辺野古アセス反対 沖縄の民意を踏みにじるな 12・15集会
●日時 2011年12月15日
●会場 東京 自治労会館6階ホール

平和フォーラムと辺野古への基地建設を許さない実行委員会は共催で、12月15日に「辺野古アセス反対 沖縄の民意を踏みにじるな 12・15集会」を開催しました。
集会には平和フォーラム加盟の労働組合や首都圏で活動する市民団体の関係者など、約250人が集まりました。
以下に各発言者の発言要旨を記載します。


◆主催者からの提起
藤岡一昭さん(平和フォーラム副事務局長)

 本日は、年内押し迫った中で、「辺野古アセス反対、沖縄の民意を踏みにじるな12.15集会」に大勢の皆さん、ご参加いただき大変ありがとうございます。沖縄の取り組みについて、基本的な考え方を提起させていただきます、平和フォーラムの藤岡と申します。
 最初に、本日は沖縄現地から、辺野古現地で反対運動を続ける安次富浩さん、沖縄平和運動センター議長で県議会議員の崎山嗣幸議長にもお越しいただいております。
 さらに国会の沖縄等米軍基地問題議員懇談会から会長の川内衆議院議員はじめ国会議員の皆さんにも駆けつけていただきました。
 会長の川内議員からはのちほどの沖縄議員懇談会の会長として、ご挨拶をいただきたいと思います。

 さてこの集会は、言うまでもなく辺野古新基地建設に向けた環境アセスの年内提出に反対し、そもそも、辺野古に新基地を建設するための埋め立て工事とそのための環境アセス作業そのものの停止を強く求める集会です。
 同時に、生活破壊の爆音とともに危険極まりない普天間基地の、一日でも早い閉鎖と返還、そして移設先とされている辺野古新基地建設を絶対に認めない、そうした沖縄県民の民意を守り抜くための集会でもあります。
 ところで、この環境アセスとは、大規模工事を実施する場合、環境に及ぼす影響を事前に調査し、環境評価書を作成して地元の都道府県に提出するものです。今回は、提出する事業者は防衛省、つまり国であり、受ける方は沖縄県となる訳です。
 基地建設の為の埋め立て工事をする為には、この環境評価書を国が沖縄県に提出する訳ですが、辺野古新基地建設そのものに沖縄県民が反対する中で、この環境アセスの提出は2年近く見送られてきました。
 しかし、9月に発足した野田政権は、沖縄より先にアメリカ政府と環境アセスの年内提出を約束し、その約束を盾に、基地建設・埋め立て工事着工に向けた環境アセスを沖縄県に提出しようとしています。
 沖縄では、後ほど崎山議長から詳しいご報告があると思いますが、県議会も、年内提出の政府方針に反対し、断念を求める意見書を全会一致で採択しました。
 沖縄県民の民意は明らかであり、それを押しつぶして、アメリカ政府との約束を優先する日本政府を許す訳にはいきません。

 そして見過ごすことのできない事件が政府内からおきました。
 語ること自身も、いやしく不愉快な気持ちになりますが、「防衛大臣は何故環境アセスの年内提出を言わないのか」、という報道陣の質問に対して、前沖縄防衛局長は、「これから犯す前に、犯しますよと言いますか」と答えた問題です。
 沖縄を、これから犯す相手に見立てた暴言であり、人権問題、女性差別と言うことでもありますが、そもそも普天間問題はアメリカ海兵隊の少女暴行事件が発端となっている訳です。沖縄の防衛官僚がそのことを知らないはずはありません。まさに確信犯であり、沖縄にとってこれ以上の差別発言はありません。
 さらに、その後の国会答弁で、一川防衛大臣は「少女暴行事件について詳細には知らない」と答弁し、沖縄問題に対する無知と無理解、そこから生まれる差別意識、そして県民の民意などかけらも考えようとしない姿勢は断じて容認できません。

 政府が本当に沖縄問題を解決しようとするならば、全く信頼を失った大臣を交代させ、環境アセスを中止し、辺野古移設を白紙に戻してアメリカ政府と交渉すべきです。
 昨日、米議会が沖縄海兵隊のグアム移転費用を削除することを決めました。これについて日本政府は、普天間の辺野古移設が進んでいないことが原因であり、辺野古に新基地を建設すれば、グアム移転経費が復活し沖縄の負担軽減につながるかのように言っています。
 しかし、これは全く逆であり、私たちが以前から指摘してきたように、辺野古新基地建設自身が不可能であるという米議会の、ある面では的確な判断の表れであります。
 あらためて私たちは、本日ご参加いただいた沖縄議員懇談会の心ある議員の皆さんを中心に、政府の反省と政策転換を強く働きかけていかなければなりません。

 そして今沖縄では、日本の安全保障、日米同盟と米軍基地問題の矛盾が矢継ぎ早に表れてきました。
 昨年12月新防衛大綱が閣議決定され、これまでの専守防衛と言う考え方を見直し、脅威に対して攻撃力を備える「動的防衛力」という考え方に転換しました。
 そして脅威とは、言うまでもなく中国の軍事力であり、北朝鮮の動向ということになります。
 このため、台湾まで約100キロ、日本の最も西に位置する沖縄与那国島に、自衛隊の沿岸監視部隊が配備されることになりました。新防衛大綱の具現化が、沖縄を中心に、今、与那国島で始まろうとしている訳です。
 平和憲法のもとでの日本の防衛政策は、如何に軍事的な衝突を回避し、武力によらないで解決するものでなければなりません。脅威に対して軍事力を対峙すれば、そのことで軍事的な衝突を誘発することは歴史が証明しています。
 実は、与那国島は、地の利もあり数百年にわたって台湾、中国との文化や経済交流を続けている、日本が東アジアに目を向けた時の、いわば平和を象徴する島と言えます。その与那国島に、いま、自衛隊を配備しようとしている訳です。私たちは、島民世論の70パーセント以上が反対する自衛隊配備について、現地とともに大きな反対の声をあげていかなければなりません。

 さらに、沖縄東村高江のヘリパット建設工事は、地元の反対決議から12年がたち、体を張って建設を阻止していますが、話し合いをすることもなく、強引に工事が強行される危険な状況が続いています。
 また、来年秋には、米軍再編に伴って、テスト段階で何回も墜落事故など起こしている、輸送機のオスプレイが普天間飛行場に配備される計画です。この計画を日本政府は容認していますが、危険とともに、想像を絶する騒音被害を巻き起こすオスプレイの配備問題は、普天間問題を逆行させるもので、許すことはできません。
 また、八重山地区竹富町の教科書採択問題について、新しい歴史教科書を作る会系の育鵬社版教科書ではない教科書を採択した竹富町に対して、文部科学省の教科書無償の枠から外すという暴挙は直ちに撤回されるべきです。

 さて来年は、1972年5月15日の沖縄復帰から40周年を迎えます。日本社会は、そして私たちは、この復帰40周年をどう迎えるべきか、今一度根本的に考えていかなければなりません。
 40年前、当時の「本土復帰」とは、米軍統治からの解放であり、日本国憲法のもとで差別されることなく人権が守られ、沖縄県民から奪い去られた基地が返還され、平和な沖縄を意味するものでした。
 しかし、米軍基地は日本全体の75パーセントが沖縄に集中し、今年1月に起きた米軍族による交通事故で日本人男性が死亡する事件で明らかなように、第一次裁判権はアメリカ側にあるといった日米地位協定は、米軍を占領軍さながらの治外法権状況においています。
 こうした状況は基本的に40年間放置され、本質的になんら変わっていません。
 これまで日本政府、そして日本社会は、沖縄戦をはじめとして、サンフランシスコ講和条約締結時など、幾度となく沖縄を捨て石に、あるいは踏み台にして、対米関係を維持し、経済発展をしてきたとも言えます。
 復帰40周年にあたり、この歴史的な現実をしっかり受け止めていかなければなりません。

 今年は東日本大震災と福島原発事故に直面し、とくに脱原発の取り組みをつうじて、原発を地方に押し付けてきた戦後社会の在り方そのものが問われています。被爆国日本で原発が運転されておよそ40年。国益、国策という言葉のもとで民意が押しつぶされてきました。こうしたことから、沖縄で原水禁大会も開催しました。
 沖縄を犠牲にして本当に平和があったのか?
 地方に原発を押し付けて本当に豊かといえるのだろうか?
 復帰40年にあたり今こそ問い直そうではありませんか。
 辺野古環境アセスの年内提出と新基地建設反対の取り組みを中心に、復帰40周年を前にして、沖縄諸課題に向けた取り組みへの要請を心からお願いし、主催者を代表しての提起とさせていただきます。


◆国会情勢の報告
川内博史さん(衆議院議員・沖縄等米軍基地問題議員懇談会会長・民主党)

 皆さん、こんばんは。ご紹介をいただきました、沖縄等米軍基地問題議員懇談会の会長を務めています、また皆さんには大変評判の悪い民主党に所属をしています川内博史です。議員懇談会としての報告を、私からさせていただきます。
 2年前に、大変大きなご期待をいただいて、民主党・社民党・国民新党による連立政権がスタートしました。しかし、辺野古移設の問題で鳩山内閣はつまずき、社民党が連立を離脱するという、大変不幸な出来事がありました。
 先日、鳩山さんがある会合で、「辺野古はやはり無理だ」と発言したとして、大変な批判を受けました。日本のマスコミはほとんど報道しませんが、2+2の日米合意文書においても、あるいは合意文書に基づく昨年5月28日の閣議決定文書にも、辺野古という言葉は残念ながら書かれていますが、県外・国外を含めてさらに模索すると書いてあるのです。県外・国外を含めて努力することが書かれているのです。そのことを、きちんと認識しておかなければならないと思うのです。私は、いかにも党執行部や内閣に造反して、「辺野古ではだめだ」と言っているように、世間的には見られていますが、私の行動は日本国政府の方針の範囲内なのです。

 そもそも辺野古だと思っている人は、世界中に何人かしかいないのです。ほとんどの人は、辺野古は無理だと、はっきり認識しているのです。だからこそ米国議会のウェッブ上院議員、この方は海兵隊出身で、海軍長官をされた上で、上院議員になっていますが、いわば海兵隊の利害を代表する方です。この方が、辺野古は無理だ、もう一度考え直すべきと発議し、グアム移転予算が、ちゃんとした結論が出るまで凍結することになったのです。
 米国議会においてグアム移転予算が凍結されたということは、辺野古は無理だ、もう一度日米間で話し合いをという米国議会の示唆なのです。この機をとらえて、日本国政府としては、辺野古は無理だ、もう一度話し合いをと、言わなければならないのです。ですから、環境影響評価の評価書を提出すると言うのは、まことにトンチンカンな行動なのです。
 沖縄防衛局長の発言も、日本中の国民が暗澹たる思いに駆られたのではないかと思いますが、もし我々の政府が評価書を提出するのであれば、防衛局長の発言以上に酷い行為であると言わざるを得ません。従って私は、防衛省に入っている政務3役や、あるいは官邸にいる官房長官や官房副長官に対して、まさか評価書を提出することはないですよねと。県民の思いを踏みにじることはないですよねと。申し上げています。それに対する返答では、提出するという返答はありません。黙って、うーんという表情を、政府に入っている政治家はしています。ですから皆さんの思いや行動が、辺野古は無理だということを、アメリカに伝えるきっかけになるのではないかと思います。
 日本政府がせっかく「作りますよ」と言っている基地を、アメリカの方から「作らなくていいよ」と言うような、そんな親切なことは絶対にありません。タダで、皆さんの税金で作るのですから。日本がアメリカに言わなければならないのです。そのことを言うだけの土壌を運動で作り上げていく、絶好の機会がいま訪れていると思うのです。

 今年は原発事故がありました。広島型原爆の168発分の放射性セシウムが、福島第一原子力発電所から放出されました。これは、原子力安全保安院が認めていることです。大変な量の放射性物質が放出されたのです。
 しかしこれまで日本国政府は、原発は安全です、大丈夫ですと言っていました。爆発してからも、直ちに健康に影響はありませんと言っていました。そんなことはありませんでした。大変なことが起きたのです。原発は安全だというのはウソであったことが、いま明らかになっているのです。しかし原子力村、原発にかかわる人たちは、それでご飯を食べていますから、原発が無くなったら大変です。いま必死に巻き返しをしています。
 基地問題も全く一緒です。私たちは理念だけで結びついています。あちら側は飯のタネで、お金で、結びついているのです。その人たちに、無理だ、だめだ、と理解してもらうためには、あちらよりもさらに強い結束と、さらに強い行動が必要になるのです。自分自身にも、そう言い聞かせています。
 沖縄に海兵隊は必要ありません。普天間も封鎖し、辺野古に基地を作る必要もない。そのことを、1億2500万人の国民みんなが言ったら、絶対に基地を作ることはできないのです。そういう運動を拡げていけるように、皆さんにもお願いして、私の報告にさせていただきます。


山内徳信さん(参議院議員・社民党)

 こんばんは。今日は、このような力強い集会を開いていただきまして、皆さんに熱く感謝を申し上げます。私は、自分にムチ打って、昨日今日と東京に留まっています。闘いの焦点はここだと思います。ですから、いろいろな日程をキャンセルして、ここに張り付いています。
 少女暴行事件の話し、犯す話し。私は腹の虫がおさまりませんから、防衛省の中江事務次官に対して、行っても時間は取らないでしょうから、電話で30分間怒鳴りつけました。
 あなたには国家公務員としての倫理も常識も何もない。あなたは、「犯す」発言の2日後に沖縄に行って、知事に謝罪したのに、その口でなお、アセスを年内に提出する方針は変えないと言う。それを事務次官として言えるのか。懲戒免職に値する。こういう国家公務員が、日本の国をダメにしていくのです。
 昨日は一川防衛大臣に直接会いました。外交は機を見るに敏でなければいけないと言いました。アメリカは上下両院でグアム移転費用を全部削減した。
 私はこの間、守屋元事務次官が作ったパッケージ論は破綻したと言ってきました。彼は私に偉そうに「すごい計画を作りました」と自慢していましたが、やがてどこかでムカデ競走のようにつまずくと思っていました。そしてついに、アメリカが予算を削減することになったのです。
 少女暴行事件から、年が明けて17年になります。この闘いを作り上げてきたのは、辺野古のおじいさん、おばあさんたちがおられたからです。また安次富さんたちが暑い日も寒い日もがんばっているからです。
 防衛大臣にも、また次の沖縄防衛局長に内定している真鍋さんにも、これを読めと言って、文書を届けてきました。この文書には、辺野古評価書は出さないと国民に発表せよと書いてあります。今日は外務大臣の所に行きました。日程が立て込んでいると言うので、秘書官を出してくれといいました。官邸にも行きました。アメリカは予算を削減したから千載一遇のチャンスである、いまを逃したら、日本政府はものを言うチャンスはないと言いました。
 この闘いを勝利しましょう。官邸の前には、プラカードを前後にかけた人が立っていました。思い思いの闘い方で、みんなで追い詰めていきましょう。


◆沖縄からの報告
安次富浩さん(ヘリ基地反対協共同代表)


 皆さん、こんばんは。紹介していただきました、ヘリ基地反対協の安次富浩です。どうぞ、よろしくお願いします。
 最近、いろいろな所に呼ばれて、辺野古の闘いを報告しています。私が考えるに、原発もそうですが、政府が鳴り物入りで打ち出す国策は、最初から疑ってかかるべきだと思います。原発では、安全・安心が、まったくウソだと分かりました。またあの事故で計画停電が行われましたが、結局、計画停電は必要ありませんでした。政府の言うことを、そのまま真に受けることを、私たちはもうやめましょう。それを宣伝する大手のマスメディアの報道も、はなから信じない方がいいと思います。
 彼らには、まったく反省の色がありません。政府もマスコミも、3・11事故の当初に、国民に示した指示は何だったのでしょうか。広島と長崎は、アメリカから受けた被ばくですが、今回の事故は政府の無策によって被ばく者を生みだしたのです。そのことを考えるべきだと思います。もっともっと、国民は政府を追及するべきです。民主主義では、主権者は国民である我々です。我々が状況を、政治を、経済を、変えていかなければなりません。そのことを、みんなが忘れているのではないかと思います。
 沖縄の闘いは、主権者は私たちである、沖縄の状況を変えるのはウチナンチューである、そういう思いで作ってきました。私はそう信じています。
 辺野古の闘いは、今月の21日で、市民投票から15年目です。だから、アメリカ議会のウェッブ上院議員は、沖縄の住民運動は怪物だと言ったのです。アメリカの議員の方が、よくわかっています。わかっていないのは、野田政権です。
 私たちは、武器を持って戦っているわけではありません。自公政権も民主党政権も、多数決で政策を決めて、沖縄に、辺野古に押し付けてきました。しかし私たちは、住民運動によって、民意の力によって止めてきたのです。その動きを、ウェッブ上院議員は怪物だと言っているのです。またレビン上院議員は、辺野古の海を見て、ここに基地を作れるわけはないと、議会に報告書を出しているのです。そのこと私たちは、きちんと見つめていかなければなりません。

 現在の状況をお伝えします。田中聡沖縄防衛局長の、女性に対する蔑視発言の背景には何があるのでしょうか。男の持っている女性に対する差別意識、抑圧意識を、沖縄問題と関連づけて言ったのです。彼は、評価書の年内提出に関して、「犯す前に犯すと言いますか」と言っています。またもう1つ、「沖縄が薩摩の侵略を受けたのは軍隊が無かったから」とも言っています。そこには、日本の侵略戦争に対する反省が、一つもありません。だから今の防衛省は、動的防衛力として、中国を敵視して、先島諸島に自衛隊を配備すると公然と言っています。こうしたことに、沖縄は様ざまな形で怒りを表しています。
 環境の問題、財政の問題、平和の問題、どこから考えて辺野古に基地を作る必要があるのか。自民党からも民主党からも、納得する答えは出ていません。
 いま辺野古では、アメリカ軍への思いやり予算を、震災の復興支援に回すことを求める署名運動を行っています。3月11日に東北大震災と原発事故がありました。その直後の3月31日に、衆議院と参議院で、思いやり予算が可決されたのです。
 またいま、消費税などの増税の論議も出ています。私は民主党政権に対して、たくさんの怒りがあります。事業仕分でいろいろやりましたが、形だけではないですか。パフォーマンスです。何かが変わりましたか、変わっていません。
 例えば彼らは一度、全駐労の給料に手をつけようとしました。しかし全駐労が猛反発して、消えてなくなりました。確かに全駐労は長い闘いの中で、いまの状況を作ってきました。そのことは良くわかります。しかし本来は、アメリカ軍が払うべき給料なのです。米軍基地のある他の国々では、基地従業員の給料は米軍が払っています。国防総省の報告では、米軍基地のを抱えている国々の政府が、駐留米軍に対して払っている金額の総額のうち、50パーセント以上は日本が支払っているのです。
 これを変えないで、税金を上げようというのです。こうしたことを、私たちは見直さなければなりません。パフォーマンスだけでは、ダメなのです。
 アメリカ議会では、海兵隊のグアム移転に関する予算が、全面削除されました。アメリカにはグアム移転の予算はありません。日本政府はアメリカに対して、グアム移転の経費を補助しています。この3年間で約900億円です。このお金はアメリカで凍結されています。銀行で眠っているのです。ですから、「辺野古の新基地建設はもうダメだから、900億円も返してくれ」と言えるチャンスなのです。それを東北震災や原発事故の被災者に回すことが、政府の仕事ではないですか。
 グアム移転予算は、下院で可決、上院で否決したものが、両院協議会で否決とされたのです。このチャンスを、なぜ生かさないのでしょうか。

 鳩山由紀夫前首相は、「最低でも県外」と言いましたが、上手くいきませんでした。官僚の抵抗や、候補地となった所の住民の皆さんの反対で、沖縄に舞い戻ってきました。舞い戻ってきた時の言い訳は抑止力でしたが、それも方便で使ったことを後に明らかにしました。
 現実はどうでしょうか。いまアメリカの戦略が変わってきています。抑止力や地政学が変わってきています。なぜなら、中国軍隊の近代化で、ミサイルが嘉手納基地や横田基地まで飛んでくるのです。アメリカの軍事戦略は、米軍再編からは変更されて、最近は「エアシーバトル」と言っています。
 またゲイツ前国防長官は、海兵隊の役割は朝鮮戦争で終了した、アフガニスタンやイラクでは、海兵隊は第2陸軍としての役割しかしていない――と言っています。ミサイルが飛んでくる時代には、上陸作戦は無いということです。上陸作戦では、敵国の周辺海域まで味方の軍艦が接近して艦砲射撃を行って、その後に部隊が上陸するのです。硫黄島や沖縄戦がそうでした。しかしそれでは、ミサイルが飛んできて軍艦はやられてしまいます。そこで、後方に引き上げることが必要になるのです。その一環として先日、オバマ大統領がオーストラリアへ行き、海兵隊がオーストラリアの基地を共同使用する協定を結びました。
 民主党も自民党も抑止力と言いますが、抑止力のあり方は、アメリカの軍事戦略でいつでも変わるのです。そのことを見ておかなければなりません。
 さらに日本が中国を侵略した過去の歴史を考えれば、中国を敵視するのではなく、中国と友好関係を結ぶことが一番大切です。アメリカの国債を一番たくさん購入しているのは中国で、日本は二番目です。アメリカ国債の格付けが下がった時に、アメリカのバイデン副大統領は、日本ではなく中国を訪問しました。中国への説得活動をしたのです。中国がアメリカ国債を売ると困るからです。一方の日本は、アメリカの同盟国ですから、アメリカの了解なしには国債を売ることはできません。しかし、こうしたことが日本のマスメディアには報道されませんから、国民には分からないのです。

 辺野古の闘いから、大きな話になりました。それは、アメリカの戦略が変わりつつある、このチャンスを生かして日本政府はアメリカの恫喝に屈するのではなく、国民のための外交やアジアとの外交を作っていく、いつまでもアメリカとの同盟についていく必要はない、もうやめなさいということを言いたいのです。
 アメリカの経済も、ヨーロッパの経済も低迷しています。経済学者たちは、これからの経済は東アジアだと言っています。中国やインドだと言っているのです。だからこそ私たちは考えなければいけません。沖縄の将来は、米軍基地を全て無くしていくことです。その足掛かりとして、辺野古の新基地建設を止める。普天間基地を返してもらう。そういう展望を持たないといけないのです。それが沖縄の将来の設計図なのです。
 アメリカ議会がグアム移転予算を削減したことは大きなチャンスです。このチャンスに、沖縄の怒りをアメリカに伝えるために、来年1月21日からアメリカに行きます。当初は、県知事・県議会・関係市町村長・議会などの公的な立場の人々も含めて、オール沖縄で訪米したかったのですが、うまく調整がつきませんでした。そこで市民運動団体として、沖縄平和市民連絡会、沖縄・生物多様性市民ネットワーク、基地・軍隊を許さない行動する女たちの会、第3次嘉手納基地爆音差し止め訴訟原告団、普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団、ヘリ基地反対協議会、ヘリパッドいらない住民の会の7団体で、訪米することになり動き始めました。国会議員の山内徳信さんと糸数慶子さんも参加します。県会議員も参加します。国会に地位協定の改正を要求した、與儀功貴君の遺族を支える会の若者も参加します。全体で30人です。
 今回の訪米行動は、辺野古移設反対の問題だけではありません。アメリカや日本の政府からは、辺野古がダメになった場合は、普天間基地の固定化や嘉手納統合案も出ています。日本政府は、恫喝的に固定化を言っています。しかしそれもダメだということを示すために、普天間や嘉手納の訴訟団も一緒に行くのです。また與儀功貴君が米軍属の飲酒運転で亡くなったことで、地位協定が問題になり運用改善となりました。しかし運用改善では何も改善されません。これまでに何度も運用改善が行われましたが、その場しのぎです。今回も與儀君の事件に関しては、裁判権が日本側に渡されました。しかし1年前に山口県の岩国市で起きた米軍属による交通死亡事故は、運用改善の対象になりませんでした。こんなふざけた話がありますか。
 日本の地位協定は不平等条約と同じですが、ヨーロッパでは対等なのです。アメリカ軍の軍人や軍属が事故や事件を起こせば、その国の法律で罰せられます。こうした不平等を含めて、沖縄の煮えたぎる怒りを訴えていきます。腹の底からの怒りをアメリカの政府やシンクタンクにぶつけていきます。またアメリカ市民に連帯を求めていきます。そういう闘いをしなければ、状況は変わらないでしょう。
 そのことによって、傀儡政権とまでは言いませんが、従属よりも酷い、隷従政権である民主党政権を変えていくことが必要だと思います。この国の将来を変えていくのは、私たち国民です。そのことを忘れてはいけません。江戸幕府の末期には、あちこちで農民の一揆が起こりました。民衆の抵抗が、世の中を変えていくのです。日本を変えていくのは政治家ではありません。皆さん、私、一人一人の主権者たる国民の行動なのです。そのことの認識を一致させましょう。
 世の中を変えていこうということを訴えて、辺野古のことはあまり話していませんが、一緒に闘っていきましょう。この国を変えていきましょう。それしかないのです。


崎山嗣幸さん(沖縄平和運動センター議長・県議会議員)

 皆さん、こんばんは。ご紹介いただきました、沖縄平和運動センターの崎山です。沖縄県議会が11月14日に臨時議会を開いて、辺野古環境アセス評価書の年内提出を断念せよという意見書を、全会一致で可決しました。そのことを中心に報告させていただきながら、共に闘っていくことを申し上げたいと思います。
 平和フォーラムをはじめ全国の皆さんには、毎年5・15平和行進でお世話になっています。来年は復帰から40年の節目です。沖縄は27年間、米国の統治下にあり、それから復帰して40年になりますが、復帰前の米国統治下と何も変わっていない実態があります。
 いまでも米軍兵士の犯罪があっても、司法権が米国にあります。怒りを込めて、来年の平和行進の中で、復帰の内実を問う闘いを、前進させていきたいと思います。来年は5月15日が火曜日です。ですから平和行進は11日・12日・13日、県民大会を13日の日曜に行います。また15日にも、平和フォーラムと相談しながら、何か行事を行おうと考えています。皆さんのご理解とご協力をお願いします。

 11月25日から県議会が始まりました。実は明日が最終日です。私も本会議に間に合わせるため、明日の朝6時の便で帰ります。
 私は3年前の県議会議員選挙で初当選しました。この選挙は、普天間基地の辺野古移設と、後期高齢医療制度を巡るものでした。選挙では県民の意思として、基地の県内移設に反対を掲げた議員が多数となって、与野党が逆転しました。自民党・公明党の議員が破れて、我々が多数になったのです。そこで県議会が、基地の辺野古移設に反対する決議を行うことになったのです。
 そうした経過の中で、沖縄県議会の状況が変わってきました。明日の本会議では、委員会では否決された浦添看護学校の民間委託問題が復活して、1票・2票差で採決されるかもしれません。県議会は、そうした状況です。
 従来は辺野古移設を容認する知事に対して、「基地の県内移設を断念せよ」と迫ってきました。それが、知事が方針転換して、いまは「辺野古は困難」、「嘉手納統合も厳しい」と言っているのです。
 県議会と県民の総意は、基地建設反対です。しかし知事の言っていることは、「辺野古は困難」ですが、「県内移設反対」という言葉は使いません。
 ですから知事に対して、「県外もいいでしょう。辺野古困難もいいでしょう。しかし最後まで、辺野古にも沖縄県内にも基地を作らせないことを明言できるのか」と問うと、知事は「県外と言っている」、「民主とが方針を変えたのだ」とするだけで明言しません。県議会各党派のスタンスも、それぞれ違いがあります。
 高江の問題についても知事は、「北部訓練場が一部返還されるからいいのではないか」と言っています。しかし欠陥機オスプレイの来年の配備については、極めて重要な問題で反対と言っています。ですから項目ごとに知事の態度を見ていかないと、分からないところがあります。ですから県議会の中も錯綜しています。
 与那国への自衛隊配備では、住民の合意形成を図るべきというスタンスで、それ以上のことは言っていません。私も与那国に行きましたが、住民は二分しています。町長は、人口が減って町が栄えない、自衛隊を呼んで活性化したいと言っています。一方で防衛省は、安全保障の観点から自衛隊を配備するのであって、町長と防衛省の思惑にも食い違いがあります。住民の意思とは何かというと、防衛省は町長の見解と言います。住民側からすると、これから住民投票などを行うので、住民を二分する計画を止めろと言っています。感覚の違いがあります。
 米軍と自衛隊について使い分けている知事の姿勢についても、我々ががんばって追及していかなければなりません。知事は、米軍基地の負担軽減は言っていますが、自衛隊基地については言っていません。将来の沖縄の姿として、基地のない島と言っていますが、それに自衛隊は含まれないとも言ったりしています。沖縄において日米同盟を深化させて、米軍と自衛隊の一体的な訓練をして、一体的な防衛に当たることについては、知事はぼやかしています。与那国の自衛隊配備は大きな問題ですから、県議会の中でも論議を深めていきます。

 先島諸島への自衛隊配備問題と絡んで、八重山での教科書選定の問題があります。県政の中で、教育長はしっかりとがんばっています。教育長は、9月8日の全員協議が有効だと言っています。9月8日の全員協議は、育鵬社版の教科書を選んだ8月23日の地区協議会では協議は整わなかったということです。育鵬社の教科書には、米軍基地問題が載っていません。戦前の教育を志向する、皇国史観的な教科書です。これを子どもたちに押し付けることは、あってはなりません。
 そうしたことで与那国や石垣でがんばってきましたが、竹富町自身が育鵬社を選定せずに、東京書籍版を選びました。そのことについて文部科学省が認めず有償としたことに、地元は大きく怒っています。私はこの問題に対しても、しっかりと明確にしなければならないと思います。仲井真県政の中で、教育長が文科省と異なる見解を持っていますから、この問題では教育長を激励しながら、しっかりやっていこうと思います。

 今回の県議会では、たくさんの課題が出ています。評価書の問題、高江の問題、オスプレイの問題、自衛隊の問題、教科書の問題などです。
 そうした中で、野田政権は大臣や要人を次々と沖縄に送り込んで、12月までに評価書を提出して、来年6月ごろまでに埋め立て申請を行い、13年に着工し、18年に完成するという計画を進めようとしています。野田総理とオバマ大統領の会談での実効性をあらしめると言うことだと思います。
 一方でアメリカの議会ではグアム移転予算が削除されましたから不可能だとは思いますが、日本政府は12月評価書提出の姿勢を崩していません。闘う態勢をしっかり作らなければならないと思います。
 大臣や要人が沖縄に来るたびに、平和運動センターは市民団体と共に、県庁前などあらゆる場所で抗議行動をしています。大臣や要人の感覚や発言からは、沖縄県民に対する侮辱、騙し、強行が見えてきます。沖縄県民は相当な怒りをもっています。一糸乱れぬ闘いで、沖縄県民と県議会はしっかりがんばります。
 また来年6月は県議会の改選です。そのために一部には、基地問題が盛り上がらない方がいいという議員もいます。そこを県民世論として、基地問題を盛り上げて、基地に反対する議員が生き残れる県議会となれば、さらに強い県議会となるでしょう。自らの当落に左右されることなく、沖縄の基地問題を決める基地問題ですから、私もしっかり最後までがんばります。


◆連帯アピール
花輪伸一さん(JUCON)

 今回、日本政府が提出しようとしている、環境影響評価の評価書は、日本のアセスメントの歴史の中で最も悪いもの酷いものと言っても、言いすぎではありません。大変な代物で、環境アセスメントの名に値しないものです。
 アセスメントというのは、情報を公開して、住民の意見を聞いて、科学的な調査をして、合理的に環境への影響を明らかにするものです。影響がはなはだしい場合には、事業を行わないという選択肢も含めて、判断しなければいけません。
 ところが、最初の方法書の段階から、日本政府はごまかしを行いました。方法書を出す前に現地調査を行ってしまいました。その際に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を派遣して、自衛官が海中に潜ってジュゴンを撮影するビデオや、泣き声を録音する機械など、様々な機会を112か所に設置しました。アセスに入る前に、環境をかく乱し、野生生物に悪影響を及ぼしたのです。112か所の機材設置とメンテナンスで、ジュゴンを追い払ってから調査を行って、その結果、ジュゴンはいないから影響はないとしたのです。
 後から出てきた方法書には、中身がほとんどありませんでした。どのような軍用機が使われるのかが明記されていませんでした。それを沖縄県から指摘されると、少しずつ後だしをしてきたのです。方法書自体が3つも出ると言う、前代未聞のものだったのです。
 その中で明らかになったのは、辺野古の基地には、ヘリパットもある、大型の軍艦が着岸できる、弾薬装弾所がある、汚水処理場がある、飛行機を洗う洗機場もあることが、址から後から事業内容が出てきました。それでもオスプレイの配備については、まったく記載がありませんでした。準備書にも記載がありませんでした。
 アメリカでは、オスプレイを配備するためには、そのこと自体で環境アセスを行わなければなりません。しかし日本では、防衛省は単なる機種変更であるとして、悪影響を調べようともしません。そのような評価書が、これから出されようとしているのです。
 評価書は、ほとんど準備書と同じ内容だと予想しています。それに何らかの形でオスプレイに関する記載があるでしょう。いずれにしても日本のアセス制度をダメにする、酷い代物が出されるのです。
 その評価書に基づいて、来年には、公有水面埋立免許申請が、防衛省から沖縄県知事に出されます。知事は審査して、おそらく許可を出さないことになるでしょう。その理由は、アセスメントがあまりにも酷く、埋め立ての影響が正しく評価されていないという理由でしょう。
 政府はどのように対処するでしょうか。照屋寛徳議員が提出した質問主意書に対しての回答では、知事が埋め立てを認可しないのであれば公有水面埋立法に違反するかもしれないので、地方自治法に基づいて是正させると、書いてあります。
 県知事が埋め立てを認可しなくても、政府はやると言うのです。場合によっては裁判で、代執行をかけてくるかもしれません。
 ですから、評価書を出させない、公有水面埋立申請をさせないことが、今年から来年にかけて、非常に大きなテーマになって来ると思います。
 一方アメリカでは、ジュゴン裁判が、2008年から止まった状態になっています。アメリカの法律でも、辺野古の基地建設はジュゴンに悪影響を及ぼすので違法であるという状態が、いまでも続いているのです。それが解決できなければ、埋め立てはできないはずです。日本政府が工事をしようとすれば、米軍専有区域ですから、米軍の許可を取らなければいけません。しかし米軍が埋め立て許可を与えれば、アメリカでの裁判の判決に違反するのです。
 私たちは、いろいろな方法を使って、評価書を提出させない、埋立申請をさせない、ジュゴン裁判も活用する。あらゆる知恵を出し合って、辺野古に新しい基地を作らせない、普天間基地は閉鎖する、高江のヘリパットも作らせない運動を、皆さんと一緒に作っていきたいと思います。


長谷川信康さん(東京平和運動センター議長)

 アセスメントは事業主体が行うものです。私もかつては土木事業の関係の仕事をしていましたが、一般的にはコンサルタントに発注して綿密な打ち合わせを行います。ですから事業主体に都合の悪いようになると、何のためにお金を出して発注したのかとなります。当時の仕事の進め方では、小学校などに大勢の住民を集めて、東電のやらせのような事はありませんが、いろいろ意見を言ってもらうことがありました。しかし今回の辺野古については、アセスではなく、やらせですね。ぴったり当てはまると思います。もし地元住民が参加できるのであれば、県民の84パーセントが反対している基地ですから、説明会場は大変なことになってしまうでしょう。
 アメリカ軍は「友だち作戦」で、どさくさまぎれに1兆円を稼いでいきました。ともだち詐欺ですよね。いま日本は大変なのですから、普通は親友でしたら、「君のところはいま大変だからいいよ」となるでしょう。なんという何という国なのでしょうね。デフォルトは起こすし、もう破綻寸前の国なのだと思います。
 またグアム移転予算も、下院で可決、上院で否決ということですが、そんなことなら海兵隊の半分くらいは、もう本国へ帰ってもらったら、八方丸く収まると思うのです。普天間の固定化など、みみっちいことを考えずに、全面返還することが、世界平和のためになると思うのです。
 また日米地協定の問題ですが、依然として事件や事故は減っていません。しかし逮捕されずに本国に逃げ帰ってしまいます。これは何なのでしょうか。
 70年前の12月8日に、ヤマトがかってに戦争を仕掛けました。ですからヤマトの人間が米軍基地問題を解決するのが使命だと思います。皆さんと一緒にがんばっていきます。よろしくお願いします。



●参加者からいただいた、訪米団への支援カンパを、安次富さんにお渡ししました。


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