扶桑社が白表紙本を配布したことに対する告発文例
2005年 月 日
公正取引委員会
竹島一彦殿
<申告者> .
住所 .
氏名 .
私的独占禁止法第45条第1項にもとづく申告
T 違法行為者(被申告者)
名 称 株式会社扶桑社
所 在 地 東京都港区海岸1-15-1
代 表 者 社長 中村 守
資本金額 6800百万円
事 業 雑誌、書籍、他開発商品等
U 申告の趣旨
被申告者は、自らが編集・執筆し、発行予定にある中学校「歴史」「公民」教科書の使用または選択(採択)を勧誘する手段として、自社の組織を通して直接、教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するもの多数に対し、白表紙本(検定申請図書)を供与した。この行為は、以下の法令に違反している。
独禁法第二条第H項
三 「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること」
六 「競争事業者とその取り引き先との取り引き妨害」
公正取引委員会告示第五号
一 教科書の発行または販売を業とする者が、直接であると間接であるとを問わず、教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するものに対し、自己または特定の者の発行する教科書の使用または選択を勧誘する手段として、金銭、物品、きょう応その他これらに類似する利益を供与し、または供与を申し出ること。
教科書業の指定に関する運用基準(公正取引委員会)
第一項 六 使用するものとは 学校、校長、教員および児童、生徒をいう。
七 選択に関与するものとは教科書の推せん、選定、採択など教科書の採択にいたるまでの一連の行為に関与する校長、教員、選定委員、教育委員ならびに教育委員会事務職員。
十一 物品「一 禁ぜられるもの(例示)
(ロ)書籍、雑誌(機関誌は除く)、辞典」
上の規定に違反したことにより、被申告者に対し、すみやかに排除措置をとるよう求める。
V 違反行為の内容
被申告者は、2004年3月に検定申請を行ってのち、同年7月下旬以降、同社が教科書の選択に関与するものに対し白表紙本を配布していることが、文部科学省に寄せられた情報により発覚した。文科省は、白表紙本の漏出は「教科用図書検定規則実施細則」に違反するとして扶桑社への事情聴取を10月27日におこなったところ、1都10県で歴史・公民の白表紙本計43冊を同社が貸与したことを認め、陳謝した。文科省は回収を指示するとともに管理の徹底を指導した。
その後、被申告者がなお白表紙本を配布しつづけているとの情報が文科省へ寄せられたため、本年1月25日、改めて扶桑社を聴取したところ、3県で6冊を貸与、1都9県で19冊を閲覧させていたことを認め、再度陳謝した。
さらに3月12日、なお扶桑社の白表紙本が配布されていることがマスコミ等で明らかにされたことを受けて文科省は3月22日、扶桑社を聴取したところ、同社が京都府と和歌山県の教育委員会関係者に提供したことを認め、陳謝した。
以上は、文科省が扶桑社から事情を聴取した範囲で把握した内容にすぎないが、合わせて計70冊、地域は1都1府17県におよぶ広範なもので、都府県名は以下のようであった。当県(都・府)も下記に含まれている。
東京都
京都府
山形県
茨城県
栃木県
埼玉県
千葉県
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
静岡県
三重県
和歌山県
島根県
福岡県
鹿児島県
これらは、氷山の一角と考えられ、配布主体の扶桑社における役職や地位についてまで、文科省は明らかにしていない。
なお、扶桑社は、配布の目的を、申請図書に対する意見聴取のため教員に配布した、と答えているが、これだけの大量の配布を、営業活動以外の目的によって説明することはできない。現に、私たちが把握した京都府と和歌山県の事例は、教科書選択に関わる教育委員会関係者であった。
そもそも、公正取引委員会告示第五号の一は、「教科書を使用するものまたは教科書の選択に関与するもの」への物品の供与を禁止しているが、同告示の運用方法を定めた「教科書業の指定に関する運用基準」は、それら対象者を「学校、校長、教員」「採択にいたるまでの一連の行為に関与する校長、教員」とし、教員を含めている。
また公正取引委員会編著「教科書業における特殊指定の解説」(以下「解説」)も、「現場教員は(教科書)選定委員でない者もすべて(教科書の選択に)関与するもののうちに含まれる」と対象者に教員を加えている。
また「教科書業の指定に関する運用基準」は、第一項十一、物品の項で、「禁ぜられるもの」に「書籍」を挙げている。白表紙本が書籍に該当することは自明であり、公正取引委員会編著「解説」も、教科書の「実物と同一のものであったり…実物ページ数と同一で表紙のみが異なるものであったりしてはならない」(11(2)イ)と明記し、白表紙本の供与を禁止している。
なお、扶桑社は、「貸与」「閲覧」という表現を使って責任を軽減すべく文科省に対して弁明しているが、白表紙本はむしろ内容としての情報の方に価値があり、貸与・閲覧による情報それ自体が、選択に関与しまたは利用する者はもちろん、他の教科書会社も自社本の編集に資する有益な参考資料として存在しうる(とくに自主訂正が可能な検定申請期間中や検定直後あればなおさらである)。まして、その場であるいは返却までの期間中に複写保存することは今日きわめて容易であり、その複写物自体がさらに情報供与の役割を果たすことになり、被供与者の利益となる。
以上