憲法・教育基本法に反した教科書検定合格に抗議する緊急アピール



   文部科学省は、「新しい教科書をつくる会」編集、扶桑社発行の中学校の「歴史」「公民」教科書の検定合格を発表した。検定合格本は公表されておらず、具体的な内容批判はできないが、関係者から漏れ伝わるところによると今回検定合格になった新教科書は、2002年度から全国の中学校で使用される。8月の教科書採択決定を前に5〜7月期は市町村教育委員会での検討という大きな山場を迎えようとしている。

 1996年に発足した「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)は「従軍慰安婦」「南京大虐殺」などの記述を「反日的・自虐的」とし、教科書から削除するキャンペーンを張ってきた団体である。検定申請本段階では、日本の植民地支配と侵略を肯定して日本の戦争責任を根本から否定した記述があり、中国、韓国などアジア諸国との深刻な外交問題に発展した。また、憲法の理念や核廃絶を否定する記述があり、平和運動団体・被爆者団体等からも検定不合格を求める声もあがってきた。

 「教科書問題を考える会」も3月17日に緊急集会を開催し、検定に際し、憲法・教育基本法に則り、「近隣諸国条項」、95年の村山総理談話(閣議決定)、98年日韓首脳共同宣言などの遵守をすることを文部科学省に求めるアピールを発表してきた。

 教科書検定では、歴史137箇所、公民99箇所にわたる修正意見があり、「つくる会」側は、「考え方そのものは残っている」(西尾会長)として受け入れた。

 本日の報道によると、歴史教科書では、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」と記述しているという。「大東亜戦争」とは、「自存自衛」と、アジアを欧米による支配から解放して「大東亜共栄圏」を建設することを目的とした「正義の戦争」であるということから名づけられたものである。日本の植民地支配と戦争が、アジアの人びとに被害と苦痛を与えた事実認識も、誠実な反省と謝罪の姿勢もないものである。また、「教育勅語」も全文掲載されていることから、天皇主権の「神の国」復活を意図するものと言わざるを得ない。

 公民教科書では、自衛隊を「国軍」として認定させることをめざし、憲法9条改正をめざしている点、国家を「公」とし、それへの献身を唱える「滅私奉公」の思想が登場している。

 私たちは、このような重大問題を抱えた書籍を、今回「検定済教科書」と公認したことに強い憤りを覚えるとともに、今後生じる問題の責任の一切は、これを積極的に検定通過させた文部科学省と森内閣そのものにあることを、ここに改めて言明する。

 私たちは、現行の検定制度を支持するものではないが、少なくとも従来の検定の事例と対比するとき、著しく不公正に運用したことは明らかであり、近隣諸国条項すら十分に適用していなかった森内閣の姿勢に、強く抗議する。

 このような教科書が広く採択されることは、憲法や教育基本法の改悪へとつながるばかりか、アジアとの平和や友好協力関係を大きく損なうものにほかならない。とくに、21世紀に若い世代が国際社会の一員として生きていくに当たって障害となるものである。

 今後、「つくる会」などの史実と歴史認識を大きく歪める偏狭なナショナリズムの危険性を広く訴えるとともに、これを容認する政府に対する抗議、全国各地で教科書採択を許さない広範な運動を提起していきたい。

2001年4月4日

教科書問題を考える会実行委員会
(連絡先/フォーラム平和・人権・環境)