【新テロ特措法を廃案へ 自衛隊のインド洋派遣は反対】

■テーマ5.米軍は何をしているのか 自衛隊は何をしていたのか


1.「不朽の自由作戦(OEF:Operation Enduring Freedom)」

 「不朽の自由作戦(OEF)」は、米英軍によって開始された、アフガニスタン侵攻作戦の名称です。「国連決議1368」は、「9.11」に対する各国の自衛権行使を認めています。しかし「不朽の自由作戦(OEF)」そのものが、国連決議に基づいて組織されたわけではありません。「不朽の自由作戦(OEF)」は、国連決議に基づくPKOとは異なる、米同盟軍独自の軍事行動です。

 米軍は03年10月7日からアフガニスタンへの空爆を開始し、軍特殊部隊やCIA軍事要員を投入してタリバン政権と対立する北部同盟を支援しました。11月13日には北部同盟が首都カブールを、12月7日にはタリバンの拠点カンダハルを制圧。12月22日にはカルザイ議長による「アフガニスタン暫定行政機構」が発足しました。04年には大統領選挙が実施され、カルザイ大統領が誕生しました。一方、崩壊していたタリバン派は、05年に入って軍事攻勢を強め、現在では首都カブールを除く国土全体で支配を確立しているようです。

 日本政府の発表によれば、「不朽の自由作戦(OEF)」には、米・英・仏をはじめ24か国が参加しています。また米国務省は、19,000人の米軍兵士と、3,100人の同盟軍兵士が作戦に参加しているとしています。

 開戦から07年末までの死者は、米軍474人・同盟軍273人・合計747人です。このうち06年の死者191人・07年の死者230人と、開戦当初よりもここ2年間が、多くの犠牲者が出ています。

 アフガニスタン民間人の犠牲数は、公式な数字は発表されていません。いくつかの研究所やNGOは、米同盟軍による初期の侵攻で約4,000人が死亡したとしています。また米同盟軍とタリバン派との戦闘が激化した06年以降、4,000人の民間人が犠牲になったというカブール現地からの報道もあります。

 「不朽の自由作戦(OEF)」が「9.11」に対する自衛権行使とすれば、この作戦の終了は、アルカイダが崩壊してビンラディンが捕獲され、タリバン派が一掃されたときでしょう。しかし6年間の戦闘にも関わらず、米国は一度としてビンラディンの動向を補足したことはありません。またタリバン派の勢力は復活し、カルザイ政権は存続も危ぶまれています。この戦争いつ終わるのか、まったく不明なのです。


【資料】安保理決議1368(訳文)(外務省のサイトより)

安全保障理事会は、
国際連合憲章の原則及び目的を再確認し、
テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意し、
憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、

1.2001年9月11日にニューヨーク、ワシントンD.C.、及びペンシルバニアで発生した恐怖のテロ攻撃を最も強い表現で明確に非難し、そのような行為が、国際テロリズムのあらゆる行為と同様に、国際の平和及び安全に対する脅威であると認める。
2.犠牲者及びその家族並びにアメリカ合衆国の国民及び政府に対して、深甚なる同情及び哀悼の意を表明する。
3.すべての国に対して、これらテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁くために緊急に共同して取り組むことを求めるとともに、これらの行為の実行者、組織者及び支援者を援助し、支持し又はかくまう者は、その責任が問われることを強調する。
4.また、更なる協力並びに関連する国際テロ対策条約及び特に1999年10月19日に採択された安全保障理事会決議第1269号をはじめとする同理事会諸決議の完全な実施によって、テロ行為を防止し抑止するため一層の努力をするよう国際社会に求める。
5.2001年9月11日のテロ攻撃に対応するため、またあらゆる形態のテロリズムと闘うため、国連憲章のもとでの同理事会の責任に従い、あらゆる必要な手順をとる用意があることを表明する。
6.この問題に引き続き関与することを決定する。

●外務省の当該サイト
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/anpo_1368.html


【資料2】関係サイト

●外務省「テロ対策特措法に基づくこれまでの我が国の活動及び補給支援特措法」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/katsudou05.html

●外務省「テロとの闘い」等への各国の部隊派遣状況
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/pdfs/operations.pdf

●米国務省Operation Enduring Freedom(英語)
http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2006/60083.htm

●インターネト新聞JAN JANの記事「連合軍による「虐殺」で住民抗議行動」
http://www.news.janjan.jp/world/0705/0705065062/1.php


2.「国際治安支援部隊(ISAF:International Security Assistance Force)」

 「国際治安支援部隊(ISAF)」は、アフガニスタン政府を支援するために治安維持に当たる組織です。「国連決議1386」によって設立されました。現在、NATO加盟国を中心に38か国、兵士約41,000人が参加しています。部隊の指揮は、NATO加盟国が交代で当たっています。

 当初は、「国際治安支援部隊(ISAF)」の活動地域は首都カブール周辺に限定されていましたが、現在では全土に拡大しています。また「不朽の自由作戦(OEF)」は対タリバン戦闘、「国際治安支援部隊(ISAF)」は治安維持という役割分担がありますが、タリバンからの攻撃が激しくなる中で、「国際治安支援部隊(ISAF)」もタリバンとの戦闘をはじめています。


【資料】関係サイト

●ISAFの公式サイト(英語)
http://www.nato.int/isaf/index.html


3.「海上阻止活動」(OEF-MIO:Maritime Interdiction Operation)

 「海上阻止活動(MIO)」は、「不朽の自由作戦(OEF)」の一環として、武器・弾薬・麻薬の輸送やテロリストの移動を阻止するために、インド洋で実施されています。現在5か国から戦闘艦船11隻と、補給艦3隻が派遣されています。日本政府が海上自衛隊を派遣して行っていたのは、「不朽の自由作戦(OEF)」ならびに「海上阻止活動(OEF−MIO)」に参加する艦船への燃料・水の補給活動です。

 防衛省が作成した資料によれば、01年9月以来、「海上阻止活動(MIO)」によって行われた無線照会は14万件以上、立ち入り検査は1万1千回以上で、これらの行動によって不審船の数が減少しているそうです。

 しかし、アフガニスタンは南西をイランに、南東をパキスタンに挟まれた内陸国です。武器・弾薬・麻薬の輸送やテロリストの移動は陸地を通って行われているのであり、海上阻止行動には大きな効果はないという声もあります。


【資料】関係サイト

●日本国際ボランティアセンター
「アフガニスタンにおける対テロ戦争と日本の軍事支援の見直しを求める声明」
http://www.ngo-jvc.net/jp/notice/notice20071016_afghanstatement.html
※アフガニスタンでの外国軍の活動の問題点について指摘しています。



4.海上自衛隊は何をしていたのか

 海上自衛隊の具体的な活動内容は「テーマ1.テロ特措法とは何か?」で述べたとおりです。それでは海上自衛隊は、何を目的として補給活動を行っていたのでしょうか。

 国会審議の中で高村外務大臣は、「海上阻止活動とは、インド洋をテロリストたちの自由の海にさせない、我々にとって平和の海にしたいということ」と述べました。

 この話しからは、海上自衛隊は、テロを取り締まる警察的活動に協力のように受けとれます。しかし実際には、海上自衛隊から補給を受けた米艦船が、アフガニスタン本土への攻撃を行い、多くの民間人が犠牲になっています。

 また高村外務大臣は、「日本の原油輸入は中東から来る。それはインド洋を通る。テロをしかけられたらたまらない。日本の生命線である。」とも述べています。中東からの石油タンカーがインド洋を通るからという理由は、テロ特措法の趣旨とはまったく関係ないことです。これでは対米協力を名目にしながら、日本の権益を守るために海上自衛隊を派遣していることになります。


5.民間人殺害に対する日本政府の態度

 米軍による民間人殺傷に関して野党議員は、「9.11を超えるアフガニスタンの一般人が殺されている。その現状をどう考えるか」と質問しました。これに対して町村官房長官は、「タリバンの政府は、テロリストの支配する国家。」「カルザイ政権のもとで民主的な選挙も行われ、民主主義というスタンダードから見て、従前と比べればいい国になってきたという状態が、九・一一の後の軍事作戦によって新しい政権ができた。」「ただ単に、その年に亡くなった死者の数が多い少ないというだけで、それでその国の政治体制がいい悪いという議論をするのはまことにおかしい」と述べたのです。

 この発言は、民主主義のためには民間人が犠牲もやむを得ないといっているのと同じです。アフガニスタンをどのような国にするのかは、アフガニスタンの人々が決めることです。米国が軍事力で押し付けることでもなければ、民間人殺害を正当化する理由にもなりません。


【資料】168国会 衆議院 テロ特委員会 第5号 07年10月30日(火曜日)
町村国務大臣
 「それ以前のタリバンの政府というものは、まさにテロリストの支配する国家。例えば一つの、いい例かどうかわかりませんけれども、恐怖の支配が行われたイラクのあのかつての旧レジームが、それは一見幸せに見えたかもしれない、一見テロがなかったかもしれない。それでは、そちらの政権の方が本当によかったと田嶋議員は本当に確信を持って言えるんでしょうか。
 私は少なくとも、今のカルザイ政権のもとで民主的な選挙も行われ、そして先ほど申し上げましたような女性の大いなる進出ができる。ある意味では、民主主義というスタンダードから見て、やはりかなり進んだ、従前と比べればいい国になってきたという状態が、あの九・一一の後の軍事作戦によって新しい政権ができた。
 そうしたことを比べたときに、ただこっちの死者が多いから少ないから、そういうことによって、よしんば仮に、確かに今のイラクは、それ以前のサダム・フセインの時代には自爆テロもなかったでしょう、したがって幸せだったと言い切れますか。そういうことはやはり、ただ単に、その年に亡くなった死者の数が多い少ないというだけで、それでその国の政治体制がいい悪いという議論をするのはまことにおかしいと私は思っております。」


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