緊急アピール 歴史を歪曲し、人権教育にそぐわない教科書の採択に反対します

 みなさん、東京都教育委員会は、都立の盲、ろう、養護学校(肢体不自由、知的障害、病弱)で来春から使用する教科書に、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)の編集した扶桑社の中学校歴史教科書と中学校公民教科書(以下「つくる会」教科書)を採択しようとしています。
 いま全国各地で、来春から使用する教科書の採択が行われています。7月31日現在、「つくる会」教科書の採択を決めたところは一つもありません。にもかかわらず東京都教育委員会が、「つくる会」教科書を採択しようとすることは、「つくる会」賛同人にも名を連ねる石原都知事の思惑を通そうとするもののように思われます。
 石原知事は、就任早々に、重症心身障害者に対し「この人たちに人格はあるのかね」という発言を行いました。また、障害者手当や医療費などの福祉予算を削減し、障害児教育の条件整備を行わないなど、障害児教育の条件整備を求める私たちのねがいに背を向ける都政をすすめています。

 みなさん、戦争は、多くの障害者をつくりだします。また、戦前、障害者は「非国民」、「ごくつぶし」といわれ、人権侵害が平然と行われていました。「つくる会」教科書は検定には合格しましたが、歴史的事実を歪曲するとともに大日本帝国憲法や教育勅語を礼賛しています。その時代が正しかったといわんばかりの教科書で、人権の大切さを伝えることができないのは明らかです。戦前の反省の上に立ってつくられたのが、日本国憲法です。「つくる会」教科書は、憲法の基本的理念を十分にふまえない、大変問題のある内容になっています。
 障害のある子どもたちの教育、病気療養中の子どもたちの教育は、戦後の日本国憲法のもとで制度化され保障されるようになったのです。そして、福祉や医療など、社会保障制度も戦後の民主主義の発展とともに、制度として確立してきました。私たちは、さらに21世紀をすべての人々の人権がゆたかに保障される時代にしたいとねがっています。
 そのためには、子どもたちが学ぶ教科書は、憲法・教育基本法の理念にもとづき平和と人権の大切さを伝え、どの子どもたちもこの国のかけがえのない主権者として育てるものでなければならないと思います。「つくる会」教科書は、子どもたちにふさわしくありません。まして都立の盲、ろう、養護学校に、なぜ全国ではじめて採択する必要があるのか。私たちは、激しい憤りを覚えるものです。

 みなさん、報道によれば、東京都教育委員会は8月7日に臨時教育委員会を開催し、都立盲、ろう、養護学校で使用する教科書採択の「最終決定」を「非公開」で行おうとしており極めて問題です。教科書の採択にあたっては、憲法・教育基本法の理念を尊重し、教職員・父母・都民の意見を最大限反映させることが重要です。そのためには、まず教科書の採択にかかわる教育委員会の審議を公開し、傍聴を認めるべきです。
 私たちは、都立盲、ろう、養護学校に、歴史を歪曲し、日本国憲法の理念を否定する「つくる会」教科書を採択することに反対です。
 いまから27年前、東京都教育委員会は、国に先駆けて、障害のある子どもたちの希望者全員就学を実施しました。これは、まさに憲法第26条の「教育の機会均等」の理念にもとづくものでした。そして、都立の盲、ろう、養護学校では、子どもたち(青年たち)が、いま毎日瞳を輝かせて学校生活を送っています。東京都教育委員会は、そのときの理念に立ち返って、教科書採択の再検討を行うよう強く求めます。

2001年8月1日
緊急アピール呼びかけ人 障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会 会長 若宮 康宏

賛同人(8月3日午前現在)(順不同・敬称略)
 東京視力障害者の生活と権利を守る会 会長 鈴木彰
 東京肢体障害者団体連絡協議会 会長 石川勇
 三多摩肢体障害者協議会 事務局長 河邑晶子
 障害児・者北区連絡会 会長 尾堀元英
 目黒区障害児・者の生活を向上させる会 会長 宇野万寿男
 東京都ろう重複児・者をもつ親の会 会長 小林良廣
 障害をもつ子どものグループ連絡会 会長 岩塚道枝
 共同作業所全国連絡会東京支部 会長 深沢智子
 障害児放課後グループ連絡会・東京 会長 村岡真治
 東京ドロップインセンター 理事長 沢田儀雄
 福祉倶楽部 主宰 福井典子
 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 吉本哲夫
 全国病弱教育研究会 会長 鈴木茂
 全国障害者問題研究会東京支部 支部長 大竹信男
 自由法曹団東京支部 支部長 村井繁明
 東葛看護専門学校 校長 三上満
 東京都障害児学校退職教職員の会 会長 永野幸雄
 東京都教職員組合 執行委員長 中山伸
 東京都教職員組合 障害児学級部 部長 有働浩子
 東京都障害児学校教職員組合 執行委員長 藤谷浩

 その他、東京都立障害児学校教職員、退職教職員、保護者、卒業生保護者など多数賛同しています