歴史を歪曲する教科書の採択に反対!歴史認識の共有を求める兵庫コリアン青年学生協議会アピール去る4月3日、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)が主導・編集した来年度版中学歴史教科書(扶桑社)が文部科学省の検定を通過しました。この教科書は日本の過去の歴史を美化・賛美し、近現代史の加害性を歪曲した記述をふんだんに盛り込むなど、様々な問題点を含んでいます。この教科書の根底には皇国史観、排外主義の思想が一貫して流れており、来年度から使用する教科書を採択する重要な局面を迎えて、このような歴史教科書が採択され、教育現場に持ち込まれることに私たちは断固反対します。 「つくる会」の歴史教科書は、137ヶ所の修正により検定を通過したとはいえ、その基調は当初のものと変化はありません。日本のアジア諸国への侵略と植民地支配に対する隠蔽・美化・正当化と加害責任の否定・歪曲で一貫しています。具体的にはアジア・太平洋戦争を「大東亜戦争」と記述し、「アジア解放戦争」と位置付け、「日本の戦争の目的は、自存自衛とアジアを欧米の支配から解放」することであり、「大東亜戦争初期の日本軍の勝利で、欧米の支配下にあったアジア諸民族には、独立への気運が高まった。」と記述するなど侵略戦争を、賛美・肯定しています。また韓日併合に関しても朝鮮半島を「大陸から片腕」が突き出ていると表記し、「日本の安全と満州の権益防衛上必要と考えた」「合法的に行われた」と記述するなど防衛の名目で朝鮮侵略・支配を正当化しています。さらに「従軍慰安婦」問題に関しては全く記述がなく、総じて、この教科書では、アジア諸国への日本の戦争犯罪を認めず、一方的な「国粋主義」を露骨に押し出すと共に、加害責任の否定のみならず、歴史事実そのものを消し去ろうとする立場から徹底的に植民地支配の実態が矮小化されているといえるでしょう。 また、私たちは他の歴史教科書出版会社においても文部科学省、政治家などの事実上の圧力により、「自主規制」の名のもと、「従軍慰安婦」の記述削除・縮小、「侵略」記述の削除が見られるなど、歴史教科書全体において軒並み侵略と加害史実の記述が後退していることに関しても憂慮の意を示さずにはいられません。 いうまでもなく私たち在日コリアンは、そのほとんどが日本の不当且つ過酷な植民地支配によって生み出され、日本での生活を余儀なくされた歴史的経緯をもっています。このような「つくる会」教科書の主張は、在日コリアンが存在する歴史性自体を歪曲・隠蔽するものにほかなりません。 また、「つくる会」歴史教科書をはじめ、今回の歴史教科書問題をめぐる動きは、1982年の教科書問題に端を発して設置された「近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協力の見地から配慮がなされていること」という「近隣諸国条項」を完全に無視するものです。南北朝鮮ならびにアジア諸国においては、日本の過酷な侵略行為・植民地支配の歴史を記憶しているのと同時に、今も尚、多大なる苦痛と傷跡が残っており、この間の「つくる会」歴史教科書をはじめ、歴史教科書の歪曲の動きに対して大きな批判と抗議の声が高まっています。 私たちは、歴史の被害者としてのみこの問題を取り上げるのではありません。21世紀という新しい時代を迎えて、日本とアジア諸国とのパートナーシップの構築や信頼関係の発展にとって、歴史的事実を直視した歴史認識の共有とそれに基づいた歴史教育の実践は極めて重要なことであり、新しい未来、希望と平和に満ちた21世紀を切り開く礎石になると考えます。「つくる会」の歴史教科書が採択されることになれば、日本とアジア諸国の溝は更に深まり、日本社会においても在日コリアンに対する偏見・蔑視が教育現場に公然と持ち込まれる深刻な事態になると考えます。 私たちは、このような状況を生み出さない為にも、「つくる会」の歴史教科書の採択及び歴史教育の後退に反対すると共に、アジア諸国の人々と共有し得る歴史認識の形成、それをもとにした歴史教育を強く求めます。
2001年6月26日 |