【解説】岩国市庁舎問題と米軍再編

(2007年12月10日)


岩国基地と米軍再編
 日米両国政府は、在日米軍再編で合意しました。米国が、中東やアジアで軍事行動を行うために、日本全体を米軍の中軸基地にする計画です。全国各地で、米軍基地の再編・強化が始まっています。
 山口県岩国市にある岩国基地には、米海兵隊第1航空団・第12航空群所属の戦闘機と、海上自衛隊の哨戒機部隊が駐留しています。在日米軍再編では、海上自衛隊の哨戒機部隊が岩国基地から神奈川県の厚木基地に移転し、米海軍の空母艦載機部隊が厚木基地から岩国基地に移転してくることになりました。
 現在配備されている海兵隊の航空機は57機で、厚木から移転する航空機は59機、合計すると116機にもなってしまうのです。

市民と自治体の反対
 日米政府が岩国基地の強化で合意するにあたり、日本政府から岩国市への相談や説明は、一切ありませんでした。突然の決定に岩国市長の井原勝介さんは反対を表明、また住民の意思を確認するために、06年3月に住民投票を行いました。この住民投票で、51%の岩国市民が空母艦載機の移転に反対の意思を示したのです。
 ところが日本政府は、市長・市議会・市民が一体となった「空母艦載機移転反対」の声に耳を傾けることはしませんでした。それどころか岩国市に対して、約束していた補助金をカットするという手段で、反対意見の切り崩しを図ろうとしたのです。これが「新市庁舎建設費問題」の発端です。

カネで頬たたく日本政府
 岩国市は、新市庁舎を建設しています。建設費81億5000万円のうち49億円を政府の補助金でまかなう予定で、既に2年間交付されています。最終年度の07年度は35億円の補助金を見込んでいました。岩国市への補助はSACO関係費が当てられていました。SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)は1996年、沖縄の基地負担軽減のため、普天間基地の返還や、実弾砲撃演習の訓練移転などで合意しました。その中で普天間基地の空中給油機を岩国基地に移転することになり、岩国市も同意。見返りとして、新市庁舎建設への補助金交付が決まったのです。
 ところがSACOで合意した空中給油機の岩国基地移転が、米軍再編で再度検討され、岩国基地移転を基本に鹿屋基地とグアムへのローテーション展開へと変わりました。また新たに空母艦載機の移転も決まりました。そこで政府は岩国市への補助金を、SACO関係費から米軍再編交付金に移したのです。
 岩国市は空中給油機の移転は受け入れましたが、空母艦載機の移転には反対しています。そのために政府は米軍再編交付金の交付対象となる自治体から、岩国市を除外してしまったのです。国が一方的に約束を反故にしたことで、岩国市には新市庁舎の建設費用が無くなってしまいました。一方で、岩国市周辺の3市町は交付金の対象になっています。
 政府は米軍再編を、「国の専管事項」としています。岩国市が拒否しても、空母艦載機移転を強行するでしょう。周辺自治体は交付金を受けながら、最も負担の大きい岩国市は交付金を受けられないことになるのです。

3度示された艦載機移転反対の民意
1.住民投票(06年3月12日)
井原市長は空母艦載機の受け入れに関する市民の意思を確認すため、住民投票を実施しました。投票資格者84,659人の51.30%にあたる43,433人が反対票を投じ、移転反対が住民意思になりました。

■投票結果
 艦載機移転に反対   43,433人
 艦載機移転に賛成    5,369人

2.市長選挙(06年4月23日)
住民投票後の3月20日、岩国市は周辺の7町村と合併し、新岩国市になりました。そのために、空母艦載機の受け入れに賛成する自民党からは、「合併前の住民投票の結果は無効」との声も上がりました。新岩国市では4月23日に市長選挙が行われました。自民党は移転賛成の候補者をたて、大物国会議員を投入して選挙を進めましたが、井原市長はダブルスコアの大差で勝利しました。

■選挙結果
 井原勝介候補(無所属)  54,144票
 味村太郎候補(自民推薦) 23,264票

3.市議会選挙(06年10月22日)
新岩国市の市議会議員選挙は、10月22日に行われました。結果は定数34のうち、受け入れ反対派・17人、賛成派・5人、意思表示せず・12人となりました。岩国市民はまたも、空母艦載機の受け入れに反対の意思を示したのです。しかしその後、公明党議員4人が反対から賛成に態度を変更、現在は反対派が少数になってしまいました。

がんばれ!!岩国 全国の仲間も応援している
 政府が補助金をカットしたことにより、岩国市では、新市庁舎の建設費用を、新たに捻出しなければならなくなりました。そこで井原市長は、合併特例債を建設費にあてる予算案を作成しました。ところが政府の意向うけた保守系と公明党が多数を占める市議会で、この予算案は4回にわたって否決されてしまったのです。
 そもそも、米軍再編交付金は、米軍基地という「迷惑施設」を受け入れている自治体に対する「迷惑料」です。自治体が米軍再編に「賛成か」「反対か」にかかわらず、等しく交付されるべきです。
 自民党政府は、「地方分権の推進」を掲げています。地方分権は、「その地方のことは、その地方で決める」ことが原則です。国の考えと違うからと、補助金をカットしてしまうのは、地方分権に反します。また地方自治への不当な介入です。「カネ」で住民の頬をたたき、米国の軍事政策を押し付ける政府を、許すわけにはいきません。全国から岩国市民と井原市長を応援する声をあげましょう。


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