「つくる会」との攻防のために
和歌山と静岡で「つくる会」を抑えることにほぼ成功しました

  仕組まれた大田原の採択

  栃木県大田原市における「つくる会」教科書の採択は、国内や韓国、中国でかたずを飲んで見守っていた心ある多くの方々にとって、たいへんショックであったろうと思います。来年度から、1学年あたり740人前後の同市の中学生徒全員に対し、少なくとも4年間にわたり、「歴史」と「公民」2種類の教科書の「洗礼」が繰り返されるからです。
  しかし、ここで立ち止まって、少し考えておくことがあります。それは、今回の大田原の採択が、きわめて計画的に仕組まれたとみられることです。その理由の一つが、採択の翌14日、読売新聞の朝刊に、「『新しい歴史教科書』を4年前に引き続き採択します」という意見広告が、「つくる会」教科書を現在使用している私学8校のうち7校までの連名で掲載されたことです。大田原での採択の翌日にこんな意見広告を出すなど、事前の根回しなくしてはとうてい不可能だからです。しかも、読売新聞といえば、今回の大田原採択の第一報を載せた新聞です。

        「読売新聞7月14日朝刊」

 また、今回の採択は、
   @「つくる会」教科書に反対する1人の教育委員が外遊中に強引に行われた
   A採択に直接かかわった教育委員と採択協議会に、ブレや動揺がみられない
   B今回の採択は、各地の教育委員会で採択が行われる出発の時期にあたる
などの状況のもとで行われたことを加味する必要があります。
  4年前に同じ栃木の下都賀地区で、いったん「つくる会」教科書の採択が決まったあと、ひっくり返されたため、各地の教育委員会がつづけて採択する流れを壊されてしまったと「教訓」化してきた「つくる会」は、逆方向へと向かう流れを今回は作り出そうと、周到に準備し、都賀のように動揺する危険性がなく、採択区を編成し直して安定して採択が可能となっていた大田原を先頭とし、全国の「つくる会」勢力を奮起させるために、読売新聞を使って仕組んだものと推測します。
  とはいえ、今回の採択に対する事前の要請は、インターネットやメーリングリストによる呼びかけでしたが、1日あまりで反対の意見がメール、ファックスで779件、電話139件、合計918件にものぼりました。抗議と撤回を求める要望は3000件に達し(15日現在)、今も続いています。これらの大きな動きは、今後の運動に確実につながっていきます。

  攻防のシェアは何パーセントか?

  ところで、今回の大田原での採択がショックだったのは、4年前の521冊(0.039%)の数値を、あっという間に超えて、初の市町村採択を許してしまったことです。私たちは、あぶない教科書を1冊も子どもたちに渡したくないと考え、必死で運動を進めてきたからです。しかし、ここでも、少し考えてみるべきことがあります。
  表は、いま現在、高校で使われている日本史Bのシェア(占有率)です。この最後に、明成社版「最新日本史」(旧称・新編日本史)の採択率が0・9%であることが示されています。同教科書は、「つくる会」の背後組織である日本会議が1987年から進めてきた「つくる会」教科書の兄弟版で、冊数こそ少ないのですが、一つの教科でこれだけの採択率を示していることは参考になります。

<表> 平成17年度使用 日本史B  *文部科学省による

発行者 教科書名 冊数 占有率
山川  詳説日本史 336,414 57.5%
実教  高校日本史B 41,108 7.0%
東書  新選日本史B 39,228 6.7%
実教  日本史B 35,674 6.1%
山川  高校日本史 35,309 6.0%
清水  高等学校日本史B 24,617 4.2%
三省堂  日本史B 20,480 3.5%
桐原  新日本史B 18,407 3.1%
山川  新日本史 17,923 3.1%
東書  日本史B 10,820 1.8%
明成社  高等学校最新日本史 5,017 0.9%
584,997 100.0%

  高校では学校単位の採択が行われるため、教員の意見が強く反映し、「最新日本史」はこの程度の冊数しか使われない状態が続いているため、出版社の負担となり、当初の原書房から出版元を転々としてきました。「つくる会」が義務制に目を付けたのは、採択区が広く、教員の影響を低く抑えることが出来れば、もっと多くの冊数の使用が見込めるからと言われています。
  したがって、「つくる会」の教科書は、大ざっぱに見積もって、最低1%程度の採択を可能にする力をもともと持っていると考えるべきでしょう。その彼らを今回挫折に追い込むには、1%以下におさえ込めるかどうかが鍵であろうと思います。
  これからも、いくつかの地区で採択される(あるいは、すでにされている)可能性はありますが、局地的な動向に一喜一憂することなく、「つくる会」教科書の採択を1冊でも少なくする運動こそ、彼らの野望を打ち砕くことを確信し、やり抜きたいと思います。
  現に、採択の決定が早かった静岡県など、すでに「つくる会」をほぼおさえたことが確認できる県が出始めています。さらに和歌山でも、危険な地域だった所が大丈夫だったとの情報が先ほど入りました。
  このあとに「「つくる会」採択あぶないマップ」を掲載しています。それぞれの地元でこれからもがんばっていただきますよう、また緊急の際は、様々な方法で呼びかけますので、ご協力くださいますようお願いいたします。(7/16)