朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する国連制裁決議に関しての問題整理



1.10月14日午後(日本時間15日未明)、国連安全保障理事会は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する制裁決議を、全会一致で採択しました。決議は、北朝鮮が大量破壊兵器の保有を断念するよう要求し、そのために国連憲章7章第41条〔非軍事的措置〕に基づく制裁を行うとしています。憲章第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」には、第41条〔非軍事的措置〕と第42条〔軍事的措置〕の2つの項目があります。米国は当初、7章全体の適用を求めましたが、制裁が武力衝突に発展することに中国が懸念を表明、41条〔非軍事的措置〕に限定した決議になりました。

2.北朝鮮への具体的な要求項目は以下の通りです。
@さらなる核実験またはミサイル発射を行わないこと
ANPT条約からの脱退宣言の即時撤回
BIAEAによる査察の受け入れ
C弾道ミサイル計画に関する全ての活動停止、ミサイル発射凍結の約束の復活
D核兵器開発の完全で検証可能・不可逆的な放棄
E全ての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の完全で検証可能・不可逆的な放棄

また、この項目を実行させるための制裁措置として、加盟に対して以下の項目の実行を求めています。
@戦車・装甲車・大砲・戦闘機・攻撃ヘリコプター・軍艦・ミサイルシステムの輸出禁止
A核開発と弾道ミサイル開発に関連する物品の輸出禁止
Bぜいたく品の輸出禁止
C軍事援助・トレーニング・アドバイス・サービスの提供禁止
D核と大量破壊兵器開発に関連する個人や団体の金融資産の凍結
E核と大量破壊兵器開発に関連する個人や団体その家族の渡航禁止
F核兵器・化学兵器・生物兵器の移動を禁止するための臨検の実施
ただし食料品や医療などに関する資金の使用は、凍結免除の対象になっています。

3.私たちは国連制裁決議が、中韓ロの主張を受け入れ、武力行使を含まない非軍事的措置に限定されたことを評価します。しかしそのことは、戦争の危機が完全に去ったことを意味するものではありません。米国のボルトン国連大使は、「決議は金正日体制に懲罰的制裁を科した」と強調し、北朝鮮が国際的孤立の道を突き進むなら「深刻な結果」を招くと警告。北朝鮮が決議に従わなければ、安保理の「追加的行動」に直面するとして制裁強化を示唆しました。非軍事的措置=経済制裁の次の段階として、米国は軍事的措置を用意しています。
また今回、米国は非軍事的措置の一環として、北朝鮮に出入りする船舶への臨検活動を行うとしています。北朝鮮のパク・キルヨン国連大使は「不当な決議を完全に拒否する」と語るとともに、「米国がさらに圧力をかけるなら宣戦布告とみなし、物理的な報復手段をとり続ける」と述べています。 米国が海軍艦船による臨検を行った場合、またさらなる追加制裁を行った場合には、米中戦争に発展する可能性もあるのです。

4.米国は国連加盟国に対して、臨検活動への参加を求めています。米国のシーファー駐日大使は13日夕、首相官邸で塩崎官房長官と会談し、米軍が船舶検査を行う際の日本の協力を要請しました。大使は会談後、「日本が意味のある貢献をすると確信している」と記者団に語り期待感を示しています。日本政府も臨検活動への積極的な参加や、航空機による偵察活動と米軍への情報提供などを検討しています。

5.私たちは、全ての国の、核実験と核兵器の保有に反対します。同時に全ての国の、武力による威嚇や武力の行使に反対します。今回の国連制裁決議は、北朝鮮の核保有に対する国際的な憂慮を伝え、制裁措置は非軍事的な手段に限定されており、北朝鮮の核保有を放棄させる可能性を十分に持っています。私たちは長い議論の末に、抑制された決議を決定した安保理関係国に敬意を表します。私たちは北朝鮮に対して、安保理の決定に従い、核兵器やミサイル兵器の放棄を求めます。米日両国に対しては、安易な軍事力の行使を行わないように自制を求めます。また中国・ロシア・韓国に対しては、北朝鮮に核兵器開発を放棄させるための説得を続けることを求めます。

6.私たちは、軍事力には軍事力で対抗するという時代は、20世紀で終わりを告げたと考えていました。しかし今でも世界の各地で、戦争や武力紛争が絶えません。東北アジアの地を、戦場にするわけにはいきません。戦争を回避する手段は、関係国による話し合いしかないのです。話し合いの意義を否定した瞬間に、私たちは戦争と暴力の連鎖の中に陥ってしまいます。私たちは6カ国協議の再開・日朝2国間協議の再開・6カ国首脳級会議の実現・米朝2国間交渉の実現を、無条件で求めます。国際社会と人類の英知を尽くして、戦争を回避しましょう。

(作成日:10月15日)


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