イラク戦争の実態と嘘
占領抵抗運動リーダーのリカービさん来日
日本人にイラクの思い伝える

 イラク民主的国民潮流のスポークスマンでフランスに亡命中のアブデル=アミール・アル・リカービさんが、7月27日から8月1日の日程で来日しました。リカービさんは今年4月、日本人3人がイラクの武装組織に拘束された際、解放に尽力してくれた人物です。
 昨年12月に来日し、小泉純一郎総理と会談。その際リカービさんは、自衛隊の占領軍参加に反対し、日本が平和的な復興支援を行うことを求めました。ところが「週刊ポスト」誌が政府筋の情報として、リカービさんが巨額の資金援助と引き換えに自衛隊の安全を保障する約束をしたという記事を掲載。今回は「週刊ポスト」を相手に、記事の訂正と謝罪、損害賠償を求める裁判を行うために来日しました。
 平和フォーラムも加わるWORLD PEACE NOWは7月30日、リカービさんを招き、東京千代田区の韓国YMCAホールで講演会を開催しました。以下は、講演の要旨です。


転機となったファルージャの戦い
 今年4月、ファルージャで大規模な戦闘が行われました。この戦いは、抵抗運動がイラク全土に広がるきっかけとなりました。それ以前は、「スンニ・トライアングル」と呼ばれる地域が抵抗運動の中心でしたが、そこを超えて、バスラなどの南部を含めた広範囲な地域に戦いが拡大したのです。
 この戦いと、アルグレイブ刑務所での米軍による暴行・虐待の発覚によって、米国は窮地に追い込まれました。米国は当初の予定を前倒しして暫定政府を立ち上げ、主権移譲を行わざるを得なくなったのです。
 米国は今年末から来年初頭に、選挙を実施するといっています。この選挙の実施には、治安の改善という前提条件がついています。しかし、治安が改善される見込みはありません。選挙も実施されない可能性が大きいでしょう。

憲法制定評議会の開催を準備
 抵抗勢力側には、人員・武器・規模の面で、占領軍をイラクから追い出す力はありません。ですからいま、国民的基礎を持つ新しい政治的な枠組みが求められています。
 米国と暫定政府は、「国民会議」の開催を準備し、諸勢力に参加を呼びかけています。しかし、多くの組織は参加を拒否しています。そのため、この会議は開催が延長されることになりました。
 一方、私たちは、「憲法制定評議会」の開催を呼びかけています。8月末に、アラブ諸国のどこかの首都で──正確な日時と場所はまだ言えませんが──「憲法制定評議会」の準備会が開催されます。会議が成功すれば、イラク国民の総意を具体化する、大きな一歩、現状を変革する大きな局面となるでしょう。会議には、様々な宗教、政治党派の代表が集まります。イラクの戦いは、ばらばらの抵抗運動から、統一した運動への変革期にあるのです。
 米国と暫定政府が呼びかける「国民会議」は、占領の協力者が集まり、占領当局が全てを決めます。私たちの会議には、占領に反対する者が集まり、占領当局からは自由な議論が行われます。
 いま、様々な宗派・政治勢力・部族に参加を呼びかけています。これらの勢力間での合意は、さほど難しくないでしょう。みなイラクの国民であり、一つの国で生きていこうとしています。全国民が一致して協力し、前進するでしょう。

日本は平和復興に協力を
 日本政府が占領軍に参加したことは、残念です。これは、日本の憲法や歴史にも矛盾するものでしょう。
 昨年訪日した際、私は小泉総理と会見しました。イラクの代表と日本の代表という立場で話をし、占領の枠組みの中では、イラクに来てほしくないことを伝えました。また、私からは「友情と協力計画」を提案しました。それは、日本と自衛隊が、占領とは別に、イラクの復興に平和的に参加・協力するというものです。
 しかし、いまの自衛隊は、どのような活動をしていたとしても、占領の一部です。日本政府には、自衛隊を撤退させ、「友情と協力」に立ち返ってもらいたい。
現在の自衛隊は、イラクの中で孤立しています。占領に参加することがいかに難しいかを、日本政府に知ってもらいたいと思います。

『男女共同参画基本法』を否定した荒川区の“条例案”取り下げ!

清水 澄子(I女性会議顧問、平和フォーラム副代表)

 いま、全国各地で性差別撤廃を目指す「男女共同参画基本法」(1999年施行)の条例案に対する攻撃が強まっています。中でも、東京都荒川区では、6月に「全国初のモデル条例」を作ると意気込んでいた反フェミニズム知識人による「条例案」が成立直前に市民と議会の反発をうけて、区長自ら「条例案」を取り下げることになりました。
 事の成り行きは、昨年12月に荒川区長は「荒川区男女共同参画社会懇談会」を立ち上げ、会長に「フェミズムの害毒」の著者として知られる林道義氏を就任させました。副会長には「新しい歴史教科書をつくる会」の高橋史郎氏と「民間教育臨調事務局長の八木秀次氏が就任。この三人は「正論」や「産経新聞」の論客で、ジェンダーフリーを「中性人間をつくること」だと歪曲し、男女共同参画社会基本法や各自治体における男女共同参画推進条例の改正を主張している人たちです。実際に条例を改悪したり、ジェンダーフリー教育の中止を求める請願を議会に提出して、可決されたケースもあるなど、全国的に組織的な活動を展開しています。因みに、林会長の視点は、月刊誌「正論」(03年11月号)に高橋副会長との対談記事で明確に示されています。「男は生まれながらに積極的。女は消極的であるということは脳科学が解明した脳の構造から明らかです。それを訓練や教育によって発達させないで、あいまいにしたり、逆のことを教え込んだりしたら、男は去勢されてしまい。女は乱暴で下品になってしまう。」「政治家や実業家、各種審議会の委員や大学の教師などに、女性を殖やすことが果たして良いと言い切れるのだろうか」「政治家には、専業主婦の立場や利害を代行する男性がなればいいのだ」「専業主婦は子育てや家事があるから政治の場に出てはいけない、女性が外に出て働くことは、家庭を壊す方向に行く、フェミニストの思うつぼで、挑発的な言い方をすれば、女性の政治家を増やす必要はありません」というように男女共同参画社会の基本理念を真っ向から否定している思想の持ち主なのです。
 この三人を「懇談会」に入れた背景は、2001年に当選した藤沢区長が、すでに同区で策定されていた「ジェンダーにとらわれない(ジェンダーフリー)意識作り」の推進計画を見て「ジェンダーフリーは問題だ、男女の『特性』を明記する条例を作って「推進計画」を作り変えようとしたことにあります。しかし、ジェンダーとは「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」とか、「男は仕事、女は家庭」というような、社会的に歴史的に作られてきた固定的な性別役割意識にとらわれない生き方や、社会のあり方やシステムを改めて、一人一人が自分の可能性を開花させ、男女が共に多様な生き方を選択することのできる社会をめざすというものであり、それは日本だけではなく、世界共通の人権問題としてとりくまれている政策課題であることは周知の事実です。
 懇談会の報告書が5月24日に林会長から区長に提出されました。そこには、「男女の違いを認め、男女がその特性を活かし、必要に応じて適切に役割を分担する」「家庭の尊重・育児・介護・その他の家事についるべく家族の中で行う」「乳幼児期の母子関係は重要だから、母親が子育てに専念することは尊重されなければならない」等々。女性の役割を育児と家庭に位置づけ、それが女の「特性」であることが強調されています。
 また、妊娠・出産や性に関連しては「胎児の生命尊重」をうたいながら、女性自身の自己決定権を否定しています。しかも、男女共同参画を推進するに当たって「乱用の防止」という「項」をたて、「男女の特性を差別と見誤って否定してはならない。性教育は発達段階に応じて行い性別に配慮する。特定の性別役割分担(例えば男性も育児をなど)を強制してはならない。」などと、留意事項が並べられています。これを産経新聞が大々的に報道すると全国から「素晴らしい勧告書だ、これに沿って条例を作るように」という激励が荒川区に寄せられました。
 危機感を持った女性団体が全国から区長に抗議文を送り、5月27日に条例骨子案が示されると、それに反対する懇談会委員の中には、林会長の強引な会議の進め方に抗議して辞任した委員や、6委員が「報告書」は合意形成のないまま提出されたと批判。最大会派の自民党は賛成しましたが、公明党や野党会派の反対で撤回されることになりました。しかし、こうした流れは、自民党の憲法改正プロジェクトチームの「論点整理」に24条(個人の尊厳と両性の平等)の改正が示されたことから、軍事的国家像と家族像を抱き合わせた攻撃が一段と強まるであろうことを警戒する必要があります。

2004年版防衛白書の問題点

自衛隊海外「派遣」、原則見えぬまま


 石破防衛庁長官は7月6日の閣議で2004年版「防衛白書」を報告しました。冷戦型の自衛隊の装備体系を抜本的に見直す一方、「日本の立場にふさわしい役割を果たす」ことを強調し、自衛隊を国際協力に積極的に活用する方針を示すとともに、即応性や機動性などを重視した部隊の養成や装備を構築する考えを打ち出しているのが特徴です。

■イラク派兵
 イラクへの自衛隊派兵については「イラク再建はイラク国民や中東地域の平和と安定はもとより、日本を含む国際社会にとって極めて重要」と意義を強調する一方、「日米の安全保障面での協力をさらに緊密かつ実効性あるものとするうえで有意義」として、米国との信頼強化を唱えています。
また、米国が「テロとの闘いで、同盟国・友好国との間におけるコアリション(有志連合)の形成を重視していると指摘し、「日米が、よりグローバルな協力を強化していくことが求められる」と対米従属の姿勢を主張しています。

■アジア情勢
 北朝鮮の核開発問題では「ウラン濃縮計画の動向や、核兵器に使用可能なプルトニウムの抽出が懸念される。核兵器計画が相当に進んでいる可能性も排除できない」と懸念を表明し、「北朝鮮は大規模な特殊部隊を保持するなど軍事力を維持・強化している」と不信感をにじませています。
 また、中国については「核・ミサイル戦力や海・空軍力の近代化を推進とている。国防予算の国内総生産(GDP)に占める割合はここ数年増加している」と軍事大国化に警戒感を示しています。

■国際協力
 白書は「世界的規模の武力紛争が生起する可能性は一層遠のいている」とし、日本への大規模侵略の可能性の「低下している」と分析。防衛政策の基本理念として「必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」としてきた「基盤的防衛力構想」については石破長官が巻頭言で「引き続き有効なものか、基本論から議論することが必要」と述べ、見直しを検討する考えを示しました。
 一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロなどの「新しい脅威」が「国際社会の差し迫った課題だ」と指摘し、「より機能する自衛隊」への転換を主張。ミサイル防衛整備に取り組むほか、「国内外の安全保障環境に対して実効的に対応しうる能力を保持し、能動的に働きかけることが重要」としています。
 具体的には@国際活動に必要な教育を受けた部隊の保持A積極対応できる輸送・補給力の確保──などをあげています。

■海外「派遣」原則、見えぬまま
 白書は、国際社会に協力するための自衛隊の積極的な活用を強調し、そのための組織・整備の必要性を鮮明に掲げました。ただ、自衛隊の海外派兵は「海外での武力行使」を禁じた憲法との整合性が問われます。
 白書は「協力の必要性」を繰り返すばかりで、派遣の際にどのような国際的合意を必要とするのか、国内法の枠組みをどのように考えるかなど、肝心の「原則」は見えてきません。政府は、今年末までに防衛力整備のあり方を定めた「防衛計画大綱」を見直し、新たな大綱を策定する方針です。白書はこの見直しの方向性を示す内容になっています。
 白書は防衛計画大綱で「基盤的な防衛力を保有」としてきた侵略事態への備えを、「最も基盤的な部分を確保」と言い換え、基盤的防衛力構想からさらに絞り込んだ兵力整備を提示。冷戦期から引きずってきた戦車などの従来型装備の「規模縮小」を明記しました。 その反面、新大綱ではテロや弾道ミサイルなど「新たな脅威」に対処するため、ミサイル防衛システムなど従来型装備に代わる「新たな防衛力」を盛り込む方針です。
 さらに、「本来任務」ではなく「付随的任務」と位置付けてきた自衛隊の海外任務について、今回の白書は国土防衛と同等に位置付け、「国際社会の安定」のために自衛隊を積極的に活用する方針を明確に打ち出しました。日本がこれまで継続してきた国連平和維持活動(PKO)では、紛争当事者間での停戦合意など「参加5原則」を示し、5原則に当てはまらない海外派遣ではイラク特措法など時限立法で対応してきましたが、白書ではイラク派遣が多国籍軍参加につながった分析や多国籍軍参加を恒常的に可能にする一般法(恒久法)の制定を政府が検討していることについては全く触れられていません。
 複雑化する国際情勢のなかで、どんな基準で自衛隊の海外派兵を可能と判断するのか?について、白書は「国連をはじめとする国際的な協調体制のもと」としているだけで、イラク派兵で指摘された「対米追従」批判などに答える記述はなく、その説明は余りにも根拠薄弱といえるものです。


WTO農業交渉へ向け中央行動
関税引下げ反対、各国農業の共存を

 WTO(世界貿易機関)の交渉は、7月末の枠組み合意をめざした協議が続けられています。(7月27日現在)。焦点の農業交渉では、アメリカや農産物輸出国からは、日本の米や乳製品のような重要品目に対して低関税での輸入枠(関税割当数量)の拡大や、高関税品を一律に一定の関税以下に引き下げる上限関税の設定などが求められています。
 こうした提案は、農産物輸出国がますます輸出を拡大しやすくするためのものであり、日本農業への打撃はもとより、食料の安全・安定、農業の持つ環境保全機能などにも大きな影響を与えるものです。また、アメリカやEUなどが行っている国内農業への手厚い補助政策や、輸出補助金の是正については、不明確なままであり、途上国からは批判が高まっています。
 こうした情勢を受け、7月20日に、平和フォーラムは農民団体とともに、「関税引き下げ反対!家族農業を守れ! 7.20中央行動」を行いました。この行動は、6月に韓国・ソウルで開かれた「アジア社会運動団体会議」で、WTO交渉に向けてアジア各国の運動団体が一斉に行動を展開しようとの確認にも合わせて実施されたものです。
 集会では、「農産物の貿易自由化は、アメリカなどの一部の輸出国を富ませて、途上国や輸入国に犠牲を強いるものだ。WTO交渉が世界的な飢餓の拡大や地球規模での環境悪化につながることのないよう、農林水産業の多面的機能の発揮や食料自給の向上、各国の多様な農林水産業が共存できる貿易ルールに改めることを求めよう」(太田敏夫平和フォーラム副代表)と確認。さらに、「たとえ枠組み合意がされても、具体的な内容は今後に先送りされる。さらに、各地域で、自治体などへの働きかけを強めていく」(同)ことにしています。
 集会後に、外務省、農林水産省への要請を行ったほか、外務省前でアピール行動を行い、シュプレヒコールなどを繰り返しました。
 なお、同日の行動では、政府が審議を進めている、「食料・農業・農村基本計画」の見直しに対する要請も行いました。


問題あり米国産牛肉輸入再開
BSE全頭検査の徹底が必要

 昨年12月に発生した米国産牛のBSE(牛海綿状脳症)によるアメリカからの牛肉の輸入禁止が続いていますが、これをめぐり日米協議が行われ、8月下旬にも開く局長級協議で輸入再開条件が詰められようとしています。アメリカ側は、日本が行っている全頭検査を認めず、若齢牛(生後30ヵ月未満)を中心に輸入再開を求めています。
 一方、政府の食品安全委員会も日本のBSE対策の検証を行っており、特定危険部位を除くことを条件に全頭検査の緩和を容認する考えが示されています。食品安全委員会では結論がまだ出ていませんが、全頭検査を打ち切ることになれば、それに従って、米国産牛肉の輸入再開への条件が固められることになります。
 しかし、BSEについては未解明の部分も多く、原因といわれている異常プリオンの蓄積のメカニズムも分かっていません。また、日本では全頭検査の結果、これまで世界的に問題がないといわれてきた21ヵ月や23ヵ月齢の若い牛からもBSE感染が見つかっており、若齢牛であれば安心という根拠も明確ではありません。
 牛の月齢の鑑別方法についても、アメリカでは日本のような厳格な規定もなく、検査体制の不備が指摘されています。さらに、7月に来日した米国の食肉加工最大手のタイソン・フーズ社の工場で働く労働組合のメルキアデス・ペレイラ委員長は、「工場では生産ラインが速すぎて、と蓄解体作業がおざなりになっている」と報告し、これによるBSE感染の可能性もあると指摘しました。
 このような中での輸入再開に向けた動きは、秋のアメリカ大統領選挙を前に、政治決着を図ろうとする意図があるものといわざるを得ません。
 こうしたことから、引き続き、全頭検査や危険部位の完全除去の徹底が必要であり、米国産牛肉の輸入再開は問題が多いといわなければなりません。消費者団体では、食品安全委員会等への申し入れ、交渉を行って、問題点を追求していくことにしています。

日韓被爆二世シンポジウムを開催

 全国被爆二世団体連絡協議会(略称二世協)は、1988年の結成以来、被爆二世問題の解決のために活動を続けてきました。原水禁としても、その活動を積極的に支援・協力をしてきました。
 これまで主な活動として被爆者援護法の被爆二世への適用を求め厚生労働省交渉を毎年行い、1989年以来、韓国との被爆二世との交流も続けてきました。その中で、第1回の日韓被爆二世シンポジウムが広島と長崎で開催されました。11年後の2000年には韓国・ソウルにおいて第2回のシンポジウムが開催され、2003年には、韓国・釜山でも開催してきました。
 今年は日韓被爆二世の課題を中心に広範囲な被爆者課題の解決のために、東京においてシンポジウムや分科会を開催しました。あわせて被爆二世の課題解決に向けた政府・厚生労働省への要請を行いました。
 広島・長崎の原爆投下から59年・60年(来年)が経過しようとする中で、被爆二世の課題も重要な時期を迎えています。被爆60周年とその後のヒロシマ・ナガサキの運動を被爆二世としてどう継承・展開していくべきかが問われる重要な取り組みです。また、来年の被爆60周年にも、広島において第5回目のシンポジウムを考えています。今月号で全体会と二つの分科会の概要を紹介します。

 1989年以来、第4回目になる日韓被爆二世シンポジウムが、今回初めて東京で開催されました。主催者挨拶の中で、全国被爆二世連絡協議会の平野伸人会長は、「戦後59年間『援護なき差別』の状況で放置されてきた被爆二世問題を、広島・長崎だけでなく国民的な課題とするために、東京での開催は意義深い」と述べ、韓国被爆二世の会の李承徳会長は「日韓被爆二世の出会いから15年を経過した今回のシンポジウムを、被爆者問題の延長線上としてではなく、二世問題を正面から考える契機にしたい」と語りました。
 全体会では、原水禁の福山事務局長をコーディネーターに、日韓5人がパネルディスカッションを行いました。広島の中谷悦子さんは、相談窓口に寄せられた被爆者や二世の思いと自らの思いを語り、被爆二世は差別と偏見におびえるのではなく、それを打ち破る援護策を求めて立ち上がる時だと訴えました。
 長崎の崎山昇さんは、被爆二世に法的な定義がないのは法的施策がとられていないためだと指摘、二世対策の現状と問題点に言及しました。
 韓国の李太宰(イ・テジェ)さんは、日本の侵略の結果として被爆させられた親から生まれた韓国の二世の置かれている、日本とはまた違った厳しい状況を指摘しながら、日韓の二世が連帯して全世界に向けて核被害者が出ないように運動することが重要だと述べました。
 続いて姜成浩(カン・ソンホ)さんは、まず日韓が歴史確認を共有し過去の清算をすることが必要とし、日韓の被爆二世が健康不安・社会的差別・親の体験の継承など共通の課題を持って連帯することが重要だと提起しました。
 最後に、広島の角田拓さんは、アメリカ・スミソニアン博物館でのエノラゲイ展示に抗議する行動に参加した際、被爆者から受け継がなければならないものがあると同時に、被爆二世として伝えなければならないものがあるのだという思いに至ったと述べました。
 日本国内の被爆二世は30万とも50万とも言われますが、実態はいまだ明らかではありません。被爆60年を前に、被爆二世の実態を明らかにし、被爆者援護に二・三世対策や在外被爆者対策等、国家補償に基づく被爆者援護の充実を求めていくことなど、課題は山積しているといえます。
 午後の分科会をはさみ、最後に日韓被爆二世共同宣言を採択し、日韓の被爆二世がより連帯を深め、核も戦争もない平和な世界を実現に向けて運動していくことなどを誓って閉会しました。
(長崎県被爆二世教職員の会 柿本実千子)

平和を創る被爆二世の役割
神奈川高教組被爆二世教職員の会 藤井 光一郎

 分科会では、問題提起者として、全国被爆二世教職員の会会長の岸本伸三さんからの基調報告と、韓国側から李絃出さんからの報告を受けて、会場での討論と意見交換を行いました。
 岸本さんからは、昨年亡くなられた広島の被爆教師石田明さんとの出会いを紹介の後に、「広島・長崎が忘れ去られたとき、再び広島・長崎が繰り返される。戦争被害者に、国が補償をすること。一度戦争を起こすと、その後の補償金額を考えたとき、とても戦争など出来ないことはすぐにわかる。原爆被爆者、被爆二世が補償を求める運動が平和運動になる」と、戦後補償の重要性の指摘がありました。続けて、「過去に核兵器の使用が検討された。それを断念させたのは、被爆者の声。核保有国への訴えを原水禁が行ってきた。今後、核が使用されそうな地域は中東・アジア地域ではないか。そういう国々に原爆の実相を知らせる必要があり、実行してきた。そのときに、植民地支配をどうするのかという問題があった。核兵器廃絶へ向けて、アジアの人々と連携するには、共通する歴史認識が必要である」と、今後の運動へ向けての方向性の提起が示されました。
 韓国側の李鉉出(イ・ヒンチュル)さんからは、「韓国での平和運動は拡大している。87年の民主化以降、進歩陣営が躍進している。アメリカとの同盟が崩れている。北に対する拒否感が和らいでいる。反戦平和運動が、10年前までは社会運動になっていなかったが、今は違う。しかし、反核・反戦を訴えると、反政府的と映りやすい。今後はネットなどを利用した多様なプログラムを展開していかないと、大衆へ広がりにくい。核被害者の訴えを伝える必要がある。体験の共有のための多様なプログラムを展開したい」と、現在の韓国被爆二世の取り組みが紹介されました。
 会場から、「韓国の若い世代の人たちはどんな状況ですか」という質問に、李鉉出さんは、「日本での自衛隊、憲法の論議を聞いて、韓国の高校生は敏感になっている。未来に不安を感じて反戦・反核運動が活発になっている。歴史認識は、車の運転でいうなら、バックミラーにあたる。前に進むためには後ろを確認しないといけない。バックミラーを見ないで運転している車があると、危険でしょう」と、説明がありました。
 参加者からは、「東京に住んでいます。私は被爆二世です。高校まで進んだ息子が、突然死んでしまった。どうしていいかわからないまま時が過ぎてしまった。自分に何かできることがあればと思っていたとき、この集会のことを聞いて参加しました」といった発言や、長崎からの参加者から、「被爆者が亡くなってきている現実があり、体験を伝えることが、被爆二世の役割としてあると思う。原爆資料館でボランティアの説明を組織している。身近なところで仲間づくりをしていくことが平和を創っていくことにつながる」といった、実践活動を通しての今後の展望や、広島からの参加者から、「実相を伝えるというのは、親の姿をそのまま伝えることだと思う。若い人を連れて、慰霊碑めぐりをしている。身近な人たちに知ってもらうことが大事」という発言がありました。
 反核・平和運動を展開する上で、戦後補償を要求する運動、アジアの人々と歴史認識の共有、被爆体験を伝えること、身近のところで仲間づくりから始めること、など、今後の被爆二世の取り組む課題について、議論が深まりました。

被爆二世の命と健康を守るために
長崎県被爆二世の会会長 丸尾 育朗

 放射線影響研究所の鈴木さんより、被爆二世健康影響調査について、父母の被爆により突然変異や細胞死がどう出るのか、被爆の遺伝的影響について調査を行うもので、小動物についての影響は確認されていますが、人については、確認されておらず、推測から実証への段階であること。染色体異常は有意の差はなく、今回は、多因子・生活習慣病のみについての調査を行っている旨の報告を受け、論議に入りました。
 西本守全国二世協副会長からは、二世運動の歴史について発言があり、1972年労働組合や被爆者団体が、二世問題連絡会議を発足させ、論議を行っていましたが、1973年広島で全国初の被爆二世の会が発足した経過が語られました。
 当時は、被爆二世が白血病で亡くなるということが続いていたため、二世問題がクローズアップされた時期です。73年8月より広島市では、被爆二世の無料健診を始めました。さまざまな論議を経て、76年二世の実態調査のため、被爆二世アンケート調査を実施、77年報告集会で報告。78年全国被爆二世協を結成し、統一要求を国に提出しました。
 80年に初めて国による被爆二世健康診断が始まりました。その基本になるものは、調査研究だけでは差別を拡大するだけであり、モルモット扱いの調査には反対という立場で受診に応じましたが、健診結果の具体的報告はまったくありませんでした。
 実態調査をせよ、全体調査をせよ、という要求に対し、たったの一度も実施しませんでした。今回の二世調査も、国が進んで積極的に行っているものではありません。
広島独自の健康診断などの中で、後追い的にやっと実施されることになりました。
 韓国の李太宰(イ・テジェ)さんより、研究が始まったこと、二世健康診断が行われている日本の現状について、うらやましいと思う一方、韓国でも実態調査が必要と思っていたが、今年韓国の政府組織の一つ「人権委員会」が被爆二世の実態調査を命令したとの報告がありました。韓国では登録された被爆者は2,200人程度、実数は12,000人はいること。3,000万ウォン(300万円)の予算でどれだけの調査が出来るか不安であること。差別と病気の悪循環で苦しむ韓国の被爆二世にとっては、実態調査とともに、医療経済の支援を含めた、被爆二世の救援を視野に入れた運動の必要性が強調されました。
 大阪の宮地さんからは、25年間要求してきたことが今ようやく進んでいる。しかし、戦後補償、歴史認識が問題解決にとって不可欠なもの。単なる調査でなく国家補償に基づくという基本姿勢で行政の恣意を排しながらやっていくべきという発言で分科会を締めくくりました。

強制連行 時効認めず賠償命令
原告側が逆転勝訴〜〜広島高裁

 太平洋戦争中に強制連行され、広島県加計町の水力発電所建設現場で過酷な労働を強いられたとして、中国人の元労働者2人と遺族3人が工事を請け負った西松建設(本社・東京都、当時西松組)に対し、総額2,750万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が7月9日、広島高裁でありました。鈴木敏之裁判長は強制連行・強制労働(川底の石をトラックに詰め込む作業を1日12時間)を認めた上で、「時効の適用は著しく正義に反する」と述べ、1審判決を取り消し、同社に請求全額の支払いを命じました。同社は上告しました。
 中国人強制連行を巡る訴訟は全国で計11件が係争中で、控訴審判決は5月に原告の請求を棄却した福岡高裁判決に次いで2件目です。提訴に時間がかかり損害賠償請求の権利が失われる、「時の壁」と呼ばれる民法上の規定を超えて賠償を命じた初の控訴審判決となりました。判決に対して、龍谷大学の田中宏教授(日本アジア関係史)は、これまでの裁判の積み重ねがついに高裁の扉を開けたと言える。「時の壁」を越えて損害賠償を満額認め、わかりやすい判決だ。原告以外の被害者を救済するためにも西松建設は上告せず、話し合いの場を持つべきだった。日本政府も、強制連行・強制労働の被害者救済に努力すべきだ、と語っています。

インフォメーション

◆8.11空母母港化31周年/キティホーク横須賀基地母港化6周年抗議
原子力空母母港化阻止・神奈川県集会
◎日時・場所:8月11日(水)午後6時開会/横須賀ヴェルニー公園
◎主催:「原子力空母の横須賀母港化を止めよう神奈川実行委員会」

◆戦争犠牲者追悼・平和を誓う8.15集会
◎日時:8月15日(日)午前11時30分集合・55分開会
◎場所:東京・千鳥ケ淵戦没者墓苑
◎主催:フォーラム平和・人権・環境
◎内容:黙とう・誓いの言葉・献花

◆教育基本法改悪ストップ! 9.18全国集会
◎日時:9月18日(土)午後12時30分から
◎場所:東京・日比谷公会堂ホール
◎主催:教育基本法改悪ストップ!実行委員会
◎内容:対談(講演)、展望&アピール(高橋哲哉・東大教授/斉藤貴男・ジャーナリスト、他)・パレード(銀座コース)
※実行委員会として11月21日に日比谷野外大音楽堂において全国集会を開きます。

第41回護憲大会は奈良で開催

◎大会名称:戦後・被爆60周年を前に、平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざす第41回大会
◎日時:11月1日(月)開会総会・シンポジウム(なら100年会館)
◎11月2日(火)
分科会・ひろば(奈良市内)/フィールドワーク(天理防空壕・人権資料館を予定)
◎11月3日(水)
閉会総会(なら100年会館)