2001年8月 日
東京都教育委員会
教育長 横 山 洋 吉 殿
全国障害者解放運動連絡会議(全障連)
代表幹事 平 井 誠 一

東京都立養護学校における扶桑社発行教科書採用に対する要請書

 貴職におかれましては、日々、東京都における教育行政、とりわけ障害をもつ児童・生徒に対する教育に努められていることに敬意を表します。
 私たちは、1976年の結成以来、25年間、日本における障害者の人権確立と社会参加を求めて差別の撤廃を求める活動をつづけてきた障害当事者による団体です。
 さて、7月26日に非公開で開催された貴教育委員会において、病弱または知的障害の子どもたちが通う都立養護学校の歴史と公民の授業で、扶桑社発行の教科書が採用される見通しになったとの報道がなされています。
 扶桑社発行の教科書が内容的にも問題を抱えたまま文部科学省の検定合格となったこと、とくに過去の侵略戦争に対する反省をないがしろにした記述がアジア諸国から批判されていることは周知の事実です。また、自己責任を強調し、差別・選別主義を基調としたその内容に対しても、世界的な価値観となっている人権擁護の視点や、障害者が地域社会で当たり前に生きていくというノーマライゼーションの理念にも反するものだと私たちは考えます。
 こうした問題の多い教科書を貴教育委員会が採用に踏み切ることに私たちは反対です。それも、様々な教育的ニーズを要し、学校による教育目標や特色にもとづいた教育が求められている障害をもつ生徒が使うことになる教科書として採用されようとしていることには怒りさえ覚えずにはいられません。
 障害をもつ生徒たちには、それぞれが将来、望んだ地域社会で自らの意志にもとづいて生活を営んでいくための学校における教育環境、さらには地域における支援体制づくりが必要であり、そうした共に学び、共に生きる社会づくりの視点からいっても、一方的な価値観を強いる今回の扶桑社発行の教科書はふさわしいものとは言えません。また、今回の都教委の強制的ともいえる教科書採用への動きは、障害をもつ生徒のニーズと支援の自主性が求められる学校現場を無視したものであると考えます。
 私たちは、以上の認識に立ち、貴職が扶桑社発行の教科書を養護学校においても採用しないように強く要請します。

以上