7・1大阪集会アピール「新しい歴史教科書をつくる会」主導で執筆・編集された扶桑社の中学校社会科歴 史・公民教科書が文部科学省の検定に合格し、採択に供されています。この教科書 は、検定の過程で一部修正されたとはいえ、「つくる会」の声明が「ほぼ趣意書に掲 げた通りの教科書が誕生した」と述べているように、本質はなんら変わっていませ ん。また、検定合格後数多くの箇所の自主訂正をおこなったにもかかわらず、6月20 日の歴史関係21団体の指摘にあるように、多くの事実の誤りが残っています。わたし たちは、彼らが国内外のきびしい批判を受けながらも、これまでのルールを無視して 採択運動を続けていることに大きな怒りをもって、この集会を開催しました。 学校で学ぶ歴史や社会の内容は、今日の学問的成果にもとづくことを前提として、 未来に向けてどのような世界をつくっていくかということを、子どもたちとともに考 えるものでなければなりません。現代的課題でいえば、備狭なナショナリズムを排 し、国際社会では平和や人権を考えることのできる内容が必要です。その点から、朝 鮮・台湾に対する植民地支配の反省や「南京大虐殺」、「日本軍慰安婦」を記憶にと どめる努力や「平和憲法」の理念を追求することが求められているのです。 そのような姿勢に真っ向から対立するのが、扶桑社の歴史と公民の教科書です。 公民教科書は、大日本帝国憲法を賛美し、「押しつけ憲法論」の立場で、日本国憲 法の平和主義を敵視し、国防の義務、集団的自衛権を憲法に明記すべきとの改憲論を 展開しています。また、「男女共同参画社会」の実現という世界や日本の一致した方 向に逆らい、性的分業を強調し、「家」制度や専業主婦をたたえるなど、女性差別を 温存しようとしています。 歴史教科書は、「日本人としての誇りをもたせる」として、アジア諸民族を蔑視 し、日本の植民地支配を正当化し、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」とよび、それ が侵略戦争であったことを認めず、アジア解放のための戦争であったと美化し、肯定 しています。また、昭和天皇を含む戦争指導者を免罪し、その犠牲者である特攻隊や 沖縄の学徒隊を英雄として賛美する歴史観は、日本国憲法・教育基本法に反するもの です。現在の歴史学の研究成果を無視し、神話をあたかも史実であるかのように記述 し、大日本帝国憲法や教育勅語を礼賛し、つねに天皇が日本の最高権威者であったと しています。 このような教科書を検定で合格させたことは、1982年の「侵略、進出」書き換 え問題の際の宮沢官房長官談話や検定基準の「近隣諸国条項」に反します。また、1 995年アジア諸国に謝罪した「村山首相談話」、98年の「日韓共同宣言」で、小渕 首相と金大中大統領が「両国の過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に 基づいた未来志向的な関係を発展させるため、両国国民、特に若い世代が歴史への認 識を深めることが重要」とした日本の国際公約に反するものです。アジア各国の政府 と民衆が、政府・文部科学省の責任を追及し、再修正などの厳正な措置を要求するこ とは当然のことでもあります。21世紀に、アジアの国々との平和的で信頼と友情に 結ばれた共存を実現し、日本が「名誉ある地位」を占めるには、それを担う子どもや 青年たちが、アジアの子どもたちと戦争の歴史について知識や認識を共有することが 極めて重要です。それだけに、侵略戦争と植民地支配を美化するこれらの教科書を学 校現場に持ち込ませるわけにはいきません。 「産経新聞」など扶桑社の教科書の採択をせまる勢力は、教科書採択制度の見直し と称して、現場教職員を採択の場から排除して、教育委員の責任でこの教科書を採択 させようと運動しています。これは国際的常識や教育の条理に反するものです。この ことから考えても各教育委員会の責任は重大です。 わたしたちは、本日の集会で、この教科書が中学生に与えるであろう害毒について 確認しました。大阪はもちろん、近畿全域、日本全域で扶桑社の歴史・公民教科書を 採択しないように改めて訴えます。
2001年7月1日
子どもたちに漬すな!あぶない教科書
7・1大阪集会 参加者一同 |