第43回護憲大会 
全国基地問題ネットワーク交流集会での各地域の報告


第43回護憲大会が11月3日から5日、大分県別府市で開催されました。護憲大会2日目の4日午後には、全国基地問題ネットワークが交流集会を開催しました。以下はその交流集会で、各地域から出された運動報告です。


●沖縄からの報告
沖縄平和運動センター幹事・沖縄県高教組委員長 松田寛さん

 沖縄は11月19日に、大きな政治決戦を迎えます。私たちは紆余曲折を経て、糸数けい子さんを県知事選挙の候補者として決定しました。全野党の共闘で、この選挙を勝ち抜く決意を固めています。この選挙は沖縄県だけにとどまらずに、中央の政治状況に大きな影響を及ぼします。そのために私たちは、全力を挙げて取り組んでいます。

安倍晋三首相は就任の記者会見で、当面する課題として、教育基本法の改正・沖縄の知事選・在日米軍再編の3つをあげました。沖縄からすると、3点とも譲るわけにはいきません。教育基本法については、沖縄は皇民化教育によって戦場に叩き込まれて、14歳から16歳の子ども達が、鉄血勤皇隊として戦争に突っ込んでいきました。鉄血勤皇隊は、県や教育団体が名簿の提出をして軍と一緒になって、「ねこそぎ動員」を行ったことが、米国の公文書館に残っている文書で明らかになりました。教育基本法が改悪されたらどうなるのか、そのことを如実に示していると考えます。

米軍再編は、知事選の大きな争点です。自公は、なりふりかまわぬ闘いを仕掛けてきています。私たちも国との総力戦と考えています。知事選は米軍再編の行く末、沖縄の行く末を左右します。何としても勝ち抜いていきたい。全国の皆さんに支援をお願いしたいと思います。

在日米軍再編は、日米軍事同盟の強化です。憲法だけでなく、日米安保すらも、大きく踏み越えるものです。10月に入り、パトリオットミサイルの嘉手納基地への配備が始まりました。来年3月までに、24基を配備することが決まっています。パトリオットミサイルを積んだトラック800台が、夜中の1時から6時の間に、嘉手納基地に入っていきました。私たちにはベトナム戦争時を想起する事態でした。平和運動センターに結集する仲間たちは、「何としても阻止する」として、パトリオットミサイルが荷揚げされた天願桟橋で、3日間にわたって座り込み闘争を闘いました。

これだけ巨大な米軍と権力の前で、3日間にわたって完全に搬送を阻止しました。わずか3日間かもしれません。しかしその3日間が、私たちにとって、大きな闘いの原動力になったことは確かです。

また新聞では、次世代戦闘機F35の配備が明らかになりました。今後10年以内に、54機を嘉手納基地に配備するとのことです。F35戦闘機はステルス戦闘機で、レーダーに感知されません。また配備に関して、1年から2年かけて調査を行うとしています。その調査項目には、動植物への影響、騒音レベル、大気の変化、地域経済への影響があがっています。まったく、えたいの知れない新鋭機が、嘉手納基地に配備されるのです。

普天間基地の辺野古への移設については、米軍側は移転工事を来年1月から開始したいということで動き出しています。そのために現在、名護市の教育委員会が文化遺産の調査をしています。それについては、平和センターや市民グループが歯止めをかけています。しかし着手しやすい米軍基地内での工事ですから、闘いの工夫が求められています。私たちは全国の連帯を求めながら、阻止の闘いを進めていきます。

知事選に勝利すれば、工事を止めることができます。ですから私たちは、19日の知事選に向けて、闘いを進めていきます。



●鹿児島からの報告
鹿児島県平和運動センター事務局長 山崎博さん

この秋以降の取り組みを紹介します。鹿児島は米軍再編に関連しては、普天間基地の空中給油機、部隊については岩国基地に移転することになりましたが、訓練をグァムと鹿屋基地で行うことになりました。当初は部隊の移転が計画されていましたが、それが訓練移転にかわりました。しかし「ありの一穴」、一度でも米軍が来れば、好きなことをされてしまいます。鹿屋市長以下、地元は「反対」を鮮明にしてがんばっています。一方で動揺も広がっていますので、市長を支えて、しっかりがんばります。

さて8月には、小銃を持ち完全武装の陸上自衛隊員700人が、1泊2日で鹿児島市から鹿屋市までの行進を行っています。国道を堂々と完全武装で歩いたのです。また米軍機が夜、鹿児島市の上空で低空飛行を行いました。こうしたことが重なったために、県庁に対して「県民の安全をまもれ」という申し入れを行いました。

10.21国際反戦デーの取り組みとして、県内14地区で集会やデモを行いました。しかし残念ですがデモができたのは4地区でした。鹿児島の運動の弱さもあり、最近は外に出てデモをしていません。市民にアピールすることができていません。もう一度、大衆運動をしっかりやろうと考えています。

11月2日には、米海軍の駆逐艦ハルゼーが、民間港湾の鹿児島港に入港することになりました。2月のJSマッケインに続いて2回目の入港です。ハルゼーは巡航ミサイルトマホークを搭載しています。非核三原則もあり、10月19日に県に対して、入港拒否を申し入れました。これに対して県は、「外務省に問い合わせたところ、米側からの事前協議は無かった。事前協議が無いということは、核を搭載していないということ」として問題がないと判断し、「入港を認める」ということでした。私たちは神戸方式なども例に出し、「事前協議がないということは核を積んでいないと確認していいのか」という文書を外務省に出し、外務省から返事をもらえ。鹿児島方式と呼ばれるぐらいのことをせよ、といったのですが平行線で終わっています。

鹿屋現地は、畜産が盛んな地域です。いま鹿屋基地に駐留している自衛隊の航空機はプロペラ機で、音はそう大きくはありませんが、それでも騒音被害があります。牛や豚は音に敏感です。それが、米軍機が来ることによってどうなるのか。また米兵が来ることによる治安問題もあります。商工会の中には「米軍が来れば地域振興につながる」という思いがあります。ですから、米軍は地域振興につながらないというところも強調しなければなりません。こうしたことを、米軍基地のある地域から学ぶために、11月13日には、相模原市議の金子さんを講師にして、学習会を行います。

さらに27日には、平和運動センターと社民党でつくる県民の会・地域住民の会・連合鹿児島・連合地協の4者で、鹿屋市長に対して、座間や相模原に学んで自治体の率先した反対運動をつくること、宜野湾市・岩国市と連携すること、訓練移転反対を米国に直接申し入れをすること――などを要望することにしています。

沖縄・神奈川・山口に比べれば、鹿児島には訓練のために米軍機が2〜3機やってくるだけです。しかし、最初の1歩が肝心です。絶対にこさせないために、行政と連携し、市民の中で多数派になるために、これからもがんばっていきます。


●長崎からの報告
佐世保地区労 原正已さん


横須賀を母港とする空母キティーホークが、佐世保に入港することが明らかになりました。5500人の乗組員の休養と物資補給という名目です。卵だけでも100万個調達するようです。5月に空母リンカーンが入港した際には、佐世保では間に合わないので、福岡を中心に補給物資を発注したそうです。今後の有事体制の中で、佐世保を中心に発注しないと、地元との関係もうまくいかないということで、今回は佐世保の業者に発注したようです。5月のリンカーンと、今回のキティーホーク。1年間に2回も空母が入港するのは、16年ぶりです。佐世保の基地が強化されている現状にあります。佐世保地区労は社民党佐世保総支部と共に、海上での船による抗議行動と、陸上での抗議行動を行う準備をしています。

 佐世保では、基地がらみの事件・事故が、続発しています。5月にリンカーンが入港した時には、抗議船団に向かって、米海軍の警備艇が機関銃を向けました。また海上自衛隊護衛艦のこんごうが、船団の真ん中を割って通りました。これまで何度も抗議船団を行ってきましたが、これほどの敵対行動が行われたのは初めてです。海上保安庁や佐世保市に対しても、抗議を行いました。

 10月14日には、米兵が交際中の日本人女性を刃物で刺す、殺人未遂危険が起きました。96年7月には強盗殺人未遂事件、04年には強姦致傷事件が起きています。万引きなども発生しています。その都度、地区労と社民党で、佐世保市に対して申し入れを行っています。14日の殺人未遂事件では、その日のうちに米軍司令官が市長に対して、謝罪に訪れました。しかし今後の防止策については、司令官は一切明らかにしませんでした。このことに対しては、「市長も怒っている」と新聞で報じられました。

 10月21日には、基地内の前畑弾薬庫が、火災を起こしました。一番近い民家からは70メートルしか離れていません。午後2時ころには火災が発生したようですが、米軍から佐世保市に対しては、一切連絡がありませんでした。報道で知った佐世保市と市の消防が、米軍に問い合わせても返事がありました。消防車は基地の門まで行きましたが、米軍からの要請がないために基地内に入れませんでした。米軍は「現在鎮火中」としか言わない。市民の生命にかかわる問題でも、日米地位協定を盾に基地内に入らせないのです。市民の命を無視した米軍の行動です。何年か前には基地内で水道管の破裂事故がありましたが、水道局が駆けつけても「身分証明書がない」として、発行するまでの丸1日間、水道の水がながれたままということもありました。

 原子力潜水艦は、今年だけで16回入港しています。これまでは年に10回前後でしたが、ここ数年20回近く入港しています。さらに9.11以降は、「入港24時間前の通知」すら、守られていません。

 海上自衛隊については、佐世保からインド洋には、通算18隻が派遣されています。また昨年9月には自衛隊の創立記念日に、飛行中のヘリコプターが市民の目の前で墜落事故を起こしました。米軍・自衛隊両方の事件や自己が続発しているのです。

 佐世保地区労は、そのたびに、社民党と協力して、抗議行動を行っています。これからもがんばります。


●山口からの報告
山口県平和運動フォーラム代表 中嶋光雄さん

岩国は基地のある街で唯一、騒音訴訟のない、「物言わぬ、静かな、国策に協力する街」と言われてきました。しかし今回の米軍再編を巡っては、全国で唯一の住民投票が行われて、結果は圧倒的な勝利でした。住民投票の行われた3月12日に、神奈川県ではキャンプ座間包囲行動が行われ、私も参加していました。デモ中の4時ごろ、投票率が50パーセントを越えたと連絡が来て、私はその報告をさせてもらいました。

米軍再編の中で、岩国基地が極東最大の米軍基地になるかもしれない。状況は緊迫しています。住民投票と、その後の市長選挙で、物言わぬ市民も少しずつ変わってきています。

私は自治労の出身です。先日、岩国市職に対して、住民投票以降の4月から9月までの間に、米軍基地に対する苦情がどれだけ来ているか、調べてもらいました。この半年に533件の苦情が寄せられています。昨年同期は222件でした。2.4倍です。この半年間の「うるささ指数」は78.7、昨年は77.7です。騒音が特に大きくなったわけではありませんが、住民投票と市長選を通して、市民が関心を寄せるようになった証拠です。中身も「うるさい」というだけではありません。「訓練をやめさせろ」「何か特別の訓練をはじめたのか」という風に、関心が強くなっています。

米海兵隊が海外に持つ基地は、普天間と岩国です。その岩国に海軍が来ることが、一昨年に突然あきらかになりました。そうした中で4月5日には、市民団体の皆さんが行う集会の前段行動として、関西以西の各地から駆けつけてもらって、ビラの配布行動を行いました。本当に感謝しています。

 岩国市では自治体合併後に、市議会議員選挙が行われました。定数34人のうち、17人が「基地はいらない」という主張です。「受け入れ」派が12人。無回答が5人です。市民は圧倒的多数が反対でしたが、議会では反対派が半数になりました。このことを受けて商工会などは「容認派・現実派が増えた」というコメントを出しています。

 国は露骨な圧力をかけてきています。岩国市では、市庁舎の建て替えを行っています。109億の予算のうち、3分の2は国が補助することになっていました。しかしこれが、空中給油機移転の見返りとして単年度での支出となって、現在のところ11億しか支払われていません。受け入れとセットですから、来年については予算が確定していません。

 山口は上関原発の闘争もしています。カンパ要請に対して、全国のみなさんの協力をいただきました。ありがとうございました。


●神奈川からの報告
神奈川平和運動センター事務局長 加藤泉さん

神奈川は、基地の軽減どころか強化ばかりです。キャンプ座間への第1軍団司令部の移転は、安保条約の極東条項すら破るものです。これまでに2度、キャンプ座間の包囲行動を行いました。相模原には、相模総合補給廠があります。いま、その3分の1を人間の鎖で囲む行動を計画しています。ご協力をお願いします。

 厚木では、航空機騒音がひどく、過去5回の裁判で「違法」との司法判断が出ています。第3次訴訟では7月に、40億を越える損害賠償の判決が出ました。国は上告せず、確定しました。国が「違法騒音」を認めて、金を払うことになったのです。空母艦載機が岩国に移転すれば、その騒音も岩国にいきます。また航空機の整備施設は厚木に残りますから、厚木の騒音も減りません。いま第4次訴訟の準備を始めています。今回、騒音対策区域の見直しがあり、東京の町田のほうまで騒音区域が広がりました。東京平和運動センターにも相談し、一緒に行いたいと考えています。

 横浜では施設の一部が返還されます。その見返りとして、池子住宅地の横浜市域分に、700戸の住宅を建てることになります。「原子力空母の乗組員対策ではないか」という見方もあります。「きょうは横須賀、きょうは座間、きょうは池子」と、毎日活動している状況です。先日社民党の福島瑞穂さんとともに、池子の弾薬地跡地に入りました。自然が残っている、大変素晴らしい場所です。「住宅とはいえ米軍基地を作ってはいけない」という決意を新たにしました。

 全国の皆さんの支援をお願いします。



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