嘉手納基地爆音訴訟支援集会に200人が参加
■開催日  7月24日(金)18:30〜
■会 場  全水道会館


 7月24日夜、東京都文京区にある全水道会館で、「沖縄・新嘉手納基地爆音訴訟 最高裁へ飛行差止等を求める7・24東京集会」が開かれ、市民団体や労働組合の関係者など約200人が集まりました。集会を呼びかけたのは、「新嘉手納基地爆音差止等請求訴訟原告団」と、「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」の2団体です。沖縄からは原告団10人と、弁護団が駆けつけました。また平和フォーラムも協力団体として参加しました。
 
 米軍嘉手納基地の周辺住民は、生活を破壊する基地の爆音に対して、航空機の飛行差し止めを求める訴えを起こしました。本年2月27日、福岡高等裁判所那覇支部は、騒音被害に対する損害賠償を認める判決を下しましたが、飛行差し止めは認めませんでした。そこで原告団は、最高裁判所に上告して闘いを続けることにしました。地方裁判所や高等裁判所での審理とは異なり、最高裁判所での審議は書類審査のみで結審してしまいます。原告団が意見を述べる機会がありません。そのため原告団は、最高裁判所に対して飛行差し止めを求める人々の声を伝えるために、全国の様々な団体に呼びかけて、署名提出活動を開始したのです。

 今回の集会はそうした活動の一環として、首都圏の平和団体や反基地団体に、嘉手納基地周辺住民の置かれている実態を知ってもらうために開かれたものです。また集会に合わせて、「全国基地爆音訴訟原告団連絡会」の会議も行われ、小松基地・厚木基地・横田基地・岩国基地・普天間基地の原告団も集まりました。

 集会冒頭に、嘉手納基地の爆音被害と、原告団のこれまでの取り組みを紹介するDVDが上映されました。続いて、原告団副会長の又吉清喜さんから報告が行われました。又吉さんは外務省の、「沖縄のみなさんには迷惑をかけています。しかし日本は米国と安保条約を結んでいます。米国には何も言えないのです」という態度を強く批判しました。また、日本国憲法の下に復帰しながら、人権が守られていない沖縄の現状を変えるために、全国の皆さんの力を貸してほしいと訴えました。

 また弁護団は、嘉手納基地周辺住民の中には、聴力損失者の数、低体重児の出生率、虚血性心疾患患者の数などが他の地域よりも多いことなど、爆音が健康に与える被害を解説しました。
 
 「沖縄平和運動センター」事務局長の山城博治さんは、沖縄米軍基地の現状を、@既存基地の強化、A新基地建設、B民間施設の軍事利用――の3点から解説しました。

 平和フォーラムは、沖縄平和運動センターと新嘉手納爆音訴訟団の要請に応えて、最高裁への署名提出運動に取り組んでいます。署名の集約目標は20万筆です。最高裁で勝利判決を勝ち取るために、署名活動への一層の協力をお願いします。


●原告団副会長・又吉清喜さんからの訴え

 私たちはこれまで、地方裁判所、あるいは高等裁判所での裁判の中で、沖縄の現状を力強く訴えてきました。憲法で保障された基本的人権、静かな夜を返せという事です。そうした中で2月27日に、高等裁判所の判決が出ました。裁判所は、「嘉手納の爆音は違法だ」と認定しました。しかし飛行制限については、何ら認めませんでした。今回の最高裁判所でも、同じようなことになるかもしれません。私は「司法が逃げている」と感じています。

 私たちは、このままでいいのでしょうか。全国で爆音訴訟裁判が行われています。しかし飛行差し止めを求める裁判では、ほとんどが門前払いです。国民の生活環境を守るべき司法の場は、なかなか私たちを守ってくれません。

 弁護団や訴訟団の中で議論しました。「違法爆音の部分については慰謝料をもらったのだから、最高裁での裁判は延期してもいいのではないか」という意見もありました。一方で、「いまだからこそ、最高裁の場へ闘いを進めるべきだ」との意見もありました。最高裁に訴えても、どれだけの闘いができるのかとの心配もありました。

 そこで、6月に東京で公害訴訟の全国集会が開催された際に上京して、さまざまな人たちに裁判の相談をしました。そうした中で、東京で支援集会をやるという連絡を「一坪反戦地主会・関東ブロック」の人たちから受けました。また平和フォーラムの皆さんからも、ご理解とご協力を得ることになりました。本日、このような素晴らしい集会が開かれたことを、改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

 6月23日は、沖縄では慰霊の日です。この日、ひめゆりの塔に行きました。駐車場には、30台近い観光バスが止まっていました。これは、本土から来た中高生や、沖縄の平和学習の子どもたちです。毎年の風景です。私はここで、違和感を覚えました。南部戦跡を周るのでありながら、アイスクリームを食べて、雑談をしている子どもたち。戦跡地が観光地になってしまっている。戦争を体験し、沖縄戦を体験しながら、日本はまだまだ平和憲法を自分のものにしていないと感じたのです。

 戦争が終わって64年、復帰からは37年がたちます。1972年に我々は復帰を勝ち取りました。しかし復帰したのに、平和憲法の下に帰って37年たったのに、沖縄の暮らしは変わったでしょうか。本土並みの環境を手に入れたでしょうか。本土と平等になったでしょうか。

 復帰前、朝鮮戦争やベトナム戦争の頃には、米軍のB52爆撃機が嘉手納基地に飛来してきました。嘉手納基地を飛び立った爆撃機が、アジアの人々を殺しに行きました。復帰後は、そうした状況は軽減されました。しかしその後も、アフガニスタン戦争やイラク戦争では、嘉手納から戦闘機が飛び立っていきました。また世界の各地から嘉手納基地へ、米軍の戦闘機がやってきます。

 最近では、F−22戦闘機がやってきました。ものすごい性能を持つステルス戦闘機です。F−18戦闘機やF−15戦闘機は、アフターバーナー(ジェット機の推進力を高める装置)を使って、ようやくマッハ2ぐらいの速度です。しかしF−22戦闘機は、アフターバーナーを使わなくてもマッハ3です。F−22の爆音は、他の戦闘機と違うことは誰にでもわかります。

 嘉手納基地に隣接している市町村は5つ、嘉手納町・沖縄市・読谷村・北谷町・うるま市(具志川市・石川市が合併)です。約40万人が住んでいます。このうち約30万人が、「コンター75」以上の地域に住んでいます。飛行機の騒音は、そのぐらい激しいのです。この騒音をなんとかしようと、訴訟を始めたのですが、私たちの声はなかなか国には届きません。沖縄にはなぜか、外務省の事務所があります。そこに抗議に行きました。役人は、「沖縄のみなさんには迷惑をかけています。しかし日本は米国と安保条約を結んでいます。米国には何も言えないのです」というのです。バカにしているではありませんか。本来は国民の生命を守る外務省が、米国を守っているのです

※コンター・・・飛行機の騒音を、騒音レベル毎に分類して地図化したもの。コンター75とは、うるささ指数75の地域のこと。

 嘉手納基地は「極東最大の米軍基地」といわれます。日本国内では3,000メートルの滑走路を持つ飛行場は、羽田空港と成田空港くらいです。しかし嘉手納基地の滑走路は3,800メートルもあります。基地の中には、兵舎だけではなく、小学校やボーリング場、クラブなどもあります。

 また嘉手納基地には、外来機が頻繁にやってきます。そうした外来機が、沖縄周辺にある3か所の射爆場で、クラスター爆弾の爆撃訓練などを行っているのです。岩国基地など国内の米軍基地だけではなく、韓国・アラスカ・ミズーリなどからもやってきます。嘉手納基地は、米軍の世界侵略の訓練基地なのです。

 全国の米軍基地の周辺では、騒音が75デシベルを超える地域はいくつもあります。しかし90デシベルを超える地域は、嘉手納しかありません。電話をしていても、戦闘機が飛んでくると話ができません。例えば、手に書類を持って歩いているとします。上空を90デシベルの騒音で戦闘機が飛ぶと、手に持っている書類が揺れるのですよ。大変な騒音、爆音です。これが県民の健康に被害が出ているのです。この健康被害を裁判で認定させるために、我々はがんばっています。飛行差し止めを認めさせることで、健康被害を認めさせることに大きな目的があるのです。

 嘉手納基地の爆音訴訟を通して、沖縄県民の置かれている問題、日米安保の問題を、全国のみなさんに知ってもらいたいのです。

 本日、私たちは、全国のみなさんからいただいた1万4000名分の署名用紙を、最高裁判所に届けてきました。先ほどは平和フォーラムの方から、「全国で署名を展開している」とのお話を伺いました。全国のみなさんの協力を得て、最高裁判所の中で飛行差し止めを勝ち取る、そのために原告団はがんばります。それは、安保・地位協定・米軍再編など、さまざまな問題につながっていきます。みなさんの力を貸してください。同じ日本国憲法の下にありながら、人権が守られていない沖縄の現状を変えてください。本日は本当に、ありがとうございました。


●山城博治さん(沖縄平和運動センター・事務局長)
 嘉手納基地をはじめとして、沖縄の米軍基地では演習が激化しています。これは2006年に米国政府が発表した「QDR」・「4年ごとの防衛計画の見直し」によるものです。米国政府は東西冷戦の終結を受けて、海軍力の過半数を太平洋に集中することにしました。私は、米太平洋軍に所属する航空機の数を調べてみました。第7艦隊所属が350機、海兵隊が190機、空軍が280機、合わせて820機です。これだけの航空機が太平洋に配備されていて、それが嘉手納に、岩国に、横田に、厚木に飛んでくるのです。想像を絶するものです。米軍が太平洋に集中し、日本列島や、沖縄に来ることによって、私たちが受ける基地被害が増大しているのです。

 私は米軍について、3つの問題があると考えます。1つ目は既存の基地の強化です。2つ目は新基地建設です。3つ目は民間の港湾・空港施設の使用です。
 既存の基地では、嘉手納基地だけではなく普天間基地もそうです。また、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンにおける実弾演習があります。キャンプ・ハンセンに隣接する金武町の伊芸区では、自動車に実弾が突き刺さっているのが発見されましたが、米軍は自分たちとは関係ないと言い張っています。いま伊芸区には「流れ弾に注意」という大きな看板が出ています。笑うに笑えない状況です。ホワイト・ビーチでは、原子力潜水艦の寄港が増加しています。昨年は、原潜が放射能漏れを起こしていたことが問題になりました。沖縄では、空も海も陸も米軍が演習で使っていて、民間人の使用は大きな制限を受けています。

 新しい基地建設は、皆さんもご承知の辺野古であり、高江です。高江の基地はどのような状況になっているでしょうか。今日は写真を持ってきました。こぶしを振り上げている私の眼の前に、ヘリコプターが降りてきます。この日は、4機のヘリコプターが離着陸を繰り返しました。この場所は、村から800メートルしか離れていません。米軍は、さらに多くのヘリパットを、高江に建設しようとしています。建設を許してしまえば、高江には人が住めなくなってしまうでしょう。
 演習地のゲート前では、ヘリパット建設を阻止するために、地域の住民が座り込みをしています。いま那覇防衛局は、住民を排除するために、那覇地裁に仮処分申請を行っています。7月27日には第5回目の審尋が行われます。私たちは那覇地裁前に結集して、防衛局への抗議を行う予定です。この審尋に向けて、高江の人々は歩いて那覇地裁に向かうとして、7月23日に出発しました。高江から那覇までは100キロあるのです。この炎天下、100キロ歩いたらどうなるでしょうか。日干しになってしまいます。高江の皆さんの、並々ならぬ決意を感じます。
 辺野古では、基地建設のための環境アセスメントの一環として、国の作成した「準備書」が公開されました。いまは県による審査が行われています。この「準備書」はひどいものです。辺野古にはジュゴンはいないと書かれています。また建設作業は、サンゴ礁に一切影響を与えないとも書かれています。こうした国の姿勢に対して、県民は怒っています。
 10月には県知事が意見書を出し、来年の4月には辺野古の海の埋め立て工事が強行されようとしています。私たちは、「体に鎖を縛り付けてでも座り込もう」と話し合っています。全国の皆さん、支援をよろしくお願いします。

 既存の基地の強化、新たな基地建設、それでも足りなくて、日本政府も米軍も、民間の施設に触手を伸ばしています。港や空港が狙われています。沖縄を丸ごと戦場に、島ごと演習場にしようとしているのです。4月には石垣港に、米軍の掃海艦が強行入港しました。
 この写真は、反対集会の様子を写したものです。石垣市長の大浜長照さんが、反対集会の先頭に立って演説をしています。このとき大浜さんは、「全国有数の観光地であり平和な石垣島に、軍隊はいらない。平和であり続けることに、石垣の発展はある。だから私は、米軍が入ってきたら、非常事態宣言を発して市民のみなさんに喚起する。全精力をかけて、米軍の入港に反対する」と話しました。多くの市民は大浜市長の決意に感激し、市長を孤立させないために、艦船の寄港に反対しました。
 また6月には、西表島に、自衛隊の艦船が入ってきました。西表島も全国有数の観光地です。そこに自衛隊がやってきたのです。私たちは、西表島の人たちと一緒に抗議活動を行いました。そうすると自衛官が「あなた達は、朝鮮からいくら金をもらっているのか」というのです。自衛官たちは、私たちが朝鮮の工作資金をもらって反対運動をしていると教えられているのです。太平洋戦争は、やむにやまれぬ戦争だった。沖縄戦では、沖縄県民は勇猛果敢に戦った。朝鮮併合は、朝鮮の人々が希望した。そうした認識が、自衛隊の中ではまかり通っているのでしょう。恐ろしい事です。

 今日の昼には、平和フォーラムなどが呼びかけた日朝連絡会の総会が行われました。その中で、いま日本では朝鮮パッシングが行われている、この状況を変えることができないと、日本は朝鮮との戦争に入ってしまう、という危機感が語りあわれました。
 隣国との間で軍事力を使って対峙して平和を守ることはできません。それは64年前に経験した事です。中国や朝鮮とは、話し合うことの中でしか、自らの将来を作ることはできないのです。しかし現実には、日米による軍事的な対応が続いています。
 全国の仲間のみなさん、私たちの力で、政権を変えて、政治を変えて、戦争に向かう道を止めていきましょう。がんばりましょう。


●「新嘉手納基地爆音訴訟原告団」のホームページ
http://kadena-bakuon.com/

●「沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック」のホームページ
http://www.jca.apc.org/HHK/index.html


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