「つくる会」分裂!! ―私たちの運動の成果として―


   「つくる会」総会を7月2日に控えた6月30日、「八木秀次さんとともに日本の教育再生を考える夕べ」への案内を掲げたブログ「日本教育再生機構設立準備室 http://kyoikusaisei.blog73.fc2.com/ 」(以下「第2つくる会」)が立ち上がりました。そこには、「八木秀次教授がこの度、『新しい歴史教科書をつくる会』を離れ、教科書改善はもとより、今日の教育危機に対応すべく教育現場を重視した新しい教育運動組織の結成へ向け、準備を始められました」という書き出しで、7月27日に会合を開き、そこで「今秋正式発足の新しい教育再生運動の『基本構想』も発表される」と呼びかけました。

  代表発起人は、伊藤隆(東京大学名誉教授)、鍵山秀三郎(イエローハット相談役)、中西輝政(京都大学教授)、屋山太郎(政治評論家)の4人、それに続いて知識人・文化人・実業家など50人が発起人として名前を連ねています。ブログの最後には、八木氏自身が「関係団体の方々にご相談申し上げたところ、『つくる会』設立の精神を継承しつつも教科書問題に止まらない教育正常化のための団体を設立」したいという挨拶で締めくくっています。

  「つくる会」分裂については各種雑誌でも予測していましたが、まだ不確定の要素があると判断し、これまで慎重に動向を見守ってきました。しかし、新組織の核には、この間「つくる会」の内紛の一方の側に立ってきた「日本会議」のメンバーがおり、さらに発起人も同会議系の文化人等であることから、これにより「日本会議」主導による「つくる会」の分裂が確定したと判断いたします。八木氏が「関係団体の方々にご相談申し上げ」て動き出した、と書いているのもそれを裏付けています。

  7月2日に開かれた「つくる会」第9回定期総会は、分裂組織発足の呼びかけ直後であったことから、きわめて低調なものとなりました。八木氏を中心とする6理事を非難した分厚い文書が出席者に配られたことに対し、会場から「いつまで内紛をやっているんだ」と激しい抗議の声があがり、つかみかかろうとする男性や、泣き出さんばかりに訴える女性会員もいたことが参加者から伝えられます。休憩をとって理事の協議が行われ、文書は回収することになりました。藤岡新体制は出発からつまずいた形です。

  ところで小林正・新会長は日本会議に近い人物でもあり、そこには藤岡氏なりの融和努力の跡も見られるのですが、小林氏は挨拶で、藤岡氏と西尾氏のこれまでの手法を批判し、八木氏の動きに対して、「私どもは大いに激励したい。ただし私の所に案内状は来ていません(笑)」と述べるようなありさま。「つくる会」の新体制はホームページ( http://www.tsukurukai.com/01_top_news/file_news/news_060621.html )に掲載されていますが、今後一部は「第2つくる会」へ流れることが予想されるなど、前途多難となりそうです。

  「つくる会」の分裂は、私たちの運動が二度にわたる採択で極めて低い率に抑え込んだ結果です。そのことは、今回の内紛の主たる原因が、採択の拡大という脱出口を求めて藤岡・西尾氏が、日本会義系の事務局長を切り捨てようとしたことが発端であったことからも明らかです(この下にある「『つくる会』内紛の背景と今後」参照)。その意味では、広範な平和勢力が国境を越えて彼らを包囲し、孤立させた大きな勝利です。

  また「つくる会」が神社本庁やキリストの幕屋など、宗教右翼に支えられてきたことが、私たちの努力で広く知られたことも重要な要因となりました。西尾氏が「もう神社・幕屋の関係者では採択に勝てない。全国の支部幹部の半分は入れ替える必要がある」(『諸君』7月号掲載の八木秀次氏の手記より)と激して語ったように、神道やカルト宗教の組織力に頼るしかなかった彼らの実態が暴露され、周囲を気にして行動が縛られ、孤立感を深めていたことが背景にあります(最近の「2ちゃんねる」には、彼ら宗教右翼の実態が絶えず面白おかしく書き込まれるようになっています)。

  しかし、「つくる会」が日本会議と決裂しても、さらに最近はキリストの幕屋の事務職員を気にして追い出そうとするなど「新生」のイメージを作ろうとしていると伝えられますが、理事に統一教会系の人物が大量に加わったこと(小林新会長もその1人)が「つくる会」東京支部の掲示板などに掲載され、内部からその危機感が伝えられています。(やがて「つくる会」教科書と壺が「霊感グッズ」などとして各戸販売されるようになるかもしれませんね。)

  こうして「つくる会」は分裂し、いよいよ解体の道へと歩みを進めています。しかし、広い視野から見るとき、彼らは教科書の改悪に一定程度成功し、それを採択する権限を教育委員会に掌握させようとする動きにも弾みをつけました。さらに歴史認識も、彼らの登場によって大きく右へと動きました。2・26事件がそれ自体として失敗に終わったとはいえ、結果としては軍部の台頭に大きく道を開いたように、彼らは日本の教育と歴史認識の分野に打撃を与える歴史的役割を達成したということもできます。

  おりしも教育基本法の改悪案は国会で継続審議となり、教科書の特殊指定も9月1日から廃止することが決められてしまいました(http://www.asahi.com/edu/news/TKY200606020574.html  )。教科書と教育をめぐる状況は、決して楽観を許しません。「つくる会」が分裂したとはいえ、彼らは今後も右翼教科書を2種類発行し続けることでしょう。私たちの運動は、彼らが打撃を与えた教科書と教育制度、さらには歴史認識の全体を改めて回復するための運動を、これまで以上につづける必要があります。 了