【解説02】個別的自衛権・集団的自衛権・集団安全保障

   第2次世界大戦以前は、宣戦布告などの手続きを経た戦争は「合法」でした。しかし戦後、国際連合の成立と国連憲章の採択によって、戦争、武力による威嚇、武力の行使は、国際法上は「違法」となりました。
 現在、国連憲章が認めている武力の行使は、@集団安全保障=不法な武力行使に対する国連の強制措置、A個別的自衛権=自国が不法な攻撃を受けた場合に反撃する権利、B集団的自衛権=友好国が不法な攻撃を受けた場合に一緒に反撃する権利――の3つのみです。
では米国によるイラク侵攻は、上記3つのうちどれに当てはまるでしょうか。どれにもあてはまりません。イラク侵攻に国際法上の根拠はないのです。
 米国の安全保障戦略は、ブッシュ政権下で大きく変わりました。ブッシュ大統領は2002年1月の一般教書演説で、イラク・イラン・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3カ国を「悪の枢軸」と名指ししました。同時期に作られた「核態勢見直し報告」では、上記3カ国に中国・ロシア・シリア・リビアを加えた7カ国を「先制核攻撃」の対象としました。また同年9月の「国家安全保障戦略」(ブッシュ・ドクトリン)は、大量破壊兵器を持つ国への「先制攻撃」と、圧倒的な軍事力の優位を堅持すると打ち出しました。こうした、相手から攻撃される前に、自分から先制攻撃を行うという米国の安全保障政策は、国連と国連憲章に明確に違反するものなのです。

【国際連合憲章】
●戦争の違法化について
第1章[目的および原則] 
第2条〔目的〕−4
すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

●集団安全保障について
第7章[平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動]
第42条〔軍事的措置〕
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。

●個別的自衛権・集団的自衛権について
第7章
第51条〔自衛権〕
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基づく権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。


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