【ハワイからの報告】
カイル・カジヒロさん(アメリカンフレンズ奉仕団ハワイプログラム委員長)


「在ハワイ米軍基地の現状」

アジア太平洋の兄弟・姉妹の皆さんにハワイから熱い挨拶を送ります。アジア太平洋地域で真の恒久平和のための国際連帯をつくるためのこの大切な集まりに参加できることを非常に光栄に思います。私たちは、ハワイの経験から、軍隊がもたらす秩序は、平和も安全ももたらすことはないということを知っています。それは、占領や抑圧下に置かれた人びとの反感と怒りを呼び覚まし、ついには抗議やさまざまな抵抗を爆発させるだけなのです。

人種偏見主義者や植民地主義者は、ハワイは熱帯の楽園であるとさまざまに空想します。皆さんも彼らのそうした空想に触れたことがあるでしょう。しかし、裏に潜んだ真実はそれほど牧歌的なものではないのです。ハワイは侵略され、占領された国であり、いまでも自由のために闘っているのです。

1800年代、ハワイ王国はにぎやかで、コスモポリタンで、独立した国であり、世界の多くの国と条約を結んでいました。その中にはアメリカ合衆国も日本も入っています。しかし米国の軍事当局者は、ハワイを、アジアへの踏み石、太平洋貿易でアメリカに優位を与えてくれる潜在的な軍事拠点としか見ていませんでした。

アメリカはスパイを送り込み、ハオーレ(白人外国人)の事業家と図って、ケ・アワラウ・オ・プウロア(パール・ハーバーの昔の呼び名)を支配しようとしました。プウロアの支配をめぐる争いの中で、白人事業家の指導層は反動的クーデターを起こし、勝手に新しい憲法をつくり、ハワイ民衆の大部分から市民権を奪い、権力を外国人の手に集中しました。ハワイ人に市民権を取り戻そうとする試みが行われましたが、それを利用してアメリカ軍が上陸し、ハワイ政府を転覆したのです。ですからハワイの今日の対米関係は、1893年の軍事侵略によってできたものです。条約も国際法も踏みにじった侵略行為でした。その後、1898年に米西戦争が起こり、それを理由にわがハワイ諸島の全面的軍事占領と無制限の軍事拡張が正当化され、グアム、フィリピン、キューバ、プエルト・リコが植民地化されたのです。しかし、ハワイの人びとは、アメリカによる併合に抵抗しました。この抵抗により、アメリカはこれまで一度も協約を通じて合法的にハワイの土地に対する自治権を持ったことがないのはこの抵抗があったからです。

しかし、野蛮な力での侵略と占領によって、ハワイはアメリカ帝国の度重なる戦争の悲劇的なコマになってしまいました。チェスの場合、ポーン(将棋の「歩」にあたる)は、相手を攻めるのに使われます。このコマはまた使い捨てでもあります。ハワイは、アメリカ帝国の最初の犠牲者で、その後、いやいやながら帝国建設の共犯者になったのです。

米艦から揚陸され、イオラニ宮殿に照準を定めたアメリカの大砲は、以来ハワイを去ることはありませんでした。それどころかますます数を増やし、ついには今日のハワイを支配する巨大な軍事施設となりました。ハワイは、米軍の統合司令部のなかで最古で最大のものである太平洋軍司令部(PACOM)の所在地としてのいかがわしい名声を博しています。PACOMの責任戦域は、地球面積の50%、世界人口の60%を占めます。PACOMの下にある兵員は30万名(米国の現役軍人の5分の1)で、それには西太平洋に配置されている10万名の前方展開兵力が含まれます。

ハワイ先住民の学者、活動家カレイコア・カエオの比喩を借りれば、ハワイは太平洋におけるタコの化け物なのです。タコの目と耳は山頂に立つ望遠鏡と無線とレーダー装置、脳と神経システムはスーパーコンピューターとわが島々を縦横に走る光ケーブルのネットワーク。このタコの八本の足は、沖縄、韓国、フィリピン、グアム、ディエゴ・ガルシア、その他アラスカ、南北アメリカなどに固く巻きついています。

米軍はハワイに161の軍事施設を保持しています。基地の面積は9万5627ヘクタール、ハワイ諸島総面積の5.7%にあたります。人口密度の最も高いオアフ島では、米軍は島面積のほぼ22.4%を支配しています。このほかに、米軍の支配水域5438万8734ヘクタール、支配空域1517万6788ヘクタールがあります。

軍が支配している土地の大部分は、ハワイ国の国有地を占領したもので、これはしばしば「譲渡された」とされているのですが実は盗んだ土地です。それ以来113年が経ちました。その結果はどのようなものでしょうか。

ハワイの先住民は社会統計では最悪の状況にあります。ホームレス、貧困、疾病、入獄者などの割合は最高、学校の成績、平均余命では最低。最近ビーチにテント住まいするホームレスの家族が激増していますが、これは、土地取り上げと文化的同化の強制という犯罪の証拠です。強制的な文化的同化は、激しい文化的トラウマと解体を引き起こしてきたのです。ハワイ先住民の自決権のために取り組む活動家スキッピー・イオアネはこれを端的に表現します。「我々は犯罪者ではない。犯罪のあかしである」と。

軍人の移住定着という現象は、本来のハワイ人を、自分の郷土において、余計者の少数者にしています。いまハワイには4万4458人の現役軍人と5万6572人の家族がいて、その合計はハワイ人口の8%にあたります。さらに11万6000人の退役軍人が住んでいるので、それを含めると軍関係者は総人口の17%になります。本来のハワイ人の数を凌ぐ勢いなのです。

環境破壊と汚染はハワイにおける軍の有害な伝統です。800ヶ所の軍施設が汚染されており、米軍はハワイにおける最悪の汚染源と言わなければならなりなせん。

■かつてはオアフ島の食料供給地だったプウロアは有毒な軍の湖と化しました。ここで獲った魚介類を食うべからずと警告する標識があちこちに立てられているのですが、多くの人びとは生活のためやむなくそこで獲れた魚介類を食べています。
■米軍はオアフ島周辺に数百万ポンドの化学兵器を投棄しました。
■実弾射撃のために数千エーカーの土地が立ち入り禁止になっています。致死的な不発弾だらけだからです。軍は、約70ヶ所の射撃場を危険地域と指定しています。
■カウアイ島で行われたエージェント・オレンジ(枯葉剤)のテストで土地が汚染され、薬剤を扱っていた数人の大学職員が死亡しました。
■米軍はハワイで劣化ウラン弾(DU)を使ったことはないと発表していましたが、その後2006年1月、わたしたちはワヒアワの演習場でDUが使われたとする文書を入手し、そのことを暴露しました。
■土地、水、空気に含まれるその他の軍が排出した毒物には、PCB、水銀、鉛、放射性コバルト60、RDX、TNT、HMX、過塩素酸塩、トリクロロエチレン、その他があります。

1976年、9人のハワイ先住民活動家がカホオラウエ島に上陸し、この聖なる土地への海軍の爆撃演習に抗議しました。それから「アロハ・アイナ」(土地を愛する)が結集の叫びとなりました。たくさんの人びとがこれに続きました。この運動は大きく育ち、ついにカホオラウエでの爆撃演習を中止させ、海軍が不発爆弾の処理をせざるをえないところに追い込んだのです。この処理は10%ほど進んでいて、先住ハワイ人たちは、本来のエコシステムとハワイの文化的聖地および慣行を回復しつつあります。この運動は、今ハワイにある自治権を求める運動や文化復興の動きの火付け役となったのです。

軍隊によるハワイ諸島の破壊を止めさせる闘いはマクア渓谷でも進んでいます。マクアは「両親」という意味ですが、ここは50年以上にわたって、爆撃訓練用地として使われてきました。米軍があるハワイ人家族の土地を訓練用地に使っているワイカネ渓谷でも、爆弾を除去させる闘争が進んでいます。ここでは米軍は不発弾を除去するどころか、土地を接収したのです。ポハクロアでも闘いは進んでいます。これは米国本土外にある5つの射撃場のうち最大のものです。また高台にあるハワイ人の古い墓地を「スターウオー」用ミサイル(MDミサイル)発射台に使っているノヒリでも反対運動が進められています。「DMZハワイ・アロハ・アイナ」という軍事化に抵抗するコミュニティのネットワークができているのです

私たちは、アイナ(土地)は生きている祖先であり、それゆえ神聖なものだというハワイ先住民の信念を守っています。この意味で、私たちの運動は、アジア太平洋における他国の人びとの闘いに深く結びついているのです。大地から生まれた民衆として、私たちには大地を守り抜く聖なる責任があるのです。私たちは、私たちの運動を非核独立太平洋運動の一部、そしていま出現しつつある米軍事基地帝国を終わらせる連合の一部とみなしています。

米国が戦争を始めるときはいつでも、米国軍隊はいっそうたくさんのハワイの土地を貪り食うことを、われわれの歴史は教えています。それは今日のイラク戦争とアフガニスタン戦争に当てはまります。今ハワイは、第二次大戦後最大の軍事基地拡張に直面しているのです。

圧倒的な反対と抗議にもかかわらず、米陸軍はストライカー旅団をハワイに駐留させようとしています。それはさらに2万5000エーカーの訓練地の接収を意味します。最近、連邦裁判所は、米陸軍が環境保護法に違反したと結論付け、ストライカー旅団計画の一時差し止めを命じました。

太平洋における米軍再編、すなわち中国を包囲し封じ込める戦略のために、ハワイかグアムに空母攻撃艦隊が配備されることになるかもしれません。どちらにとっても災悪です。

ブッシュ政権の下で、そしてハワイの政治家、財界、軍指導者たちの支持の下で、ハワイは「スターウオーズ」ミサイル防衛計画のターゲットのひとつになりました。「太平洋ミサイル発射施設」が拡張され、釣り場としてもサーフィン・ビーチとしても名高い海岸とその沖合いが立ち入り禁止となりました。これらの聖なる海岸を、軍は軍産複合体のハイテク兵器の遊び場所に変えたのです。

米軍の触手はまた、私たちの教育システムにも襲いかかっています。昨年、ハワイ大学の学生、教員、地元コミュニティ三者の連合組織が学長室を占拠して、大学付属研究センター(UARC)と呼ばれる海軍の機密研究所を設置する計画に抗議しまし。このセンターは「スターウオーズ」計画に深くわってい るものです。その結果、海軍と大学の交渉は行き詰まりを見せています。

さらに、アメリカ軍によるハワイ先住民の若者新兵募集に抗する取り組みも広がっています。

私たちは、困難の中で自由と平和を求めて闘っている皆さんすべてから、励ましと勇気をもらっている。アメリカ帝国のコマとして使われ、使い捨てられるのを拒否しよう。

米軍基地帝国はグローバルな問題です。ですからその解決もまたグローバルでなければなりません。ビエケスから沖縄まで、韓国、グアム、フィリピンからナヴァホのウラン鉱労働者、マーシャル群島とタヒチの核実験被害者まで、がっちり腕を組みましょう。正義と平和に満ちたより良い世界のために腕を組んで共に闘おうではありませんか。

私たちは経験から、軍事力は自由とも真の安全とも両立しないことを知っています。彼らの武器は強力ですが、団結し解放を求める民衆の力には及びません。


最後に古いハワイのお告げの詠唱から、

エ・イホ・アナ・オ・ルナ 
上なるものはすべて引き下ろされ
E iho ana o luna

エ・ピイ・アナ・オ・ラロ  
下なるものはすべて上げられ
E pi’i ana o lalo

エ・フイ・アナ・ナ・モク  
島々は手を結び
E hui ana na moku

エ・ク・アナ・カ・パイア 
壁(国、人びと)は立ち上がらん
E ku ana ka paia


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