扶桑社版歴史教科書の表記について
―読み仮名(ルビ)の問題点―
「つくる会」教科書が、そもそも教科書として適切なのかという視点から、扶桑社教科書のルビの表記がどう扱われているか検討しました。p.6-17という限られた範囲だけで、こんなに不適切な表記がある教科書が「適切」ということにはなりえないはずです。こうした点も見逃すことのないよう、要請などにご活用ください。教科書の選定基準に「表記が適切か」という項目がある地区では、とくに有効だと思います。
前提として、以下の点を頭に入れた上でお読みください。
@中学校で習う漢字には,小学校と違って配当学年というものがない。したがって,どの学年でどの漢字を習うかは,国語の教科書によってばらばらである。
Aそこで,国語以外の教科書では,中学校で習う漢字については,少なくとも初出箇所にルビをつけるという配慮をするのがふつうである。
Bにもかかわらず,「新しい歴史教科書」では,その点の配慮がまったくされていない。例えば,「誰」のように常用漢字外(義務教育では習わない漢字)を使用してルビをつけていなかったり,「黒板」のように小学校で既に学習している簡単な漢字にルビをつけたりしている。
Cしたがって、義務教育の教科書の表記としては,著しく配慮に欠ける。
〔調査対象〕
『市販本 新しい歴史教科書』(扶桑社 2001年)
「序章 歴史への招待」6〜17ページ(ただし,13ページの「時計の起源調べ」の新聞は除く)
〔観点1〕 中学校で学習する漢字(【 】内)なのにルビが付いていないもの。
- 6ページ 7行 「7,8歳」…【歳】→「さい」のルビがない。
- 6ページ 18行 「巨大」…【巨】→「きょだい」のルビがない。
- 7ページ 1行 「妥当」…【妥】→「だとう」のルビがない。
- 7ページ 16行 「扱われて」…【扱】→「あつか(われて)」のルビがない。
- 8ページ 4行 「伸びて」…【伸】→「の(びて)」のルビがない。
- 8ページ 11行 「驚く」…【驚】→「おどろ(く)」のルビがない。
- 8ページ 15行 「含んで」…【含】→「ふく(んで)」のルビがない。
- 8ページ 17行 「違い」…【違】→「ちが(い)」のルビがない。
- 9ページ 7行 「比較」…【較】→「ひかく」のルビがない。
- 9ページ 14行 「足跡」…【跡】→「そくせき」のルビがない。「あしあと」と 読み誤る可能性がある。
- 9ページ 16行 「見渡す」…【渡】→「みわた(す)」のルビがない。
- 10ページ 17行 「普通」…【普】→「ふつう」のルビがない。
- 11ページ 12行 「選択」…【択】→「せんたく」のルビがない。
- 12ページ 19行 「鮮明」…【鮮】→「せんめい」のルビがない。
- 14ページ 6行 「範囲」…【範】→「はんい」のルビがない。
- 14ページ 6行 「知恵」…【恵】→「ちえ」のルビがない。
- 14ページ 9行 「押し」…【押】→「お(し)」のルビがない。
- 15ページ 6行 「交換」…【換】→「こうかん」のルビがない。
- 15ページ 10行 「詳しく」…【詳】→「くわ(しく)」のルビがない。
- 16ページ 15行 「払った」…【払】→「はら(った)」のルビがない。
- 17ページ 20行 「お疲れさま」…【疲】→「(お)つか(れさま)」のルビがない。
〔観点2〕 小学校で学習した漢字にもかかわらずルビ(【 】内)が付いているもの。ただし,固有名詞や親切ルビ(小学校で学習した漢字だが,読み間違えないように親切に付けるルビ)と思われるものは除き,読み間違える可能性が低いものに限る。
- 6ページ 12行 「不快」…【ふかい】のルビは不要。
- 6ページ 12行 「覚え」…【おぼ(え)】のルビは不要。
- 6ページ 16行 「快活」…【かいかつ】のルビは不要。
- 6ページ 19行 「善悪」…【ぜんあく】のルビは不要。
- 6ページ 19行 「尺度」…【しゃくど】のルビは不要。
- 6ページ 21行 「裁く」…【さば(く)】のルビは不要。
- 6ページ 22行 「告発」…【こくはつ】のルビは不要。
- 6ページ 25行 「厳密」…【げんみつ】のルビは不要。
- 7ページ 23行 「裁判」…【さいばん】のルビは不要。
- 8ページ 4行 「無限大」…【むげんだい】のルビは不要。
- 8ページ 5行 「紀元」…【きげん】のルビは不要。
- 8ページ 7行 「出土」…【しゅつど】のルビは不要。
- 10ページ 見出し「事物」…【じぶつ】のルビは不要。
- 10ページ 見出し「起源調べ」…【きげんしら(べ)】のルビは不要。
- 10ページ 25行 「手元」…【てもと】のルビは不要。
- 11ページ 22行 「黒板」…【こくばん】のルビは不要。
- 12ページ 7行 「反映」…【はんえい】のルビは不要。
- 12ページ 14行 「境目」…【さかいめ】のルビは不要。
- 12ページ 14行 「事象」…【じしょう】のルビは不要。
- 14ページ 見出し「郷土史」…【きょうどし】のルビは不要。
- 14ページ 11行 「先人」…【せんじん】のルビは不要。
- 14ページ 18行 「周り」…【まわ(り)】のルビは不要。
- 16ページ 1行 「展示物」…【てんじぶつ】のルビは不要。
- 16ページ 6行 「旅人」…【たびびと】のルビは不要。
- 16ページ 14行 「飯」…【めし】のルビは不要。
- 16ページ 14行 「食って」…【く(って)】のルビは不要。
- 17ページ 10行 「大工」…【だいく】のルビは不要。
- 17ページ 10行 「手間」…【てま】のルビは不要。
- 17ページ 12行 「俳句」…【はいく】のルビは不要。
- 17ページ 20行 「無事」…【ぶじ】のルビは不要。
- 17ページ 26行 「風習」…【ふうしゅう】のルビは不要。
〔観点3〕 小中学校で学習しない漢字及び音訓(【 】内)なのにルビが付いていないもの。
- 6ページ 26行 「誰」…【誰】は常用漢字外→ルビ「だれ」を付けるが,「だれ」と平仮名で表記すべき。
- 11ページ 26行 「個所」…「かしょ」と読ませたいのだろうが,常用漢字表の音訓には【個=か】の読みはない。「箇所(かしょ)か所」などとすべき。
〔観点4〕 その他,単純な誤りなど。
▽ルビの位置の誤り
- 9ページ 1行2行 「欧米」…「おうべい」のルビ→2行目についているが,1行目に付けるべき。
- 14ページ 12行18行 「その周り」…「まわ」のルビ(本来不要だが)が,後
- の18行目のほうに付いている。
▽同じルビがすぐ近くにある。
- 10ページ 見出し1行2行 「事物の起源調べ」という語句が3か所に出ているが,「じぶつきげんしら」のルビが,見出しと2行目にある。他の箇所とは別に考え,「課題学習」においては,大見出しと本文(2行め)にはルビを付けるが,小見出し(1行め)には付けないという基準を立てているようだ。しかし,そもそもこの語句はすべて小学校で習っている漢字を使っており,ルビを付ける必要はないにもかかわらず,すぐ近くに同じルビを付けている。
▽参考図書にルビがない
- 11ページと12ページに参考図書があがっているが,書名著者名などいっさいルビがついていない。
〔結論〕 漢字の扱いについては,中学校教科書としての配慮に著しく欠ける。
- わずか10ページ余りに,これだけ不適切な部分がある。教科書全体としてはかなりの数になると思われる。
- ルビの基準が確立されておらず,行き当たりばったりにルビを付けていると思われる。一般向けの図書としてはこれでもよいが,義務教育の教科書としては,あまりに配慮に欠けているといわざるを得ない。