日米軍事再編と基地強化に異議あり! みんなで自治体の平和力を支えよう!
6/18市民フォーラムin横浜

6月18日(日)、神奈川県横浜市の横浜水道会館で、「日米軍事再編と基地強化に異議あり! みんなで自治体の平和力を支えよう! 6/18市民フォーラムin横須賀」が開かれ、全国各地から170人が参加しました。集会を主催したのは、各地の反基地団体・自治体議員・平和フォーラムでつくる、『「米軍再編と自治体」市民フォーラム実行委員会』です。この集会は、反基地団体・自治体議員・平和フォーラム系運動の連携、全国の運動の情報交換、自治体と運動の連携――を強めることを目的に開かれました。集会の第1部では、米軍基地を抱える自治体の取り組み報告を、第2部ではシンポジウム形式で各地の動きの報告と議論を行いました。以下は、講演者とパネリストの発言要旨です。文責は平和フォーラムにあります。



●横浜水道会館には、全国各地の平和運動関係者ら170人があつまりました。


●会場の周りには、各地の活動資料が展示されました。


●実行委員会を代表して、新潟市議会議員の中山均さんが、あいさつ。


第1部 米軍(基地)再編に対する自治体の取り組み

●宜野湾市基地対策部次長 山内繁雄さん


 1945年4月1日、沖縄は米軍に占領されました。住民は収容所に収容され、土地は米軍に収用されました。そうしてできたのが普天間基地です。
 現在の普天間基地には、海兵隊のヘリコプター部隊が駐留しています。このヘリコプター部隊の訓練形態は2つあります。1つは普天間基地を飛び立ち、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンで海兵隊員を乗せ、北部訓練地や伊江島で訓練を行い、普天間基地に帰ってくる。もう1つは、普天間基地でタッチ・アンド・ゴーを行い基地の上空を旋回する訓練です。この訓練は1日平均150回、多い日には200〜300回行われます。1機が5分間隔で自分の頭の上を飛んでいきます。2機で訓練していれば2分30秒間隔、3機で訓練していれば1分間隔で飛んでいきます。また同じく普天間基地に所属するKC130空中給油機や、嘉手納基地に所属するP3C哨戒機なども、普天間基地の上空で旋回訓練を行っています。

 96年に日本と米国は「騒音防止協定」を結びました。協定では、住宅密集地や学校・病院の上空は飛ばないことになっています。しかし住宅地の中心にある普天間基地では、この協定は守られていません。また夜の11時・12時になっても訓練が続きます。市の運営する「基地被害110番」には、「いま深夜の23時、ものすごい騒音、いつまで続くのか、けしからない」とか、「テレビの音が聞こえないほどうるさい」といった声が寄せられています。96年のSACO合意では普天間基地の返還が決まりましたが、具体的な時期は明示されませんでした。また96年当時と現在では、飛行回数が1.5倍に増えています。

 伊波洋一市長は当選以来、5年以内の基地返還と、住宅地上空の訓練中止を求めて日米政府に対して交渉を行ってきました。市としてのアクション・プランも作成しました。また市民120人が基地監視ボランティアとして監視活動をおこなっています。

 04年には訪米し、国務省・国防総省・米議会で普天間基地の撤去を訴えました。また、米軍基地のあるオーシャンサイド市やサンディエゴ市など米軍基地のある市を訪れ、この地域選出の連邦議会議員とも懇談しました。ある議員は「市民生活に不利益をもたらす場所に基地を置くべきではない」とはっきり言いました。これらの市は、「海外の基地を受け入れたい」と表明しています。またこの地域で話を聞くと、「住宅地上空でヘリを見たことはない」と言うのです。米本土と沖縄では、軍の運用が異なり、米本土では飛行ルートの下には住宅がないことが要件になっているのです。

 日米政府は普天間基地を、名護市辺野古の沿岸部に移転することで合意しました。しかし反対運動の力によって海上案が挫折したように、沿岸案も進展しないのではないでしょうか。また新基地の建設完了予定は2014年で、それまでは普天間基地が維持されるのです。危険の除去は、何年も先の話でなく、今日・明日にも必要なのです。宜野湾市は沿岸案に明確に反対します。普天間基地は危険の極限にあります。問題の解決策は、県内移転でも県外移転でもなく、米国内に移転するしかないのです。

 宜野湾市は今後も、08年の基地封鎖と、それまでの間には米本土と同じ運用基準で飛行することを求めていきます。


●座間市議会議員 伊澤多喜男さん

 キャンプ座間には米本土から陸軍第1軍団司令部が移転し、陸上自衛隊中央即応群司令部が新設され、日米の陸軍が一体化します。横須賀基地では日米の海軍司令部が、横田基地では日米の空軍司令部がそれぞれ一体化されます。この3つの基地は、国道16号線沿いに並んでいます。16号線に日米の共同司令部が集中するのです。
 1971年にキャンプ座間に自衛隊が来る際、国は「自衛隊を受け入れれば、やがて米軍は撤退する」といいました。今回も額賀防衛庁長官は同じことを言っています。
 座間市では市民128,000人のうち、62,000人の反対署名が集まりました。市が所有する公用車180台すべてに、司令部移転反対のステッカーをつけています。小中学校には、懸垂幕がかかげてあります。市民集会を2回行い、市長や市議会議長を先頭にデモ行進も行いました。



●相模原市議会議員 岩本香苗さん

 相模原市では1,700人が参加した市民集会、防衛庁・防衛施設庁への要請、抗議ハガキなど、さまざまな運動を行っています。
 報道などで「相模原市長は再編容認か?」と報じられましたが、市長の姿勢は変わっていません。相模総合補給廠は一部返還されますが、全体としては基地強化です。一部返還はこれまでの運動の成果であり、座間の強化との引き換えではないという立場です。その相模総合補給廠の一部返還も、無償ではありません。15ヘクタール・400億円を、市が国から買い取らなければいけないのです。現在市は無償返還を国に求めています。




第2部 シンポジウム「米軍再編と自治体の取り組み」

シンポジウムのコーディネーターは、座間市議会議員の牧嶋とよ子さん。



■米軍再編に反対する各地域の取り組みについて

●沖縄県/名護ヘリ基地反対協議会 安次富浩さん


 米軍再編に関する中間報告の発表後、ヘリ基地反対協や県民会議は、知事や名護市長に対して反対を要請してきました。多くの名護市民は沿岸案に反対ですが、名護市長選挙では反対陣営が分裂し、候補者が2人立ったことから、負けてしまいました。しかし新市長も、選挙公約では「沿岸案反対、SACO案に戻せ」と言っていたのです。
 
3月末、日米間の協議が加速するのと同時に、額賀防衛庁長官は北部の市町村長への説得を始めました。また名護市長を東京に呼び出し、防衛庁の中で恫喝も含めた説得を行ったのでしょう。結局は、離陸用と着陸用の滑走路をV字型に建設する案を、SACOのバリエーションとして合意しました。その後、稲嶺知事も、朝7時に防衛庁との間で基本確認書を結びました。しかし県民の70%、名護市民の90%が、沿岸案に反対しています。
 
宜野座村では、モズクの栽培場に水陸両用艇が進入し、荒らしまわっています。米軍は水路を守らないのです。宜野座の人々は「水路を守らない米軍が、空路を守るわけはない」といっています。例え基地の使用や飛行に関する協定を結んでも、米軍は守らないでしょう。しかし国は米軍に対して何も言いません。絶対に我慢できません。宜野湾市で危険な基地を、名護市に押し付けるのは差別です。11月の知事選挙で勝利し、その後には名護市長のリコール運動を考えています。
 
名護市や周辺自治体の首長は「国防は国の専権事項だから」と言い訳します。それでは負けです。国防を国に任せていたから太平洋戦争が起こり、原爆が投下され、東京大空襲があり、沖縄戦があったのです。その反省から、戦後は国民の代表として国会が国防をチェックする、自治体が地域住民の生活や財産を守ることになったのです。国にかませてはいけないのです。


●鹿児島県/鹿屋に米軍はいらない鹿児島県民の会 山崎博さん

鹿児島の鹿屋基地は、戦前に海軍基地として作られ、戦後は海上自衛隊の基地となり、いま米軍の空中給油機12機が普天間基地から移転してこようとしています。結果的に最終報告では、岩国・鹿屋・グァムでローテーションすることになりました。

 鹿屋基地は普天間基地と同様に、鹿屋市の中心部にあります。そのため米軍再編の話が出た当初から、国に対して説明を求めてきました。しかし国は「地元への説明なく再編を決めることはない」というばかりで、具体的な話はありませんでした。

 鹿屋市では、市の広報誌に毎月、基地に関する報告を掲載しました。また市主催の学習会を実施し、その内容をパンフレットにして全戸に配布しました。

 また2月26日には8000人が参加して市民集会が開かれました。集会で開会宣言をしたのは、鹿屋自衛隊婦人後援会会長です。農協の組合長や町内会連絡協議会の会長もあいさつしました。県や市も参加し、事務局は連合におかれました。一日集会の実行委員会なので、現在は休業状態ですが、このかたまりを大切にして、反対運動を作っていきたいと思います。


●山口県/岩国市議会議員 田村順玄さん



 岩国市に対しては1月20日に国からの説明が行われ、「中間報告の内容が変わることはない」として、国は井原勝介市長に同意を求めました。市議会の中でも、移転に同意し振興策を取ってはという声が大きくなり、市長を追い詰めました。

 そこで市長は3月12日に「空母艦載機部隊の受け入れの賛否を問う住民投票」を実施し、移転反対が多数となったのです。住民投票の1週間後に岩国市は周辺の8市町村と合併し、新岩国市となりました。4月23日には新市長の選挙が実施されました。基地移転反対を訴える井原市長に対して、自民党は38歳の候補者を擁立し、官房長官や外務大臣が応援にやってきました。安倍官房長官は「自民党候補が勝てば、小学校の給食費はただ」というような演説までしているのです。しかし約5万票対1万票という、圧倒的な差で、井原市長が当選しました。市民は2回にわたって基地移転反対を決めたのです。

 しかし日米は米軍再編で最終合意し、5月30日には閣議決定されました。おかしなことに当初は「中間報告の決定は一切変わらない」としていたのに、最終報告では普天間基地の空中給油機まで移転してくることになりました。

 岩国市議会は在任特例で、110人の市議会議員がいます。保守系の市議からは、耳を被いたくなるような質問が出てきます。「あなたは国の役職か、自治体の首長か。自治体の首長なら、国防は国に任せるべきだ」などです。

 また国からも圧力がかかっています。現在、岩国市では市庁舎を建て替え中です。建設費100億のうち49億を、防衛施設庁の補助金で賄っています。06年度分は11億円あるのですが、国はその支出を凍結したのです。

 こうして住民投票・市長選の結果を、市長への圧力で覆そうとしているのです。平成18年度の予算を否決しようという動きもあります。

 しかし私たちは、岩国基地の拡大に反対し、沖縄・辺野古の皆さんとともに、がんばります。


●神奈川県/横須賀市議会議員 原島浩子さん



 横須賀の蒲谷亮一市長が、原子力空母の横須賀配備を容認する発言をしました。それまでは空母の配備は認めるが、原子力空母は認めないというものでした。1973年に横須賀に空母が配備された際に、米軍は「将来に渡って原子力空母は配備しない」と約束していました。今回の配備はその約束を破るものです。

 原子力空母の配備をめぐって、横須賀市は、市民の意見を聞く会を開きましたが、参加者も制限され、内容は非公開でした。

 米国は原子力空母の安全記載した、ファクトシートを提出しました。その内容に対する横須賀市から国への質問に対して、麻生外務大臣は「事故は100パーセントない。原子力空母は安全である」と回答しました。市長はそれで、「安全性を確認した」としているのです。

 横須賀では08年の原子力空母配備に向けて、12号バースのしゅんせつ工事が始まっています。戦前に日本軍の軍港であった横須賀には、軍転法が適用され、平和をめざす責任が課せられています。今後とも原子力空母の母港化に反対していきます。


●神奈川県/相模原市議会議員 金子豊貴男さん

 厚木基地の問題についてお話します。厚木基地は厚木市ではなく、大和市にあります。大和市長は、厚木基地の再編問題について、「だんまり」を続けてきました。厚木基地に所属する空母艦載機が、岩国基地に移転すること自体は、騒音被害の軽減につながると考えているからです。

 では騒音は、軽減されるのでしょうか。米軍再編案では、横須賀を母港とする空母の艦載機部隊は、厚木基地から岩国基地に移転することになっています。しかし再編案には、訓練空域の変更は記載されていません。現在、空母艦載機が訓練しているのは、三宅島・大島周辺の海上です。岩国基地から訓練空域に直接向かうには、燃料が足りません。そのため岩国基地を飛び立った空母艦載機が厚木基地に降り、そこから訓練空域で訓練を行い、また厚木基地を経由して岩国基地に帰る可能性があります。

 空母艦載機のメンテナンスを行う整備部隊の移転も、記載されていません。航空機は5回の飛行に1回の割合で整備が必要です。部隊は岩国に移転しても、厚木を経由して訓練空域に行き、また整備も厚木で行うことになれば、飛行回数も騒音も、それほどは減らないでしょう。

 それだけではありません。空母艦載機と交換に、海上自衛隊の哨戒機P3C17機が厚木に移転してきます。空母は1年のうち、7ヶ月ぐらいは海外で活動しています。ですから艦載機が厚木で訓練するのは、5ヶ月ぐらいです。しかし自衛隊は通年で活動します。しかも現在のP3Cはプロペラ機ですが、数年後にはジェット機化されます。

 厚木では爆音被害に対する裁判が行われ、爆音の違法性が認められてきました。7月の13日には、第3次訴訟の判決も言い渡されます。


■今後、どのような反対運動が可能なのか

●金子豊貴男さん
 米軍再編を止めるために、自治体にできることは、たくさんあると思うのです。例えばキャンプ座間に米陸軍第1軍団の司令部を移転するためには、あらたな施設を作らなければなりません。しかしキャンプ座間のある地域は、「市街化調整区域」に指定されていて、新しい建物を作ることを禁じています。もし作るのであれば、都市計画審議会の許可が必要になります。また相模補給廠のある地域は、区分上は「白地」になっています。ここに新たな建物を作る場合にも、指定が必要です。国と自治体に、現行の法律や制度を守らせれば、新たな米軍施設の建設を阻むことができるのです。


●原島浩子さん
 米軍再編に、どこからストップをかけられるのか、いろいろ考えなければなりません。運動や裁判や選挙と、私たちができることは、たくさんあると思います。横須賀の場合は、港湾法や港湾管理者としての市長の権限があります。市長の判断に「まった!」をかけるにはどうしたらいいのか。選挙で選ばれている政治家は、何を言おうと、本当は市民が怖いのです。私たちが声を上げ続けることが大切です。国に対しては、国家の安全保障で米軍を配備するのなら、人間の安全保障はどうなるのかと訴えること、市民に対して原子力空母の配備による生命の危険を訴えていきたいと思います。


●田村順玄さん
 米国は、「米軍再編はパッケージだ」といっています。どれか1つが止まっても、全体が動かなくなる。日本政府はあちらの自治体、こちらの自治体で、それぞれ都合のいいように、異なる内容を説明しています。ですから運動の横の連携が大変重要だと思うのです。もし全国の反基地運動が集まっている場所に政府の役人が説明に来れば、つじつまが合わなくなって、矛盾がたくさん出てくるでしょう。全体でパッケージですから、私たちは「1ヶ所のほころび」を見つけることが大切だと思います。

●山崎博さん
 鹿屋市には自衛隊の基地はありましたが、米軍基地はありませんでした。ですから「米軍が来る」ということが、具体的にどういうことなのかわからなかったのです。米兵の犯罪が起こるかもしれないし、基地被害がおこるかもしれない。ですから、米軍基地のある自治体に情報を求めました。こうした行政間の連携や情報交換が、今後も重要になると思います。
 また自治体をどう支え、生かしていくのか、自治体にできる取り組みを、私たちが要求していくことも重要でしょう。


●安次富浩さん
 米軍基地は「粗大ごみ」ですよ。沖縄に「粗大ごみ」を押し付けようとしていますが、SACO合意による辺野古への海上基地建設は、私たちの海上闘争でつぶしました。再編に関する閣議決定も、私たちの力でつぶすことができます。ですから沖縄では、再編の閣議決定が行われたことは気にしていません。
そもそも、滑走路をV字にして離陸用と着陸用に分ける、という説明がまやかしです。普天間基地では航空機が着陸と離陸を繰り返す、タッチ・アンド・ゴーの訓練を行っていますが、滑走路が分かれていては行えません。また滑走路は風向きによって、どちら側から進入するかが決まります。一方を離陸専用、一方を着陸船用とすることは、できないのです。それに英文のロードマップには、メイン滑走路とサブ滑走路と記載されています。
沖縄では11月の知事選挙が焦点です。基地建設には海面の埋め立てが必要で、それには知事の許可が要ります。反対派の知事が誕生すれば、政府は海面埋め立てのための特措法を強行してくるでしょう。9月の名護市議選にも、反対派で過半数を取れるように候補者を擁立します。米軍再編をアジアの視点で見るために、韓国・グァム・ハワイの民衆運動との連携も、深めていきたいと思います。



●非核市民宣言運動ヨコスカの新倉裕史さんが、全体のまとめを報告。



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