【資料09】イラク民主的国民潮流から、日本へのメッセージ

 

日本の皆さんに、イラクの現況をお伝えします。

CONDI(イラク民主的国民潮流)
アブデル=アミール・アル・リカービ
2004年11月28日

ファルージャ攻撃の真実
 ファルージャはバグダッドから65キロ西、砂漠の入り口にある人口30万の小都市です。ファルージャは、多少の放牧と公務、とくに若者が入隊している軍隊以外の仕事がない町でした。若い兵士でよく訓練されたものは士官学校に行き、士官となります。
町はいくつかの小さな集落に囲まれており、それらの集落は生活面でファルージャと密接な関係を持ち、特に血縁関係でつながっています。すべての住民は2から3の大きな部族に属しています。
この地域の人々は、以前は遊牧をしていました。また、この地域に隣接するバディア・アス=シャム砂漠の反対側の、ヨルダンやシリアとの間で密輸入業を営んでいたのです。そのためシリアやヨルダンの部族ともつながりが大変深く、それは部族関係の延長ともいえます。この地域では、部族的な連帯感が非常に強いのです。サダム・フセイン政権による石油開発の思いがけない賜物によって、福祉国家となるよりずっと以前から続いてきたことです。このように前置きを長く申し上げるのは、ファルージャがどのような町か理解していただきたいからです。
 サダム・フセインは体制の基礎を作るに当たって、資源の欠乏を非常にうまく利用しました。また部族的な側面では、 この地域から多くの軍人を採用しました。しかし、この地域の士官の一群が、サダム体制に反対したときには、厳しい弾圧を加えたのです。
ですから、この町を「旧体制の根拠地」だという説は、「ザルカウィなる人物が、この地域の大きな部族を率いている」という説と同様に根拠が希薄です。
確かにファルージャには、経験を積んだ多くの士官・兵士がいます。そして部族の絆が強い。このことが、ファルージャが米軍に対して、抵抗する能力と意志を持っていること、またイラク人以外の幾人かのアラブの戦士がいることの理由です。しかし、あくまでも、それだけのことです。
 米軍はファルージャに対して、常軌を逸した大攻撃をおこないました。大半が3階建てレンガ作りの家の、この小さな町は、砂漠の真ん中にあります。
米軍は、予定通りに攻撃を行いました。この攻撃は、イラク市民の全体を恐怖に陥れることが目的なのです。ファルージャで熾烈な武力鎮圧をおこなうことで、イラクの他の勢力が降伏し、米国の存在を「打ち勝つことのできない宿命」として受け入れることを期待しているのです。これこそが、殺戮するための意志が実行されたファルージャの真実なのです。
イラク政府は公式には、2085名を殺害し、1600名を捕虜にしたといっています。しかし、英国の情報は「犠牲者の85%が民間人」であると伝えています。「公式には」、アラブの戦士は前夜に逃げ出しており、ファルージャにはいなかったことになっています。いま米軍は、彼らを捜して、モスル・マフムーディイヤ・サマッラ・そしてバッソラなど、南部での掃討作戦をおこなっています。
ファルージャでは、犬や猫が、住民の死体、男性・女性・子どもの屍骸を食べ歩いているというのが真実です。米軍は、民間支援や医療支援が町に入ることを禁止し、物資を市内に配達することを遅れさせているのです。テレビで放映された人物だけではなく、複数の負傷者たちが故意に殺害されました。このようなせい惨さは計算済みだというべきでしょう。
米軍の行動に規制はなく、やり放題なのです。すべてが屈辱を受けています。米軍によって寺院は破壊され、荒らされ、兵士の休憩場所になっています(軍靴を履いた兵士たちが武器を持って寝ている写真を、テレビで見たことでしょう)。虐殺と侮辱、恐怖が、予防的・永続的戦争の武器です。
「我々と一緒でないものは、全て我々の敵である。我々に反対するものは、どのような運命が待ち受けているか知るべきだ。死か、さもなければ、逮捕だ」と、ファルージャ作戦が開始されるときに、米軍の高官がバグダッドで表明しています。
抵抗運動の現状
 数ヶ月前には、シーア派の聖都ナジャフが攻撃されていました。明日にはファルージャと同じ虐殺を、イラクの他の都市で見ることができるでしょう。イラク市民が服従を拒否する限り、抵抗運動は移動し、各地で起きるでしょう。そして弾圧も各地で行われるでしょう。
テロでは、イラクのように占領され略奪された国を平和にすることはできません。しかし提案されたもう一つの政治は、国全体のコンセンサスも得られない傀儡政府の受け入れでした。この政府は、選挙という「政治的なプロセス」を開始したいと言いつつ、一方で非常事態宣言を発令しているのです。そのうえ、「政治的なプロセス」への参加を拒否することは、戦争行為と同じだと見なしているのです。政府のいう「政治的なプロセス」に無理やり参加させるために、ナジャフでは、ムクタダ・サドルに対する作戦がおこなわれました。しかも、立候補と選挙の方法は、すべて封印され事前に形が整えられ、つまり偽造されているのです。
 この10日間くらいの間に起こったあらゆることにも関わらず、イラク市民は押しつぶされることもなく,無気力状態に陥ってもいません。イラクの抵抗運動は、とりわけ占領と傀儡政府たちに対する一般的民衆的な拒否の現れです。
抵抗運動は拡大を続けています。シーア派、スンナ派、非常に多様なイスラム教徒の小グループに属しているもの、バアス党関係者(必ずしもすべてが旧政権に忠実なものばかりではない)、偶然的な関係で地域的に立ち上がった無数のグループ――があります。
抵抗運動は始まったばかりであり、統一的な組織体系はできておらず、戦略は明確化されていません。それゆえ 現場で起こることすべてを、総合的に把握できていません。ですから、みな、統一的な抵抗戦線と政治意識を作る必要性を感じています。米軍を相手に抵抗運動が爆発的に発生している現状で事態が変わらないのなら、質的な転換が必要であり、そのための努力をしている最中です。
アラウイ政府について
 現在のイラク政府は、間違いなく傀儡政府で、米国のゲームを演じているだけです。彼らは、米国に役立つ仕事を行っています。
占領者によって作られ、占領者に協力する現地政府なくして占領が成功することなど、今までにあったためしはありません。サイゴン政権なくして、アメリカはヴェトナムに介入できたでしょうか。
アラウイ政府は、イラクが主権を持った独立国家となるための「中間的」な、あるいは「過渡期の」政府ではありません。これらの言葉は、米国の意図を正当化するためです。ページをめくって全く新しいものを作り出すのではなくて、現状を強固にすることだけが意図されているのです。
もし選挙がおこなわれれば、選挙自体が目的です。選挙は恐らく、あちこちで勃発する抵抗運動で延期され、実行することはできないでしょう。もくろまれている選挙は「民主的な」占領を主題にしているからです。恐怖を引き起こす攻撃は、イラクの人々に「もう希望はないのだ」と説得しようとしているのです。そのためにファルージャで、このようなやり方での虐殺がおこなわれたのです。
しかし、それはイラク人が望んでいることではありませんし、イラク人が満足できることでもありません。8月にベイルートでおこなわれた「憲法制定会議準備会議」には、イラクのあらゆる潮流の代表者・350名が集まりました。「憲法制定会議」設立の必要性を主張し、この会議こそが政治的プロセスを行うのであって、傀儡政府ではないことを確認しました。憲法制定会議は、一つの政党ではありません。また複数政党の戦線でもありません。この会議は、多くの貧困・独裁政治・長い戦争・禁輸処置・占領の後に、イラクの政治生活に初めて生まれるはずの基礎的な議会なのです。この会議を支持する署名運動が現在、全国で行われており、この「憲法制定議会」設立への要望を国際機関に提出し、イラク人の意志を考慮するように、また「憲法制定会議」の実現を支援するように要請する予定です。多くの民衆的運動は、私たちのオルタナティヴな提案を支持するでしょう。
日本の皆さんへ
最後に日本の皆さんに肝心なことを申し上げます。私たちは、イラクにおける自衛隊の存在は戦争行為にあたること、また自衛隊の存在は占領に加担する行為であることを、はっきりと伝えます。昨年派遣され、現在駐留し、派遣延長を検討している現時点においても明らかなことです。自衛隊が暴力行為や、侵略行為、攻撃や虐殺をしていないとしても、その存在の意味は一向に変わりません。
自衛隊が攻撃を受けないと保障するものは、何もありません。自衛隊が配置されている地方で、いつ攻撃が発生するかも分かりません。もし攻撃が起これば、自衛隊はその動きに関与せざるを得なくなるでしょう。
いずれにせよ、イラクにおける自衛隊の存在のために、「日本はイラクに敵意を抱いている」と解釈されているのです。日本の民間人は、彼らが政府と関係有る無しに関わらず、時には政府に反対の立場であっても、拉致され、幽閉され、時には殺されるといったように、イラク人から敵意を持って扱われています。私たちは常に、これらの行為を厳格に非難し拒否してきました。残念ながら私たちCONDIは、日本の民間人のすべてを救い出すことはきませんでした。彼らの苦しみと彼らの喪失は悲劇です。この責任は、イラクにおける自衛隊の存在と、それを決定した日本政府にあります。しかし、この犯罪の重みは、イラク人の肩に、イラク人の意識にのしかかってきています。私たちは、占領行為と、その行為がもたらす結果の二つに苦しんでいます。
自衛隊が、宿営地に隔離されて何もしていないのなら、なぜ、そこにいるのでしょうか。米国政権を喜ばすためなのでしょうか。日本はそれほどまでに、米国に服従しているのでしょうか。イラク社会にたいして人道支援をおこなうために、報道されているように水道工事や病院や学校建設をしつつあるというのでしょうか。もしそうなら、軍隊である必要性はありません。2003年12月、私がCONDIのスポークスマンとして日本を訪れたとき、日本政府に提案したように、「友情と連帯に基づいた日本の民間のプレザンス」こそ必要なのです。
いま自衛隊はイラクから立ち去るべきです。自衛隊の派遣期間の延長をしてはなりません。



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