緊 急 声 明

2006年3月22日

高嶋伸欣(琉球大学)/上杉聰(関西大学)/白崎一裕(日本障害者協議会政策委員・黒羽から歴史と教育を考える会)/金子彰(埼玉教職員組合)/東本久子(「杉並の教育を考えるみんなの会」)/松岡勲(子どもたちに渡すな!危ない教科書・大阪の会)/喜瀬春美(ふぇみん大阪)/江菅洋一(大阪府教職員協会会長)/方清子(在日韓国民主女性会大阪)/福田秀志(子どもと教科書兵庫県ネット21事務局長)/吉水公一(同事務局次長)/西原一宇(えひめ教科書裁判を支える会)/奥村悦夫(今治宗教者平和の会)/高井弘之(「国民保護計画」について考える会)/山中哲夫(イラクから自衛隊を撤退させる会・愛媛)/弓山正路(子どもの人権と教科書の問題を考える越智今治の会)/奥村吉美(子どもの人権と教科書の問題を考える西条の会)/福留範昭(強制動員真相究明ネットワーク)

  このたび(2006年3月16日)、公正取引委員会(以下「公取」)は、「教科書業における特定の不公正取引方法」(1956年12月20日公取公示第5号、以下「教科書特殊指定」)の廃止について、広く国民等から意見を4月17日まで募集し、「それら意見を踏まえて、教科書特殊指定の廃止に係る手続きを行う」との方針を公表した。
  これに対し、上記のうち高嶋・上杉両名は2001年1月22日の第1次申告以後、扶桑社版中学校社会科教科書をめぐる同社と同書執筆者及びその支援組織である「新しい歴史教科書をつくる会」等が一体となって同書の採択に向け不適正な活動を実施し、上記特殊指定に定めた不公正な行為をくり返しているとして、公取への申告を2005年7月の第7次まで行ってきた。その際、2001年の申告をめぐる協議の場において公取の担当者は、教科書特殊指定が1956年の告示以来一度も見直しをされていない事実と、見直しの必要性があるとの両名の指摘を認め、上司に伝えるとしていた。
  にもかかわらず、2005年1月時点で上記両名が照会したところ、それまで公取は見直しを何もしていなかったことが判明した。そこで両名は2005年3月22日付け「申し入れ書」をもって、至急に見直しを進めるよう要望し、さらに同年5月30日の第6次申告書においては「今後も同様の状態が続くようであれば、貴公正委員会の不作為の責任を問い、貴委員会自身を告発せざるを得ない」との態度表明をした。
  また、2005年には、埼玉、東京、東海、兵庫、岡山、愛媛、熊本からも、上記告示第5号をもとにした告発がなされた。これらは、「調査の結果、独占禁止法に違反する行為は認められず」と決定されたが、その理由については納得できないとして公取側に説明を求め、目下担当者との交渉の最中にある。
  こうした経過にかかわってきた当事者である我々は、今回の公取による意見募集について、以下の通りの重大な疑義を指摘せざるをえない。
  第1に、我々と未決着の件で、目下話し合いが進行中であるにもかかわらず、その議論の基盤そのものを喪失させかねない今回の行為には緊急性を裏づける理由を欠き、公取側の話し合いの姿勢が欺瞞でしかなかったと評価される点で、著しく社会的正義、公正さにもとるものである。
  第2に、本件教科書特殊指定を、この時期に廃止すべき特段の積極的理由はなく、仮に規制緩和の社会的動向を考慮に入れても、目下我々両名が厳しく追及してきた公取の不作為に対する責任問題をうやむやにする効果をもつ今回の措置を急ぐ理由とはならない。自己への責任追及の問題を回避することになると分かっている措置を強行することは、とりわけ公正であるべき公取がきわめて不公正・不明瞭な対応するもので、公取にとって禍根を残すことになる。主権者の立場からも看過できない。
  第3に、不公正な取引を抑止する上で、一定の効果を発揮していることが広く認識されてきた同指定を、今回すべて廃止すべき積極的な理由を公取は示していない。一般指定でこと足りるとしているが、公取自身が同指定の解説書で「一般指定の場合、どうしても抽象的にならざるをえない」とし、「事実、一般指定には『不当に』とか『正当な理由がないのに』という抽象的な言葉が随所に用いられている」ゆえに特殊指定が必要である、とした点での説明責任を果していない。
  第4に、上記両名をはじめ全国各地の主権者たちが、前記扶桑社と執筆者たちの組織が一体となって採択に向け不適正な行為をくり返してきた件で申告をしたことから表面化した本件特殊指定見直し(強化)の必要性をめぐる議論こそ取り上げるべきであったのに、このことについての対応を欠いたままであり、全体として公取業務の改善の方向に逆行している。
  第5に、今回の意見公募は、突然である上に、学校教育関係者にとって年間で最も多忙な時期である。また教科書出版関係者に限っても3月末を期限とする検定結果の公表とその内容の検討や見本本の作成に集中する時期である。もし、こうしたことを承知の上で期限を4月17日としたのであれば、もともと上記特殊指定の全廃という方針を確定する意図のみに合わせて、意見公募を単なるセレモニーとして設定したものと疑われる。
  以上の諸点から、我々は今回の件に関し、次のように要望する。

<1> 今回の意見公募を、当面の諸懸案の処理が終了するまで凍結すること。
<2> 諸懸案の内の上記両名を含む各地から指摘されている公取の不作為などに関する責任問題への対応を最優先で実行すること。
<3> 公取は、意見公募の趣旨を、本件特殊指定を、その強化も含め今後どうするべきかという広い視点へと転換し、そこで得た意見を上記<2>の処理に反映させるようすること。
<4> 公取は、今回の件の説明不足を補うため、説明努力を極力すること。
<5> 万一、今回の意見公募を中止できない場合は、期限を大幅に延長した上で、その内容は上記<3>の議論にのみ反映させるものとすること。

  最後に、本件に関心を持つ多くの一般の人々が上記<1>〜<5>の要望を公取に向けて表明されることを願ってやまない。

  以上、声明する。