【新テロ特措法を廃案へ 自衛隊のインド洋派遣は反対】

■テーマ4.アフガニスタン侵攻の問題点


1.米軍のアフガニスタン侵攻に正当性は無い
 米軍のアフガニスタン侵攻は、「9.11同時多発テロ」に対する、米国の個別的自衛権の行使として行われました。

 しかし米国がテロの実行犯と認定したのは、イスラム武装組織アルカイダであり、アフガニスタン政府ではありませんでした。テロの実行犯が国内にいるというだけでアフガニスタンを攻撃することに、国際法上の根拠はありません。むしろ米国のアフガニスタン侵攻が、国際法に違反する行為です。

 またアルカイダは、武装組織ではあっても国家ではありません。米国は「9.11同時多発テロ」を「戦争」としましたが、「戦争」は国家と国家の争いです。「9.11同時多発テロ」がアルカイダという武装集団の犯行だとすれば、どんなに犠牲が大きくても「戦争」ではなく「犯罪」です。「犯罪」に対して自衛権を発動し、軍事力を行使することを、国際法は認めていません。米国は警察的な手段でアルカイダを逮捕し、司法の場で裁くべきなのです。


2.国際法上は不明確な占領米軍の地位

 米国は個別的自衛権の発動として、01年10月7日から、米軍によるアフガニスタンへの侵攻を開始しました。11月13日にはタリバン政権は首都カブールを放棄し、12月22日にはカルザイ議長を長とする「アフガニスタン暫定行政機構」が発足しています。米国の自衛権行使は、タリバン政権が崩壊し、新政権が樹立した段階で終了したと考えられます。

 それでは現在の米軍は、どのような立場でアフガニスタンに駐留しているのでしょうか。

 民主党の川内博史衆議院議員から米国が駐留する国際法上の根拠を質問された日本政府は、「領域国であるアフガニスタンの同意に基づいて、同国の警察当局などの機関がその任務の一環として行うべき治安回復及び維持のための活動の一部を補完的に行っている」と答えています。

 しかし米国の国内法上は、米国議会が01年9月に行った戦争権限法に基づく決議を根拠として、米軍を派遣しています。アフガニスタンで米軍が行っている戦闘行為は、「戦争」なのか「警察的活動」なのか、あいまいなのです。そこから、米軍が捕らえたアフガニスタン人を、ジュネーブ条約に基づく捕虜としての取り扱いをせず、犯罪者として対処し、グアンタナモ刑務所などで無権利のまま拘束されるという事態が起きています。

 またアフガニスタンでは05年ごろから、タリバン派の攻勢が激しくなっています。カルザイ政権の影響力は首都カブールのみで、南部を中心とした地域はタリバン派の影響下にあるとう報道もあります。アフガニスタンは、カルザイ政権とタリバン派との内戦状態なのです。米軍の攻撃対象はアルカイダではなく、主にタリバン派のようです。これは内戦への介入です。一般的に国際法は、内戦の一方の勢力に対する支援を、内政干渉として禁じています。


【資料】ペシャワール会報93号:2007年10月3日発行

 9月20日現在、アフガニスタン南部・東部・北部の各州で、戦闘は激しくなっています。欧米軍は増派されて5万人以上の大兵力となり、他方「タリバーン勢力」の面の実効支配は、徐々に、かつ確実に首都カーブルを包囲しつつあるように思われます。日本外務省は、既に7月段階で「渡航延期」を勧告し、さらに「真にやむを得ない事情で首都カブール、ジャララバード、ヘラート、マザリ・シャリフ及びバーミアンの五都市に残留せざるを得ない場合を除き、直ちに退避するよう強く勧告します(9月16日)」と、危険を訴えました。
 毎日数百名の単位でアフガン人たちが命を落としています。公式の発表では「NATO軍、○○名のタリバーン兵殺害」と報道されますが、大半の犠牲者は普通の農民や市民たちです。国際赤十字委員会は、「犠牲者の半分以上が無関係の人々だ」とし、活動を「緊急態勢」に切り替えました。米国に擁立されたはずのカルザイ大統領自ら、「アフガン人の命が軽視されている」と訴え、外国軍に自重を促し、タリバーン勢力と水面下で話し合いが進められていると伝えられます。
 この急速な戦闘激化とアフガン人一般市民を巻き込む犠牲増加の背景は、

1.危険な地上戦をANA(アフガン国軍)に主に請け負わせ、欧米軍による攻撃が主として空から安易に行われるため、周囲を巻き込みやすい。
2.タリバーン勢力と一般パシュトゥン農民と区別がつかず、単に支持者である非戦闘員も「タリバーン兵」と誤認される。
3.理由もなく殺害された者の肉親が、政治とは無関係に「報復」に外国軍を攻撃したり、タリバーン勢力を幇助したりで、悪循環を作っている。
4.タリバーン勢力の主力がパシュトゥン農民そのもので、土着性が強い。必ずしも「イスラム過激派」とは限らない。「国際テロ組織」とは無関係に、「外国人に荒らされた郷土の防衛」という動機が強い。
5.首都の華美な風俗と貧困層の状態との余りの格差、外国兵の横暴、強盗、殺人事件が増える中で、旧タリバーン政権による治安の良さを懐かしむ声が強くなっている。

ペシャワール会
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/


3.米軍による民間人殺害
 米軍によるアフガニスタン侵攻と、その後の占領によって、どのくらいの民間人が犠牲になったのか、明確な数字は発表されていません。いくつかの調査機関やNGOは、侵攻初期の空爆だけで、4,000人が犠牲になったとしています。タリバンによる攻勢が激しくなるとともに米軍による空爆も増加し、その中で民間人の犠牲者も増え続けているようです。カルザイ大統領ですら米軍に対して、空爆で民間人が犠牲になっていることを批判しています。

 アフガニスタン侵攻は、「9.11同時多発テロ」への自衛権の行使として始まりました。「9.11同時多発テロ」は約3,000人が犠牲になりましたが、アフガニスタン侵攻では4,000人を超える民間人が犠牲になっています。米軍の軍事行動で民間人が犠牲者が出ていることについては、カルザイ政権も強く批判しています。


【資料】アフガン大統領、NATO・米軍の「無差別」作戦を非難

 アフガニスタンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍主導の国際治安支援部隊(ISAF)および米軍主導の多国籍軍による作戦により、過去1週間で民間人約90人が死亡したことに対し、ハミド・カルザイ大統領は23日、作戦行動が「無差別で正確性に欠ける」と厳しく非難した。
 厳しい表情のカルザイ大統領は、南部ウルズガン州での3日間の戦闘で民間人52 人が死亡したことに触れ、「以前から言っているように、戦闘で民間人が犠牲になることは受け入れられない。これ以上の犠牲は容認できない」と記者団に語った。
 同大統領はまた、22日早朝に南部ヘルマンド州でISAF が行った作戦で女性9人、子供3人を含む25人が死亡したことにも言及。民間人の被害を食い止めるため、ISAFと多国籍軍にアフガン政府と連携するよう「繰り返し求めてきたが無視され続けた」と語り、「今後は、わが国の方針に従い両軍が作戦を行うよう断固要求する」と述べた。
 非政府組織(NGO)の連絡会議は前週、今年に入りISAFと多国籍軍などによる攻撃で民間人250人近くが犠牲になったと発表している。(以下略)
●AFP通信07年06月24日


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