「つくる会」教科書の問題と各地の動き
日教組教文局  高橋 睦子

 06年度から使用される中学校教科書の検定結果が4月5日に公表されました。今回の結果では、歴史問題、憲法問題、「学力問題」が大きくクローズアップされるものとなりました。また、「強制連行」の記述は2社、すべての歴史教科書から「慰安婦」の用語が消えるなど自主規制ともとれる動きがさらに強まっています。
 01年に引き続き検定合格した「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史・公民教科書の共通する問題点は、天皇、国家、公共に焦点をあてた記述が随所に見られ、憲法「改正」への意図がより明確になっていることです。また、日本を不必要に誇張する自国中心史観の記述や性別役割分担論を前提とした記述などです。
 歴史の教科書では、日本の植民地支配と侵略戦争を肯定し、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」としてアジア解放を目的とした「正義の戦争」だったかのように描き、戦争による加害、被害の記述が少なく、原爆による犠牲者数も記述されていません。
 公民教科書では「自衛隊の活動」「我が国のこころと伝統」「公共の利益」「家族の価値」などを取り上げ、自衛隊の存在意義、国家への誇り、奉仕と忠誠、国防などを強調する記述となっています。また、巻末に資料の法律や条約については、「子どもの権利条約」「世界人権宣言」「国際人権規約」「女性差別撤廃条約」「男女雇用機会均等法」「男女共同参画社会基本法」など、人権・共生に関するものが掲載されていません。
 一方で、「つくる会」は、各地の議会や教育委員会への住民の請願を積極的にあげています。請願名を「学習指導要領の目標に最もかなう中学校歴史・公民教科書の採択を求める請願」などとして、学習指導要領の目標の一部を抜粋し、「我が国の歴史に対する愛情を深める」教科書の採択を求めるものや採択システムから教職員を排除し、絞込みが行われないような採択基準の策定を求める内容で、報道(5月20日「朝日新聞」)では、東京都内の市区町村を中心に、議会請願の状況が掲載されていましたが、昨年から今年にかけて各地で請願が採択されるなど、全国的にひろがっています。
 また、和歌山県、京都市をはじめ「全国縦断教科書シンポジウム」などの学習会にて、「つくる会」教科書の採択に向けたとりくみが積極的に展開されています。なお、「つくる会」教科書の白表紙本配布が1都1府17県で行われたことが明らかになっています。
 教科書採択は、公正・公平・透明性を確保し、その地域の学校の教職員や保護者・地域住民の意見が十分反映された「より開かれた」採択としていくことが重要です。教育行政には、公正・公平・透明な教科書採択制度の確保、教職員の教科書調査研究などの条件整備、採択過程における情報公開などが求められており、政治的な圧力こそ排除すべきであると考えます。
 中学校教科書採択は、「義務教育書学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づき、採択期限8月31日までに各採択地区での採択作業が行われます。同時に、教職員や地域の住民の意見を反映させるため、6月17日から2週間(法定期間)にわたり、全国各地で教科書展示会が開催されます。
 現行の中学校学習指導要領・社会科には、「広い視野に立って、社会に対する関心を高め、諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し、考察し我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め国際社会に生きる民主的・平和的な国家社会の形成者として必要な公民的な資質の基礎を養う。」と教科目標が示されています。「広い視野」「国際社会に生きる民主的な国家・社会の形成者」とは、東北アジアや世界という国際社会のなかで日本の社会や政治、経済、歴史事象を考えてみようということだと考えます。
 さらに「国際社会に生きる民主的・平和的な国家・社会」の形成者としての資質とは、国際社会に向けて自国賛美や自己主張だけの正当化ではなく、相手の立場から自国を考えたり、「日本の過去に目を反らさず、直視できる」歴史感覚を持った資質を求めているのではないでしょうか。
 その主たる教材である社会科教科書は、子どもたちが自ら問題を見つけて調べ、考えたりすることができる教材の構成か、世界やアジアの歴史と結びついた日本の歴史事実を正確に伝えているか、地域・民衆生活史の探求がなされているか、平和・人権を尊重する共生社会の実現に結びついた歴史認識、国際認識を育てる内容になっているかなどの採択の観点が必要です。
 私たちは、憲法・教育基本法、子どもの権利条約の理念に沿い、子どもたちがアジア諸国をはじめ、世界の平和、共生社会の実現をめざす実践力を育める豊かな教科書の採択に向け、「教科書センター(展示会)へ行こう!教科書採択に市民の声を届けよう」運動のとりくみを各地で展開していくことが重要だと考えます。 

駐韓米軍の再編計画と地域状況(1)
アジア太平洋資料センター調査研究員 李 泳采(イ・ヨンチェ)

 米国はブッシュ政権発足以降、新しい対外軍事戦略と共に、世界各地の米軍基地の削減及び統廃合による再編を行っています。その主軸は、海外駐屯軍の軽量化(人員削減)、迅速機動旅団の創設(ストライカー旅団)、先端武器中心の部隊運用であると見られます。このような米国の米軍再編計画の一環として、現在、駐韓米軍と駐日米軍の再編も同時に行っており、特に、韓国では、従来の駐韓米軍の役割が変化する大胆な米軍再編計画が既に実施されています。
 現在韓国での駐韓米軍再編計画は大きく三つの内容を骨組みとしています。それは@龍山米軍基地移転、A連合土地管理計画、B米2師団の再配置です。
 まず、龍山米軍基地の移転問題ははソウルの真ん中に外国軍隊が駐屯していることに対する国民の長い反感のゆえに、80年代後半から韓米交渉の対象となってきました。しかし、移転地と費用をめぐる韓米交渉は難航し、この問題は一時棚上げされていましたが、2001年に龍山米軍基地内の米軍宿舎建設問題が社会的問題化となってから、龍山米軍基地の移転問題は韓米両国の間で本格的に論議されてきました。その結果、昨年10月に龍山基地移転及び連合土地管理計画(LPP:Land Partnership Plan)修正協議案が両国の交渉団から出され、ついに公式的な署名をするに至りました。
 その内容はソウル都心に散在している米軍基地を2008年まで平沢地域へ移転すること、米国はソウルの9箇所の基地118万坪を返還し、韓国側は平沢地域の従来の米軍基地周辺に新規敷地52万坪及び施設を提供すること、そして、移転費用は韓国側で負担(約4兆ウォン推定)することでした。
 次に、連合土地管理計画は全国に散在されている28箇所の米軍基地を2011年まで平沢など5箇所の地域へ統合することとなりました。移転費用に関しては、韓国側が先に移転を要求した8箇所の基地施設費は韓国側が提供し、残り20箇所の基地施設費は米国側が提供することとなりました。
 最後に、米2師団の再配置問題は、2006年まで漢江北側の群小基地を東豆川、議政府地域の主要基地へ統合することと、漢江北側に位置して北朝鮮の先制攻撃の危険性にさらされていた2師団の主力部隊は漢江以南の平沢へ移転することとなりました。この場合は、韓国側が土地を、米国側が施設工事費を負担することとなっています。
 このように韓国政府は米国との基地移転交渉で、移転費用と土地提供における米国の要求を大部分受け入れていました。しかし、韓国政府はこの韓米交渉の結果をしばらくの間、公開していませんでしたが、民主労働党議員の秘密文書の暴露でこの問題を公表せざるを得なくなりました。市民団体らは龍山基地をはじめとする米軍基地の都心からの移転または返還には賛成しながらも、移転費用と土地提供問題において屈辱的な韓米交渉だと指摘し、基地移転問題の再交渉を強く要求しています。
 また、基地移転計画によって、全国に散在されていた駐韓米軍部隊の大部分が、現地住民の意思とは関係なく、結果的には平沢地域に総結集されるようになりました。これに対抗して、現地の農民、住民、そして市民団体らは「平沢米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会」を結成し、土地調査団の立入禁止、キャンドル集会、全国巡礼など実力闘争及び宣伝活動を続けています。
 一方、現在韓米両国による駐韓米軍の再配置は、MD体制及び機動打撃が可能な旅団の創設と同時に、分散されている軍事力の集中化を指向しています。特に、その戦力を中国に近接した西海岸地域に集中させているのが大きな特徴です。パトリオット・ミサイルを中心にした戦力増強構想を発表して以来、米国は3年間で、110億ドルを投資し、朝鮮半島の西海岸ラインに沿って、パトリオット・ミサイル配置を行ってきました。これは北朝鮮へのけん制と同時に、中国への軍事的牽制という新たな軍事戦略としても見られています。去る2004年11月、朝鮮半島の南の光州に駐韓米軍35防空砲旅団兵力450余名と、16基のパトリオット・ミサイルが追加で配置され、光州市民らの強い反対に直面しています。しかし、2005年現在、韓国では、光州、群山、平沢、烏山などいわゆる西海岸MDベルトに64基のパトリオット・ミサイルが配置されている状況です。
 一方、駐韓米軍は西海岸の戦闘機射撃練習場であった梅香里を、住民たちの粘り強い閉鎖要求に直面し、来る8月までに実質的に閉鎖することを決定しました。だが、その代替地として新たに全羅北道の群山近海の「直島(ジクト)」を選定しています。さらに、群山には最近、米軍保有の55台のF-117戦闘爆撃機(ステルス機)の中、25%を超える15台が配置され、訓練をしているとも報道されています。これに対して北朝鮮は、体制を威嚇する軍事行為として強く抗議しています。
 一方、盧武鉉政権は済州道のファスン港に8000億ウォン規模の海軍基地の建設計画を決定し、済州道の経済活性化政策として発表しました。だが、この海軍基地建設は地域発展よりは戦略的要衝地としてミサイル防御体制(MD)と連動せざるを得ない地政学的要因を持っているのが現状です。
 最近、韓国が巻き込まれることを懸念するいわゆる「対米自主外交」の影響で、米国側が駐韓米軍撤収可能性をうんぬんとしながら、韓国に対する外交的圧力カードとして使っています。しかし、駐韓米軍削減と漢江以南への移転は米国の東北アジア地域での軍事戦略の変化にともなう副産物に過ぎません。また、これはむしろ朝鮮半島の有事の時、米軍の自動介入を避けながら、米国の対北朝鮮軍事制裁の戦術的な選択の柔軟性を提供している側面も認識する必要があります。

「国民保護法」11月に初の有事訓練
福井で原発攻撃想定
 政府は6月14日、有事法制の1つである「国民保護法」に基づく、初めての実働有事訓練を11月末に福井県で行うと発表しました。県内の原発がゲリラの攻撃を受けたという想定。
 村田防災相が14日の閣議に報告しました。
 10月には全都道府県に参加を呼びかけて、図上訓練も行うとしています。
 訓練は、国や県、周辺市町村の職員のほか、放送局や医療機関、運送業者らの指定公共機関、警察、自衛隊、消防機関など1,500人規模で行う予定で周辺住民にも参加を呼びかけています。
 福井県の関西電力・美浜原発がゲリラの攻撃を受け、放射性物質が周辺環境に影響を与える恐れが出たという想定のもと行われます。
 国が現地対策本部、福井県が対策本部をそれぞれ設置。消防機関・海上保安本部と協力して住民の避難指示や誘導を行い、医療機関による放射能漏れに対応する医療の提供、警察による交通規制、海上保安本部による原発の警備強化などを訓練するとしています。
 政府は福井県での訓練に先立ち、10月末には訓練シナリオを事前に示さない「ブラインド方式」による図上訓練も実施し、全都道府県や有事法制で協力が義務づけられている指定公共機関に参加を呼びかける方針です。
 昨年度末、国民保護法に基づく「国民保護基本指針」が閣議決定されました。今年度中に都道府県の「国民保護計画」と、指定公共機関の「国民保護常務計画が、市区町村は2006年度中に「国民保護計画」を策定することになっています。平和フォーラムは小泉政権下で進む戦争のできる国作りを許さないために「国民保護計画」への監視を強めていきます。

MD法案・衆議院安保委・本会議で可決
文民統制をめぐる議論は不十分
 政府が導入を進めている、弾道ミサイルをミサイル防衛(MD)システムで迎撃する手続きを簡素化する自衛隊法改「正」案が6月14日、自民・公明両党の賛成多数で衆議院を通過しました。緊急の場合には、首相があらかじめ承認した「緊急対処要領」に沿って、現場指揮官が迎撃を判断できる内容を含んでいます。 しかし、要領の内容は「政令で定める」とされ、細部は明らかになっておらず、文民統制をめぐる議論は不十分なままです。
 法案は自衛隊法82条(海上警備行動)に「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を新たに追加。@発射の兆候がある場合は、首相の事前承認を得て迎撃A明確な兆候がつかめない場合は、事前に作成する「緊急対処要領」に基づき防衛庁長官の命令で迎撃──の2類型を明記。国会報告の規定があります。
 ただ、訓練中だと思っていた相手国から突発的にミサイルが発射されるなど、首相の承認を取り付ける時間がない場合も想定されるとして、第3項で明確な兆候がない時でも、イージス艦が日本海に展開する際など一定の期限で付きで権限を与えられた現場指揮官が、緊急対処要領に従って迎撃を判断できる仕組みを盛り込んだものです。しかし、このことは、自衛隊に戦争開始の権限を認めることになり、文民統制(シビリアン・コントロール)に違反することになります。
 民主党は弾道ミサイル迎撃にあたって、国会報告ではなく、事後の国会承認とするなど、「文民統制の徹底」を主張しましたが、与党側が応じなかったため、独自の修正案を委員会に提出しましたが否決されました。(次号で軍事問題研究会の桜井宏之さんに問題点を詳しく解説していただきます。)

東アジア諸国とのFTA問題を考える
経済界の利益優先の交渉に反発強まる

 「日本とフィリピンとのFTAが締結されると、誰でも簡単に日本に行って働くことが出来るらしい」。最近、フィリピンの女性の間ではこうした噂が広まっています。フィリピンから一定の要件を満たした看護士や介護士の日本受け入れが合意されたためです。
 世界中でこれまでに200以上のFTAが成立していると言われています。これは、多国間の貿易協定取り決めであるWTO(世界貿易機関)交渉が遅々として進展しないことから、手っ取り早い交渉が期待される二国間または特定の地域間協定であるFTAへと傾斜しているからです。とりわけ、これまで立ち遅れていた東アジアでのFTAラッシュがはじまっています。
 日本は、フィリピンとマレーシアとの間では、ほぼ合意に達し、さらに、タイとは近く合意すると伝えられています。この動きに問題はないのでしょうか?

経済的強国が弱国の産業を圧迫
 東アジア諸国の中で最も早くから交渉が始まったのが、韓国です。しかし、現在は交渉日程も決まらず、行き詰まったままです。
 直接の原因は、韓国側の対日貿易赤字が巨額に上る可能性が高く、それに対する中小企業や労働組合の反発が強いためです。2004年の対日貿易赤字は半導体や機械類の輸入を中心として2兆円を超えました。このうえにFTAが導入されるなら、韓国の平均関税率が日本よりも高い(日本の2.9%に対して韓国は9.2%)ことから、対日貿易赤字が飛躍的に増えていくことは目に見えています。さらに、小泉靖国参拝や竹島問題などもあり、韓国側の不信が強まっています。
 タイでは、5月初め、上院外交委員会が国内の労働組合に、日本とのFTAに反対するよう呼びかけたと報じられています。最も問題となっている自動車では、日本はタイの自動車産業と競合しない大型車の関税引き下げで決着しようとしていますが、タイ自動車部品製造協会は、関税引き下げによって輸入大型車の方が国産小型車より安くなり、国内部品メーカーと労働者に影響を与えると主張しています。
 FTAの問題点のひとつとして、経済的な強国が弱国の産業を圧迫していくことが上げられています。しかも、概ね10年後には関税率ゼロの完全な自由化に移行することを原則としていることから、影響の大きさが懸念されています。

知らされていない交渉の内容
 その一方で、欧米の自動車企業からタイ政府にクレームがついています。それは日本からの自動車の輸入関税引き下げに応じた場合、欧米の自動車メーカーが不利になるからです。現行、タイの完成車の関税は最高80%もあり、FTAによって日本車が断然有利になり、この協定の外にいる欧米の自動車は関税が高いまま輸出しなければならなくなるからです。
 このことに典型的に現れているように、FTAは、協定を結んだ国とそうでない国・地域との差別性・排他性が際立っています。WTOは全ての国と同様の関税率にするなど「無差別性」を原則としています。WTOとFTAでは、自由化に相違があるのです。
 さらに、東アジア各国では、日本とのFTAの内容が国民に知らされていないことも問題となっています。冒頭のフィリピン介護士などの受け入れでも、日本側は3〜4年間、研修生として受け入れた後に、日本の試験に合格する必要があるなど要件を厳しくしようとしていますが、そうしたことは知らされず、わずかな経験があれば無条件で働けると誤解されています。
 FTA問題に詳しい東大の末廣昭教授は、「アジア各国はトップダウンでFTAを進め、その後に国民に説明することにしている。たとえ、いま合意していてもこれから国内で矛盾が発生するだろう」と指摘しています。経済利益優先のFTAの動きを注視していく必要があります。

深刻な林業生産活動の停滞
多面的機能発揮へ森林を活かす時代に
全林野労働組合 犬飼 米男
 2004年(平成16年)度の「森林・林業白書」を見ると、日本の森林は「伐らないで守る時代」、「植えて回復する時代」を経て、「成長した森林を活かす時代」に入っているとしています。
 「森林を活かす」とは、木材を生産しつつ、公益的機能も十分発揮させていくことです。日本の人工林は、利用可能な林齢(46年生以上)の面積が増加してきており、むしろ、木材として利用されないことが、間伐の遅れの原因となり、森林整備への再投資を滞らせ、公益機能の発揮にも悪影響を及ぼしています。
 昨年は、相次いで上陸した台風や集中豪雨、地震により、山地災害や森林被害等が各地で多発し、山地災害の被害額は、過去10年間で最大の2,500億円に上っています。
森林、特に人工林の持つ多面的機能を発揮させていくためには、木材が適切に利用されることにより、伐採、植栽、保育等のサイクルが円滑に循環し、これによって林業の持続的かつ健全な発展が図られるとともに、林業に携わる人たちの生活基盤である山村が魅力的で活力に満ちたものである必要があります。
 しかし、木材輸入の増大、長期にわたる木材価格の低迷などにより、林業の採算性は大きく低下し、林業生産活動の停滞という深刻な事態に直面しています。
 こうした中、林業生産活動の停滞を反映して林業労働者も減少傾向で推移しています。2000年度は6万7千人(国勢調査)と10年前の6割の水準となっています。65歳以上の割合も、10年前から14ポイントも上昇して、25%に達し、高齢化が進んでいます。現在の傾向が続くとすれば、2010年度には4万7千人程度まで減少するとされています。
 新規の林業就業者は、2003年度から林野庁が実施している「緑の担い手育成対策事業」などにより年間4千人を上回っていますが、所得の確保、危険性、定住環境等に不安を抱えているのが現状です。これらの雇用、処遇、労働条件の改善が労働力確保の前提として重要であると考えられます。

温暖化防止に欠かせない森林の整備
 一方、地球温暖化防止対策として、日本では温室効果ガス(二酸化炭素等)排出量について、1990年の水準に比べ6%削減することを約束し、達成に向けて3.9%に相当する1,300万炭素トンを森林による吸収で確保することを目標にしています。このため、2003年から「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を展開しています。
 今年2月16日には京都議定書が発効しましたが、国内ではこれまで二酸化炭素の削減に向けた抜本的な対策は行われておらず、2003年度の国内の温室効果ガスの排出量は1990年比で8%も増加しています。森林による二酸化炭素吸収量も、現状の森林整備で推移した場合3.9%を大幅に下回ることから、評価を踏まえての必要な追加対策(2000億円程度の予算規模)が必要となっています。
 こうした中、環境省と農林水産省により、新たな対策の財源として「環境税」の導入が提案されました。2005年度の政府税制調査会では検討事項として先送りされていますが、実効性のある対策として早急な検討が必要です。

木材利用拡大で都市に第2の森林を
 また、木材利用拡大の対策として、@生産から消費までの流通対策A公共施設への利用A地域材の地産地消B木材住宅の奨励C違法伐採対策D間伐未利用材や林地残材の利用促進E木質バイオマス利用など具体的施策の実行が求められています。
 木材は、炭素を貯蔵する機能を持つことから、森林から生産された木材があらゆる製品に有効利用されれば、都市には木材住宅を中心とする第2の森林があるとも言えます。木材利用が確保され、適切に利用されることで、林業の持続的な発展が図られ、森林の持つ多面的機能の発揮が確保できます。
「循環型社会」の基盤ともいえる第1次産業の活性化と発展こそが、21世紀のキーワードであり、森林からの恩恵を次世代に確実に引き継いでいくことが、林業、山村そして市民の使命であるといえます。

被爆60周年原水禁世界大会の課題(2)
NPT再検討会議が終わって
危機に直面する核不拡散体制と原水禁運動

予想されたNPT再検討会議の結果
 すでに明らかなように、05年5月2日から27日までニューヨークの国連本部で開催されたNPT(核兵器の不拡散に関する条約)再検討会議は、まったく合意が成立せず、議長声明さえ出すことができないまま閉会しました。
 NPTは他の条約には例を見ない世界・189ヵ国が参加していて、何も決まらなかったといって条約が崩壊することはありませんが、実質的に空洞化していく状況は否めません。
何が問題だったのかを考え、NGO、運動体として、何が必要かを考えたいと思います。その前にNPT成立の背景と条約の主要点を述べておきます。
 NPTは、1968年7月に署名され、70年3月に発効しましたが、その背景には53年12月に、国連総会でアイゼンハワー米大統領が「平和のための原子力」提案を発表し、それ以降、世界に原子力開発技術とともに、核兵器物質が広がり、核保有国の増加が心配されたことがあります。
 条約は、67年1月1日以前に核兵器を保有していた米、ソ、英、仏、中国を「核兵器国」と定め、それ以外の国を非核兵器国として、核兵器を保有しないことを約束し、IAEA(国際原子力機関)の保障措置の受諾を義務づけ(3条)、その代償として非核兵器国に平和利用の権利を強調しています(4条)。
 一方核兵器国は、核軍縮へ向けて「誠実な交渉を行うことを約束する」(6条)するとしていますが、核兵器開発、製造、貯蔵、配備などについて一切規定していません。またIAEAとの間でも協定を結んでいますが、いっさい査察は受けていません。このためNPTは核兵器国の核独占を合理化している欠陥条約だと批判されてきました。NPTはこのような不平等性を何ら解決することなく35年を経過したのです。
 NPTの発効後もフランス、中国は、米ソ支配を理由にNPTへの参加を拒否していて、加盟は冷戦終結後でした。核開発計画を進めていたブラジル、アルゼンチンも冷戦終結後に加入し、南アフリカも保有していた6個の核爆弾を解体し、91年に加入しました。日本も署名は68年2月でしたが、批准は76年6月でした。

NPTとIAEA、追加議定書
 NPT条約第3条に、加盟国はIAEA(国際原子力機関)への加盟が義務付けられていますが、IAEAもまた、53年のアイゼンハワー米大統領の「平和のための原子力提案」を契機に、原子力平和利用の国際機関設立構想が提唱され、56年7月にIAEA憲章が採択され、57年7月に設立されました。IAEA憲章では@平和目的に原子力を推進する。A軍事転用されないための保障措置の実施がうたわれています。
 この保障措置はいろいろありますが、簡単にいうと加盟国の自主的な届け出によって、加盟国がIAEAの定期的な査察を受け入れ、その査察によって原子力施設が軍事に転用されていないことの確認を受けるというものです。しかし、92年の北朝鮮に対する査察では、使用済み核燃料の再処理が、申告とは別にも行われたことが明るみに出て、北朝鮮のNPT脱退通告など、その後の北朝鮮核武装問題の発端となったことは周知の通りです。
 ただ、この保障協定は、あくまで自己申告に基づく施設に対する査察であって、未申告の施設などの疑惑が出てきても、それを強制的に、あるいは抜き打ち的に査察することはできません。イランのウラン濃縮施設が秘密裏に建設されていたことは、IAEA保障措置の不備を示すものといえます。
 こうした不備を補うためにIAEAは加盟各国との間で、抜き打ち査察や原子力施設からのサンプリング採取といった、「追加議定書」の締結を求めることが、97年のIAEA特別理事会で採択されました。
 たしかにIAEA加盟国すべてが追加議定書を締結すれば、世界の核物質の状況がかなりの部分明らかになるといえます。しかし現在は、加盟国の自主的判断にまかされているため、NPT加盟国に義務付けの合意を取りたいというのがIAEAの立場でした。

核燃施設の国際管理案
 さらにNPT再検討会議を前に、新たに「核燃料サイクル施設」国際管理構想がIAEA事務局長によって提唱されました。ウラン濃縮や再処理施設の新規建設を5年間凍結し、その間に既存の施設を国際的な管理下に置こうというのです。
 しかし、この国際管理案には、IAEAが原子力の平和利用を前提としていること、核兵器国のプルトニウムや高濃縮ウランは除外されるなど、核軍縮ではなく核拡散だけに問題をしぼっていることによる問題があります。05年NPT再検討会議では、こうした提案もまったく討論されることなく終わったのですが、今後IAEA理事会、さらに2010年の再検討会議でも議論されることが考えられます。

2000年合意はどうなる?
 5年前の2000年再検討会議では、核兵器廃絶への核保有国の明確な約束など13項目合意(資料参照)や、非核兵器国に核兵器による威嚇や攻撃を行わない「消極的安全保障」の条約化の重要性、非核地帯条約の重要性などが確認されました。21世紀を前にして世界は核廃絶への大きな希望を抱いたのです。
 しかし、01年にブッシュ米大統領が登場。さらに「9・11同時テロ」は米国の態度を激変させました。05年再検討会議を前に、米国は早くから2000年合意の死文化を目指していました。具体的に見てみましょう。
 再検討会議開会から2週間余が過ぎた後、ようやく3つの委員会が設置されました。まず核軍縮が議題となった第1委員会では、核兵器国の軍縮を求める非同盟国などに対して、米、フランスなどが反対しました。CTBTの早期発効についても米国は「CTBTはすでに死文化している」と主張して反対しました。
 第2委員会では核拡散防止が、第3委員会では原子力の平和利用が議題となりましたが、イスラエルの核保有を問題とするエジプトなどの中東諸国と、イランの核武装を疑う米国とが激しく対立。NPTからの脱退阻止や、IAEAの抜き打ち査察を認める追加議定書への参加を義務づける案などの合意も成立しませんでした。
 このように05年再検討会議は、すべての議題について対立し、いっさいの合意文書は成立しませんでした。この決裂によって2000年合意は死文化したのでしょうか? ノーです。合意文書が核廃絶を願う世界の希望が結集した文書である限り生き続けます。むしろ米国の超核大国としてのエゴを拒否し、2000年より後退した文書が作成されなかったという点において、私たちを含めて世界の核廃絶を願う力を評価すべきでしょう。ただ、この状況は切り開かなければなりません。その意味で、私たちは2000年合意文書を理解することから始める必要があります。

資料・2000年再検討会議最終文書
・CTBTの早期発効
・CTBT発効までの核実験モラトリアム
・軍縮委員会(CD)でカットオフ条約の即時交渉開始と5年以内の妥結を含む作業計画への合意
・CDに核軍縮を扱う適切な補助施設の設置
・核兵器、軍備管理・削減措置に「不可逆性の原則」の適用
・核兵器の全面廃絶に対する核兵器国の明確な約束
・STARTUの早期発効とその完全な実施、速やかなSTARTV妥結、ABM条約の維持・強化(注1)
・IAEA・米ロ間の三者協定の妥結・実施
・国際的な安定とすべての国の安全が損なわれない原則
 核兵器国による一方的核削減のためのさらなる努力
 核兵器能力、軍縮協定実施の「透明性」の強化
 非戦略核兵器の一層の削減
核兵器システム運用の地位低減の具体的な合意
 安全保障政策における核兵器の役割の低減
全核兵器国による核廃絶プロセスへの関与
・余剰核分裂性物質のIAEA等による国際管理と処分
・究極的な目標としての全面完全軍縮の再確認
・NPT第六条及び核軍縮努力の実施の定期的な情報提供(ICJ(注2)勧告的意見を想起した措置)
・核軍縮のための検証能力の向上
注1:米国のABM条約の一方的廃棄によってSTARTUは成立せず、新たに米ソ間で「戦略的攻撃能力削減に関する条約」(モスクワ条約)という、2012年までに米ロの戦略核弾頭を1700〜2200に削減するという以外、何らの規制もない条約へと後退しました。
注2:ICJ=国際司法裁判所

被爆60周年原水爆禁止世界大会日程
 今年は戦後・被爆60年。全国からの参加で成功させましょう。
広島大会
【8月4日】(木)16:30〜18:30
■開会総会:「被爆60年核兵器廃絶2005平和ヒロシマ大会」(原水禁、連合、核禁共催)、広島県立体育館
●折鶴平和行進:15:00〜 平和公園→県立体育館
【8月5日】(金)
●分科会:9:30〜12:30 ※D、Eは9:00〜12:00
@アメリカの核戦略と東北アジアの非核化/A米軍の再編成と日本のミサイル防衛/B原爆訴訟・在外被爆者と被爆者援護法/C世界のヒバクシャの現状と連帯のために/D再処理・プルサーマル計画撤回と原子力政策の転換/E脱原発に向けたエネルギー政策の展開/F見て、聞いて、学ぼうヒロシマ
●特別分科会:原水禁運動交流 14:00〜16:30
●ひろば:14:00〜16:30 Bのみ9:30〜12:30
@ヒバクを許さないつどいパート6/A女性のひろば 14:00〜16:00/Bイラクの現状と劣化ウラン問題
●フィールドワーク:8:00〜18:30
@バスツアー:「ヒロシマと戦争」有料 大久野島/A上関原発現地交流ツアー有料

「子どものひろば」とメッセージfromヒロシマ2005
会場:グリーンアリーナ(県立体育館)武道場
8:00〜@子どもの慰霊祭/Aフィールドワーク慰霊碑めぐり
「メッセージfromヒロシマ2005」12:30〜16:30
13:00〜@被爆電車/A灯ろうづくり/B海外のおともだちとの交流会

【8月6日】(土)
●広島まとめ集会:9:30〜11:30
長崎大会
【8月7日】(日)15:30〜18:00
■開会総会:「被爆60年核兵器廃絶平和2005ナガサキ大会」(原水禁、連合、核禁共催)、長崎県立体育館

若者、子ども関連行事
ピースブリッジ2005inながさき 
12:30〜14:30/若者シンポ、ピースモニュメント等

【8月8日】(月)
●分科会:9:30〜12:30
@被爆60年・核廃絶にむけた課題と役割/A東北アジアの非核化と安全保障/B 原子力政策を転換させるために─再処理とプルサーマル計画/C世界のヒバク者と連帯するために/D被爆の実相を引き継ぐために(T)─日本の戦争責任と在外被爆者問題/E被爆の実相を引き継ぐために(U)─被爆二世・三世問題の解決をめざして/F見て・聞いて・学ぼう”ナガサキ”─証言と映像による被爆の実相と平和運動
●特別分科会:原水禁運動交流
●ひろば
@女性交流 14:00〜16:00/A子ども 9:30〜12:30/B被爆者との交流−施設訪問 9:30〜14:00/C被爆者との交流─語る会 10:00〜12:00/D映画上映/E再処理、MOX交流のひろば 14:00〜16:00
●フィールドワーク
バスツアー:佐世保基地めぐり有料3,000円(9:00〜17:00)/原爆遺構めぐり(14:00〜16:00)

【8月9日】(火)
●長崎まとめ集会:9:00〜10:00
●平和行進:10:15〜11:00/爆心地公園内で黙とう・/公園内原爆中心碑を囲むイベント−国際法を守る壁
プロジェクト

被爆60年“核廃絶の壁”木のブロック・キャンペーン
(「国際法を守る壁」プロジェクト)
詳しくはHP参照:http://www.gensuikin.org/
 8月9日、長崎の爆心地(原爆中心碑)の周囲に、平和へのメッセージを皆さんが書いた木のブロックを積み上げます(目標2万個です!)。ドイツの若者がスタートしたこの「国際法を守る壁」プロジェクトのピースアクションは、広島・長崎市長が行う平和市長会議による核廃絶に向けた「2020ビジョン」でも支持され、取り組みが呼びかけられています。ぜひ、ご家族やお知り合いなど、身近な方にメッセージを書いていただいて、戦後60年の今、平和への想いを広めましょう!
問い合わせ:原水爆禁止日本国民会議
 東京都千代田区神田駿河台3-2-11 総評会館1F TEL:03-5289-8224
メール:block@gensuikin.org

最高裁の不当判決に抗議し、「もんじゅ」の廃炉をめざして反撃を!
ストップ・ザ・もんじゅ  代表  池島 芙紀子

 5月30日、最高裁は、名古屋高裁の判決を破棄し、原告側の控訴を棄却し、「もんじゅ」の変更前の設置許可を有効とする判決を下しました。20年の長い歳月をかけて、原告および弁護団の方々が苦闘された努力に対して、あまりにもひどい判決です。
 16年間、福井へ、金沢へ、東京へと、大阪から傍聴を続け支援してきた者としても、筆舌に尽くせない怒りと悔しさでいっぱいですが、全国のマスコミの論説も、ほとんど全紙が、この判決には「問題あり」と指摘し、心ある法学者も批判されています。早大の首藤教授は毎日新聞へのコメントで「安全委が、信用に足りる体制で安全審査をしているかどうかも言及せず、その言い分を前提にした判決で、すべて追認に終わった。行政の意向に沿った上、将来の事故発生時の責任を回避した政治的な判決だ」と言われています。
 また、元京大原子炉実験所の小林圭一さんは、「伊方原発訴訟の最高裁判決(92年)では、科学技術庁認定は専門家が行うとしたが、今回の判決では裁判官が科学技術的な判断をしている。そのため事実認定に数多くの間違いがある。炉心崩壊事故が起きた際、最も深刻な影響を及ぼす炉内の動き(遷移過程)については安全審査で考慮したとしているが、根拠とされた解析は審査後のものだ。事実認定をきちんとした高裁判決をしっかり読んだのか疑問に思う」と語っています。
 高裁での長い審議の結果、安全審査のずさんさ、インチキ、ペテンが明白にされ「安全審査に重大な過ちがあった」と判断されました。しかし、最高裁は、全くこのことを無視し、「国が正しい、問題ないと言っているから問題ない」と言い切る無責任、鉄面皮には、ほとほとあきれるばかりです。
 この判決への国民の反応の多くは否定的です。「もんじゅ」の問題点を少しでもまじめに考えてきた人は、みな、心底から怒り、真剣に反撃を考えています。
 戦後・被爆60年の今、原水禁運動の先頭にたってこられたみなさまには「もんじゅ」の危険性、非経済性はもとよりのこと、「もんじゅ」と核兵器との関係も先刻ご承知のことでしょう。国家権力が、なりふりかまわず「もんじゅ」を運転させようとしている今、反核・反原発運動の一層協力な協同体制と、取り組みが求められていると思います。
 全力をあげて「もんじゅ」の運転を阻止し、廃炉に追い込みましょう。
 「もんじゅ」はいうまでもなく、単に福井県民の課題ではなく、全国民の重大課題です。私どもは、この政策の転換をめざして、さらに国会議員へのロビー活動を強め、資料や情報を届け、「もんじゅ」廃炉のために真剣に本気で働いて下さる議員を増やしたいと思っています。

具体的な取り組みのお願い
@再審請求の是非について6月12日、福井での原告、弁護団会議において、多くの原告の方が賛成され最高裁判決を不服とする再審請求をすることになりました。この決意を支持し、まわりの人に最高裁の不当性を広めましょう。
A不当判決抗議・緊急全国集会(仮称)
 7月9日14:00〜、福井県民会館(福井市内)への参加を
B「もんじゅ」廃炉要求署名に協力を。
 原水禁の皆様には、2000年の9月のスタート時に、いち早くご協力いただき、約96万6,000名に達しています。現在文部科学大臣への提出行動を要請中です。ぜひ100万人を超えるよう、再度まわりの方への取り組みをお願いします。
Cビデオ「『もんじゅ』明かされた真実」の購入と上映会を。
 高裁での争点、いかに安全審査が間違っていたかをわかりやすく編集しました。今回の最高裁の判決と対比して、職場や地域での学習会にぜひご活用ください(1本3,200円、送料160円です)。
Dマンガパンフや、絵はがきセットなど、「もんじゅ」に関するグッズも多数あります。出前学習にも伺いますのでご連絡ください。
 この他にも、現在検討中の取り組みもあります。全国の方と協力し、勝利をめざして粘り強くがんばりたいと思います。
※CDの注文は、「ストップ・ザ・もんじゅ」まで。
?072-843-1904(FAX兼)

ウラン兵器禁止を訴え国連でワークショップ
16万筆を超えた国際署名を国連事務総長へ
「ヒバク反対キャンペーン」DU担当 振津かつみ
 NPT再検討会議に関連したNGOの取り組みのひとつとして、5月3日、ニューヨークの国連本部で「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)主催の「劣化ウラン・ワークショップ」が開かれました。開始前から様々な国々の反核活動家がつめかけ、NGOのために準備された50名収容の部屋がすぐに満杯になり、途中で別の大きい部屋に移動しなければならないほどで、質疑や議論も活発に行われ、関心の深さがうかがわれました。
 1991年の湾岸戦争に従軍したメリッサ・ステリさんは、「戦場に残された砂まみれの戦車や兵器を集め、布で拭いたりして除染し、再使用できるように整備する任務に就いていた。帰国後、30代という年齢にもかかわらず、疲れやすい、関節・筋肉痛、慢性呼吸器感染症、心臓発作、記憶力低下などの健康障害に苦しめられてきたが、医師には『ストレスが原因』と決めつけられ、家族からも『なまけ者』扱いをされた。1995年に障害認定を申請したが、未だに認められていない。戦場で戦車に乗っていたわけではないので、劣化ウランに曝露されたことすら認められない。
 ウラン兵器は戦争が終わっても人々に影響を及ぼす。特に汚染地域の子供達や次の世代の健康が懸念される」と、訴えました。そして彼女の住むコネチカット州の議会で、イラクなどからの帰還兵に対する独立機関による健康調査を行うよう、また劣化ウランをはじめ戦場の有害物質による健康影響をフォローするために兵士の健康登録制度を設けることを求める法案を成立させるために奔走しているとの報告がありました。
 長年、核被害者問題に携わってきたロザリー・バーテル博士は、ウラン弾が標的に衝突した際に生じる3000?6000℃もの高熱によりウランが金属蒸気となり、ナノ(1ミリの100万分の1)レベルの難溶性の微粒子となって呼吸とともに体内に取り込まれ、長期にわたって肺をはじめ全身の臓器・組織に傷害を与えるという危険性について解説しました。
 ウラン兵器を製造していた工場のあるマサチューセッツ州コンコードから草の根の住民運動のメンバーが参加し、「1958年から住民には知らせずにウラン兵器の製造が続けられてきた。1989年に3人の女性が地元の工場で放射性物質を扱っていることを調べ出したことをきっかけに住民運動が始まり、工場の敷地内には劣化ウランを含む有害廃棄物の貯蔵池があり、地下水系を通じての飲料水汚染も心配され、国に有害廃棄物の撤去と除染を求めている」と報告がされました。
 スコットランドの国会議員クリス・バランス氏は、「サンディ・ビーチの射爆場でウラン兵器が多数使用され、周辺地域の汚染と漁業への影響、住民の健康影響が問題になっている。また昨年スコットランドの湾岸戦争帰還兵が健康補償を求めた裁判で劣化ウラン曝露との関係を認められて初めて勝訴した」などの報告がされ、ウラン兵器使用のモラトリアムを求めた欧州議会の決議(2003年2月)にもかかわらず、英国がイラクでウラン兵器を再び使用したことを糾弾しました。
 フランスの「核軍縮市民行動」の代表からは、「フランスの湾岸戦争帰還兵も健康障害に苦しんでいるが政府は被害を認めていない。ウラン兵器実験施設の周辺住民の反対運動も取り組まれている。ウラン兵器は、核兵器や化学兵器など他の全ての大量破壊兵器の問題と結んで反対してゆくべきだ」などの発言がありました。米国の「軍事毒物プロジェクト」の代表からは、米国各地の軍事施設周辺で劣化ウランを含む様々な有害物質による被害が問題になっており、施設周辺住民の全米ネットワークとしての活動報告と、ICBUWの「ウラン兵器禁止条約案」の紹介がなされました。
 日本からは「NO DU ヒロシマプロジェクト」「ヒバク反対キャンペーン」の代表とともに、原水禁福山事務局長から、核軍縮の取り組みとあわせて「ウラン兵器禁止国際署名」にも取り組んできたことの報告があり、日本で16万筆を超える署名が集まっていることには会場から大きな拍手が送られました。また今後も引き続き国際署名に取り組むこと、世界の運動と連帯してイラク侵略・占領反対、自衛隊撤兵を求めて闘うとの決意が述べられました。積み上げられた国際署名(今回は日本の署名の一部のコピーを持参)は、その後、アナン国連事務総長に提出すべく、米国の活動家を通じて軍縮局長に託されました。
 6月23〜26日にはブリュッセルでICBUWの国際会議が開かれ、ウラン兵器禁止に向けた国際的な運動の方針などが話し合われます。またあわせて欧州議会議員への働きかけも行われます。「二度とヒバクシャを生み出させない」という思いで取り組んできた日本の私たちの運動は、今後も国際的な運動と連帯し、被害者を支援し、粘り強くウラン兵器禁止の運動を拡大強化することが求められています。

首相は靖国参拝中止を
東京・調布市議会が意見書
 東京都調布市議会は6月9日開いた本会議で、「小泉首相をはじめ政府閣僚の靖国神社参拝の中止を求める意見書」を民主・社民・公明・共産党の賛成多数で可決し、小泉首相に送付しました。
 反対したのは、自民党系の2会派。
 意見書は、小泉首相が「アジア・アフリカ首脳会議」で「『植民地支配と侵略』が日本の誤った国策であったことを認め『アジア諸国の人々』に『多大の損害と苦痛』を与えたことについて、『反省』の意思を示したにもかかわらず、「靖国神社への参拝中止を言明せず、国内外の批判を無視している」と批判。
 「少なくとも首相という日本を代表する公職についている限り参拝は自粛するべきである」と主張しています。

東京都小平市が「非核平和都市宣言」
 小平市議会は6月7日、「小平市非核平和都市宣言」を全会一致で承認しました。「非核平和都市宣言」の垂れ幕の予算も全会一致で承認されました。夏をめどに市庁舎正面に掲げられます。
 宣言では、「世界の平和の実現と核兵器廃絶は人類共通の願い」だが、「世界ではいまだに戦争がやまず、核兵器は人類の脅威となっている」と指摘。
 核兵器の悲惨さや恐ろしさを伝え、被爆国として「すべての国の核兵器の廃絶を求め平和への誓いを新たにする」としています。1983年、市議会では「小平市非核都市宣言」をしましたが、これまで市は「議会で実施しているから市では宣言しない」という姿勢でした。
 しかし、4月の市長選挙で、民主党前都議の小林正則市長が民主・社民・生活者ネット・共産の支持で当選。実現に至ったものです。

何が求められているのだろうか
 5月3日の朝日新聞の世論調査が大変興味深い結果を報告していましたので紹介します。
 質問は、「あなたは、いまの政治に、満足、不満」、それに対する回答は、「不満と大いに不満」で75%、以下同じように見ていくと「いまの世の中を表すふさわしい言葉」、回答は「身勝手。不公平、混迷、崩壊」が64%、「日本の社会は行き詰っているか」に対しては、「強く感じる、少し感じる」が85%、「政治家に取り組んでほしいテーマ」への回答は、圧倒的に「景気回復」、「社会保障」で「憲法改正」は8位となっています。
 このように、「国民」の大多数は、政治に対して、現状を「何とかしてほしい」と「悲鳴に近い声」を上げています。日本は年間3万5千人も自殺している国です。自殺者は一日につき、100人を超えています。隠された自殺者、未遂者はさらに多いといわれています。格差の拡大、弱いものいじめ、不況、公的負担の増大、談合疑惑、こうした事態を見ると日本社会の崩壊すら予感させます。
 一方、政治の現在の焦点は、国民の要望とは関係のないところで、政府は「郵政民営化」を強行しようとしています。小泉首相は東アジアの政府の反対を押し切り、無責任にも「靖国参拝」を強行しようとしています。こうした事態をめぐり与党内の意見の違いも明確になってきています。野党にはチャンスでしょう。
 秋にも結論を出すとされている米軍の「トランスフォーメション」の中で、「憲法の蹂躙はもとより、日米安保条約をも超える日米軍事同盟体制」の更なる強化も画策されています。「トランスフォーメーション」に対しては、基地強化を押し付けられる地元自治体から自治体を挙げての反対運動も高揚しようとしています。沖縄の宜野湾、山口の岩国、神奈川の相模原、大和、横須賀などです。
 原発についても、政府と電力会社は破綻が明らかであるにもかかわらず、「青森再処理工場の強行稼動」「もんじゅの再開」「プルサーマル計画の拡大」など「プルトニウム」利用路線を推進しています。地元では多くの闘いが取り組まれています。
 こうした事態の中で、私たちは、「野党は、労働団体はどうしているんだ、平和団体はどうしているんだ」という「国民」の鋭い追及にさらされています。「なぜ政府を追い詰めることはできないのだ、政策転換を勝ち取ることはできないのだ」と彼らは求め続けています。私たちも、野党も労働団体も、言い訳はたくさん用意することはできます。しかし、言い訳を重ねてみても何にもなりません。
 もう一度、時代の深いところで、「国民」や「地域」や「自治体」のところで地殻変動が起こりつつあるという諸指標を確かめて、確信と勇気をもって、本気の闘いを作り出さなければならないと思います。そのことが平和フォーラム・原水禁に求められています。