■浜田靖一・防衛大臣の記者会見

※防衛省のインターネットサイトからの転載
原文はhttp://www.mod.go.jp/j/kisha/index.html


●08年12月2日

Q:海賊対策についてお伺いしたいのですが、今月12月からNATO軍を中心にソマリア沖への展開が始まっていますけれども、与野党問わず「護衛艦を派遣してはどうか」という意見が出ていますが、大臣は現時点で護衛艦の派遣についてはどういった課題があるというふうにお考えでしょうか。

A:海賊対策については、我々はこれに対する法律は持っていないということで、まず法的根拠というものをどこにするのかということが、まず一つだと思います。漏れ伝わるところによれば海上警備行動というお話もあるわけでありますが、今おっしゃられたように国際協調の中で色々な問題提起がされている最中に、海上警備行動の場合にはわが国の艦船、国籍というか、そういう船しか対象としないということになれば、国際協調の観点から言って、「わが国だけの船しか」ということはどうなのかなという問題もあります。また、ソマリアでの現状というものをどのようには把握するのか、ソマリア沖の海域の情報がまだ足りませんので、そういったものを今後どうしていくのかということが出てくるのではないかなと思っております。

Q:その情報収集のために何らかの行動を起こされるというお考えは・・・。

A:今のところ、内閣官房の海洋政策本部の方で色々検討されていると思いますので、その中で我々なりの意見を述べさせていただいているところであり、防衛省だけで判断するというのは今の時点ではできないのかと思っておりますので、政府全体としてこの問題をどのように受け止めて対応するかというのは、やはり政府として考えていくものであり、我々とすればそこは慎重に対応していきたいと思っているところであります。

Q:今のお話で海上警備行動について、地理的にソマリア沖に行くことに、必ずしも法的に行けないことではないと思うのですけれども、過去2回の事例を見たりすると、現実的、政治的に海上警備行動を発令して、ソマリア沖で海賊対策を行うということは可能なのか、その辺どのようにお考えでしょうか。

A:そこも含めて今後対応していかなければいけないと思っております。海上警備行動に関しては出るには出れますが、その後の任務というのがどのようになるのかも含めて考えなければなりませんので、その点に関しては、今まだいろいろな議論、我々の中でもどの点が問題なのか洗い出している最中なので、今この時点で「これとこれ」というふうには言えないというところでございます。


●08年12月5日

Q:海賊対策についてですが、先日、大臣もメンバーでいらっしゃる超党派の議連の方で、3つの考え方が示されまして、現行法の海上警備行動の場合と、ソマリアに限定した特措法の場合と、それと海賊対策全般の恒久法と、メリット、デメリットもそれぞれ示されているのですが、この3つの考え方に対する大臣の受け止めと、政府としてどこが可能性が高い、どのような検討のしかたを今後されていくのか、その辺をおうかがいできればと思うのですが。

A:今週の2日、お訊ねの件についての議論が行われたことは承知しておりますけれども、立法府でのご議論について、私の立場からコメントすることについては差し控えたいと思います。政府としては海上交通の安全の重要性に鑑みて、総合海洋政策本部において海賊に対する取り締まりのための法制度上の枠組みについて検討を進めているところでありますし、防衛省が関係省庁の一員として積極的に本件等に参画をしているところであります。現時点では海賊行為の取り締まりのための措置として、自衛隊が如何なる対応をとるべきかについて一定の結論が出ているわけではございませんけれども、防衛省としては政府全体としての海賊対策の在り方、自衛隊派遣の根拠等の法的側面、そして部隊運用上の課題、そして諸外国や関係国際機関との協力の在り方等の様々な点について、関係省庁と連携して具体的な検討を積極的に進めていきたいということでございます。


●08年12月24日

Q:ソマリア沖の海賊対策ですが、一部報道で日本船舶襲撃の可能性が高い場合は海上警備行動を発令して、インド洋に派遣している護衛艦で対応すると、具体的にはエスコートするというような報道がありますけれども、検討状況はいかがでしょうか。

A:それは総括的に今、海洋政策本部の方で議論をしているところでもありますし、私も報道は見ましたけれども、私自身もそういった検討に入ったということを聞いておりませんし、そういった事実はないということだと思います。私自身が何も聞いておりませんので、その点はお答えしようがないということであります。当然、これは多くの方からソマリアの海賊の問題というのはご指摘もあるわけですから、早急に結論は出さなければいけないとは思っておりますが、今のところはまだ具体的な話はどこからも出ておりませんので、今後の対応ということになろうかと思います。


●08年12月26日

 私の方から一点申し上げます。閣議の前に総理に呼ばれまして、総理から指示を頂きました。予てから海賊の取り締まりの対策について検討するように関係省庁に対して指示をしておられますが、この海賊事案に関して「関係省庁と連携の上、自衛隊が海賊対策に早急に対応できるよう検討作業を加速するように」という指示を受けたところでございます。我々としてもこれに対して検討していきたいと思っているところでございます。

Q:今お話があった総理大臣からの指示ですけれども、浜田大臣は以前、「海上警備行動そのものは足らざるところがある」ということをおっしゃっていましたけれども、今後の対応の検討の中で課題というのはどういうところにあるとお考えでしょうか。

A:我々が検討しなければいけないのは、防護対象というものに限定があり、それに対して国際協力の観点からどういうふうに考えるのかということがございます。また海賊が色々な重火器を武装しており、他国の軍に対して銃撃で抵抗しているということもあったり、それに対して的確に任務を遂行するにはどうすべきなのかとか、また部隊を派遣するに当たって、色々な状況を想定して相応の準備を行う必要があるのではないかということもあります。こうした点について十分に検討していくことが必要だと考えております。総理は「現行法制の中で自衛隊がやれることという意味では、海上警備行動」とおっしゃったのでありますので、海上警備行動に限定しての昨日の発言があったとは考えておりません。当然、海洋政策本部においても一般法の議論、法律的な部分でもどういったことがいいのかということを検討してきたわけですから、その中で今回色々な海賊対策に対する早急な対応ということを考えれば、自衛隊の発動というのも視野に入れつつということだと思いますので、昨日来、海上警備行動というのがかなりクローズアップされておりますけれども、あくまでもそれは検討の中の一つというふうに私自身は理解をしております。そういった意味においては我々の任務の中にあるものを検討することは当然のことだと思っておりますので、これは今まで海洋政策本部の中でも議論されていることでありますから、その中で我々なりの検討はしてきたわけでありますが、今回の総理の指示は「それをしっかりと検討せい」という意味だと私自身は思っております。

Q:この件に関しては、既に調査団の派遣というような話も報道の中で出てきたりしましたけれども、今後この検討に要する時間を含めて、どういうふうにスケジュール感を含めてご覧になっているのでしょうか。

A:今回の場合は、時期的なものというご指示は一切ございません。ただ、対応に当たって如何なる状態が起きるか分かりませんので、「検討をしっかりしておけ」ということだと思っております。そして調査団というお話があるのですが、これは何処から出てきたのかよく分かりませんが、我々とするとそういったことは一切具体的な指示も受けておりませんし、そういった必要性も今のところ無いと思っています。ですから、これからの検討次第ということになろうかと思いますので、調査団というのは私としては今、聞いてもおりませんし、そういった事実はありません。

Q:昨日、麻生総理が「事は急いでいる」というふうにも発言されましたけれども、政府の受け止め方としてはやはりそういった切迫性といいますか、そういうものは共有されているという理解でよろしいのでしょうか。

A:海賊の案件に関しては色々な国連においての決議ですとか、また各国の対応状況、そしてまた特に船主協会の皆様方から色々なお話等もあるわけですから、これに対して我々のできることを考えるのは当然だと思いますので、そういう意味では海賊問題というのは国際的にも対処しなければならない重要な案件であることは間違いないわけでありますので、それに如何なる対応をするか、我々のできる範囲内の、「できることは何なのか」ということも含めて検討するということだと私自身は思っております。ですから、総理自身のお考えとすれば以前から「これに対応することを検討せよ、海洋政策本部においてやれ」ということもこれは今までやってきたことでありますので、そこを「問題意識の中でしっかりと対応せい」ということだと私自身は思っております。

Q:確認ですが、総理指示というのは海上警備行動に限らず、一般法での対応も含めたという・・・。

A:ですから、指示の中には海上警備行動という言葉は入っておりませんし、とにかく、私を呼んだということは防衛省に対して私の所掌であるものに対して「しっかりと検討しろ」ということだと思っております。特に海上警備行動ということが総理からの指示の中に出てきてはおりません。

Q:海上警備行動なのですが、過去の2例というのは領海侵犯という事案発生が起点になっていますけれども、今回日本船への海賊被害が起こる可能性が高いという段階での予防的措置としての発令というのは可能というふうにお考えでしょうか。

A:予防的措置というのは・・・。

Q:海賊被害にあったという時点で発令するのではなくて、その可能性が高いという前の段階での発令は可能かという・・・。

A:それは可能だと思います。そうでなければ、海上警備行動というのが選択肢の中に入ってこないはずなので、そこのところは明確に説明できるように、今後の検討によってどのように国民の皆様方に説明するのかという問題もありますので、「発令する、しない」は別として、そういった議論は与党の皆様方でも色々なご議論をされていることは承知をしておりますので、そういった意味においては今後の議論というものを、与党の議論も含めて我々は検討の中に入れていかなければいけないと思っていますので、現時点では今後の対応ということになろうかと思います。

Q:先程、海上警備行動の課題で国際貢献との関係、武器の使用のことをおっしゃっていましたが、大臣としては一般法や特措法で派遣する方がどちらかというと望ましいということでしょうか。

A:先程申し上げたように、他国の艦船はそれこそ日本を問わず、今までも日本の船が助けられたりとかというのがあるわけで、そういったことを考えれば、我々が日本国籍の船だけということで本当に国際協調の面からいって良いのかという部分が必ず出てくると私は思っていますので、緊急ということと国際協調という狭間にある中で、現場の隊員が任務の遂行にあたって明確に自分たちの判断が下せる状況というのが作れるかどうかというのを含めて今後の検討だというふうに思っています。

Q:昨日の次官の会見で、「海上警備行動というのはわが国の秩序の維持に使うものであって、国際協力とマッチングするかというとどうなのだろうか」という指摘をされていましたが、その考えは大臣も共有されているわけでしょうか。

A:確認の話になると思います。それでも必要だから出すのか、それとも国際協調の面からいけば、当然あの地域において全ての艦船に対して我々の存在を示すことによって、そして色々なときにしっかりと理解をしていただけるような行動が出来るかどうかというのは極めて重要だと思いますので、その点の判断というのは難しいのかなという想いはあります。

Q:予想される論点の一つに、海賊対策が前提としてあるわけですが、「自衛隊の船が世界中どこでも行けるのか」とか、「地球の裏側まで」というお話もありましたが、そういう声というのも恐らく予想されると思うのですけれども、その点に関して大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:そこは、その目的によると思います。当然、我々は独立国家として国民の生命、身体、財産を守るということが使命でありますので、国民の権利を守るために我々は存在しているわけですから、そこを守るということであれば当然だとは思いますが、しかしながら、「何でもかんでも良いのか」ということではないと私は思っています。国際協力、当然そこに法律の根拠というものが国会で議論されて、そこで決定されたことが一番良いわけでありますし、法律があってこそ我々は活動できると思っていますので、「何でもかんでも」ということではないと思っております。

Q:海賊対策を受けて、国会の方でようやく、例えばエスコートの場合、「軍艦が守っていれば海賊が近寄ってこないだろう」というような声もあったわけですけれども、そこはどこまで楽観できるのかという部分もあるかと思うのですけれども、そういう海賊対策における危険度というか、その辺は大臣は現時点でどのようにお考えですか。

A:そこは全く予測がつきません。ですから、そういったことも含めて今後検討していきたいと思っています。

Q:そこの検討の中にはP−3Cの派遣というのも検討課題になりますでしょうか。

A:検討という幅というのは、これは限られたものではないと思いますので、色々な可能性というものを、ニーズとか色々なことを考えながら検討していくことになろうと思います。

Q:総理から時期的な目途のお示しはなかったとのことですが、大臣の側にむしろ検討をいつまでにしなければいけないというようなお考えは今のところあるのでしょうか。

A:「いつ」までということではなく、基本的に海外に自衛隊を出すときの日数というのは、「今日決めたから明日出す」という話にはならないわけで、当然その為の準備というものがあるわけですから、そういった意味合いにおいて、今までの一般的な海外に出す日数というのが目安になることは事実だと思います。しかしながらあくまでもそれは一般論の話であって、今回総理から時期的な明示があったわけではありませんので、我々とすればいつ言われてもいい形というものも検討しなければいけないわけですから、それはあくまでも検討の範囲内ということだと思います。

Q:先程、大臣は法的な海上警備行動の制約についてお話されたのですけれども、部隊運用上、護衛艦を派遣したり、P−3Cを派遣したりというは、そういう面での課題というのはないのでしょうか。護衛艦をあまり海外に派遣すると国内が手薄になってしまうという懸念があるとは思うのですけれども。

A:当然、我々の物理的な限界というのはあろうかとおもいますが、しかし運用の面で対応できる部分というのはあるわけですから、それを可能にできるかどうかの検討もしなければいけないということだと思いますので、そういった意味においては、そこのところの対応ができるかどうかも含めて検討していかなければいけないということで、今回総理からの指示というのはそういったところにあるのかなと思っております。

Q:海警行動ですけれども、今給油活動をしている船に対して、補給艦を護衛している護衛艦に海上警備行動を発令するという考え方というのはあるのでしょうか。

A:それは海上警備行動を出すことはできるかもしれませんが、しかしながらあくまでもこれは特措法によって出しているわけですし、そしてまた補給艦1艦につき護衛艦1艦を付けているということでありますので、これは補給活動を実施する上で最低限の規模の派遣でありまして、特に護衛艦につきましては、補給時に脆弱な状態にある補給艦を護衛する任務があるわけですから、この任務にあたる艦に海上警備行動で命令を下令して、わが国の船舶の航行の安全の確保といった任務をさらに付与することは基本的には困難だと私は思っていますので、ちょっと考えられないと思います。



■防衛事務次官の記者会見
※防衛省のインターネットサイトからの転載
原文はhttp://www.mod.go.jp/j/kisha/index.html


●08年12月25日

Q:報道で、政府がソマリア沖の海賊対策として、海上警備行動の発令によって海上自衛隊の艦船を派遣するということを検討しているという報道がありますけれども、現在これについての検討状況と、次官の所感をお願いします。

A:昨今、ソマリア沖なりアデン湾におきまして海賊が日本の商船を含む各国の船舶を襲撃する事件が頻発していることを受けまして、海賊対策というものについて必要な検討を今、関係省庁で行っているところでございます。ご質問の中で引用されましたような報道については、承知はしておりますけれども、現在のところ政府としては新たな海賊法制整備、また現行法制下でいかなる対応が出来るかなどについて検討を進めているところではございますが、ソマリア周辺海域の海賊対策のために海上警備行動を発令して護衛艦を派遣するという方針を固めたという事実はないところでございます。

Q:検討の中で、海上警備行動という一つの方策が考えられているということですけれども、これによって出来ること出来ないことがあるかと思うのですが、ここにある課題というとどういうことになるのでしょうか。

A:その点については、浜田大臣も国会等でも述べておられるかと思いますが、頭の体操として現行法制と言いますと、自衛隊法82条の海上における警備行動というものがございます。ただ、これはあくまで日本の秩序の維持という観点からの行動であると思っておりますので、国際協力という側面から見るとどうなのかなと思います。もう一つは、海上警備行動というものに定められている武器の使用の態様というものが、例えばソマリア沖の海賊というものとの関係において十分なものであるかどうかというようなことが課題なのかなと認識しているところでございます。

Q:その報道の中では、年内にも麻生総理が決断するのではないかというような表現もあるのですが、今後の見通しについてはどのようにご覧になっていますでしょうか。

A:私の立場で、その種のことについて見通しを述べるようなことは差し控えるべきと思っております。

Q:海上警備行動の話ですが、今の法律をそのまま解釈すると、海外で活動したり武器を使ったりすることが非常に難しい、海賊に対して適用するのは難しいのではないかというニュアンスでしょうか。

A:一般的な意味で、海賊対策に対して難しいと申し上げたつもりではございません。繰り返しますと海上における警備行動というのは、そもそもわが国の秩序の維持ということでございますので、日本関係船舶の安全ということを一つのよすがにしているものだと思っております。そういった観点から、いわゆる国際協力というような側面が今、求められているものにあるとすれば、そこにはどうしても差があるところがあるなということを述べたに過ぎません。

Q:だとすると、とりあえず日本の船も危機にさらされているのは事実で、現状打開のためにこれを積極的にやろうということは、防衛省の姿勢としては有り得ると。

A:そこの方向性というものについて、「結論めいたものを出しているわけではございません」ということを最初に申し上げたつもりでございます。

Q:「武器の使用の態様が海賊に対してどうか」というのは、一応自衛隊は重火器も、軽装備のピストルとかもあると思うのですけれども、どういうところで不備があるのでしょうか。

A:あまり踏み込んで今ここで述べるほどのものはございませんけれども、海上における警備行動時の権限というものと、それから例えば想定される海賊対策におけるあるべき武器の使用とには差があるように感じております。ですから、その点についてどう考えていくのかということは、考えていかなければいけないなという問題意識を述べたつもりでございます。

Q:海上警備行動は警察比例の原則が適用されるのですよね。

A:原則としてはそういうことだと思っています。

Q:そうすると海賊が例えば機関銃ぐらいしか持っていないのに、こちらがミサイルや速射砲で対応してはまずかろうと、そういうことを言っているのでしょうか。

A:私が申し上げているのは、正直そこまで踏み込んで議論をしているつもりはなく、要は海上における警備行動というのは、基本的にわが国の秩序の維持なり、わが国がらみの法令の違反の防止というような、法体系的に言えば海上保安庁がおやりになっていることの延長線上にある話だろうと思っております。ですから、武器使用権限についてもそういう流れの中で制度が組み立てられているのだろうと理解しております。それと、今まさに議論の対象になっている海賊対策というものとが上手くマッチングするのかしないのかということについては、検討が必要であろう、課題であろうということを申し上げているつもりでございます。


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