「白表紙本の流出は違法」と教科書課長
――高嶋・上杉氏は公正取引委員会へも申し入れ――

  3月11日に高嶋・上杉両氏が文部科学省へ申し入れた扶桑社教科書の白表紙本の流出について、文部科学省の教科書課長は17日、「違法なこと」と認めました。今後の展開が期待されます。
  また昨年、「つくる会」批判の重要な局面をつくったものとして高嶋・上杉氏の公正取引委員会への告発があります。同委員会が曖昧な裁定をしたことによって、事態はうやむやにされましたが、今年も両氏は17日、公取へ足を運び、以下のような申し入れを行いました。今年も告発するかどうかは、申し入れへの反応を待って判断するとのことです。


2005年3月17日

申し入れ書
公正取引委員会
竹島一彦 殿
高嶋伸欣(琉球大学)
上杉 聰(関西大学)
 
  私たちは、以前より学校教科書の検定及び採択制度に強い関心を持ち、それらは公正かつ適正に設置・運用されるべきものと考えてきました。しかし、教科書は社会一般における商品の一部でもあることから、これまでにも不適正な販売・採択の行為があったことは数々の事実をもって確認されています。
  もとよりそうした行為は社会的に許容されません。とりわけ教科書は学校教育の内容にも関係することになる重要な教材であり、民主的な社会の一員を育成する教育本来の目的に照らしても、これらの行為のくり返しを許容してはならないと私たちは考えます。また、社会一般の人々も同様に考えているものと、私たちは確信しています。
  そうした社会一般の人々から、教科書の販売・採択の公正さを保つ役割を期待されているのが、貴公正取引委員会であり、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」、昭和22年法律第54号)」の第2条第7項の規定により定められた「特定の事業分野における特定の不公正な取引方法」の指定としての「教科書業における特定の不公正な取引方法(以下「特殊指定」)」をもって、貴委員会がこれまで、こうした責任の一端を果たされてきたことも、私たちは承知しております。
  しかし、上記「特殊指定」は1956年12月20日に貴委員会告示第5号として定められて以後、今日まで足かけ50年間、一度も教科書制度及び教科書業界等の実態の変化に合わせた抜本的な見直しがされていません。
  この50年間、教科書制度及び教科書業界の実態は大きく変化しています。
  たとえば、1965年度から全面実施された義務制学校対象の教科書無償制度にあわせて、採択はそれまでの学校単位のものから市町村教育委員会によるものに変更されていますが、現行「特殊指定」は、学校採択向けの営業活動を前提とした規定にとどまっています。
  さらに、1986年度には民間団体「日本を守る国民会議」が提唱して編纂された高校用教科書『新編日本史』(現『最新日本史』)が検定に合格しました。これは、現行「特殊指定」が前提としている、教科書会社等出版企業が教科書の発行・販売を最初に企図し、企業が編著者に編集・執筆を依頼して商品である教科書を作成するという形態とは異なる道筋で教科書が作成され、販売されるに至ったものが出現したことを意味しています。編著者たちのグループ・組織がまず最初に存在し、出版企業がその編集・出版・販売の実務に協力するという道筋で登場した教科書の場合は、編著者たちが出版企業以上に採択・販売に強く関与し、出版企業からの依頼の有無にかかわらず主導的役割を果たすことが想定されます。
  しかし、そうした想定に合わせた「特殊指定」の見直しは、1980年代以後実施されないままです。
  やがて2001年、そうした新たな想定通りの事態が現実のものとなりました。
  2001年1月22日以後、私たち両名は貴委員会に対し、「新しい歴史教科書をつくる会」の諸活動、とりわけ全国の教育委員会関係者等に対する働きかけは、現行「特殊指定」の規定にさえ抵触している疑いが強いとして、5次に及ぶ申告をもって、審査を求めました。審査の結果は、2001年8月10日付けの通知によって、抵触するものではないと、私たちに示されました。
  その一方で、これら申告の過程で、現行「特殊指定」は1956年以来、一度も抜本的見直しをされていない事実が判明しました。そうした明らかに時代遅れの状況を放置することは、不適切であると私たちは思料し、口頭によるものでしたが、改善を貴委員会に求め、その要望は承知したとの回答を得ていました。
  しかし、それから4年後の今日、私たちが要望した改善は何ら実行されていません。
  さらに、琉球大学教育学部社会科教室は4年後の検定を目途にいわゆる地域版教科書の編纂・出版の活動を開始した旨をすでに公表しています。今後、類似の取り組みが全国各地で具体化し、上記の例と同様に出版社主導でない教科書の間で採択・販売において競争関係が増すことも予想されます。
  私たちは、現行「特殊指定」の内容解説にある「教科書の教育的商品という性格からみて、また教育に与える影響からみて不公正な取引方法」は「絶対禁止されなければならない」とする理念に、賛成しています。
  貴委員会が社会全体から託された期待にこたえ、責務を迅速に果たされるよう、以上の通り文書をもって、申し入れいたします。
  なお、本件申し入れに関し、貴委員会の見解等を示されるよう希望いたします。

以上