航空自衛隊入間基地へのPAC3配備反対
埼玉県平和運動センター先頭に申し入れ


日米が進める弾道ミサイル防衛計画(MD)の一環として、迎撃ミサイルPAC3が3月29日に、埼玉県の航空自衛隊入間基地に配備されます。これまで入間基地などの航空自衛隊基地には、敵の航空機を迎撃するためのPAC2が配備されていましたが、弾道ミサイルを迎撃するPAC3の配備は、今回の入間基地が最初です。今後、2007年度中には神奈川県の武山基地、茨城県の霞ケ浦基地、千葉県の習志野基地に、2011年度までは全国16の航空自衛隊高射隊に配備されることになります。

 日本政府は弾道ミサイル防衛に関して、大気圏外での迎撃は海上自衛隊のイージス艦から発射されたSM3ミサイルが、大気圏内での迎撃は航空自衛隊のPAC3が実施することにしています。また3月23日の閣議で、他国から日本に対して弾道ミサイルが発射された場合には、部隊指揮官の判断で迎撃できる「緊急対処要領」を決定しました。海上自衛隊と航空自衛隊は今後、迎撃ミサイルの配備を進めることになりますが、日本は軍事衛星を保有していないため、他国のミサイル発射の情報は米国から提供を受けることになります。日米のミサイル防衛を一元化するために、在日米軍再編協議の中では、東京の横田基地内に「共同統合運用調整所」も設置されることになりました。つまり米国の軍事衛星の情報を元に、米軍の指揮下で、海空自衛隊が迎撃ミサイルを発射するのです。これは憲法の禁じる集団的自衛権の行使にあたります。

 こうした中、埼玉県平和運動センター・平和運動センター関東ブロック連絡会・平和フォーラムの3団体は入間基地に対して3月28日、PAC3の配備中止を求める申し入れを行ないました。この申し入れに際しては、社会民主党の衆議院議員・日森文尋さんが仲介してくれました。

神奈川平和運動センター事務局長の加藤泉さんからは、「神奈川の武山基地にも、PAC3が配備される予定と聞いている。この申し入れは、入間基地への反対だけではなく、全国への配備中止を求めるものと理解してもらいたい」と話しました。

また東京平和運動センター事務局長の関久さんからは、「実際に発射する場合の指揮・運用はどうなっているのか」「敵のミサイルを迎撃した場合、その破片が周囲に落下し周辺住民に被害がでると考えられるが、どう対処するのか」と質問しました。

これに対して航空自衛隊の担当者は、「皆さんのご意見を基地司令にお伝えします」と述べるとともに、迎撃の指揮・運用については、閣議決定に基づき今後防衛省が細則を定めることになると回答しました。また破片の落下物については、「現在のところ、どのくらいの破片が、どのくらいの範囲で落下するのかデータがありません。今後、海外での発射訓練などを通してデータを集めて対処を定めます」とのことでした。

以下は、申し入れの写真と、要望書です。




●申し入れの趣旨を説明する衆議院議員の日森文尋さん。



●埼玉県平和運動センター議長の浪江福治さんから要請書を提出。


2007年3月28日

中部航空方面隊司令 廣中雅之 空将補 様

埼玉県平和運動センター 議長 浪江福治
平和運動センター関東ブロック連絡会 代表 浪江福治
フォーラム平和・人権・環境 代表 江橋 崇

要請書
入間基地へのPAC3の配備に反対します

私たちは、労働組合や民主団体で構成する平和運動団体です。この間、憲法改悪や有事法制の制定、在日米軍再編やイラク・アフガニスタンでの自衛隊による米軍への戦争協力に反対してきました。

航空自衛隊入間基地では3月29日から、PAC3の配備を開始するとの報道に接しました。また政府は3月23日の閣議で、他国から日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合に、部隊指揮官の判断で迎撃できることを定めた「緊急対処要領」を決定しました。入間基地へのPAC3の配備は、日米軍事一体化の第一歩であり、東アジア地域の緊張を高めるものです。私たちはPAC3の配備に反対します。

在日米軍再編では、航空自衛隊航空総隊司令部が、在日米空軍司令部のある横田基地に移転します。防空とミサイル防衛のための共同統合運用調整所も設置されます。他国からのミサイル発射の情報を米国に頼っている現状では、自衛隊は米軍の指揮の下でPAC3をはじめとした迎撃ミサイルを発射することになります。これは憲法の禁じる集団的自衛権の行使です。私たちは、認めるわけにはいきません。

PAC3の迎撃率は正式には発表されていません。しかし米国の専門家によるレポートでは、50%程度とされています。PAC3は開発途上の未完成の兵器です。また初期のパトリオットミサイルからPAC2・PAC3へと能力向上が進んでいますが、PAC3は今後もシステムの更新が進みます。日本はそのたびに、多額の費用をかけて更新を進めなければなりません。防衛費を含めて国家財政の緊縮が行なわれている中で、性能も定かでなく、今後の更新費用がいくらも分からない装備を購入するのは、税金の無駄遣いです。

そもそも、朝鮮民主主義人民共和国や中国などの周辺国から弾道ミサイル攻撃を受けた場合に、ミサイルが日本に着弾するまでの時間は数分であり、迎撃することが可能であるとは考えられません。米国と一体となったミサイル防衛の推進は、東アジア地域の軍事的な緊張を高めるでしょう。日本にミサイル防衛の拠点を作ることは、米国の利益にはなりますが、日本の利益にはなりません。日本のとるべき道が、周辺諸国との協調によって東アジア地域の平和を維持することであることは明らかです。

以上の理由から、私たちは、航空自衛隊入間基地へのPAC3の配備を中止することを求めます。




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