【解説03】沖縄 米軍基地に反対する3つの闘い

  ●市の中心に基地がある ―― 普天間の返還を ――
 8月13日午後、沖縄県宜野湾市にある沖縄国際大学に、隣接する米海兵隊普天間基地のCH53D型ヘリコプターが墜落し炎上する事故が起きました。ヘリコプターは墜落の際に大学本館の壁を破壊し、周辺の住宅地に部品を撒き散らしました。墜落現場から340メートルも離れた我如古公民館近くでも、尾翼のローターとみられる部品が発見されています。
 墜落したヘリコプターは古い機体で、1985年と1999年には国頭村で墜落事故を起こしています。また沖縄での米軍航空機の事故は、復帰後だけでも40件も起きています。
 今回の事故では、幸にも死者やけが人は出ませんでした。しかし過去には、大きな被害を出した航空機の墜落事故も発生しています。本土復帰以前の1959年6月には、石川市の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落、児童11人と住民6人が死亡、200人以上が負傷しました。
 沖縄の人々は、米軍による事件や事故の危険性と、隣り合わせに暮らしています。9月12日には事故現場の沖縄国際大学で、「宜野湾市民大会」が開催され3万人が参加、墜落抗議、基地撤去の声をあげました。

 普天間基地は宜野湾市の中央部に位置しています。市面積の25パーセントを占め、市の発展を阻害してきました。また事故が多発していること、周辺が住宅過密地であることなどから、危険性が指摘されていました。
 日米両国政府は、1996年に普天間基地の返還で合意。「沖縄に関する特別委員会」(SACO)の最終報告書で、5年から7年以内の返還を定めました。ところが基地の返還は、県内に代替施設を建設することが前提だったのです。政府は、名護市辺野古を移設先に決定しますが、辺野古では周辺住民を中心に反対運動が盛り上がり、建設に着手することはできませんでした。
 米政府のラムズフェルド国防長官でさえ、03年11月に来沖した際に上空から普天間基地を視察し「危険だ。そして老朽化している」と指摘しました。また04年7月の「米軍再編に関する日米協議」では、米側から基地移設の遅れに不満が表明されました。代替施設の着工遅延を理由に普天間基地の返還を遅らせるのは、日本政府の怠慢です。

●基地移設では問題は解決しない ―― 辺野古沖ボーリング調査反対 ――
 政府は普天間基地の移設先を、名護市辺野古沖としました。さんご礁を埋め立て長さ2500メートル、幅730メートルの海上飛行場を、1兆円かけて作る計画です。辺野古には、国際的に保護が求められている「ジュゴン」をはじめ、貴重な生物が生息しています。この美しい海を守るために、地域の人びとは8年にわたる座り込みを行ってきました。名護市では97年12月に基地建設の賛否を問う市民投票が行われ、53パーセントの人々が基地建設に反対しました。賛成した人の多くも、環境対策や経済効果を期待する条件付賛成でした。
 現在、国と県が進めている基地建設計画では、環境アセスメントに3〜4年、埋め立て工事に9年半、滑走路・施設建設に2〜3年、機能移設に1年半――としています。早くても16年後にしか代替基地は完成せず、普天間飛行場は返還されないのです。これでは、「いま」危険な基地に対応することはできません。
 しかし日本政府は、名護市への基地移転をあきらめていません。ヘリ墜落直後から、防衛施設庁の動きが加速しました。9月7日には、基地建設のためのボーリング調査が強行されました。現在は、沖縄平和運動センターや市民グループによる連日の阻止行動が続いています。

●高速道路の隣で実弾射撃訓練 ―― 都市型戦闘訓練施設建設反対 ――
 金武町は町面積の60パーセントが米軍に接収され、4つの基地が置かれています。その一つ、キャンプ・ハンセンでは、都市型戦闘訓練施設の建設が進んでいます。この施設は、建物突入、屋内射撃、ロープ降下など、市街地での戦闘の訓練を行うものです。
 キャンプ・ハンセンのすぐ外側には、沖縄自動車道が通っています。建設地から自動車道までは250メートル、金武町の住宅地までは300メートルしかありません。キャンプ・ハンセンは、実弾射撃訓練場として使われているために、これまでにも度々、流れ弾が飛び出す事故が発生していました。新たな訓練施設の建設によって、住民の生命が危険にさらされる可能性は、さらに大きくなります。

●米軍基地を押し付けられた島・沖縄
 沖縄には、日米安保の負担が集中しています。米軍兵士26.000人以上が駐留し、36施設・234平方キロメートルの土地を使用しています。基地の面積は、全沖縄県面積の約10パーセント、本島面積の18パーセントを占めています。日本国土の0.6パーセントしかない沖縄県に、在日米軍基地の75パーセントが集中しているのです。そうした土地の多くは、占領期間中に「銃剣とブルドーザー」によって、強制的に収容されたものなのです。

●強化がすすむ在日米軍基地
 米国は現在、世界規模での在外米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)を推進しています。その中で、韓国や欧州の米軍は削減されています。ところが、在日米軍は強化・増強の方向に進んでいるのです。このままでは日本は、米国が世界各地で紛争に介入する時の中継基地になってしまいます。沖縄の基地負担も、さらに大きくなります。
 沖縄県に基地があるのは、日本が米国との間で安全保障条約を結んでいるからであり、日本政府が米国の世界戦略に追随しているからです。沖縄の基地問題は沖縄県だけの問題ではなく、「日米安全保障条約をどうするのか」「日本と周辺諸国との安全をどう保っていくのか」という日本全体の問題なのです。私たち一人一人が、その問題に向き合わなければならないのではないでしょうか。


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