員選挙に向けて、野党一致して、それらの市民の思いに寄り添うことが求められています。

   市民社会の寄り添わない政治は、市民社会を更なる悲劇に追い込むことでしょう。戦争と貧困は、社会の表裏であり、貧困が戦争を、戦争が貧困を生み出すことは明らかです。そして、その時、失われていくのは、市民のささやかな喜びであり、穏やかな生活であり、そして一人ひとりの「いのち」なのです。
   戦前の70年、戦後の70年、私たちの選択肢は明らかなのです。

   今日から3日間、真摯な議論をお願いし、基調の提起とさせていただきます。