【資料 1】原子力空母の横須賀母港化に関する政府の見解


※以下は、原子力空母の横須賀母港化問題に関して、日本政府(外務省・防衛省ほか)が発表した文書を、各省庁のサイトから転載したものです。文末に記したURLは、元記事のある場所へのリンクです。


●外務省発表

空母キティホークの後継艦に関する米国政府の決定について

平成17年11月

1.10月28日、米海軍は、2008年に空母キティホークが退役し、原子力空母(注:具体的な艦は未決定)と交替することを発表した。
→キティホークは1961年就役の最古の現役空母。98年より前方展開。2隻の通常型空母のうちの1隻(注:米海軍は保有する空母を全て原子力空母とする方針)。
→2008年の空母交替によっても艦載機の構成は不変。
→原子力空母は、通常型と比較し、戦闘・作戦能力に優れ、稼働率が高い。

2.政府としては、空母キティホークの退役後も我が国周辺に米海軍の強固なプレゼンスが維持されることは、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与するものと考える。この目的のために米第七艦隊が果たしている役割を評価する。

3.米側は原子力軍艦の安全性に関する一連のコミットメントを明確に再確認した。政府としても一貫して米原子力軍艦の安全性は確保されていると確信している。 →1960年代以降、これまで延べ1200隻以上の米原子力軍艦(潜水艦、空母等)が我が国に寄港(平成16年度は年間で延べ190日)。その都度、日米両国政府が実施してきたモニタリングで異常値が検出されたことは一度もない。
→米政府は空母交替後も従来よりの安全性に関する保証を堅持することを確約。引き続き日本で原子炉の修理や燃料交換は行われず、空母の停泊中は通常原子炉を停止。


http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_gvm.html


(参考)米側プレス・リリースの概要

2005年10月28日

1.米海軍は、本日、9隻のニミッツ級空母のうち1隻が西太平洋への前方展開空母として空母キティ・ホークと交替し、2008年に日本の横須賀に到着する旨発表した。

2.空母キティ・ホークは就役期間の終了を迎え、2008年に合衆国へ帰還し退役する。

3.合衆国政府は、アジア太平洋地域における平和、安全及び安定に対する日本の貢献、また、前方展開する米軍を受け入れることについての日本政府による長期に亘るコミットメント及び厚遇を評価する。こうした部隊は、自衛隊と共に、共通の戦略目標を追求する同盟関係の中核となる能力を構成している。

4.更に、ニミッツ級空母の前方展開は、太平洋艦隊が日米安全保障条約上の日本防衛及び極東における国際の平和及び安全の維持という合衆国政府のコミットメントを太平洋艦隊が遂行するための能力を確保するものである。

5.西太平洋地域の安全保障環境の下、米海軍が、ニミッツ級空母を含む最も能力の高い艦船を、確立された前方展開のポジションから前方に駐留させることが益々要求されている。かかる態勢は、海軍及び統合部隊の最も迅速な反応を可能とし、最も能力の高い艦船が最大限の攻撃力と作戦能力を最もタイムリーな形で発揮することを可能とする。

6.今回の交替は、艦載機の変更を伴なわず、その構成にも変更はない。第5航空団が引き続き前方展開の任を担う。

7.今回の交替は、前方展開している旧型艦船を通常の手続きとしてより新しい又はより能力の優れた艦船と交替させる米海軍の長期に亘る取組の一環であり、また、西太平洋地域における予見不可能な安全保障環境を踏まえ、前方展開している全ての部隊の在り方を検討する継続した取組の一環である。

8.米海軍は、これまでの日本の地元との友好的な関係を重視しており、引き続き、地元の隣人と強力かつ良好な関係を継続させていく。

9.1964年以来、米海軍原子力艦船は日本の港に1200回以上寄港している。当初から、合衆国政府は、日本政府に対し、米原子力軍艦による日本の港の使用の安全性に関する強力なコミットメントを提供すると共に、合衆国の港における運行に関連してとられる安全上の全ての予防措置及び手続きが海外の港においても厳格に遵守されることを確約してきた。これらのコミットメントは、引き続き堅持される。


http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_gvm_01.html


●外務省発表

空母キティホークの後継艦名の決定

平成17年12月3日


1.米海軍は、ワシントン時間の12月2日午後、空母キティホークの後継艦をニミッツ級空母であるジョージ・ワシントンとする旨決定し、これを公表した。

2.これまでも、政府としては、本件交替を通じて我が国周辺における強固な米海軍のプレゼンスが引き続き維持されることは、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与するものと考える。この目的のために米第七艦隊が果たしている役割を評価する。

3.我が国への米国原子力軍艦の寄港については、政府として、従来より、寄港時の安全は十分に確保されているものと一貫して判断してきている。この関連で、米国政府は、米原子力軍艦の日本への寄港に関するこれまでの累次の安全性に関する保証が引き続き堅持され、厳格に実行される旨述べており、政府としても評価している。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_name.html


(参考)米側プレスリリース (仮訳)

2005年12月2日

・本日、米海軍は、空母ジョージ・ワシントンが西太平洋への前方展開空母として空母キティホークと交替し、2008年に日本の横須賀に到着する旨発表した。

・現在、空母ジョージ・ワシントンは、バージニア州ノーフォークを母港としており、日本への前方展開任務を円滑に進めるため、必要な整備及び改良をノースロップ・グラマン・ニューポートニューズ造船所にて受けている。

・空母ジョージ・ワシントンの前方展開は、艦載機の変更を伴わず、その構成にも変更はない。第5航空団が引き続き前方展開任務を担う。

・今回の交替は、前方展開している旧型艦船を通常の手続きとしてより新しい又はより能力の優れた艦船と交替させる米海軍の長期に亘る取組の一環であり、また、この変更は、西太平洋地域における予見出来ないな安全保障環境を踏まえ、前方展開している全ての部隊の在り方を検討する継続した取組の一環である。

・空母ジョージ・ワシントンは、1992年7月4日に就役。2004年7月には、第6回目の前方展開任務より帰還。これまで、同艦は世界的なテロとの闘いを支援するため地中海やペルシャ湾に派遣されている。


http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_name_01.html


●外務省発表

米国の原子力軍艦の安全性に関する米側よりの情報提供について

平成18年4月17日


1.麻生外務大臣とシーファー駐日米国大使の会談
 17日、シーファー駐日米国大使より麻生外務大臣に対して、米原子力軍艦の安全性に関する「ファクトシート」が手交された。(その際の討議の記録及び「ファクトシート」はリンク先を参照。)

2.「ファクトシート」の地元地方自治体への転達
(1)同日、外務省の島田日米安全保障条約課長が、横須賀市を往訪し、蒲谷横須賀市長に対して「ファクトシート」を手交するとともに、その内容を伝達した。その際、本件「ファクトシート」の内容については、先週来、米側より非公式に説明があり、関係省庁間で共有し、検討を行ってきたところである旨説明した。また、本件「ファクトシート」は米原子力軍艦の構造や運用、安全措置等について従来よりも広範かつ詳細な情報を提供するものであり、原子力空母を含む米国の原子力軍艦の我が国寄港時の安全性を確信しているとの政府の一貫した判断を何ら見直す必要がないことを改めて裏付けるものであると評価するに至ったところ、横須賀市においてもかかる政府の評価につき御理解願いたい旨述べた。

(2)さらに、島田日米安全保障条約課長より、通常型空母が後継艦となる可能性は皆無であることにつき米側より改めて説明があった旨伝達した。

(3)これに対し、蒲谷横須賀市長は、先ずは本日の政府からの説明をよく検討したい旨述べた。
(なお、17日、神奈川県に対しても同様の説明を行った。)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_jyoho.html


討議の記録

 2006年4月17日、麻生太郎外務大臣とJ・トーマス・シーファー駐日米国大使は、2008年に予定される米空母キティホークと米海軍が保有する9隻のニミッツ級空母のうちの1隻である空母ジョージ・ワシントンとの交替について討議を行った。これに関連し、両者は以下を記録にとどめることを希望した。

1.シーファー大使より以下のとおり述べた。
(1)米国政府が2005年10月に空母キティホークの後継艦はニミッツ級空母とするとの決定を発表した際に明らかにしたとおり、米国政府は日本の防衛と地域の平和と安定の維持にコミットしている。空母キティホークを空母ジョージ・ワシントンと交替させることは、米国が、日本の防衛に貢献し、また、地域において米国及びその同盟国の安全保障上の利益を確保する能力を大いに向上させるものである。ニミッツ級空母は、平時においては信頼できる、独立の前方展開のプレゼンスと抑止力を提供するとともに、様々な作戦や戦闘の状況においては強力かつ持続的な戦力を提供することとなる。米国政府は、このような向上した防衛能力の提供のために2008年に横須賀に到着する空母ジョージ・ワシントンを西太平洋地域に前方展開させる決定に対する日本国政府の支持を評価する。

(2)2005年10月に米国政府が説明したとおり、通常型空母を空母キティホークの後継艦とするよう求める地元の要請について米国政府は真剣に考慮したが、現存する通常型空母は2008年以降前方展開の任務につくことはできないとの結論に至ったものである。米国の2006会計年度の予算は、空母ジョージ・ワシントンが空母キティホークの後継艦となるために西太平洋地域に前方展開する準備のための1400万ドルを含んでいる。さらに、2008年に退役する空母キティホークを除いて現存する唯一の通常型空母である空母JFKについては、アレスティング・ギア(緊急停止装置)、カタパルト(射出機)、ボイラーなど空母にとって基幹的な機能を担う部分の損傷が激しく、そのような損傷のため、米海軍による艦載機のオペレーションが禁止されている。そのような中で、米海軍を含む米政府は空母JFKの2007年中の退役の方針を明らかにしており、また、米議会においても2007年に空母JFKが退役することを可能とするための法案が提出されている。これらはすべて、米国政府の国防関係幹部が日本国政府にこれまでに明確に述べてきているように、空母JFKが空母キティホークの後継艦となるために前方展開する可能性は皆無であるとの結論を導くものである。

(3)同時に、米国政府は、米原子力軍艦の安全性に関し、日本国民、特に地元から表明されている懸念をよく承知している。米国政府は、これらの懸念に応えるべく日本国政府と協力していくことにコミットしている。

(4)このため、3月23日の蒲谷亮一横須賀市長の麻生外務大臣に対する要請も踏まえて、米国政府としては、米原子力軍艦の際立った運用の記録と安全性についてより良く理解して頂くべく、安全性に関する情報についてのペーパーを作成した。


2.これに対して、麻生外務大臣より以下のとおり述べた。

(1)日本国政府としては、米国政府の日本の防衛と地域の平和と安定の維持へのコミットメントを評価しており、日本国民、特に地元の懸念に応えるための米国政府の努力を評価する。

(2)日本国政府としても、米原子力軍艦の安全性に関するファクト・シートは、地元の理解を促進していく上で極めて有効であると考えている。日本国政府は、引き続き米国政府の協力を求めたい。日本国政府としては、従来より、一貫して、米原子力軍艦の寄港時の安全性について確信しており、このファクト・シートは、かかる判断をより一層裏付けるものと信ずる。

(3)日本国政府は、西太平洋地域に前方展開する米国の空母として、空母ジョージ・ワシントンを空母キティホークの後継艦とするという米国政府の決定を支持している。なお、日本国政府としては、空母を含む米海軍のプレゼンスが日本の安全に寄与していると評価しており、米海軍の前方展開する空母に求められる運用上の即応性と能力の基準を満たさない軍艦が空母キティホークと交替することによって、我が国の安全保障がいかなる意味においても損なわれるようなことがあってはならないと考えている

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_jyoho_01.html



米国の原子力軍艦の安全性に関するファクト・シートの概要

1.米原子力軍艦の安全性に関する米国政府の保証
・1964年以来、米原子力軍艦は日本の港(横須賀、佐世保、ホワイトビーチ)に延べ1200回以上寄港してきている。日米双方のモニタリングは、米原子力軍艦の運航が周辺の環境中の放射能の増加を引き起こしていないことを示している。

・米政府による米原子力軍艦の安全性に関する従来よりの保証は引き続き堅持される。米国で適用される安全性に係る全ての予防措置及び手続は日本を含む外国の港においても厳格に実施される。


2.海軍の原子炉の設計
・すべての米原子力軍艦は加圧水型原子炉(PWR)を使用している。

・すべての米原子力軍艦は、戦時の攻撃に耐え、乗組員を危険から防護しながら戦闘を継続できるように設計されている。商業炉との任務の違いのため、原子力軍艦の防護壁(燃料、一次系、原子炉格納容器、船体)は、商業炉と比べてはるかに頑丈かつ耐性が強く、はるかに慎重に設計されている。

・米海軍の原子炉の燃料は固体金属である。燃料は、戦闘の衝撃に耐えられるように設計されており、燃料中の核分裂生成物を放出することなく重力の50倍以上の戦闘衝撃負荷に耐える(米国の商業用原子力発電所に適用される地震衝撃負荷の10倍以上)。米原子力空母の燃料交換は就役期間中に1回であり、原子力潜水艦では燃料交換は一度も行わない。

・一次系は、炉心を収納する頑丈で厚い金属構造である原子炉圧力容器と一次冷却水の循環パイプによって構成される。これらは、堅く溶接されており、加圧された高熱の水を閉じこめる単一の構造体を構成している。一次冷却水を循環させるポンプは、密閉された水没型のモーター・ポンプであり、一次系の金属の防護壁の内側に完全に収まっている。一次系からはいかなる計測可能な漏水も発生しないように設計されている。

・核分裂生成物は燃料から一次冷却水中には放出されない。一次冷却水中の放射能の主な線源は、極めて微量の腐食物であり、その放射能のレベルは、一般的な園芸用肥料から検出される自然放射能の濃度とほぼ同じである。

・原子炉格納容器は、特別に設計され建造された高強度の構造物であり、一次系及び原子炉を収納し、艦船の中心部の最も防護された部分に位置している。

・船体は、戦闘における大きな被害にも耐えることができるよう設計されている、極めて頑丈な構造となっている。

・米海軍の原子力推進機関に関するすべての面(研究、設計、建造、試験、稼働、メンテナンス及び廃棄処分)は、合衆国海軍原子力推進機関プログラムが所掌している。合衆国原子力規制委員会及び原子炉安全諮問委員会は、海軍の原子炉装置の個々の設計について、独立して審査を行っており、米原子力軍艦が公衆の健康と安全に不当な危険を及ぼすことなく運航可能であるとしている。


3.海軍の原子炉の稼働

・最大級の海軍原子炉の出力は、米国の大規模商業用原子炉の5分の1に満たない。また、平均的な出力レベルは、最大出力の15%以下である。

・原子炉は、停泊後速やかに停止され、出航の直前になって再稼働される。入港中、業務に必要となる電力は陸上から供給される。

・港に停泊中の米原子力軍艦の原子炉から放出され得る放射能の量は、典型的な商業炉の1%に満たない。原子炉の核分裂生成物の大部分は、原子炉が停止された後に速やかに崩壊し消滅していく。


4.乗組員が受ける放射線量

・米原子力軍艦の万全の遮断により、典型的な原子力軍艦の乗組員の年間の被曝量は0.38ミリシーベルト(2004年)である(米居住者の自然の平均年間被曝量(約3.0ミリシーベルト)の15%未満。)。

5.廃棄物の処理とメンテナンス
・米海軍は原子力軍艦からの液体廃棄物を、日本の標準、国際標準に適合するよう、厳格に管理している。特に、米国の政策は、沖合12海里内においては、一次冷却水を含む液体放射性物質を排出することを禁じている。

・固形廃棄物は承認された手続に従って米国内で処理される。

・米原子力軍艦は、過去30年以上の間、使用済汚染除去剤(浄化のためのイオン交換樹脂)を海中に排出していない。

・1964年のエード・メモワールの燃料交換及び修理に関する米国の保証は引き続き完全に堅持される。


6.環境への影響
・米原子力軍艦の運航を通じて、人の健康、海洋生物、環境の質に悪影響を及ぼすような放射能の放出は一件も発生していない。

・米国のすべての原子力軍艦及び補助施設から沖合12海里以内で一年間に放出されたガンマ放射線を出す長寿命の放射能の総量は、1971年以降のいずれの年についても、0.002キューリー以下である。これは、原子力潜水艦1隻の体積の海水の中で自然に発生する放射線の量よりも少ない。典型的な米国の原子力発電所一つは、この100倍以上の放射能を年間で排出する。

・沖合12海里以遠の外洋において、すべての米原子力軍艦が毎年放出するガンマ放射線を出す長寿命の放射能の合計量は0.4キューリー以下(典型的な米国の原子力発電所一つに許容される放射能の年間排出量よりも少ない。)。


7.環境モニタリング
・日米双方のモニタリングの結果は、米原子力軍艦の運航が人の健康、海洋生物及び環境の質に認識可能な悪影響を及ぼしていないことを示している。

8.緊急対応/深層防護

・原子力軍艦の原子炉のオペレーターは、極めて少量の一次冷却水の漏れも直ちに探知し、更なる問題につながる前に迅速に是正措置をとることができる。

・米原子力軍艦は、フェイルセーフの原子炉停止システムのほか、多重的な原子炉安全システム(含む予備システム)を有している。例えば、海軍の原子炉には、電力に依存することなく、崩壊熱を除去する能力がある。

・海軍の原子炉は、必要になれば、緊急冷却及び遮蔽のために海水を取り入れ、内部にとどめておくことが可能である。

・これらの多重的な安全システムによって、海軍原子炉はオーバーヒートせず、燃料系は破損しない。炉心から一次冷却水中に核分裂生成物が放出されるためには、これら安全システム及び予備のシステムがすべて機能しないという、実際にはあり得ないような事故の条件が必要になる。

・米原子力軍艦の乗組員は、十分に訓練を受けており、いかなる緊急事態にも即応できる。米原子力軍艦では極めて想定し難い原子炉事故のシナリオのシミュレーションをするよう求められている。


9.極めて想定し難い事故の場合の放射能放出の可能性
・原子炉の炉心から漏出した放射能が艦船から環境に放出されてしまうような事故の可能性は極めて低い。しかし、米政府はそのような事故のシナリオを無視せず、徹底的な研究を行い、実際に準備を行い、対応措置を試している。

・米政府による極めて慎重な分析によれば、艦船から放射能が放出されても、影響は局地的かつ深刻でないものに止まる。米連邦政府の基準に照らして屋内退避等が検討される範囲は、軍艦の至近の、在日米海軍基地内に十分とどまる。

・これは以下の諸要因による。

・核分裂生成物が環境に放出されるには、多重の防御壁を通過しなくてはならないが、放射能の量は、一つ一つの防護壁を通過するごとに著しく減少する。

・頑健な多重の防護壁のため、艦船から放射能が放出され得る過程は、爆発のような力で短時間で起こることはない。

・放射能が船外に放出されるまでには、乗組員が問題に対応し、問題を緩和するのに必要な時間が十分に存在する。

・陸上の商業炉や海軍の原子炉において、原子爆弾のような核爆発が起こることは物理的に不可能である。


10. 緊急事態対応計画
・米国内の米原子力軍艦の母港等において、屋内退避、避難、ヨウ化カリウムの配布といった公衆に対する防護措置のための特別な計画はない。

・米原子力軍艦は、移動することが出来る。


11.損害賠償
・米原子力軍艦の事故に関する訴訟行為について、地位協定が適用されない場合は、公船法及び海事請求法が適用され、米国の主権免除は放棄される。

・合衆国法典第42編第2211条は、無過失責任原則を用いた行政的救済を可能とすることにより、公船法と海事請求法を補足する。

・米原子力軍艦の原子炉事故の補償額には法定上の限度はない。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kubo_jyoho_02.html


●外務省発表

麻生外務大臣と蒲谷横須賀市長の会談

平成18年6月12日

6月12日、麻生外務大臣は、横須賀市を訪問し、蒲谷横須賀市長と会談を行ったところ、概要以下のとおり。

1.麻生外務大臣より以下のとおり述べた。

・5月8日に貴市長より頂いた安全性に関する質問書及び6月2日に頂いた相互支援協定等に関する要請書については、政府としての回答を書簡の形で本日お届けしたところである。

・その書簡にあるとおり、米原子力軍艦の安全性は確保されていると確信しているということを、政府を代表して、改めてお伝えする。ご質問に対する回答は、このような政府の立場について、可能な限り、市民の方々に御理解頂けるよう、政府として用意したものである。今後とも、政府として、市民の方々に御理解を深めて頂くよう、米国とも協力して、努めていきたい。

・米原子力軍艦の過去に「事故」があったのではないかという点については、個別のケースも含めて、繰り返し国会等で説明しているとおりである。米原子力軍艦の50年の運航の歴史を通じて、人体や海洋生物に悪影響を及ぼすような放射能の放出の事例は皆無であり、日本でも原子炉に係る事故は一度も発生していない。

・100%安全ということは世の中に存在しないかも知れないが、100%に近づける徹底した努力の結果、米原子力空母の安全性はほぼ100%であると言って差し支えないと考えている。それでもなお、政府としても、万が一の事故の場合の適切な備えが不可欠であると考えている。そのような観点より、相互支援協定や訓練参加に関する貴市長の要請は米側に速やかに伝達し、協力を求めた。これを受けて、今般、米側より、ご要請のあった災害時の相互支援協定の締結に向けた協議を再開させたい、また、原子力防災訓練のシナリオについても貴市も交えた形で協議を始めたいとの意向が正式に伝達された。政府としては、米側の提案を受け、今後の取り組みにつき貴市とよく相談していきたいと考えている。更に、貴市のご要請も踏まえ、日本政府として実施している米原子力軍艦の寄港時のモニタリング体制の整備と充実など、国民の安全のためにあらゆる事態に備えるための取り組みを継続していく考えである。

・今般の空母交替を通じて米海軍の能力を維持することは、我が国及び極東の平和と安全に寄与するものである。一方、通常型空母が後継艦となる可能性は100%無い。そもそも、空母JFKは空母としての肝心な機能が失われるほど損傷が激しく、我が国及び極東の平和と安全を守る前方展開空母の役割を果たせる通常型空母はもはやこの世界から存在しなくなる。そのような中で、6月5日、米側より、日本政府に対して、2008年の空母の交替に向けて、横須賀港に原子力推進型空母が入港するために必要な水深を確保するための浚渫の工事を日米地位協定に基づいて実施してほしいとの要請がなされた。この要請について、関係省庁間で検討を行った結果、日米安保体制、ひいては、我が国自身の安全保障にとっての重要性も踏まえ、日本政府としてこれを実施する考えであり、そのため、時間的な制約に鑑み、6月15日の日米合同委員会で米国と基本合意する方向で米側との間で調整を行っているところである。本件浚渫工事の実施及び事前の測量・調査にあたっては、港湾法の下の協議を含め、貴市の御協力を御願いしたいと考えている。我が国の安全保障を担う空母の前方展開に穴を空けないためにも宜しくお願い致したい。

・第7艦隊の中核として前方展開する空母の地元であり、海軍基地の地元である貴市には、日頃より日米安保体制に多大な御支援と御協力を頂いていると認識している。そのような認識の下、政府として、在日米海軍の地元において、幅広い課題について、貴市とよく相談し、積極的に協力して取り組ませて頂きたいと考えている。

2.これに対し、蒲谷市長より以下のとおり述べた。

・安全性に関する政府の立場は理解した。当方よりの質問に対する回答はこれから読ませて頂きたいが、政府として市民に分かり易く説明する努力をして頂いたことは評価する。政府においては、引き続き、市民の不安を払拭する真摯な努力を行われることを期待する。

・また、防災のための相互支援協定、また、市の原子力防災訓練への米海軍の参加について米側より協議の意向が伝えられたことは前向きに受けて止めており、対応につき政府と協議していきたい。また、モニタリング体制の強化等についても、当方の要請を受けて前向きに検討頂いていることは評価しており、是非とも具体的な形で体制強化を実現して頂きたい。

・貴大臣よりもご説明のあった施設整備の準備については、早急な開始が必要であることは理解した。市として、如何なる対応を行うかについては、本日の貴大臣から伝えられた政府のメッセージも踏まえ、検討し、速やかに結論を出したい。


●外務省発表

横須賀市長殿

米原子力軍艦の安全性及び防災体制等について

平成18年6月12日

 5月8日に貴市長から当方にご提示のありました米原子力軍艦の安全性に関する「ファクトシート」に関する質問書につき、政府としての回答を別添のとおり作成いたしましたので、ご査収願います。

 従来よりご説明申し上げてきておりますとおり、本件「ファクトシート」につきましては、関係省庁の間で共有し、種々の検討を行いました。その上で、本件「ファクトシート」は、米原子力軍艦の寄港時の安全性は確保されていることを確信しているという日本政府の一貫した判断を何ら見直す必要がないことを裏付けるものであるとの判断に至りましたことを、本書簡において、改めてお伝え申し上げます。このような政府の一貫した立場につきましては、小泉総理大臣を始め、政府より、国会の場や、閣議で決定した答弁書等を通じて累次の機会に申し上げてきているところです。


 5月1日にワシントンで行われました日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」会合)におきましても、麻生外務大臣より、ラムズフェルド国防長官に対し、米原子力軍艦の安全について万全の対策をとるよう、また、米原子力軍艦の安全性について地元の方々の御理解を得る努力に引き続き協力するよう働きかけ、米側も引き続き協力する旨確約したところです。

 政府としては、2008年に予定されている空母キティホークと空母ジョージ・ワシントンの交替を通じて我が国周辺における強固な米海軍のプレゼンスが引き続き維持されることは、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与するものと考えております。また、通常型空母が空母キティホークの後継艦となる可能性は皆無であると認識しています。同時に、政府といたしましては、米原子力軍艦の安全性に関する地元の方々の懸念を踏まえ、貴市長をはじめ地元の方々の御理解を得るための努力を今後とも惜しまない考えです。

 6月2日に貴市長より頂きました米原子力軍艦の万が一の原子力災害時の対応等に関するご要請につきましては、米政府に伝達するとともに、関係省庁とも協議を実施いたしました。これを受けて、別添の討議の記録にありますとおり、6月9日に駐日米国大使館の次席公使より、災害時の相互支援協定の締結のための協議を再開したい、また、原子力防災訓練のシナリオについても地元の訓練を主催されている横須賀市を加えた協議を行いたいとの意向が伝達されました。政府としては、かかる米側の提案を受け、相互支援協定の早期締結に向けた横須賀市と米海軍の間の協議を積極的に支援するとともに、米海軍も参加して、市民の方々の安心が得られるようなシナリオの下で訓練が実施されるよう、横須賀市とともに米側との協議に臨んでまいりたいと考えております。

 また、横須賀におけるモニタリングの体制の充実につきましても、関係省庁とともに、市民の不安を払拭出来るような具体的な措置をとってまいりたいと考えています。そして、米側実施のモニタリングも含め、モニタリングの結果などが市民の方々に分かり易く御理解頂けるよう、具体的に検討したいと考えています。

 政府といたしましては、ご要請を踏まえ、今後とも、地元の方々の安全と安心のためにあらゆる事態に備えるとの観点から、横須賀市や米海軍との緊密な連携の下で、適切に対処していく考えです。

  末尾ながら、昭和48年以降、空母ミッドウェー、インディペンデンス及びキティ・ホークの乗組員家族の我が国への居住に対し、長期にわたり横須賀市より賜っております御理解と御支援につきまして、この機会にあらためて深謝いたします。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/yokosuka_letter.html



●外務省発表

横須賀市からの質問書への回答

1.「米側から提示のあった「ファクトシート」は原子力空母の安全性を確信しているとの政府の一貫した判断を何ら見直す必要がないことを裏付けるものである」という評価は、文部科学省などの関係省庁にも共有されているものか、改めて確認するとともに、日本政府としての安全性に関する確証を文書として求める。

(答)
 本件「ファクトシート」については、米側より外務省に手交され、内閣府、文部科学省等の関係省庁間で共有し、検討を行ってきたところである。その上で、本件「ファクトシート」は米原子力軍艦の構造や運用、安全措置等について従来よりも広範かつ詳細な情報を提供するものであり、原子力空母を含む米国の原子力軍艦の我が国寄港時の安全性は確保されていることを確信しているとの政府の一貫した判断を何ら見直す必要がないことを改めて裏付けるものであると評価するに至ったことについては、改めて、6月12日付の政府の書簡においても述べられているとおりである。

合衆国原子力軍艦は「一度たりとも、原子炉事故を起こ」していないということであるが、


2.日本政府も同様の認識なのか。原子炉自体の事故はなかったと理解するが、その周辺における事故はなかったのか。国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル1以上に相当する事例はなかったのか。あったとすれば乗組員等に人的被害はなかったのか。
 また、1999年の米空母ステニスの原子炉の緊急停止の事例のように、大事故一歩手前という事例もあったとされることにつき、日本政府としてどう認識しているのか。


(答)
(1)日本政府としても、「ファクトシート」にあるとおり、米国の原子力軍艦について、人体や環境に悪影響を与えるような放射能の放出を起こしたという事例は皆無であると承知している。勿論、原子炉自体の損傷によって放射能が漏出するような事例(「ファクトシート」中の「原子炉事故」とはこのような事例を指していると承知している)も皆無であると承知している。これまで米原子力軍艦の日本寄港は1250回を越えるが、日米両政府がそれぞれ実施してきたモニタリングにおいて、米原子力軍艦を原因とする放射能の異常値が検出されたことは一度もない。また、米原子力軍艦の乗組員も含め、個人が米政府の基準を超える量の放射線(注)を受けた事例は皆無であるとも承知している。
(注)放射線業務従事者に関する米国の連邦線量限度は年間で50ミリシーベルト

(2)1999年にサンディエゴの海軍基地を出港したステニスの原子炉が緊急停止した事例については、海底の泥が原子炉の冷却システムに吸い込まれたために規定通りに緊急停止されたものと理解している。また、その間、原子炉の冷却機能は一瞬たりとも失われておらず、緊急停止の45分後には速やかに再稼働されたと理解している。このように、この事例が大事故一歩手前の状況であったという指摘は事実と全く異なると理解している。

(3)このような空母ステニスの事例を含め、米海軍においては、原子炉に関するトラブルについては、極めて些細なものを含め、然るべく報告されるとともに、地元地方自治体等にも必要に応じて速やかに連絡がなされているとの説明を受けている。空母ステニスの事例については、本年4月18日に、地元の地方自治体であるコロナド市の担当者より横須賀市議会副議長等の一行に対して、海軍より迅速な連絡があった旨説明があったと承知している。

(4)なお、ご指摘の国際原子力事象評価尺度(INES)は商業用原子力施設を対象として定められた評価尺度であり、軍事用の原子力施設への適用は想定されておらず、米海軍はこの評価尺度による評価は行っていない。このため、ご質問にお答えするのは困難であるが、いずれにせよ、日本政府としては、「ファクトシート」にあるとおり、米国の原子力軍艦について、人体や環境に悪影響を与えるような放射能の放出を起こしたという事例は皆無であると承知している。


3.「合衆国の港における活動について適用される安全性に係る予防措置及び手続き」とは具体的に何か。

(答)

(1)「ファクトシート」において、米側が米原子力軍艦の日本への寄港に際して実施を保証している安全措置(例えば、停泊中は通常原子炉を停止する、沖合12海里内での放射性廃液の排出は禁止する等)は基本的に米国の港においても実施されると理解している。

(2)一方で、米国における米原子力軍艦の寄港地には、原子炉修理や燃料交換のための施設や、放射能を扱うメンテナンスの施設等も存在する。しかるに、米政府は、これらの施設は日本には現に存在せず、今後とも、日本に建設されることはない旨を明言している。このように、いくつかの側面において、日本の港においては、米国の港にはない、より手厚い安全の保証が米側より提供されていると理解している。


4.「原子力軍艦の防護壁は民生用の原子炉のものと比べ、はるかに頑丈で耐性が強く、はるかに慎重に設計されている」ということであるが、どのように違うのか。

(答)
(1)米原子力軍艦の各部分の素材や厚さ等の構造に関する技術的な情報については、その軍事的な性質上、極めて機微な情報であり、本来、日本政府としてこれを承知し得る立場にないと認識している。そのような中で、今般、米政府から提示された「ファクトシート」において、米原子力軍艦の原子炉の基本的な構造について説明がなされるとともに、例えば、原子炉の燃料の素材(固体金属)や耐性のテストの強度(重力の50倍の衝撃への耐性)、また、一次系の具体的な構造(全体が完全に溶接された構造)など、一般的な発電所の原子炉とは異なる特性を備えていることを示す踏み込んだ情報提供が行われたことを、政府としても評価している。これらは、米原子力軍艦の原子炉が、商業炉と異なる、軍艦としての任務の遂行に必要な、頑健な設計と構造を備えていることを示していると評価している。

(2)また、米政府の独立の審査機関であり、原子炉の構造等に関する技術的情報を知り得る立場にある米国原子力規制委員会や原子炉安全諮問委員会が、米原子力軍艦の原子炉について、軍事的な所要も踏まえ、その安全性について高く評価してきていると承知している。

(3)更に、「ファクトシート」によれば、米原子力軍艦の乗組員の平均年間被曝量は、地上で生活している人間が受ける自然放射線より遙かに少ない(6分の1)が、このことは、米原子力軍艦に備わる多重防壁の各々が極めて頑健であり、その遮断効果に何ら問題がないことを示していると考える。

(4)もとより、米原子力軍艦の原子炉と原子力発電所等を同一の基準で判断し、比較することは出来ないと認識している。即ち、軍艦の原子炉については、戦闘の衝撃に耐えつつ作戦活動を継続する軍艦に動力が提供されるとともに、戦闘の状況下でも原子炉の至近で生活する多数(注:空母では約5千人)の乗組員の安全が確保されることも求められており、かかる特性に対応した頑丈な設計や安全性を備えていなくてはらない。そのためには、米原子力軍艦が実際の戦闘において想定される種々の攻撃への耐性を備えている必要がある。これは、市民社会に対する電力の安定供給を主たる目的とする原子力発電所の原子炉とは根本的に目的を異にするものである。

5.「合衆国海軍の原子炉の燃料は個体金属である」ということであるが、同じ加圧水型の原発の燃料との違いは何か。
 また、原子炉の燃料が「重力の50倍以上の戦闘衝撃負荷に耐える」とあるが、それは、それはどの程度の衝撃であり、どの程度の攻撃に耐え得るものなのか。

(答)
(1)「ファクトシート」によれば、米原子力軍艦の燃料の素材は固体金属であるが、これは、通常の加圧水型の原子力発電所で用いられるセラミックの燃料と異なる。

(2)また、「ファクトシート」によれば、米原子力軍艦の燃料は、重力の50倍(50G、4万9000ガル)の衝撃を受けても内部の核分裂生成物を放出することはなく、これは米国の原子力発電所の燃料について求められる基準の10倍であるとされている。この衝撃による加速度について、あえて地震による揺れと比較すれば、震度6強の地震による揺れの加速度の約100倍程度であると考えられる。

(3)いずれにせよ、米原子力軍艦の燃料は、実際の戦闘において想定される種々の攻撃への耐性を備えていると理解している。


6.「合衆国原子力規制委員会及び原子炉安全諮問委員会は海軍の原子炉装置の個々の設計について、独立して審査を行う。」ということであるが、両委員会は政府や海軍といったものから完全に独立した組織なのか。両委員会の構成員はどうなっているのか。

(答)
(1)原子力規制委員会はエネルギー再編法(1974年)によって設置された、核施設などから出る放射線から公衆の健康と安全並びに環境を保護し、これらの施設を規制することを任務とする、独立の政府の機関である。同委員会は、大統領が指名し、議会が承認する5名のコミッショナーで構成される「委員会(Commission)」の下に、事務局と執行機関が置かれ、更に専門の諮問委員会が置かれていると承知している。また、現在の5名のコミッショナーのうち、議長を含め3名が科学者、1名が弁護士出身、1名が国務省出身であると承知している。

(2)一方、原子炉安全諮問委員会は11名の専門家で構成され、原子力エネルギー法(1954年)の下、原子力規制委員会による原子炉の規制等について審査し、勧告することを任務としていると承知している。

(3)原子力規制委員会及び原子炉安全諮問委員会が行った米海軍の原子炉に関する審査については、軍艦の構造の詳細に関するものであり、基本的に非公表であるとの説明を受けている。一方で、「ファクトシート」にあるとおり、両委員会とも、米原子力軍艦は軍事的な所要のため、多くの面で商業炉に求められる基準よりも厳しい基準を満たすと評価しており、ニミッツ級の空母についても、艦船の設計及び運航は安全性との観点より適切なものと評価していると承知している。例えば、1998年8月にジャクソン原子力規制委員会委員長(当時)は、米原子力軍艦の原子炉の安全性についての過去のどの審査も、米海軍の原子炉の安全性を示し、とりわけ、慎重な見積もりに基づく頑健な設計、徹底したテストの実施、包括的な原子炉のメンテナンス、小さな問題が更に発展する前に対処するということの重視、原子炉を運転する要員の高度の訓練や能力などは特筆される旨述べていると承知している。


7.米海軍の原子炉は「合衆国の大規模な商業炉の出力の5分の1にも満たない」ということであるが、合衆国の大規模な商業炉の平均的な出力レベルはどの程度か。

(答)
 米側よりは、熱出力で約300万キロワット(電気出力で約100万キロワット)規模の原子力発電所が、標準的な大規模な商業炉であるとの説明を受けている。例えば、4月16日〜20日に横須賀市議会・経済界等の視察団の方々が訪問されたサンディエゴの近傍にあるサン・オノフレ原子力発電所の原子炉と同程度の規模であると承知している。


8.原子炉に係る日常的なメンテナンス作業はどのようなもので、日本ではどのような作業が行われるか。人体や環境への影響についても確認したい。

(答)
(1)米原子力軍艦においては、これまでの日本寄港においても、安全確保の観点から、ごく日常的な原子炉に係るメンテナンス作業は行われてきたと理解している。米側よりは、具体的には原子炉の蒸気系等や電気系統などのメンテナンスであるとの説明を受けている。

(2)米側よりは、このようなメンテナンス作業によって、人体や環境に悪影響が及ぶ可能性は全くないとの説明を受けている。実際に、過去1250回以上に亘る米原子力軍艦の寄港を通じて、日米が行ってきたモニタリングにおいて、米軍艦に起因する放射能の異常値が検出された事例は一つもない。

9.米側は「日本の港湾から採取された環境試料についての結果は、日本国政府への報告書において毎年提供されている」としているが、この報告書は提供してもらえるものか、提供できない場合はその理由。

(答)
 公表は可能である。

10.「合衆国原子力軍艦は極めて速やかに原子炉を停止させるフェイルセーフの原子炉停止システムを有する」ということであるが、一般的なPWR型原子炉に比べ、優れている点があれば情報提供していただきたい。

(答)
 米原子力軍艦の多重の安全措置の関連では、例えば、「ファクトシート」には、電力に依存することなく、原子炉の物理的構造と水自身の特性(比重差によって生じる自然対流)のみによって炉心を冷却する崩壊熱除去システムについて言及がある。また、緊急冷却のために無制限に海水を艦内に取り込むことが出来るという特性は、陸上の原子炉には備わっていないものである。

11.極めて想定しがたい事故のシナリオについて米側は検討している由であるが、「極めて想定しがたい事故」とはどのような事故か。

(答)
(1)「ファクトシート」においては、そもそも、燃料自体がオーバーヒート等で損傷するという事態が米原子力軍艦で起こることは、極めて想定し難いと述べられていると理解している。

(2)更に、そのような事故が起こった場合でも、多重の防壁等のため、放射能が艦外に放出することは、更に、極めて想定しがたい旨が述べられていると理解している。

12.「艦船から想定される量の放射能が放出された場合のあり得る最大の影響はあくまで局地的」とのことであるが屋内待避、避難等が必要な具体的な影響の範囲(距離)について確認したい。

(答)
(1)「ファクトシート」において、米側は、そもそもご指摘のような事態は極めて想定しがたいとしているが、同時に、万が一、そのような事態に立ち至った場合にも、屋内退避等の何らかの防護対策が必要となる範囲は、極めて慎重な分析の結果、在日米海軍基地内に十分にとどまる範囲内に限定されるとしていると承知している。

(2)ご質問にあるような、当該範囲の大きさの具体的な数値等については米政府は公表していないと承知しているが、先月サンディエゴを訪問した横須賀市議会や経済界等の一行もご覧になったように、空母3隻の母港であるノースアイランド海軍航空基地を湾内に抱える人口約120万人を擁するサンディエゴ市においても、また、同基地に隣接する住宅街が広がるコロナド市においても、原子力軍艦の原子力災害のための特別な防護対策は計画されていないことが示すように、米海軍の立場は米国内の地元においては基本的に受け入れられていると承知している。

13.「合衆国連邦政府が定めた閾値」とは具体的にいくらか。また、この閾値は日本の閾値と同等なのか確認したい。

(答)
 米連邦政府の屋内退避等の防護対策の基準は、実効線量について10〜50ミリシーベルトであると承知しているが、これは基本的に防災指針に定められている日本の基準と同等であると理解している。


14.「商業炉や海軍の原子力推進原子炉において、この種の核爆発が起こることは物理的に不可能である」とのことであるが、それは具体的に何故か。

(答)
 原子爆弾のような核爆発を起こすためには、一瞬に爆発的に核分裂を起こさせるための特殊な装置が必要になる。一方、原子力軍艦の原子炉については、陸上の原子力発電所等の原子炉と同じく、そのような装置は持たず、その構造上、核爆発が起こることは物理的に不可能である。


15.補償について、地位協定が適用されない場合とはどのような場合か、また、補償額に法定上の限度はないとしているが、これは政府間交渉により決定されるものか。

(答)
(1)万が一、米原子力軍艦が原子力事故により第三者に損害を及ぼした場合、人的損害等については、日米地位協定第18条5に従って処理がなされる。同条では、「請求は、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従って、提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。」と規定しているところ、具体的には、「原子力損害の賠償に関する法律」に従って、必要な賠償が行われることとなる。

(2)一方、大規模な物的損害については、日米地位協定が適用されないところ、そのような場合は、日米両政府間の外交交渉によって問題の解決を図ることができることとなっているとともに、米国内法による救済の道も開かれている。

(3)いずれの手段をとるにせよ、補償額については、具体的な被害の実態に基づいて、判断されるものであるが、外交交渉で解決を図る場合には、我が国国内法による救済に比して欠けるところなきよう最大限の努力が払われることは当然である。


16.チェルノブイリ原発やスリーマイル島原発において事故が発生しているが、原子力軍艦の原子炉においてもそのような事故が起こるのではないか。チェルノブイリ原子炉・スリーマイル島原子炉と海軍原子炉との比較も踏まえた上で情報提供していただきたい。

(答)
(1)1986年のチェルノブイリの事故は、運転員が考えられないような複数の重大な運転規則の違反行為を立て続けに犯した(例えば緊急停止の信号の無効化、無視等)のみならず、そもそも、事故を起こしたのは当時も旧ソ連でしか運転が行われていなかった「黒鉛減速軽水沸騰冷却型」の原子炉であり、低出力時において不安定となる設計であること、原子炉の緊急停止が迅速に行えないこと(例えば制御棒の挿入にかかる時間が日本の原子力発電所の4倍〜6倍)などの根本的な構造上の欠陥があったため、原子炉の出力が制御不可能となったことによって起こったものであると承知している。その結果、燃料の溶融飛散が発生し、冷却水に接触して水蒸気爆発が起こり、さらに放射性物質を閉じ込める原子炉格納容器も備えられていなかったことから事故の影響が拡大する結果となったものであると承知している。

(2)一方、一般に、加圧水型原子炉は、全ての出力範囲で自己制御性を備える安定性がある設計・構造となっており、米海軍の原子炉についてもそのとおりであるとの説明を米側より受けている。また、「ファクトシート」にあるとおり、米原子力軍艦の原子炉は、その任務の特性上、出力の迅速な調整を安全に行うことが可能な設計となっているほか、極めて迅速に原子炉を緊急停止させるフェイルセーフの仕組みが備わっていると承知している。更に、米原子力軍艦には、日本の発電所と同様に、炉心を収納する堅牢な原子炉格納容器が設けられている。このようなことから、米原子力空母の原子炉でチェルノブイリのような事故が起こることは考えられない。

(3)一方、1979年のスリーマイルの事例は、いくつもの故障が重なり、運転員の誤操作もあり、炉心の一部が適切に冷却されずに損傷したが、原子炉格納容器によって放射性物質の放出が抑制され、周辺への放射線の影響はわずかであり、健康への影響は無視し得る程度であったと理解している(周辺公衆の受けた線量は最大でも1ミリシーベルト。なお、1人当たりの自然放射線の世界平均は1年間で2.4ミリシーベルト。)。

(4)これに対し、米側よりは、原子力軍艦の安全対策に万全を期す努力を不断に行っており、その一貫としてスリーマイルの事例も、原子炉の設計、安全システム、手続き、訓練等のあらゆる側面から包括的に検証され、米海軍の原子炉で同様の事故が発生しないよう徹底した対策がとられているとの説明を受けている。「ファクトシート」に述べられているように、米原子力軍艦の原子炉においては、そもそも燃料を含め、商業用の原子炉等との比較においても頑健に設計されているとともに、スリーマイルのような事例も含め、様々な不測の事態に対応すべく、何重もの防護措置を備え(迅速な原子炉の緊急停止のシステムや、冷却水の自然対流による崩壊熱の除去機能に加え、陸上の民生用原子炉には見られない無制限の海水の迅速な取り込みなど何重もの措置がとられている)、また、徹底した乗組員の訓練が行われているため、スリーマイルの事例のように燃料の損傷に至るような事態は極めて想定しがたいと認識している。

(5)米国原子力規制委員会等の米国の独立の審査機関が、米海軍の原子炉の安全性を高く評価しているのは、以上のような特性も踏まえたものであると理解している


17.原子力空母はテロ攻撃には耐えられるのか、テロリストが核爆発を起こすこともできるのではないか。

(答)
(1)米空母の停泊地は、米海軍基地内であり、徹底したテロ対策がとられていると承知している。米海軍基地のテロ対策の詳細については、事柄の性質上、政府として申し上げる立場にはないが、いずれにせよ、軍事施設に必要とされる、包括的で徹底的な対策がとられていると理解している。

(2)なお、核爆発を起こすためには、これを目的とした特殊な装置と構造が必要である。従って、米空母の原子炉で核爆発を起こすことは物理的に不可能である。



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