3月1日、2日 静岡で全国活動者会議開催
平和フォーラム2005年運動方針も論議

 3月1、2日に平和フォーラムは静岡市内で全国から200名が参加して全国活動者会議を開催しました。1日は、岩松繁俊代表(原水禁議長)の主催者挨拶に続いて「東アジアの平和構築と憲法改正問題の視点」として江橋崇・法政大学教授・平和フォーラム代表が講演と提起を、また「平和フォーラムの2005年の運動と組織方針について」「平和基本法」を巡る考え方について、福山真劫事務局長からの提起を受け、参加者との意見交換をしました。
 そして夜は、原水禁主催の被災51周年ビキニ・デー全国集会を行いました。
 翌2日は「環境・人口・食料・南北問題」をテーマに、「環境・持続社会」研究センター事務局長の足立治郎さんから講演と提起を受けました。

東アジアの平和構築に向けて(江橋代表)

 まず、江橋代表は、「東アジアの平和構築と人間の安全保障」という観点から自衛隊のイラク派兵の問題に関して、撤退に踏み切った国もある中、「人質事件」を転機に、「テロに屈しない」と称し、非戦闘地域と言いがたいサマワへの派兵を延長し、米軍との連携を深め、武力による威嚇や行使に乗っかって自衛隊が長期にわたる駐屯になってしまった日本の現実は憲法9条1項の想定外であり、政府の武器輸出3原則緩和の動きとともに、戦争に協力する日本社会をこのまま放置してはならないと指摘しました。また、一方で米軍のイラク占領の実態は軍隊経験者や民間人を警備会社が雇用している側面もあり、戦争・占領の民営化による米軍の原則の転換が進んでいるとしました。
 そして、米軍のトランスフオーメーションによる、沖縄や神奈川などでの戦略構想の変化に関しては、今後10〜20年単位で日本の政治や軍事問題のあり方が決められつつあるのに国内世論の認識が不十分と指摘。さらに、現在、都道府県で進んでいる「国民保護計画」の策定が来年は市区町村段階に及ぶ点に関して「人間の安全保障」の観点から軍事的な国民保護計画ではなく批判的視点から、防災・自然災害対策などの危険から市民を守る総合的な安全計画を訴えていくべきとしました。
 さらに、東アジアの平和構築に向けて「人間の安全保障」の視点からSARSなどの疫病やスマトラ沖・震災、国際人身売買、麻薬犯罪、武器輸出、密輸などに見られるように国境を越えて安全確保に向けてアジアの中で協力しあえる関係を確立することなしに、平和維持・軍備管理だけの共同行動はないと指摘。日本との間に核や拉致の問題を抱える北朝鮮への経済制裁についても慎重に考えるべきと述べました。
 また、昨今の憲法改正問題への視点として、憲法25条の生存権を争点とした「朝日訴訟」を例に上げながら、市民による福祉・医療・教育・労働・環境・知る権利・平和的生存権・地方自治などでの多くの憲法裁判を通じて、憲法第2章「戦争の放棄」や第3章「国民の権利及び義務」が初めて政府を追及する道具となった意義と、人権実現に向けての政府の責任の明確化の重要性を強調しました。
 そのうえで、1972年の日中国交回復が不十分ながらもアジア大陸における侵略と犯罪への謝罪によって、憲法9条がアジアへの反戦の誓いの意味をもつようになったと述べ、この点から小泉首相の靖国神社参拝を「譲れない一線」ということは理解できるとし、そして、憲法改正論議に関しては国会での議論の段階が重要であり、院外から私たちの意見を発信し、正しい論議に向けさせていくこと。この間の護憲連合〜平和フォーラムの作ってきた憲法的価値を豊富化させてきた活動に自信を持って行動していくこと。「憲法改正国民投票」の時点では国民は主権の発動ではなく、二者択一の選択肢の承認でしかなく、あらゆるマスコミを使い、改憲へと進むと、その危険性を指摘しました。

2005年度の年間運動方針提起と「平和基本法」に対する考え方(福山事務局長)

 福山事務局長は冒頭、2004年度の活動を振り返りながら、国内最大の平和団体としての政策提言・実現力の強化、政府との交渉機能の強化、政党・議員との連携の必要性を強調しつつ、ホームページへのアクセス数が急速に増加していること。また、機関紙・パンフレットとともに事態に対応した内容充実の重要性を指摘しました。
 そして、2005年の年間運動方針の柱として、@全体(2005年〜06年)の構想──「戦後・被爆60年」、東アジアとの友好と平和・核軍縮の道筋の確立を、A憲法問題に対する取り組み、B在日米軍の強化に反対し、戦争のできる国づくりを許さない取り組み、C東アジアの非核・平和の確立に向けた取り組み、D被爆60周年、核と戦争のない社会をめざす取り組み(NPT再検討会議と核兵器廃絶に向けて)、E教育基本法改悪をストップし、偏狭なナショナリズムを許さない取り組み、F在日定住外国人の地方参政権など人権を確立し、多文化・多民族共生社会に向けた取り組み、Gヒバクシャの権利確立の取り組みについて、H原子力政策の根本的転換と脱原子力の取り組みについて、I循環型社会形成の取り組み、J食の安全の取り組み、KWTO・FTA交渉、食の安定、農林業問題の取り組み、の12本の柱を提起しました。
 この中で特に、沖縄米軍基地の縮小・撤去に関して3月に設立される「沖縄米軍基地問題議員懇談会」と連携した国会内での議論の活性化、10月21日の「国際反基地集会」の取り組みや「基地白書」の作成。今年のNPT再検討会議に向けた連合・核禁会議と共同の取り組みである1000万署名とNPT派遣団の取り組み、被爆60周年原水禁大会の共同開会式開催の取り組み、被爆者の権利拡大を目指した要求実現への取り組み、青森の六ヶ所再処理工場の本格的な試験入を前に、その中止を訴える100万人署名の取り組みが強調されました。
 また、憲法問題に関連した「平和基本法」をめぐる取り組みに関しては、イラクに自衛隊がいる現実、沖縄や全国にある米軍基地をどうするのか、日本が世界第2位の軍事費を持つという事実や現在の自衛隊の実態や日米関係が憲法前文や9条を逸脱している現実を考えるのか。前文・9条を守ることは当然のこととして、もう一歩前に進んでいく取り組みとして、平和をつくる、憲法理念を実現していくという立場で政府の横暴に制約を加えていく、この間の憲法擁護の運動の中で獲得してきたものを確認・確定させていくことで、軍縮を勝ち取っていくという意味での具体的指針の確立の必要性を提起しました。

温暖化防止に環境税の導入を(足立さん)
 全国活動者会議の第2日目は、地球温暖化と環境税をテーマに、環境問題等での調査や政策提言を行っているNGOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の足立治郎事務局長の講演と討論が行われました。
 足立さんはまず、20世紀以降の膨大なエネルギー消費によって、資源の循環ができず、環境汚染や廃棄物問題等で地球環境が悪化している現状を指摘し、環境コストを経済システムに織り込むことや、自由貿易の見直し、政策決定システムの問題をあげ、「市民・NGOが政策に関与していく必要がある」と強調しました。 
 その中でも大きな課題となっている地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスの削減を決めた京都議定書が2月に発効したことを受け、「環境と経済活動の両立を目指して、環境税でCO2を削減する必要がある」と提起しました。環境税は特にヨーロッパではさかんに取り入れられ、フィンランドでは1990年から「炭素税」が導入され、さらに北欧、ドイツ、イギリス等に広まっています。
 しかし、日本では環境省が導入を目論んでいるにもかかわらず、経済団体の反対などで見送られています。しかし、足立さんは「環境税は増税ではない」として、「ヨーロッパでは税収の多くは、他の税の減税や社会保障費の負担引き下げに使われている。環境に悪いことを行っているものには増税し、努力している個人や企業は減税できるようにしている。低所得者や中小企業にも配慮されている」と、その実態を紹介し、「環境税のほとんどは減税に当てる『税収中立型』の制度も検討されなければならない」と述べました。
 また、環境税の使途についても注意が必要だと訴えました。現在の国の約1兆3千億円の温暖化対策予算のうち、3千億円以上が原子力予算に使われています。「日本で環境税を温暖化対策にあてる場合は、原子力にはあてず、あくまで省エネルギーや自然エネルギー推進にあてることを条件にすべき」と強調しました。
 最後に、「環境税導入には市民からの声を強めなくてはならない。効果的で公正な環境税の早期導入に向けて、平和フォーラムでも内容を検討され、活動を強めてほしい」と呼びかけました。

ミサイル防衛(MD)の問題点
一体化する米軍と自衛隊

自衛隊法改定案を閣議決定
 小泉内閣は2月15日、「ミサイル防衛(MD)」を実施するための自衛隊法改定案を閣議決定しました。今回の改定案には、@ミサイル発射の兆候がある場合は首相の事前承認を得て迎撃、A兆候がつかめない場合は「緊急対処要領」に基づき防衛庁長官の命令で迎撃──が盛り込まれました。Aの場合は、自衛隊の現場指揮官が迎撃を判断することになります。

ミサイル防衛(MD)とは何か
 MDとは、敵国から発射された弾道ミサイルを、自国の迎撃ミサイルで撃ち落すシステムです。現在、日米一体の研究・開発・配備が進んでいます。
 弾道ミサイルは人工衛星を打ち上げるロケットと同じ仕組みで、その動き方は@発射後にロケットが加速する「ブースト段階」、A宇宙空間を飛行する「ミッドコース段階」、B大気圏に再突入し目標に着弾する「ターミナル段階」の3つに分かれます。
 MDは敵国のミサイル基地を人工衛星で監視し、発射された場合はレーダーで追跡し、@からBの各段階に合わせた迎撃ミサイルを発射します。小泉政府は昨年末の「新防衛計画の大綱」で、MDを防衛政策の柱とし、装備の導入や法改正を決定しました。
 これに伴い、敵国のミサイルを追跡するレーダーを装備し、「ミッドコース段階」迎撃の「海上配備型迎撃ミサイル(SM3)」を搭載したイージス艦と、「ターミナル段階」迎撃の「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)」の増強配備を決定しました。

日本が米国の盾に

 しかしMDには、様々な問題点があります。
(1)技術的に可能なのか
 敵国から飛んでくるミサイルに、自国の迎撃ミサイルをぶつけるには高度な技術が必要で、米国は未だ迎撃実験に成功していません。MDは実用可能性の不明な研究途中のシステムなのです。
また日本がBの「ターミナル段階」迎撃として配備する「パトリオット」の射程距離は15?で、日本全土をカバーすることはできません。
(2)国際法上の問題点
 Aの「ミッドコース段階」では、敵国のミサイルは宇宙空間を飛行しています。宇宙空間での迎撃は、国際法の禁じた「宇宙の軍事利用」にあたります。また日本の真上であっても宇宙空間は「領空」ではなく「領空侵犯」になりません。地球上を回る人工衛星を、どこの国も撃墜できないのと同じです。
(3)集団的自衛権の行使
 日本は、MDに必要な軍事衛星を持っていません。敵国のミサイル発射の情報は、米国から受けることになります。一方で海上自衛隊のイージス艦が補足したミサイル情報も、米国に提供することになります。また政府は、ミサイルの目標が日本か米国かは判断不能であるから、どちらの場合も迎撃するとしています。MDでは日米の軍事行動は一体となるのです。これは憲法の禁じた集団的自衛権の行使です。
 仮に中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がミサイルを発射した場合、米国本土に到達するには時間かかりますが、日本には約10分で到達します。迎撃できる可能性は極めて低いのです。結果的に日本は約1兆円の予算を投入して、米国にミサイル発射情報を提供する「盾」になってしまうでしょう。
(4)自衛隊が迎撃を判断
 武力攻撃事態法では、侵略の「おそれ」がある場合でも有事法が発動します。しかし今回の自衛隊法改定では、有事法発動以前のミサイル発射に対して、自衛隊指揮官の判断による迎撃を認めています。侵略の「おそれ」すらない状況でのミサイル発射とは、何を想定しているのでしょうか。この改定は国会の判断なく、自衛隊の判断で戦争を開始する権限を認めることになり、文民統制に違反します。
MDが東北アジアにもたらす危機
 かつて米ソは迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)を結んでいました(米国は01年に脱退)。これは一方の迎撃ミサイルの配備が、他方の核ミサイルの増強をもたらし、結果的に軍拡につながるという認識からでした。現在の米国は、冷戦期とは比較にならない世界1の軍事大国・核保有大国です。その米国と日本がMDを推進すれば、東北アジアで新たな軍拡競争が始まる危険性があります。
 MDの推進と自衛隊法改定に、強く反対することが求められています。

米国産牛肉輸入再開へ圧力強まる
食の安全を無視した不明確な検査体制
日本消費者連盟 山浦 康明
 米国産牛肉の輸入再開問題をめぐっては、ブッシュ米大統領が今年3月の議会に提出した「年次通商報告書」において、日本への牛肉輸出の再開のために「米国はあらゆる適切な措置を取る」と記述され、また米国下院で対日制裁を求める決議案が提出されるなど、日本への圧力を強め始めました。2月には島村農相が「日本の全頭検査は世界の非常識」と国会で発言するなど、日本政府も米国の意向に沿った対応が目立っています。この問題を消費者・市民はどう考えたらよいのでしょうか。

まだ解明されていないBSE
 BSE(牛海綿状脳症)は、異常プリオンというたんぱく質による感染が原因とするのが通説となっており、さらに種の壁を超えて人にも変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を発症させると考えられています。
 BSEの検査にあたっては、「免疫測定法」がEUや日本で採用され、日本では年間にと畜される約120万頭のすべての牛に対して検査を行っています。しかし、米国は、年間約3500万頭のと畜牛に対してわずか約20万頭の抜き取り検査しか行われていません。昨年EUでは感度がすぐれコストもそれほど割高ではない検査法が用いられ、今年その改良型も利用可能となっています。
 BSE発症のメカニズムがすべて解明されていない現在、日本も低濃度でも異常プリオンを発見できる方法を早く実施する必要があり、そのためにも全頭検査を続けることが必要です。またBSEを発症させないためには、抜本的には有機畜産などの自然な生産体系を見直すことが重要です。
若齢牛を検査からはずすことは時期尚早
 BSEの国内対策は、2001年に日本で初めて発生して以来、肉骨粉の全面使用禁止、特定危険部位(SRM)の焼却処分、全頭検査が行われてきましたが、食品安全委員会がこの国内対策の見直しを検討し、昨年9月には「中間とりまとめ」を公表しました。その中では若齢牛のBSE検査は不要とは明記しなかったにもかかわらず、この玉虫色の報告書を利用して、厚生労働・農林水産省から、生後20ヶ月齢以下の牛を検査対象から外したいとの諮問が出され、食品安全委員会がこれに対する答申を検討しています(3月10日現在)。しかし、日本でのデータが不十分なため、欧州のデータや様々な仮説に基づいた検討しかできません。
 そうしたことからも、現時点では「若齢牛を検査から外すことは時期尚早」とするのが自然です。昨年北海道で発覚した牛の年齢等が分かる耳標をすり替えていた問題や、日本初のvCJD患者の発生をみても、今後とも慎重なBSE対策が必要です。

政治的決着を許すな
 03年12月に米国でBSE牛が確認されて以来、日本は米国からの牛、牛肉製品の輸入を禁止していますが、米国政府は輸入再開を求め、昨年から政府間交渉が行われています。そして昨年10月に両政府の共同記者発表という形で、20ヶ月齢以下の米国産牛肉を日本は受け入れるという政治決着をしました。ただし、日本政府は国内のBSE対策と同様の措置を米国にも求める、と述べてきたため、食品安全委員会の答申を日本政府は待ち望んでいるのです。
 しかし、米国では牛の生産履歴が分かるトレーサビリティ制度がなく、いつ生まれたのか月齢も不明です。そのため、肉質や骨化の状況などを見て月齢を判定するという仕組みを米国側が提案し、日本側では専門家会合を3回開いただけで科学的検討も十分になされないまま、これを受け入れて輸入再開への環境を整えはじめました。米国産牛肉の約9割が20ヶ月齢以下なのに対して、日本の牛肉は8割以上が20ヶ月齢以上で、検査の現場からは線引きをすることで逆に煩雑になるとの声もあがっています。
 このように、BSE問題をめぐっては、食の安全よりも、日米関係重視という政治的判断が優先されています。消費者はこうした政策を絶対に認めることはできません。

新たな「食料・農業・農村基本計画」決まる
食料自給率は2015年に45%へ 地域農業の再生求められる

 2015年を目標年次とする、今後の日本の食料・農業・農村政策のあり方を検討していた、農水省の審議会は、3月9日に新しい「食料・農業・農村基本計画」案を答申しました。政府は、3月下旬にも閣議決定を行い、国会に報告する予定になっています。
 今回の新基本計画は、2000年に定めていた同計画を見直すということで、一昨年12月から審議が行われてきました。農産物の自由化が迫られるWTO(世界貿易機関)やFTA(二国間自由貿易協定)交渉が進む一方、国内では、担い手や農地の減少が続き、日本農業は存続の危機にあります。その意味でも基本計画の見直しが注目されてきました。食料自給率を中心に、新たな基本計画の内容と問題点を整理してみました。

あいまいな自給率の向上目標
 先の基本計画では、食料自給率を現行の40%(カロリーベース)から2010年には45%に向上させることを目標にしていたにもかかわらず、この5年間は、まったく向上につながりませんでした。新基本計画では、食料自給率については、「国や自治体、農業団体などで協議会をつくり、それぞれ取り組むべき重点を決めた行動計画を策定する」「毎年取り組みを検証し、次年度の施策見直しなどに反映させる」こととした上で、2015年度の自給率の目標を設定しました。
 カロリーベースの目標については、現行の2010年に45%に引き上げるというものを、そのまま2015年まで先送りされました。一方、新たに、金額ベースの自給率も目標に加えられ、現在の70%から76%に引き上げるとしました。金額ベースの目標は、野菜や果樹など、カロリー面では低い数値になる農産物の生産も反映させることができると言われています。
 しかし、これでは国際的にも低い日本の自給率の状況があいまいになる恐れがあります。例えば、畜産物の自給率はカロリーでは16%ですが、金額では58%にもなります。これは、多くを輸入に頼っている飼料をどのように計算するかによって大きく変わるためです。
 世界的に見ても、金額ベースの自給率を公表している国はありません。自給率はあくまでも生存に必要な栄養価を示すカロリーベースの自給率を基本として、その引き上げを図ることが必要です。
 自給率向上のために、新基本計画では「食育」や「地産地消」があげられていますが、そのための政府の責任による具体的施策が必要です。特に学校給食については、センター化、民間委託化の動きが進んでおり、計画と逆行しています。自校調理方式を推進するなど、子ども達の食から考えていく必要があります。
 また、自給率目標の先送りによって、自給率向上の施策が不明確となる恐れがあります。2015年度だけでなく、2010年度の目標設定も定めて、具体的な向上施策を明らかにすることが必要です。

担い手を限定せず多様な農業の展開を
 もう一つの焦点は、農業の担い手を、経営規模の大きい農家に限定して、そこに経営安定対策などを集中させるかどうかでした。そうなれば、中小・零細農家は離農して、大規模農家に農地が集積されるという考え方です。
 しかし、日本の農業は欧米などと異なり、中小の農家も含めて、集落単位での営農を基盤としています。農業の担い手が減少・高齢化する中、農地の有効利用を促進するためには、集落営農組織は欠かせない存在です。また、多様な担い手による多様な農業を展開できるようにすることが地域農業再生のカギと言えます。そのために、政策支援の対象者は大規模層に限定せず、意欲のある農業者や地域で育成すべき担い手として期待される人も含めていくべきです。
 今回の答申では、そうした集落営農組織も担い手として重要であると位置づけされましたが、具体的な要件などは今秋まで持ち越されました。また、新たな対策として注目された、農業の多面的機能を重視した資源・環境保全施策についても、具体的なイメージや政策としての位置づけが不鮮明なままとなっています。

914自治体で意見書採択に取り組む
 新基本計画の策定に対して、平和フォーラムは各都道府県の運動組織の協力を得て、昨年の12月議会を中心に、基本計画の見直しに関する自治体意見書の採択を求める活動を行いました。その結果、914自治体で採択を獲得しました。都道府県議会での採択も20県で行われました。これは、全自治体の3割強に当たります。
 こうした取り組みが基本計画の審議にも影響を与えてきました。しかし、前述のように、多くの課題が不明確なまま、秋に向けて論議が続きます。引き続き、取り組みの強化が求められています。

ブッシュ政権の敵意と北朝鮮(2)
時間はあまりないのかも知れない
進展望めない6ヵ国協議
 北朝鮮の核問題をめぐる6ヵ国協議は、当分開催は難しく、仮に開催されたとしても進展は望めないでしょう。
 2月11日に北朝鮮外務省が「6ヵ国協議参加を無期限中断し、核兵器庫を増やす」との声明を発表した後、2月19日〜21日に中国共産党の王家瑞・対外連絡部長らが訪朝しました。金総書記は中国代表団に対して「条件が整えば、いつでも6ヵ国協議に応じる」「米国が信じるに足る誠意を示し、行動することを期待している」と述べたと伝えられました。
 北朝鮮外務省は3月2日、「正当防衛のため核兵器をつくり、またつくっているのは当然だ」とした上で、@米国が「圧政国家」とした発言を謝罪、撤回、A制度転覆を狙う敵視政策を放棄、B敵視政策放棄を実践行動で示す──の3条件を米国に要求し、3条件に米国が応じればいつでも6ヵ国協議に出席する」との長文の備忘録を発表しました(3月2日・共同)。
 これに対して米国は北朝鮮が「前提条件なしで協議に戻るよう」求め、3条件の要求を拒否しています。しかし2月26日にソウルで開催された日米韓の6ヵ国協議・主席代表会合では、平和的解決の方針は合意したものの、日米が前提条件なしの「6ヵ国協議への復帰」を求めたのに対して、韓国は「北朝鮮の要求は前提条件とはいえない」として「無条件復帰」に同意せず、三国合意は得ることができませんでした。
 本来なら日本政府が米国に柔軟な姿勢を求めるべきなのに、日本政府は拉致問題を含めてまったく政策を出せないでいます。このような状況のなかでは、北朝鮮の核問題解決は当分望めないでしょう。
北朝鮮はどこまで核兵器開発を進めているか
 このように進展の望めない情勢ですが、米国は北朝鮮の核兵器について、明確な保有を言明していません。これまでのところ米CIAが1,2個の核兵器保有を議会で証言しているだけです。中国は保有について否定も肯定もしていませんが、韓国は保有を否定しています。
 ただプルトニウムについては、かなりの量を再処理し、保有していると想定されます。IAEA(国際原子力機関)は、封印されていた使用済み核燃料棒8,000本の一部は04年末までに再処理され、現在も再処理工場が操業しているとしています。さらに実験用黒鉛原子炉も操業していると推定しています。
 IAEAの推定が正しければ、北朝鮮は核爆弾数発分のプルトニウムを保有し、今後さらに増やしていくと考えられます。ただプルトニウムの保有と核兵器保有とは別です。
 核兵器の原理は簡単で、高濃縮のウラン235や純度の高いプルトニウム239を一定量集めれば、爆発(核分裂)します。しかし、核兵器の製造は簡単そうで難しいといえます。ロシア原子力庁のアンティポフ副長官が3月上旬に来日した際、「北朝鮮には核爆弾を製造する能力はない」とのべたと伝えられています(3月10日・共同)。
 ただ北朝鮮が核兵器製造を目指していることは明らかで、現在はまだ技術的に困難でも、いつかは解決すると考えられます。つまり時間はあまりないのです。いったん核兵器保有への道を歩み始めたなら、さらなる核兵器拡大路線へと進むことは歴史が教えています。
ウラン高濃縮施設については証拠がない
 先月、米・フォーリン・アフェアーズでセリグ・ハリソン(米国際政策センター・アジア研究ディレクター)が、「北朝鮮はウラン濃縮施設の建設に動いたがそれは失敗している」と述べ、それに対してミッチェル・リース前米国務省政策企画局長が、同じフォーリン・アフェアーズ3・4月号に、北朝鮮のウラン濃縮施設の「現場は押さえてある」と反論していることを紹介しました。
 リースの反論を読むと、「北朝鮮はウラン濃縮計画をもっている」と述べてはいても、ウラン濃縮を進めている具体的証拠は提示していません(ハリソンも同じ論旨で再反論している)。リースは「03年4月にフランス、ドイツ、エジプトの当局は、北朝鮮がドイツ企業から購入し、(中国を経由して)本国へ送ろうとしていた22トンの高強度アルミ管を摘発している」ことを、北朝鮮がウラン濃縮を行っている証拠だと述べていますが、ハリソンは逆にこの摘発を、北朝鮮の濃縮計画失敗の一つとして紹介しているのです。
 高濃縮ウラン製造計画を北朝鮮がもっていたことは中国も認めています。しかし、それが実行に移されているかはまた別です。存在のはっきりしないウラン濃縮施設も含めた廃棄を求めることは、事態を複雑にするだけです(ハリソンとリースの主張はそれぞれ雑誌「論座」2月号と4月号に掲載されています)。
 北朝鮮は出すべきカードはほぼ出し尽くしたといえます。中国政府も韓国政府も、米国が現在のような北朝鮮敵視政策を少し改めるべきだ、そうすれば北朝鮮は6ヵ国協議に参加するといっています。いま必要なのは、被爆国日本の未来を見通した対応です。

米軍・自衛隊の再編・再配備とミサイル防衛(1)
アジアにおける米軍再編とは
 米軍のトランスフォーメーション(再編成)とそれに対応する自衛隊の再編・再配置が急速に進もうとしています。その中心にミサイル防衛(MD)が存在するのですが、ミサイル防衛の位置づけを理解するために、最初に米軍再編の動きを見てみましょう。
 今回の米軍再編は、単に米軍の移転・再配置をめざすものではなく、軍事戦略の根本的な変更が基本にあります。それを支えているのが軍事技術の大きな進展です。米軍の軍事技術進展へのあくなき追求は、信仰といってもいいくらいです。いわば戦争についての思想的変化といってよいと思います。この思想の上にミサイル防衛があり、新型地中貫通核兵器の研究があるといえます。
 今回の米軍再編の目玉の一つに、米軍・海外基地の縮小、米兵撤収があり、アジアでは在韓米軍基地の移転・縮小が大幅に進みます。しかし日本では逆に在韓米軍縮小の穴を埋める形で、米軍基地の集中・強化が進もうとしているのです。
 これまで明らかになっている主なものを拾ってみますと、神奈川県の座間市、相模原市にまたがるキャンプ座間に、米陸軍第1軍団司令部を移そうとする計画があります。現在キャンプ座間には米陸軍第9地域コマンド司令部、在韓米軍、在日米軍司令部などがおかれていますが、ここに第1軍団司令部をもってきて、米軍の指揮系統を1本化する構想です。朝鮮半島有事の場合は、当然キャンプ座間が作戦司令部となります。
 次に横田基地の第5空軍司令部とグアムの第13空軍司令部を統合する構想です。第5空軍は横田の第3空輸航空団、沖縄・嘉手納の第18航空団、三沢の第35戦闘航空団から構成されていますが、司令部と第8空輸航空団はグアムのアンダーセン基地に移るといわれています。そしてこの後に府中にある航空自衛隊の航空総隊司令部の移駐を求めています。
 航空自衛隊・航空総隊司令部は今後のミサイル防衛の、日本側の統括責任を受け持つことになっていますから、米ミサイル防衛の一翼として、日本海に展開する米海軍・イージス艦との共同運用をはかる狙いといえます。
 沖縄では、キャンプハンセンの砲兵大隊が静岡県のキャンプ富士へ移駐します。これは沖縄の県道104号線越え実弾射撃が、96年のSACO(日米特別行動委員会)合意によって、本土の5カ所に移ったことによる措置といえます。
 一方SACO合意で全面返還が決まった普天間飛行場は、返還最終期限である03年4月はとっくに過ぎましたが、辺野古沖への移転は県民の強い反対もあり、完工の見通しが見えない状況です。しかし米軍は辺野古沖代替基地の早期完工を強く求めています。さらに今年5月に返還期限を迎える楚辺通信所も返還が遅れることは確実といえます。
 こうしたなかで嘉手納飛行場の日米共用化構想が浮上しています。米軍再編は沖縄基地機能のさらに強めようとするものといえます。
どこまで自衛隊は米軍に協力するのか
 日本では20004年10月4日に小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(以下安保・防衛懇)が報告書を出し、それを受けて「新防衛計画の大綱」(04年11月末)、「中期防衛力整備計画」(04年12月)が策定され、米軍再編成に対応する自衛隊の再編成案が骨格を表し始めています。
 こうした日本版トランスフォメーションでは、@専守防衛の放棄、A北朝鮮・中国に対する敵視、B米軍とのミサイル防衛の推進、C武器禁輸三原則の緩和などが明らかとなっています。
 米軍は東アジアから中東までを「不安定の弧」と位置づけていますが、米軍再編に自衛隊を組み込み、共同作戦態勢を作り上げようとしているのです。
 さすがに日本政府もこうした再編構想に慎重な姿勢を示していますが、2月16日の「2+2」(外交・防衛閣僚による日米安保協議委員会)で、「共通の戦略目標」を設定しました。米国はこの戦略目標に基づいて米軍と自衛隊の役割分担や在日米軍の再編・再配備について合意を得たいとして、「2+2」を6月にも開催したいと強く申し入れています。
 米軍再編の全容は必ずしも明らかになっていません。イラク侵攻の泥沼化による大幅な財政赤字から、グアム・アンダーソン基地の閉鎖も噂されており、場合よれば日本が大きな負担を強いられる可能性もあります。
 米軍再編に日本がどう対応するのか、米軍だけでなく日本にとっても大きな転換点です。この中心にミサイル防衛があります。次号で詳しく述べます。

核拡散の状況と「再処理」工場のプルトニウム生産

 イランや北朝鮮の核開発問題が連日のように報道され、カーン博士などが登場する「核の闇市場」の存在が明らかになるなどの現状は、核拡散防止条約(NPT)体制が崖っぷちにたたされている、そのあらわれです。核の「平和利用」を認めているNPT体制のもとで進められてしまった核拡散という現実の前で、核の拡散防止を目指す国際社会の枠組み作りがようやく真剣に取り組まれています。核兵器の拡散につながるウラン濃縮施設と再処理(プルトニウム抽出)施設の建設に5年間のモラトリアムを課すことなどを5月にニューヨークで開かれるNPT再検討会議に提出する、国際原子力機関(IAEA)の答申がその1つです。

ウラン濃縮とプルトニウムのモラトリアム
 2月に出されたIAEA諮問委員会の答申では、NPTが認めている核の「平和利用」の権利を制限する方向に踏み出し、その方法として、ウラン濃縮と再処理施設の多国間管理が提案されています。
 また、アナン国連事務総長が設立したハイレベル諮問委員会は、2004年12月、『より安全な世界と国連の強化に関する提言』のなかで、「各国は、NPTの下で認められたこのような施設を建設する権利を放棄することなく、自発的に、これ以上の濃縮・再処理施設の建設に関する期間を限定したモラトリアムを設定すべきである。」と提案しています。国連の大量破壊兵器委員会(WMDC)の委員長を務めるブリックス前IAEA事務局長も、「私の委員会では、すべての国の高濃縮ウラン及びプルトニウムの製造を禁止する条約に向けて進まなければならないとの非常に広範かつ強い意見がある。」と述べています(2004年6月30日)。
 これらの提案に対して、国際協議では各国の利害関係の綱引きが行なわれ、簡単にモラトリアムが実現するとは予想できません。現に、日本は3月のIAEA理事会で、「平和利用の不当な制限になりかねない」と上記の答申を批判しました。核開発疑惑で問題のイランは早速、「日本など多くの国が、新規施設の建設凍結に反対だ」と自国のウラン濃縮の権利を正当化する発言に日本の消極姿勢を援用しています。

後ろ向きの日本
 日本の後ろ向きな姿勢は、経済性を無視して進める国家プロジェクト・六ヶ所村の再処理施設という特殊な国内事情によります。その特殊性は、自ら行なっていたコスト試算でも再処理が高くつくことが明らかなので隠し、それが発覚した後でも不可解な理論を後づけして再処理路線を維持するなど、「原子力ムラ」以外では、国際的にはもちろん、国内でも全く説得力を持ちません。
 日本がすでに持つ分離プルトニウムの量は40トンを超え、非核保有国の中では突出しています。核兵器一発が作れると考えられるIAEAが定めたプルトニウムの有意量、8kg(高度な技術ではより少ない量で製造可能)で割っても、核爆弾何発分になるでしょうか?
 すでに貯蔵プール水漏れや、ガラス固化体貯蔵建屋設計ミスなど多くの重大問題を抱える再処理工場の危険性という最大の論議は別の機会に譲っても、高速増殖炉が破綻し、使い道はプルサーマルという不確かで危険なものしか無い今、余剰プルトニウムをさらに増やす再処理工場の稼働は全く必要ありません。新たなMOX工場建設などはもちろん論外です。

足元を見た反核運動を
 国連の場で核兵器廃絶を唱える国が、説得力のない国内特殊事情を理由に再処理というプルトニウム生産を始める。こんな不思議が国際的に通る訳がありません。日本以外の別の国がこんな主張をすれば、国内の報道も、世論も全く違う反応をするのではないでしょうか?
 日本の再処理工場だけを特別扱いにしろと頑張るのではなく、核物質の拡散をなくすための新しい国際規範作りに協力するべきです。六ヶ所の再処理工場では2004年12月、ウラン試験が始められました。本格的に施設が放射能で汚染されてしまうアクティブ試験がはじまる前にこれを止めて、国際的に責任のある国として核拡散防止策に何をするべきかを決断するときがきています。
 5月に開かれるNPT再検討会議にむけて、核兵器国に核軍縮をせまる世界中の人々の力を結集させることがもちろん第一ですが、国内で行われているこのようなごまかし=核開発疑惑国に口実を与えるような再処理政策を転換させ、核廃絶へ向かう確実な一歩を踏み出す運動を作り出しましょう。
 これらの議論のもとになる詳しい情報は、原子力資料情報室や原水禁が支援する新しいウェブサイトの「NPT特集」コーナーをぜひご覧ください。http://kakujoho.net/npt/

放射線作業離職者に健康管理手帳を
全造船機械労組 健康手帳問題プロジェクト 石川島分会

退職後組合員の労災
 放射線作業従事者には離職後の法的保護が全くありません。放射線管理手帳(俗に青手帳)は交付されていますが、これも被曝線量管理の為で健康管理には全く役に立ちません。
 全造船機械労組は長尾光明さんの元職場がIHI(石川島播磨重工業)の100%子会社であったことから、企業内に組織を持つ関係で加盟申請を受け石川島分会を窓口として原発疾病の労災認定に係わりました。
 長尾さんは1977年から1982年の4年3ヵ月間に東電福島第1原発等で作業に従事し70mSvを被曝し、退職13年後に多発性骨髄腫を発病、福島県の富岡労働基準監督署に労災申請したものです。原水禁、関西労働者安全センター(相談受付から申請の道筋をつけた)、そして全国の諸団体の支援協力が労働災害として長尾労災を認定(04年1月)させましたが、全造船は問題の解決を強く意識させられました。少なくとも健康手帳交付で離職後発症の不安の一部は軽減できるのではないかという思いです。

白血病認定基準で労災申請
 職場にはなじみ深い労働安全衛生法、その第67条には「健康管理手帳」と題して「がんその他の健康障害を生じるおそれのある業務に従事する労働者」には離職時、健康管理手帳を交付し、12業務(粉じん、コ−ルタール等)について健康診断・治療する権利を保障しています。手帳交付者数は最多は粉じん業務で17,564名、しかし、ベリリウム業務は1名で、交付条件は業務の危険性判断によるという考えです。この業務に放射線作業がありません。
 長尾さんは国の労災認定基準「電離放射線に係わる業務上外の認定基準について」に多発性骨髄腫の記載がありませんが、その白血病認定基準@5mSvx従事期間A被曝開始から1年以上たってから発病B骨髄性ないしリンパ性白血病、に則り申請しました。放射線作業に従事した結果のがん発生であるからです。

労災認定へ原子力事業者の本音
 原子力利用が始まってから30年間、労災申請数は14件、うち白血病関係は申請8件、認定5件という実態です。ところが、この認定結果にも東京電力をはじめとした電力事業者からは白血病と被曝との因果関係には「みなし認定」の主張がつきまとっていました。つまり、労災認定は労働保護の政策上でいわば甘く認定しているとの主張です。こうした底流にある力関係が放射線作業が、がんその他の障害を発生させるおそれの有る業務には該当しないとの雰囲気を醸成させてきたものと言えるでしょう。

厚労省多発性骨髄腫を検討
 富岡労基署から「りん伺」された厚生労働省は専門家検討会を3回に亘り開催する中で、多発性骨髄腫と被曝との関係には@50mSv以上の被曝A40−45歳以上の年齢での被曝B発症年齢は被曝時年齢が高齢ほど高い、として長尾さんの多発性骨髄と被曝との因果関係を認めました。この検討と認定結果は恩恵・みなし認定という理屈に根拠を持って反証するものでありその意義は大きいのです。放射線作業従事者に健康管理手帳を交付することは無理難題ではなく合理性を持つ主張となりました。

放射線管理手帳は国が管理を
 放射線管理手帳を正しい位置に、手帳は健康保護の要である被曝線量把握にあります。この危険量管理は放射線作業従事中の本人の保護は勿論の事、後々の労災認定等で因果関係立証で必要になった際にも決め手になり、物証にもつながる重要なものです。企業から言えば作業上の必要から労働者以上にシビアに管理しています。「被曝線量は時間に正比例するので作業場所の空間線量率が50ミリレントゲン/時間の場合、1日の被曝量の限度が100ミリレムとすれば、2時間の作業しかできないということになる。船で2人ペア1日作業(8時間)は、放射線下工事では8人の作業者をあてなければならない。……延べ人数はこうした制約から割り出されたのである」(原発メーカ社内報)
 手帳の発行・線量は中央登録センターで一括管理されます。センターは原子力事業者と建設・保守事業者で経営管理上、作業者の線量把握を目的として設立されたもので、国の法的根拠はありません。だから手帳は退職時に事業者から本人に返却されますが、離職後紛失などで登録センターに照会しても、設立の経過から事業者経由でと、取得は容易ではありません。二重三重の重層請負の実態は、線量開示をますます難しくさせてしまっていると言えます。海外での放射線作業者の被曝線量登録管理制度は個人線量を国が把握し統計処理を行っています。

職場・地域から法制度をつくる
 私たちは原発の可否は国民的論議の場で、加えて現場の放射線作業従事者、特に離職者の健康保護問題がとり残されてはならないと考えます。まず、離職時に健康管理手帳を交付するようにし、従来から放射線管理手帳は離職時に本人に返却されていることから、現実的な取扱いとして健康管理手帳発行機関レベルで調整して「健康管理手帳」プラス「放射線管理手帳」を合わせて一括交付する取扱いを求めていきたいと思います。
 そのため、放射線作業を抱えて関連する産業別労組を軸に原水禁・全国労働安全センター・原子力資料情報室を構成団体として、全国の職場とそれを包む地域に理解を求め、手帳交付を求める全国署名とパンフレットを提起し、国政段階の取組みにも反映しつつ、働く者の放射線作業離職者の法的保護実現に向けて取り組みたいと思います。

浜岡原発震災は防げる!
〜被災51周年 3.1ビキニ・デー全国集会〜
原発震災を防ぐ全国署名連絡会事務局長 古長谷 稔

二度と再びヒバクシャを作らないために
 3月1日、今年もビキニ・デーを迎えました。第五福竜丸の傷ついたヒバクシャを迎えた静岡の地で「二度とヒバクシャを作らないために」との思いから、今年は中心課題の一つとして、東海地震の震源域の中心に位置すると政府が認める、静岡県御前崎市で運転中の浜岡原発にも焦点が当てられました。 2月26日都立第五福竜丸展示館から都内をデモ行進した「ビキニ被災51周年東京行動」を皮切りに、27日には横須賀で「ビキニ51周年・水爆被災市民のつどいin横須賀」、28日には静岡県内各所で「原発震災を防ぐ全国署名」への取り組み、及び「中部電力に対する申し入れ行動」が行われました。
 そして3月1日には「被災51周年3・1ビキニ・デー全国集会」が静岡市で開催されました。会場には約400名が集まり、『東海地震と浜岡原発』〜見えてきた東海地震発生のメカニズム〜と題した講演では、地質学者・塩坂邦雄さんによって最新情報が伝えられ、また、浜岡現地から伊藤実さん(浜岡原発を考える会会長)が参加して浜岡で暮らす人々の苦悩の実情を訴え、「二度とヒバクシャを作らないために」という共通の思いを胸に参加者の心がひとつになりました。

地震多発国に53機もの原発が運転する現実

 1995年阪神大震災から10年周年の節目を迎える中、新潟県中越地震、スマトラ沖地震津波と今また地震災害に対する備えの機運が高まっています。日本がどれだけ地震が多い国なのかは以下のデータ一つとってもわかります。2003年11月、福島瑞穂参議院議員の質問主意書『1970年から30年間における、世界主要国のマグニチュード5以上の地震の数』に対する政府の回答と、各国の原発の数(2005年現在)、国土面積(千平方キロ)をまとめたものです。
  地震の数 原発の数 国土面積
アメリカは 322回 103機 9629千平方キロ
フランスは 2回 57機 547千平方キロ
日本は 3,954回 53機 377千平方キロ
イギリスは 0回 33機 244千平方キロ
ドイツは 2回 19機 357千平方キロ
 世界中で既に430機以上存在する原発が、過去に巨大地震に直下から襲われていないのは単なる偶然でしかありません。間違いなく近い将来、原発が地震に襲われる時が訪れます。そしてその可能性が際立って高い国が一目瞭然で『日本』なのです。
 地震の激動期に入ったと多くの地震学者が指摘する中、東海地震はその中でも最も高い発生確率が発表されています。地震多発国日本において巨大地震との付き合い方を間違えれば、国が崩壊する危険すらあります。原発震災を防ぐという視点も含めた防災対策の見直しが求められています。

原発震災を防ごう!全国署名
 3月1日の全国集会は、『原発震災を防ぐ全国署名』の集約の場としても位置づけられていました。壇上には大量の署名用紙がダンボール箱で積み上げられました。2月初旬時点で45万筆、前回30万と合わせて75万筆を超え、100万筆までもう一歩。チェルノブイリ原発事故から19年にあたる4月26日に合わせて4月25日の提出を予定しているため、4月15日到着分までをカウントします。その後も継続して活動していく予定ですが、まずは、まとまった数の署名を提出できるよう、もうひと回りのご協力をお願いします。
 この2年ほどの間に、東海地震と浜岡原発の問題はマスコミの扱い方が大きく変化してきました。雑誌や新聞をはじめ、報道ステーション(テレビ朝日)などテレビ報道でも扱い始めています。全国署名には呼びかけ人として、稲盛和夫(京セラ株式会社名誉会長)、梅原猛(哲学者)、田中康夫(長野県知事)(敬称略)など数多くの賛同者が名前を挙げてくれています。これら世論の後押しと、集まった署名の力で、何とか政治を動かすきっかけを作りたいと考えています。
 地震は天災ですが、原発震災は人災です。地震は止められませんが、原発は止められます。浜岡原発震災は防ぐことができる災害です。ヒバクの歴史に終止符をうつべく、まずは巨大直下地震発生が確実視されている浜岡原発の運転を停止できるよう共にがんばりましょう。

キャンプ座間指令部を包囲行動
 2月19日、神奈川平和運動センターなどでつくる包囲行動実行委員会が主催。県内・全国各地から2,600人が雨と厳しい寒さのなかで参加。2回にわたって参加者は指令部を「人間の鎖」で囲み、「米・第1軍団は来るな!」の意思表示をしました。

2005年夏は教科書検定・採択の年
 今夏、4年に一度の中学校教科書の検定・採択があります。(表・参照)前回2001年、採択活動に失敗した「新しい教科書をつくる会」は、前回以上に巧妙に自民党と連携した攻勢をかけています。「つくる会」の総会議案書によれば、「10%のシェア獲得は運動を継続するための必須の条件でもある」(03年議案)とか、「平成17年の勝利なければ『つくる会』運動は霧散する」(04年議案書)と主張しています。
 また、機関紙では「大東亜戦争では、インドネシア、ビルマ、インド、マレーシアなどの国々の独立を促進したという明確な因果関係があります。これらの史実を、戦後の教科書として初めて公平に描いています。(中略)日本を糾弾するために捏造された、『南京大虐殺』、『朝鮮人強制連行』、『従軍慰安婦強制連行』などの嘘も一切書かれていません。旧敵国のプロパガンダから全く自由に書かれている教科書が改訂版『新しい歴史教科書』です」と紹介しています。
 そして、新訂版公民教科書の特徴として、子どもたちに「(中略)我が国の歴史の始まりとともに存在した天皇・皇室の意義をわかりやすく説」き(注・神話と歴史の混同)、「国防の意義」を強調し、「自衛隊は我が国の防衛に不可欠の存在」だと「子供たちが理解できるよう」にするとし、「『男女共同参画の名のもとにジェンダー・フリーという特殊な思想を盛り込んで(中略)家族の絆を断ち切り、日本の文化や伝統を根底からひっくり返す(ような)思想とは一線を画」す。とする内容です。
 「つくる会」を公然と支持してきた中川昭一経産相の地盤である北海道十勝地方(帯広市など20市町村)では、地元政財界を通じて「つくる会」本採択に向けた自治体への「陳情」と称した「圧力」があり、他県でも採択地区の細分化による「一方的な偏った意見が通りやすくなる危険性」も指摘されています。「つくる会」教科書を採択させない運動は「憲法・教育基本法」を活かすことと一体です。全国で警戒・監視していきましょう。

 憲法をめぐって、いろんな動きが活性化してきました。自民党や経済界の動き、変わったところでは民主党の米沢隆さんの「創憲を考えるための提言」、読売新聞などが、「改憲案」を世に問うています。項目としては、多様に提起されていますがが、焦点は憲法9条です。
 それらは、みんな「戦力保持と集団的自衛権の行使」を合憲としようとしています。そして世界に誇る平和憲法の葬式を執り行おうとしています。理由はいろいろと語られています。
 しかし、私たちは絶対に見落としてはならないことがあります。それは米国のブッシュに代表されるネオコンはその世界軍事戦略の再構築の過程で、従来の日本政府に強要してきた(歴代の自民党政府は進んでやったかな)解釈改憲では、事態に対応できず、現行憲法9条が障害になり、「9条」の改憲を画策し始めているということです。
 現行の日米安保条約も彼らの軍事戦略にとっては、障害となり「改正」が必要になってきているかもしれません。
 9条改悪派と9条護憲派の闘いが本格化しようとしています。平和フォーラムは、平和運動の強化と9条を具体化するための平和基本法の制定を掲げて連帯の輪を拡大して、頑張る決意です。