その4
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が保有する弾道ミサイルの数は?


それでは、日本に向かって撃たれるかもしれない、北朝鮮の弾道ミサイルの配備状況はどうなっているのでしょうか。防衛白書によれば北朝鮮が保有する弾道ミサイルは、スカッドB・スカッドC・ノドンの3種類であり、さらにテポドン1・テポドン2を開発中とのことです。このうちスカッドB・スカッドCの標的は韓国、ノドンは日本、テポドンは米国とされているようです。それぞれの射程距離は以下の通りです。

  ミサイルの種類   射程距離
   スカッドB    約300km
   スカッドC    約500km
   ノドン    約1300km
   テポドン1    1500km以上
   テポドン2    約6000km
●平成18年度「防衛白書」より
「防衛白書」当該記述のページhttp://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2006/2006/html/i1221000.html#i1205000

北朝鮮は、日本を標的にしたノドン・ミサイルを、どのくらい保有しているでしょうか。韓国の有力紙「朝鮮日報」のインターネット版に以下の記事が掲載されています。

「北朝鮮、ノドン・ミサイル200基保有」 在韓米軍司令官、初めて北朝鮮のノドン・ミサイル保有規模公開
 バーウェル・ベル在韓米軍司令官(陸軍大将)は7日、北朝鮮が射程距離1300キロメートルのノドン(蘆洞1号)ミサイル200基と韓半島(朝鮮半島)全域を攻撃できるスカッドミサイルを600基以上保有していると明らかにした。
 ベル司令官は米上院軍事委員会の国防予算審議聴聞会で、「北朝鮮が沖縄、グアム、あるいはアラスカに位置する米国施設まで優に射程距離とする新型弾道ミサイル(IRBM)を実戦に配備する準備を行っているとう報告があった」としながら、このように明らかにした。在韓米軍の司令官が、北朝鮮のノドン・ミサイル保有の規模を公開したのは今回が初めてで、600基というスカッドミサイルの数は、2004年から2005年の議会・聴聞会で報告された当時の500基から100基増えたもの。
 〜以下略〜
●朝鮮日報 chosun online 06年3月9日
朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/
当該記事 http://www.chosunonline.com/article/20060309000009

 北朝鮮がノドン・ミサイルを200発保有しているとすれば、日本は最低でもSM−3が200発必要です。それでは日本は、何発のSM−3の配備を予定しているのでしょうか。
 海上幕僚監部の広報室に電話し、「SM−3は何発購入するのですか?」と聞いてみました。対応していただいた方によれば、「弾薬やミサイルの保有数など、自衛隊の能力にかかわることは、公表していないのです」とのことでした。
 また国会でも、以下のようなやり取りが行われています。

●清水清一朗衆議院議員
 「SM3あるいはPAC3等のミサイル迎撃システムが我が国は何基ぐらい配備しているのか。例えば、我が国に対して北朝鮮から二十発のミサイルが発射された場合に、間に合うだけの数が確保されているのかどうか。」
●防衛庁
 「ミサイル保有数については、手のうちを明らかにする話になりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。」
●第166国会 衆議院経済産業委員会 07年5月23日
国会会議録検索システムhttp://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0098/main.html

 「SM−3の保有数を調べるのは無理かな」と思っていたところ、同じく衆議院の議事録に、自民党の寺田稔議員による、以下のような発言を見つけました。

●寺田稔衆議院議員
 「現に来年度の概算要求、防衛庁のBMDシステムの整備の要求の数字を見ましても、イージス艦配備はこれが約三百十五億ということでございます。これは、現在のイージスのベースライン7の技術水準を前提にして、それにイージスシステムを付加する、一艦八発体制という前提の予算かと思います。」
●国会会議録検索システム 第161国会 衆議院安全保障委員会 04年10月22日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/161/0015/main.html

寺田議員は、イージス艦1隻にSM−3を8発配備する前提で質問をしています。質問に対して、防衛庁からの訂正は入っていません。また寺田議員は自民党内では国防部会に所属していますから、この情報に間違いはないと考えられます。
 さらに産経新聞のサイトで以下の記事を見つけました。

米国防総省、日本へのSM3売却を通知 総額578億円
 米国防総省は8日、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)9基など総額4億7500万ドル(約578億円)のミサイル防衛関連装備を日本に売却すると議会に通知した。
日本は2007年中に、海上自衛隊のイージス艦「こんごう」にSM3を配備、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」などへの対処を急ぐ計画。今回のSM3はこの配備計画の一環とみられる。(以下省略)

●共同/サンケイ(2007/06/09 10:29)

他のサイトでは1隻あたり9発購入し、1発は訓練に使用するとの記事も見つけました。
 海上自衛隊は、07年から10年にかけて毎年1隻、合計4隻のイージス艦に、ミサイル防衛機能を持たせる改修工事を行います。「こんごう」はミサイル防衛機能の改修工事が行われる、最初のイージス艦です。イージス艦に配備されるSM−3ミサイルが、1隻当たり訓練用1発・実戦用8発だとすると、4隻でも36発です。これではとても北朝鮮のノドン・ミサイル200発にはかないません。


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