2001年4月3日

中学校歴史・公民教科書検定結果公表に対する日教組書記長談話


日本教職員組合書記長  戸田 恒美

 文部科学省は、本日、2002年度から使用される教科書の検定結果を公表した。日教組は、基本的には現行の教科書検定制度を是認するものではない。ただ、教科書検定は、憲法・教育基本法に則り、また、「近隣諸国条項」、95年の村山総理談話(閣議決定)、98年日韓首脳共同宣言などの国際公約に遵守して行われるべきであることを文部科学省に要望してきた。

今回、検定合格になった中学校社会科・歴史の教科書の中には、「従軍慰安婦」「南京大虐殺」などの記述を「反日的・自虐的」とし、教科書から削除するキャンペーンを張ってきた一部団体が主導して編集したものが含まれている。検定申請本段階では、日本の植民地支配と侵略を肯定して日本の戦争責任を根本から否定した記述に関わり、中国、韓国などアジア諸国との深刻な外交問題に発展している。また、憲法の理念や核廃絶を否定する記述に対しても各方面からも批判の声があがっている。

 それに対し、検定では、歴史137箇所、公民99箇所にわたる修正意見があったが、主導した団体によると、「考え方そのものは残っている」(同団体会長)として受け入れたと伝えられている。

 また、歴史教科書では、日本の植民地支配と戦争が、アジアの人びとに被害と苦痛を与えた事実認識は不十分なままであり、「教育勅語」も全文掲載されているという。これらが事実とするならば、史実と真実を大きく歪める偏狭なナショナリズムを煽る危険性があり、森首相の「神の国」発言と同様の「皇国史観」につながる考え方が教科書に登場したものと言わざるを得ない。また、女性差別につながる表現に対しても検定意見がつけられておらず看過できない問題である。

 公民教科書では、自衛隊を「国軍」として認定させることや憲法9条改正をめざしている点、国家を「公」とし、それへの献身を唱える「滅私奉公」の思想が登場しているという。

他社の教科書でも、「従軍慰安婦」「南京大虐殺」など侵略戦争の史実が教科書会社の自主規制によって削除されるという事態も起こっており、史実と真理・真実を伝える教育の実現にとって大きな弊害となることを危惧する。
  日教組は、「開かれた学校」を実現するための学校の説明責任がある以上、主たる教材である教科書の調査研究にすべての教職員が積極的に関わる必要があると考える。そして、その調査研究を通して、21世紀がアジアをはじめ世界の平和と安定、共生の社会を実現する主体者を育むことを目的とした教育の実現にいっそう取り組んでいく。