全国各地7地区から公取への告発が 高嶋・上杉氏も第7次申告

  高嶋・上杉両氏による第6次申告(5/30)につづいて、愛媛(6/10)岡山(6/21)埼玉(7/2)東海(愛知・岐阜・三重)、栃木(7/28)熊本(7/29)の7地区から、扶桑社による白表紙本の配布などについて公正取引委員会へ告発が行われました(括弧内は申告書の到着日)。
  こうしたなか、7月22日、高嶋・上杉両氏は、以下のような第7次申告を行い、「つくる会」と扶桑社、産経新聞社、教科書改善協議会などが一体となった共同事業者であることを立証、あらためて4年前からの申告をすべて再審理するよう論じました。
  今回は、全国各地からの申告が相次いだこともが大きく影響しているらしく、公取委の担当者はかなり真剣に対応している様子とのこと。上杉氏は、その後も追加の資料を送付するなど、間もなく出ると思われる公取委による決定に影響を与えるための作業を続けています。


2005年7月22日
公正取引委員会
  竹島一彦 殿
        
<申告者>              
琉球大学教育学部   高嶋 伸欣
関西大学文学部   上杉   聰

私的独占禁止法第45条第1項にもとづく申告(第7次)

T 違法行為者(被申告者)

  名   称  株式会社扶桑社
  所 在 地  東京都港区海岸1-15-1
  代 表 者  社長 中村 守
  資本金額  6800百万円
  事   業  雑誌、書籍、他開発商品等


U 再審査の要請

  申告者たちは、2001年に計5回にわたり、今回の被申告者である「扶桑社」とともに、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)および「産業経済新聞社」(以下「産経新聞社」)を違法行為者として貴公正取引委員会へ告発した。その告発の内容は、多くが直接に「つくる会」や「産経新聞社」によるものであった。
  これに対して、貴公正取引委員会は、同年8月10日付けで私たちの告発をしりぞけた。その理由説明を9月3日に受けたところ、公正取引委員会告示第五号が対象とするのはあくまで事業者であり、この場合は出版社・販売業者が該当し、「直接であると間接であるとを問わず」の文言はあるものの、出版・販売業者が人や金を出して直接に違法行為を第三者に依頼していることが立証できないかぎり、「つくる会」や「産経新聞社」による行為は違反に問えない、というものであった。
  これに対して私たちは、それは条文を不当に狭く解釈するものであり、もし「告示が古くなっている」のであれば、その条文を改正することを求めてきたことは、第6次の申告で述べたとおりである。この点については、なお公正取引委員会に今回も要望するところであるが、前回の扶桑社による白表紙本の配布行為のように、これまでの規定に従ってもなお、明確な違法行為が行われていたことが判明してきた。
  さらに前回の申告において、告示第五号の直接の対象が「扶桑社」であったとしても、「つくる会」「産経新聞社」などを共同の事業者と理解することができ、その点から、少なくとも扶桑社を取り締まりの対象とすべき事を主張した。
  今回は、「扶桑社」の内部告発と考えられる文書の存在によって、「つくる会」および「産経新聞社」のみならず、新たに「教科書改善協議会」(以下「改善協」)なる団体も、「扶桑社」の共同事業者であることが判明した。したがって、「人や金を出して直接に違法行為を第三者に依頼していることが立証できない」場合であっても、「扶桑社」の責任を問わねばならず、その観点に従って、私たちは第1次から5次にわたって指摘した事実について、公正取引委員会に対して、あらためて審査のやり直しを求めるものである(第6次については審査が終了していないが、そこでの私たちの主張を補強する重要な事実であることも強調しておきたい)。
  その文書とは、第一が別添の@からCにわたる文書であり、第二はDにある「教科書改善協議会」による内部文書であり、第三はE「扶桑社・つくる会・改善協」による会議への出席者からの聞き取りである。
  第一の@からCにわたる文書は、2000年7月26日の扶桑社・「つくる会」・改善協の会議に提出された資料で、産経新聞社とあわせ4者が一体となって事業を進めていること、とくに扶桑社から「つくる会」に対して半期3300万円(年間6600万円)の活動費と「つくる会」8人の人件費が不正に支出されていることを示している(これについて報道した「サンデー毎日」を参考資料として添付する)。
  私たちは本日、これらの文書を東京国税局に資料提供し、税法上の疑義の観点から捜査を依頼した。公正取引委員会におかれましても、国税局と連絡を取り合い、「扶桑社」と「つくる会」への強制捜査をお願いする次第である。
  また第二の文書(D)は、「教科書改善協議会」が、「つくる会」内部の組織宛通達文書を本年2月、そのまま改善協組織へと流し、「つくる会」と「連携」するよう指示するとともに、それを改善協自身の活動とすることを指令したもので、「つくる会」との一体関係を立証している。また、同文書は、「つくる会」と「改善協」が組織的に共同して教育委員会および議会関係者へ働きかけている事実も証明している。
  第三の文書(E)は、「扶桑社」「つくる会」「教科書改善協議会」の三者が一体となって開いた会議の様子を明らかにしている。

V 申告の趣旨

 1 前項Uの観点から、改めて第1次から第5次にわたる申告を再審査していただきたい。また、第6次の申告を補強する事実として参考にしていただきたい。
 2 被申告者の共同事業者たる「つくる会」「産業経済新聞社」「教科書改善協議会」は、他社教科書をひぼうする文書を配布し、または中傷する記事を報道し、被申告者の事業に協力した。
  これらの行為は、以下の法令に違反している。

 独禁法第二条第H項
 三 「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること」
 六 「競争事業者とその取り引き先との取り引き妨害」

 公正取引委員会告示第五号
 一 教科書の発行または販売を業とする者が、直接であると間接であるとを問わず、教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するものに対し、自己または特定の者  の発行する教科書の使用または選択を勧誘する手段として、金銭、物品、きょう応そ  の他これらに類似する利益を供与し、または供与を申し出ること。
 三 教科書の発行を業とする者が、直接であると間接であるとを問わず、他の教科書の発行を業とする者またはその発行する教科書を中傷し、ひぼうし、その他不正な手段  をもって、他の者の発行する教科書の使用または選択を妨害すること」

 教科書業の指定に関する運用基準(公正取引委員会)
 第一項 六 使用するものとは 学校、校長、教員および児童、生徒をいう。
      七 選択に関与するものとは 教科書の推せん、選定、採択など教科書の採択にいたるまでの一連の行為に関与する校長、教員、選定委員、教育委員ならびに教育委員会事務職員。
      九 直接または間接に勧誘するとは(例示)
       (二)編著者その他の著作関係者による場合
       (七)発行業者と特別の関係にあるもの(株主、同系または傍系会社の社員…)を通じて行う場合
      (十一)公職関係者(一般職ならびに特別職の公務員)を通じて行う場合
        十一 物品「一 禁ぜられるもの(例示)
            (ロ)書籍、雑誌(機関誌は除く)、辞典」
 第三項(禁ぜられるもの)
    (イ)他社教科書との比較対照の公布流布
    (ロ)中傷、ひぼう記事を買入れ頒布し報道すること
    (ニ)他社教科書の内容を批判または誤謬を報道すること
    (ヘ)編著者をして他社又は他社教科書を中傷、ひぼうさせること

 上の規定に違反したことにより、被申告者に対し、すみやかに排除措置をとるよう求める。


W 違反行為の内容

1 「つくる会」は、別紙Fのような文書を、今年、大量に全国の教育関係者に配布した。そこには、扶桑社と東京書籍、大阪書籍、日本文教出版、清水書院の各教科書記述を比較するとともに、他社をひぼう、中傷する記事を掲載している。これが、地方議会で「拉致問題をもっとも詳しく取り上げた教科書を採択して欲しい」などの決議へとつながり、現在教育への不当な支配をもたらしている。これは、告示第五号第三項への明確な違反である。

2 また「産業経済新聞社」は、本年6月28日、日本書籍新社の歴史教科書が写真を誤って掲載したことを記事とした(G)。これは、「教科書業の指定に関する運用基準」が禁じている「他社教科書の内容を批判または誤謬を報道すること」に該当し、公正取引委員会が発行する「教科書業における特殊指定の解説」が「教科書業界においては誤謬が報道されただけでも、報道された発行会社は選択(採択)が著しく不利となるので、真実の報道でも禁止されなければならない。もし他社教科書の内容の誤りを発見した際はその発行会社にひそかに通知、連絡してすみやかに誤りを訂正せしめるのは同業としての儀礼でもあろう」(65頁)としていることに明確に違反している。

3 「教科書改善協議会」は、今年6月までに神奈川県内の私立中学校に宛て、扶桑社教科書の採択を働きかけるパンフレットを送付した。このパンフレットはA4版、白黒、26ページで、「改善協」の編、題名は『全社比較「ここが違う!新しい中学校教科書」[歴史編]〜学習指導要領に一番準拠しているのはどの教科書か』というもので、教科書の比較表である。これは、「教科書業の指定に関する運用基準」が禁じている「他社教科書との比較対照の公開流布」に該当する。

 これらは、告示第五号第三項の違反に該当し、現行法上の主たる事業者である扶桑社の責任とすべきである。

 以上


E, Fは省略