【資料07】アル・リカービさん(イラク民主的国民潮流)の講演要旨

 

イラクの占領抵抗運動のリーダー・リーカービさん来日
 イラク民主的国民潮流のスポークスマンでフランスに亡命中のアブデル=アミール・アル・リカービさんが7月28日から8月1日の日程で来日しました。リカービさんは今年4月、日本人3人がイラクの武装組織に拘束された際に、解放に尽力してくれた人物です。
昨年12月に来日し、小泉純一郎総理とイラク復興について会談。その際リカービさんは、自衛隊が占領軍の一員としてイラクに来ることに反対し、日本が平和的な復興支援を行うことを求め、独自の「友情と協力計画」を提案しました。ところが「週刊ポスト」誌が政府筋の情報として、リカービさんが巨額の資金援助と引き換えに自衛隊の安全を保障する約束をしたという記事を掲載。今回の来日は、「週刊ポスト」を相手に、記事の訂正と謝罪、損害賠償を求める裁判を行うためでした。
WORLD PEACE NOWは7月30日、リカービさんを招き、東京千代田区の韓国YMCAホールで講演会を開催しました。以下はリカービさんの講演の要旨です。

占領抵抗闘争はイラク全土で行われている
 みなさんの関心は、イラクの占領問題と、イラクの国民がどのように戦っているかだと思います。ですから、イラクの様々な運動体が直面している問題を話したいと思います。
 今年4月、ファルージャで大規模な戦闘が行われました。この戦いが、イラク全土に占領反対運動が拡がるきっかけとなりました。それ以前は、スンニ派トライアングルと呼ばれる地域が抵抗運動の中心でしたが、4月以降は、その地域を超えて、バスラなどの南部を含めた広範囲に拡大しました。それ以後、この戦いは「4月のインティファーダ」とも呼ばれるようになりました。「インティファーダ」とはもちろん、パレスチナの抵抗運動からとった名前です。
 4月の戦いと、アルグレイブ刑務所での米軍による暴行・虐待の発覚が、米国を窮地に追い込み、占領の早期終了に追い込みました。米国は当初の予定を前倒しし、暫定政府を立ち上げ、主権移譲を行いました。
当初、暫定政権の設立には、国連のブラヒム代表の役割が期待されましたが、結局、米国の思うとおりに作られました。また米国は、イラク侵攻に反対した欧州各国や、国連に協力を要請し、新しい国連決議が採択されました。
米国は今年末から来年はじめにかけて選挙を実施するといっています。選挙の実施には、治安の改善という前提条件がついています。しかし、治安が改善される見込みはありません。ですから、選挙も実施されない可能性が大きいでしょう。暫定政権は正統性を持っていません。その一方で米国は、抵抗勢力各派に対して圧力をかけているのです。

占領反対勢力で「憲法制定評議会」を準備
 現在のイラク情勢には、もう一つのポイントがあります。それは、抵抗勢力の側の力量です。抵抗勢力は、人員・規模の面で、占領軍をイラクから追い出すだけの力はありません。ですから、国民的基礎を持つ新しい政治的な枠組みが求められています。
 米国と暫定政府は、「国民会議」の開催を準備し、諸勢力に参加を呼びかけています。しかし、多くの組織は参加を拒否しています。
 私たちは、暫定政府の「国民会議」とは別の会議を呼びかけています。別の会議の開催が必要なことは、イラクの現状が示しています。独立・自立のイラクの解放を具体化することが、イラク国民の総意だからです。
 8月末に、アラブ諸国のどこかの首都で――正確な日にちと場所は言えませんが――、「憲法制定評議会」の準備会が開催されます。
 一方、暫定政権の準備する国民会議は、開催の延期が報道されました。ですから私たちの会議が成功すれば、イラク国民の総意を具体化する、大きな一歩、現状を変革する大きな局面となるでしょう。この会議は、様々な宗教、様々な政治党派の代表が集まります。イラクの戦いは、ばらばらの抵抗運動から、統一した運動に変わる変革期にあります。
 日本のみなさんにも、協力をお願いします。
 それでは、みなさんからの質問にお答えしましょう。

参加者との質疑応答
Q1.リカービさんたちが準備している「憲法制定評議会」と、暫定政権が開催しようとしている「国民会議」の違いはなんですか?
(リカービ)
暫定政府の国民会議は、占領の協力者が集まり、米国―が全てを決めます。一方、私たちの国民会議は、占領に反対するものが集まり、占領当局からは自由に議論が行われます。

Q2.「憲法制定評議会」の開催に当たって、宗派間、部族間の調整は、どのように行われるのですか?
(リカービ)
 いま、様々な勢力に参加を呼びかけています。合意は難しくないでしょう。みなイラクの国民であり、一つの国で生きていこうとしています。全国民が一致して協力し、前進するでしょう。

Q3.国民会議には、女性は参加しますか?
(リカービ)
 わたしは、来日の直前に、1本の論文を発表しました。それは「イラク女性と抵抗運動」というタイトルです。1920年以来、女性はイラクの社会運動の中で大きな役割を担ってきました。国民会議への女性の参加には、大変意義があります。

Q4.リカービさんたちのグループには、どのぐらいの勢力が集まっているのですか?
米軍のイラク侵攻直前から、22の組織が集まる枠組みができていました。私たちは、戦争に反対し、戦争抜きの変革を求めてきました。実は91年の湾岸戦争当時から、こうした枠組みはできていたのです。

Q5.占領軍と、平和的な解決のプロセスを歩むことはありますか?
 占領軍との協力という考え方がでたとしても、それは国民会議の場で話し合われ、決められます。様々な個人的意見や組織の意見は、国民会議の場で話し合われることによって、国民の総意となるのです。

Q6.自衛隊の役割をどのように考えますか?
日本政府が占領に参加したことは、非常に残念です。これは、日本の憲法や歴史にも矛盾するものでしょう。昨年訪日した際、私は小泉総理と会見しました。イラクの代表と日本の代表という立場で話し、占領の枠組みの中では、イラクに来てほしくないことを伝えました。また私からは「友情と協力計画」を提案しました。それは、日本と自衛隊が、占領とは別に、イラクの復興に平和的に参加・協力するというものです。しかし、いまの自衛隊は、どのような活動をしていたとしても、占領の一部です。日本政府には、自衛隊を撤退させ、「友情と協力」に立ち返ってもらいたい。現在の自衛隊は、イラクの中で孤立しています。占領に参加することが難しいことを、日本政府に知ってもらいたいと思います。



Copyright 2000-2004 フォーラム平和・人権・環境 All rights reserved.
東京都千代田区神田駿河台3-2-11 総評会館5F
tel.03-5289-8222/fax.03-5289-8223/E-mail:peace-forum@jca.apc.org