●海洋法に関する国際連合条約(抜粋)


第百条 (海賊行為の抑止のための協力の義務)
 すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。

第百一条 (海賊行為の定義)
 海賊行為とは、次の行為をいう。
  (a) 私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であって次のものに対して行われるもの
      (@)公海における他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しくは財産
      (A) いずれの国の管轄権にも服さない場所にある船舶、航空機、人又は財産
  (b) いずれかの船舶又は航空機を海賊船舶又は海賊航空機とする事実を知って当該船舶又は航空機の運航に自発的に参加するすべての行為
  (c) (a)又は(b)に規定する行為を扇動し又は故意に助長するすべての行為

第百二条 (乗組員が反乱を起した軍艦又は政府の船舶若しくは航空機による海賊行為)  略

第百三条 (海賊船舶又は海賊航空機の定義)
 船舶又は航空機であって、これを実効的に支配している者が第百一条に規定するいずれかの行為を行うために使用することを意図しているものについては、海賊船舶又は海賊航空機とする。当該いずれかの行為を行うために使用された船舶又は航空機であって、当該行為につき有罪とされる者により引き続き支配されているものについても、同様とする。

第百四条 (海賊船舶又は海賊航空機の国籍の保持又は喪失
 船舶又は航空機は、海賊船舶又は海賊航空機となった場合にも、その国籍を保持することができる。国籍の保持又は喪失は、当該国籍を与えた国の法律によって決定される。

第百五条 (海賊船舶又は海賊航空機の拿捕)
 いずれの国も、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において、海賊船舶、海賊航空機又は海賊行為によって奪取され、かつ、海賊の支配下にある船舶又は航空機を拿捕し及び当該船舶又は航空機内の人を逮捕し又は財産を押収することができる。拿捕を行った国の裁判所は、科すべき刑罰を決定することができるものとし、また、善意の第三者の権利を尊重することを条件として、当該船舶、航空機又は財産についてとるべき措置を決定することができる。

第百六条 (十分な根拠なしに拿捕が行われた場合の責任)
 海賊行為の疑いに基づく船舶又は航空機の拿捕{拿にダとルビ}が十分な根拠なしに行われた場合には、拿捕{拿にダとルビ}を行った国は、その船舶又は航空機がその国籍を有する国に対し、その拿捕{拿にダとルビ}によって生じたいかなる損失又は損害についても責任を負う。

第百七条 (海賊行為を理由とする拿捕を行うことが認められる船舶及び航空機)
 海賊行為を理由とする拿捕は、軍艦、軍用航空機その他政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできる船舶又は航空機でそのための権限を与えられているものによってのみ行うことができる。

第百八条 (麻薬又は向精神薬の不正取引)   略

第百九条 (公海からの許可を得ていない放送) 略

第百十条 (臨検の権利)
 1.条約上の権限に基づいて行われる干渉行為によるものを除くほか、公海において第九十五条及び第九十六条の規定に基づいて完全な免除を与えられている船舶以外の外国船舶に遭遇した軍艦が当該外国船舶を臨検することは、次のいずれかのことを疑うに足りる十分な根拠がない限り、正当と認められない。
  (a)当該外国船舶が海賊行為を行っていること。
  (b)当該外国船舶が奴隷取引に従事していること。
  (c)当該外国船舶が許可を得ていない放送を行っており、かつ、当該軍艦の旗国が前条の規定に基づく管轄権を有すること。
  (d)当該外国船舶が国籍を有していないこと。
  (e)当該外国船舶が、他の国の旗を掲げているか又は当該外国船舶の旗を示すことを拒否したが、実際には当該軍艦と同一の国籍を有すること。
 2.軍艦は、1に規定する場合において、当該外国船舶がその旗を掲げる権利を確認することができる。このため、当該軍艦は、疑いがある当該外国船舶に対し士官の指揮の下にボートを派遣することができる。文書を検閲した後もなお疑いがあるときは、軍艦は、その船舶内において更に検査を行うことができるが、その検査は、できる限り慎重に行わなければならない。
 3.疑いに根拠がないことが証明され、かつ、臨検を受けた外国船舶が疑いを正当とするいかなる行為も行っていなかった場合には、当該外国船舶は、被った損失又は損害に対する補償を受ける。
 4.1から3までの規定は、軍用航空機について準用する。
 5.1から3までの規定は、政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできるその他の船舶又は航空機で正当な権限を有するものについても準用する。


※全文へ http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19821210.T1J.html
(東京大学・東洋文化研究所・データベース「世界と日本」/田中研究室のサイト)


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