【資料】リビアでの反政府運動と米英仏による軍事介入

軍事介入の概要


1.国連決議
(1)採択

 国籍軍によるリビアへの軍事介入の法的な根拠となったのは、国連安保理決議1973です。この決議はフランスとイギリスによって共同提案され、3月17日の安全保障理事会で採択されました。採決の結果は以下の通りです。

○賛成…10か国
アメリカ・イギリス・フランス(以上は常任理事国) ガボン・コロンビア・ナイジェリア・ボスニア‐ヘルツェゴビナ・ポルトガル・南アフリカ・レバノン(以上は非常任理事国)

○棄権…5か国
中国・ロシア(以上は常任理事国) インド・ドイツ・ブラジル(以上は非常任理事国)

○反対…なし

(2)決議の内容
●安全保障理事会決議1973(国連広報センター暫定訳から抜粋)

 国際連合憲章第7章にもとづいて行動して、
1.停戦の即時確立および暴力並びに文民に対するあらゆる攻撃および虐待の完全な終りを求める。

2.リビア国民の合法的な要求に反応する危機に対する解決を見出すための取組を強める必要性を強調し、またリビアに対して事務総長特使を送るという彼の決定および平和的且つ持続的な解決を見出すために必要な政治的改革を導く対話を促進する目的でアフリカ連合平和安全保障理事会のハイレベル特別委員会をリビアに対して送るというその決定に留意する。

3.リビア当局が、国際人道法、人権および難民法を含む国際法の下でのその義務を遵守すること、また、文民を保護しまた彼らの基本的必要性を満たすためおよび人道支援の即時且つ支障のない通過を確保するためあらゆる措置を講じることを求める。

文民の保護
4.事務総長に通知するとともに、国としてまたは地域的機関若しくは取り決めを通じて行動する、そして事務総長と協力して行動する加盟国に対し、リビア領域のいずれかの部分におけるあらゆる形態の外国軍の占領を排除する一方で、ベンガジを含む、リビア・アラブ・ジャマ−ヒリ−ヤにおいて攻撃の脅威の下にある文民および文民居住地区を守るために、決議1970(2011)の第9項にもかかわらず、必要なあらゆる措置を講じる権限を付与し、また関係加盟国に対し、本項により与えられた承認に従って講じた、安全保障理事会に直ちに報告されるべき措置を直ちに事務総長に報告することを要請する。

5.同地域における国際の平和および安全の維持に関する問題におけるアラブ連盟の重要な役割を認識し、また国際連合憲章第8章を念頭に置き、アラブ連盟加盟国に対し、第4項の履行において他の加盟国と協力することを要請する。

飛行禁止空域
6.文民保護を援助するためリビア・アラブ・ジャマ−ヒリ−ヤの空域に対して全ての飛行禁止を命ずることを決定する。

7.第6項で課された飛行禁止命令は、飛行の単なる目的が、医療用品、食糧、人道支援要員および関連援助を含む、援助の提供の供給および促進またはリビア・アラブ・ジャマ−ヒリ−ヤからの外国国民の避難のような人道的な飛行には適用されないものとし、また、第4若しくは8項により承認された飛行にも適用されず、また、第8項で与えられた承認の下で行動する国家によりリビア国民の利益のために必要であるとみなされたその他の飛行にも適用されないものとすることおよびかかる飛行は第8項の下で設置された組織と調整を行うものとすることを更に決定する。

8.事務総長およびアラブ連盟の事務局長に通知するとともに、国としてまたは地域的機関若しくは取り決めを通じて行動する加盟国に対し、必要に応じて、上記第6項により課された飛行禁止命令の遵守を執行するために必要なあらゆる措置を講じる権限を付与し、またアラブ連盟と協力する関係国に対し、上記第6および7項の規定を実施するための適切な組織を設立することを含む、この飛行禁止命令を履行するために講じた措置に関して事務総長と密接に調整を行うことを要請する。
9.国としてまたは地域的機関若しくは取り決めを通じて行動する加盟国に対し、上記第4、6、7および8項を履行する目的のために、あらゆる必要な上空飛行の承認を含む、支援を提供することを求める。

(以下略)


2.多国籍軍の概要
(1)多国籍軍への参加状況
多国籍軍は3月19日の深夜に、リビアへの軍事介入を開始しました。軍事行動のアメリカ側の呼称は「オデッセイの夜明け作戦」です。参加国の概要は以下の通りです。

@参加国   アメリカ・フランス・イギリス・イタリア・カナダほか
         (アメリカ国防総省の発表では、多国籍軍参加国は13か国)

A司令官   「オデッセイの夜明け作戦」…陸軍大将カーター・ハム(米アフリカ統合軍司令官)
         「統合任務部隊・オデッセイの夜明け」…海軍大将サミュエルJ.ロックリア(米欧州・アフリカ海軍司令官)

B参加した海上艦船(米国防総省のサイトより)
 米海軍     艦船…8隻 潜水艦…3隻 航空機(哨戒機)…5機(海兵隊遠征隊…1個)
 フランス海軍  艦船…1隻
 カナダ海軍   艦船…1隻
 イタリア海軍  艦船…11隻    (多国籍軍の全参加艦船は38隻との記事もある)

 最初の24時間で潜水艦と駆逐艦などから、124発の巡航ミサイル「トマホーク」を発射した。

C参加した航空機
 最初の24時間で、多国籍軍の航空機による攻撃は130回。350機以上が参加した。

(2)軍事介入の目的
@民間人の保護と、リビア上空への飛行禁止区域の設定。

A初期の攻撃目標は、対空ミサイルやレーダー・指揮通信施設・後方支援施設・武器庫など。


このコーナーのTOPへ