扶桑社を高嶋・上杉氏が公正取引委員会へ告発 !!
5月30日午前、高橋伸欣琉球大教授と上杉聰日本の戦争責任資料センター事務局長の2人は,扶桑社,「つくる会」、サンケイ新聞フジテレビなどが行ってきた不正を独禁法違反によって告発。以上はその申告書の全文です。
各地で同様の告発が進められる事が大切と思われます。
2005年5月30日
公正取引委員会
竹島一彦殿
<申告者> .
琉球大学教育学部 高嶋 伸欣
関西大学文学部 上杉 聰
私的独占禁止法第45条第1項にもとづく申告(第6次)
T 違法行為者(被申告者)
名 称 株式会社 扶桑社
所 在 地 東京都港区海岸1-15-1
代 表 者 社長 中村 守
資本金額 6800百万円
事 業 雑誌、書籍、他開発商品等
U 今回の申告にいたるまでの経過
申告者たちは、2001年において、今回の被申告者である「扶桑社」とともに、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)および「産業経済新聞社」を違法行為者として貴公正取引委員会へ告発した。これに対して、貴公正取引委員会は、同年8月10日付けで私たちの告発をしりぞけた。その理由説明を9月3日に受けたところ、公正取引委員会告示第五号が対象とするのはあくまで事業者であり、この場合は出版社・販売業者が該当し、「直接であると間接であるとを問わず」の文言はあるものの、出版・販売業者が人や金を出して直接に違法行為を第三者に依頼していることが立証できないかぎり違反に問えない、という内容であった。
これに対して私たちは、それは条文を不当に狭く解釈するものであること、現在、執筆者・編集者たちのグループ・組織が出版者に対して教科書の編集・出版・販売の実務の協力を働きかけ、教科書を登場させる方式が始まっており、その場合、編著者グループは出版企業以上に編集・採択・販売に強く関与し、主導的役割を果たすことが想定される。「つくる会」と扶桑社の関係は、まさにそのようなものであることを指摘し、告示の趣旨に立ち戻り、条文を正しく解釈するよう求めた。
しかし、公正取引委員会の担当者は、「告示が古くなっていることは認める。改正することは当局としては当然と思う」と答えるのみであった。私たちは、少なくとも時代遅れの状況をこのまま放置することは不適切であると、口頭によって改善を求め、その要望は承知したとの回答を得た。
それから4年ちかくたった本年初頭、貴委員会にその後の改善状況を質したところ、要望した改善は何ら実行されていなかった。そこで3月17日、別紙@のような申し入れ書を提出したが、今に至るも改善の動きは見られない。私たちは、今後も同様の状態が続くようであれば、貴公正取引委員会の不作為の責任を問い、貴委員会自身を告発せざるを得ない。速やかな改善への動きを直ちに示していただくよう要請する。
ただ、今回は改めて、これまでの告示の条文にしたがって申告を行う。その理由は、たとえ古い内容であれ、現に生きている条文であり。それに従っても、明確な違法行為が行われているからである。貴委員会の不作為が、こうした悪質な違反を触発している側面があり、改めて貴委員会の責任としてとらえ、以下の厳正な措置を求めるものである。
V 申告の趣旨
1 被申告者は、自らが編集・執筆し、発行予定にある中学校「歴史」「公民」教科書の使用または選択(採択)を勧誘する手段として、自社の組織を通して直接、教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するもの多数に対し、白表紙本(検定申請図書)を供与した。
2 また被申告者の共同事業者たる「新しい歴史教科書をつくる会」は、自己が関係する教科書の使用または選択を勧誘する手段として、選択に関与するものに対し、教育長や首長などを通し圧力をかけた。
3 被申告者の共同事業者である「つくる会」「フジテレビ」「産業経済新聞社」は、他社教科書をひぼうする文書を配布し、または中傷する番組や比較対照表の記事などを報道し、被申告者の事業に協力した。
これらの行為は、以下の法令に違反している。
独禁法第二条第H項
三 「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること」
六 「競争事業者とその取り引き先との取り引き妨害」
公正取引委員会告示第五号
一 教科書の発行または販売を業とする者が、直接であると間接であるとを問わず、教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するものに対し、自己または特定の者の発行する教科書の使用または選択を勧誘する手段として、金銭、物品、きょう応その他これらに類似する利益を供与し、または供与を申し出ること。
三 教科書の発行を業とする者が、直接であると間接であるとを問わず、他の教科書の発行を業とする者またはその発行する教科書を中傷し、ひぼうし、その他不正な手段をもって、他の者の発行する教科書の使用または選択を妨害すること」
教科書業の指定に関する運用基準(公正取引委員会)
第一項 六 使用するものとは 学校、校長、教員および児童、生徒をいう。
七 選択に関与するものとは 教科書の推せん、選定、採択など教科書の採
択にいたるまでの一連の行為に関与する校長、教員、選定委員、教育委員な
らびに教育委員会事務職員。
九 直接または間接に勧誘するとは(例示)
(二) 編著者その他の著作関係者による場合
(七) 発行業者と特別の関係にあるもの(株主、同系または傍系会社の社
員…)を通じて行う場合
(十一) 公職関係者(一般職ならびに特別職の公務員)を通じて行う場合
十一 物品 「一 禁ぜられるもの(例示)
(ロ) 書籍、雑誌(機関誌は除く)、辞典」
第三項 (禁ぜられるもの)
(イ) 他社教科書との比較対照の公布流布
(ロ) 中傷、ひぼう記事を買入れ頒布し報道すること
(ニ) 他社教科書の内容を批判または誤謬を報道すること
(ヘ) 編著者をして他社又は他社教科書を中傷、ひぼうさせること
上の規定に違反したことにより、被申告者に対し、すみやかに排除措置をとるよう求める。
W 違反行為の内容
1 被申告者は、2004年3月に検定申請を行ってのち、同年7月下旬以降、同社が教科書の選択に関与するものに対し白表紙本を配布していることが、文部科学省に寄せられた情報により発覚した。文科省は、白表紙本の漏出は「教科用図書検定規則実施細則」に違反するとして扶桑社への事情聴取を10月27日におこなったところ、1都10県で歴史・公民の白表紙本計43冊を同社が貸与したことを認め、陳謝した。文科省は回収を指示するとともに管理の徹底を指導した。
その後、被申告者がなお白表紙本を配布しつづけているとの情報が文科省へ寄せられたため、本年1月25日、改めて扶桑社を聴取したところ、3県で6冊を貸与、1都9県で19冊を閲覧させていたことを認め、再度陳謝した。
さらに3月12日、なお扶桑社の白表紙本が配布されていることがマスコミ等で明らかにされたことを受けて文科省は3月22日、扶桑社を聴取したところ、同社が京都府と和歌山県の教育委員会関係者に提供したことを認め、陳謝した。
以上は、文科省が扶桑社から事情を聴取した範囲で把握した内容にすぎないが、合わせて計70冊、地域は1都1府17県におよぶ広範なもので、都府県名は以下のようであった。
東京都
京都府
山形県
茨城県
栃木県
埼玉県
千葉県
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
静岡県
三重県
和歌山県
島根県
福岡県
鹿児島県
これらは、氷山の一角と考えられ、配布主体の扶桑社における役職や地位についてまで、文科省は明らかにしていない。
なお、扶桑社は、配布の目的を、申請図書に対する意見聴取のため教員に配布した、と答えているが、これだけの大量の配布を、営業活動以外の目的によって説明することはできない。現に、私たちが把握した京都府と和歌山県の事例は、教科書選択に関わる教育委員会関係者であった(詳細は口述)。
そもそも、公正取引委員会告示第五号の一は、「教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するもの」への物品の供与を禁止しているが、同告示の運用方法を定めた「教科書業の指定に関する運用基準」は、それら対象者を「学校、校長、教員」「採択にいたるまでの一連の行為に関与する校長、教員」とし、教員を含めている。
また公正取引委員会編著「教科書業における特殊指定の解説」(以下「解説」)も、「現場教員は(教科書)選定委員でない者もすべて(教科書の選択に)関与するもののうちに含まれる」と対象者に教員を加えている。
また「教科書業の指定に関する運用基準」は、第一項十一、物品の項で、「禁ぜられるもの」に「書籍」を挙げている。白表紙本が書籍に該当することは自明であり、公正取引委員会編著「解説」も、教科書の「実物と同一のものであったり…実物ページ数と同一で表紙のみが異なるものであったりしてはならない」(11(2)イ)と明記し、白表紙本の供与を禁止している。
なお、扶桑社は、「貸与」「閲覧」という表現を使って責任を軽減すべく文科省に対して弁明しているが、白表紙本はむしろ内容としての情報の方に価値があり、貸与・閲覧による情報それ自体が、選択に関与しまたは利用する者はもちろん、他の教科書会社も自社本の編集に資する有益な参考資料として存在しうる(とくに自主訂正が可能な検定申請期間中や検定直後あればなおさらである)。まして、その場であるいは返却までの期間中に複写保存することは今日きわめて容易であり、その複写物自体がさらに情報供与の役割を果たすことになり、被供与者の利益となる。
2 「U今回の申告にいたるまでの経過」で述べたように、百歩譲って、「つくる会」が告示第五号の直接の対象でないとしても、同会を扶桑社の共同事業者と認定することは可能である。それは、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」第二条D項が「この法律に置いて私的独占とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通牒し、その他いかなる方法を以てするかを問わず」として、他の事業者と共同し不法行為を行う場合を想定しているからである。
「事業者」とは、『有斐閣・法律用語辞典』によると、「事業を行う者の総称」であって、「事業」とは、「一定の目的をもって反復継続的に遂行される同種の行為の総体を指す。営利の要素は必要とせず、営利の目的をもってなされるかどうかを問わない」とある。
「つくる会」は、2004年9月11日、第7回定期総会を開いたが、その議案書(別紙A)には「今年度事業計画」として、教科書の改訂・改善(「叙述の平易化と一貫性の強化」、つまり執筆)とともに「扶桑社の営業体制の強化」(11頁)を挙げ、同社と緊密な連絡関係にあることが記されている。「つくる会」と扶桑社が共同の事業者であることは明白である。
また「事業計画」では、扶桑社版教科書「採択率10パーセント」という目標を設定するとともに、4年前と同じ8000万円を「採択経費」として計上し、それに不足する5000万円の特別募金を会員に呼びかけている(別紙A17頁と別紙B)。一億円近い採択費用をかけ、7000人以上の会員を持つ組織による扶桑社教科書の採択事業が、扶桑社のそれと無関係であるはずがない(上記募金は、昨年12月段階で目標額に達し、なお追加募金が進められていることが『史』1月号に記されている)。
また、「つくる会」以外にも、「フジテレビ」は、扶桑社の株84.2パーセントを所有する親会社であり、やはり「フジテレビ」の子会社である「産業経済新聞社」とは同系会社である。「教科書業の指定に関する運用基準」は、「九 直接または間接に勧誘するとは(例示)」として「(二)編著者その他の著作関係者による場合」と「(七)発行業者と特別の関係にあるもの(株主、同系または傍系会社の社員…)を通じて行う場合」とを挙げており、その関係者の行為は、出版社との明確な指揮・命令関係になくとも「間接に勧誘する」行為と考えられている。
こうして「つくる会」、「フジテレビ」「産業経済新聞社」の三者は、現行法上の主たる事業者である扶桑社とともにその活動が独禁法の規制を受ける対象者であると解される。 したがって告示五号は、同業者を規制する内容として解釈でき、現行法においても、扶桑社からの依頼が、たとえ「つくる会」の関係者や執筆者に対して個別になされた証拠がなくとも、同会の事業として彼らが活動していることが明確であれば、主たる事業者である扶桑社がその責任をとるべきである。
また、「教科書業の指定に関する運用基準」は、「九 直接または間接に勧誘するとは(例示)」として、「(十一)公職関係者(一般職ならびに特別職の公務員)を通じて行う場合」を挙げている。「一般職ならびに特別職の公務員」とは、公取委編著「解説」によると、「国会議員、都道府県知事及び議員、教育委員、市町村長会議員等の特別職、及び教育長、指導主事等の一般職の公務員」を指している。
ところで「つくる会」は、別紙Aの「採択戦の基本方針」に「関係者との対話」をあげ、直接に採択権限を有する教育委員と、間接に政治責任を負う首長(知事・市区長)への協力を求めることを方針としている。
「つくる会」は、支持者への報告会を4月28日に東京で開いたが、そこで、「東京都は横山教育長の働きにより、扶桑社が約半分は採択することが可能」との発言を行った(詳細は口述)。これは、扶桑社の同業者である「つくる会」が公職関係者を通して間接に勧誘した結果であって、告示五号第一項への違反である。
3 「つくる会」は、別紙Cのような文書を、昨年から今年にかけて大量に教育関係者に配布した。そこには、帝国書院、東京書籍、日本文教出版、清水書院、教育出版をひぼう、中傷する記事が掲載されている。
また「フジテレビ」は、4月10日に放送された「報道2001」(添付ビデオ)において、扶桑社の教科書の宣伝を行い、多くの教科書が元寇を「遠征」と記述していると歪曲して報道した。たしかに他5社には「遠征」の語があるが、それとともに「襲来」「侵攻」「おそいました」「おしよせた」などと書いており、残る2社にも「遠征」の語はなく「侵攻」「襲ってきた」と書いている。これは他社への中傷にあたる。さらに「産業経済新聞社」は、この番組の内容を18日になって報じたのみか、元寇記述の比較対照表を載せて他社をひぼうした(別紙D)。
これらは、告示第五号第三項の違反に該当し、現行法上の主たる事業者である扶桑社の責任とすべきである。
以上
別紙@
2005年3月17日
申し入れ書
公正取引委員会
竹島一彦 殿
高嶋伸欣(琉球大学)
上杉 聰(関西大学)
私たちは、以前より学校教科書の検定及び採択制度に強い関心を持ち、それらは公正かつ適正に設置・運用されるべきものと考えてきました。しかし、教科書は社会一般における商品の一部でもあることから、これまでにも不適正な販売・採択の行為があったことは数々の事実をもって確認されています。
もとよりそうした行為は社会的に許容されません。とりわけ教科書は学校教育の内容にも関係することになる重要な教材であり、民主的な社会の一員を育成する教育本来の目的に照らしても、これらの行為のくり返しを許容してはならないと私たちは考えます。また、社会一般の人々も同様に考えているものと、私たちは確信しています。
そうした社会一般の人々から、教科書の販売・採択の公正さを保つ役割を期待されているのが、貴公正取引委員会であり、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」、昭和22年法律第54号)」の第2条第7項の規定により定められた「特定の事業分野における特定の不公正な取引方法」の指定としての「教科書業における特定の不公正な取引方法(以下「特殊指定」)」をもって、貴委員会がこれまで、こうした責任の一端を果たされてきたことも、私たちは承知しております。
しかし、上記「特殊指定」は1956年12月20日に貴委員会告示第5号として定められて以後、今日まで足かけ50年間、一度も教科書制度及び教科書業界等の実態の変化に合わせた抜本的な見直しがされていません。
この50年間、教科書制度及び教科書業界の実態は大きく変化しています。
たとえば、1965年度から全面実施された義務制学校対象の教科書無償制度にあわせて、採択はそれまでの学校単位のものから市町村教育委員会によるものに変更されていますが、現行「特殊指定」は、学校採択向けの営業活動を前提とした規定にとどまっています。
さらに、1986年度には民間団体「日本を守る国民会議」が提唱して編纂された高校用教科書『新編日本史』(現『最新日本史』)が検定に合格しました。これは、現行「特殊指定」が前提としている、教科書会社等出版企業が教科書の発行・販売を最初に企図し、企業が編著者に編集・執筆を依頼して商品である教科書を作成するという形態とは異なる道筋で教科書が作成され、販売されるに至ったものが出現したことを意味しています。編著者たちのグループ・組織がまず最初に存在し、出版企業がその編集・出版・販売の実務に協力するという道筋で登場した教科書の場合は、編著者たちが出版企業以上に採択・販売に強く関与し、出版企業からの依頼の有無にかかわらず主導的役割を果たすことが想定されます。
しかし、そうした想定に合わせた「特殊指定」の見直しは、1980年代以後実施されないままです。
やがて2001年、そうした新たな想定通りの事態が現実のものとなりました。
2001年1月22日以後、私たち両名は貴委員会に対し、「新しい歴史教科書をつくる会」の諸活動、とりわけ全国の教育委員会関係者等に対する働きかけは、現行「特殊指定」の規定にさえ抵触している疑いが強いとして、5次に及ぶ申告をもって、審査を求めました。審査の結果は、2001年8月10日付けの通知によって、抵触するものではないと、私たちに示されました。
その一方で、これら申告の過程で、現行「特殊指定」は1959年以来、一度も抜本的見直しをされていない事実が判明しました。そうした明らかに時代遅れの状況を放置することは、不適切であると私たちは思料し、口頭によるものでしたが、改善を貴委員会に求め、その要望は承知したとの回答を得ていました。
しかし、それから4年後の今日、私たちが要望した改善は何ら実行されていません。
さらに、琉球大学教育学部社会科教室は4年後の検定を目途にいわゆる地域版教科書の編纂・出版の活動を開始した旨をすでに公表しています。今後、類似の取り組みが全国各地で具体化し、上記の例と同様に出版社主導でない教科書の間で採択・販売において競争関係が増すことも予想されます。
私たちは、現行「特殊指定」の内容解説にある「教科書の教育的商品という性格からみて、また教育に与える影響からみて不公正な取引方法」は「絶対禁止されなければならない」とする理念に、賛成しています。
貴委員会が社会全体から託された期待にこたえ、責務を迅速に果たされるよう、以上の通り文書をもって、申し入れいたします。
なお、本件申し入れに関し、貴委員会の見解等を示されるよう希望いたします。
以上
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