憲法改正国民投票法の論点、問題点について

 開会中の第164通常国会では、教育基本法の「改正案」や憲法「改正」の手続きのための国民投票法案など、憲法に深く関わる重要法案が次々と上程されようとしています。

憲法調査会と自民党の動き
 2000年から開始された国会の憲法調査会は、5年余の調査を終えて、衆議院が2005年4月15日、参議院は4月20日に「最終報告書」を決定しました。報告書は、憲法9条をはじめ憲法改正の必要性を打ち出す一方、今後の課題として、国会法を改定しての憲法調査会の改組・存続や、新たに設置された委員会で憲法改正国民投票の手続き法(「憲法改正国民投票法」)について協議することにも言及したものです。
 憲法について、自民党は2005年11月、結党50年「新憲法草案」を発表し、憲法の前文や憲法第9条第2項を取り払い、「自衛軍」と海外活動を盛り込むことを打ちだしました。米軍再編やイラク派兵など一連のアメリカの要求を受け入れと対応したものです。自民党の憲法調査会はさらに2次草案に着手し、「愛国心」を盛り込むことを検討しています。また、「公益」と「公共の秩序」を強調した人権の制限、靖国参拝を正当化する政教分離原則の変更など、憲法の平和主義・基本的人権の尊重・主権在民の理念を否定する内容の検討をすすめています。

憲法改正国民投票法案の問題点
「憲法改正国民投票法案」については、昨秋の特別国会で衆議院に憲法調査特別委員会が設置され動きを開始しました。与党は通常国会への法案上程、遅くとも年内の成立をめざしており、すでに3月30日の理事懇談会には、30項目余りの「憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表」が提出され、与野党間協議が開始されました。
 国のあり方の基本法である日本国憲法をどのようなものにしていくのかに関わるきわめて重要な法案です。したがって、どの法よりも、憲法の理念に立脚し、基本的人権の尊重や主権在民の原則に沿うものでなければなりません。また、議論も慎重かつ時間をかけて徹底的に行うことが必要であるにもかかわらず、この法について、これまでその制定の是非や時期も、内容もほとんど市民のなかで議論されていません。
 しかも、現在、与党・自民党がすすめている法制定のもとにしているのは、2004年12月の憲法改正国民投票についての与党合意です。また、この与党合意のベースとなったのは、はじめに「憲法改正ありき」「憲法改正のためのハードルを下げる」という意図を色濃く持った憲法調査推進議員連盟案(2001年11月)です。以下に見るとおり、その根幹には、基本的人権の尊重や主権在民という憲法理念に反する抜本的な多くの問題点を持っており、与野党間協議のなかで与党・自民党側が部分修正しているというのが現状です。
 第1に、国民投票に関わる報道・表現の自由や運動にさまざまな制限・規制を設けていることです。基本的人権の尊重の立場からは、投票者への情報提供や議論の場を最大限に保障するかどうかが重要です。
 ところが、2004年12月与党合意は、広く禁止制限規定を定め違反に刑罰を科すとし、公務員や教育者の運動を制限し、外国人にいたっては運動を全面的禁止。新聞・雑誌・テレビ等の虚偽・歪曲報道の禁止、予測投票の公表禁止、新聞・雑誌の不法利用等の制限など、マスコミ報道および評論に過剰な規制を設けました。
 公職選挙法と同程度、場合によってはそれよりも禁止制限の範囲を拡大した法律を制定しようというものです。公務員や教育者の運動の禁止について、与党は公選法並みとしています。
 そもそも人の選挙について定めた公職選挙法は世界でもまれな厳しい規制が盛り込まれ、表現の自由の保障など人権を軽視した法です。それをさらに政策選択のための投票法に持ち込み公務員や教育者の運動を制限することは憲法論議の場を制約するものであり、まったくの誤りです。
 メディア規制については、マスコミなどの強い批判のなかで自民党憲法調査会「憲法改正手続き法案」(仮称)4月12日の骨子案は、自主規制を原則とする方針に転換しましたが、一方で投票日の7日前から国民投票に関するCM放送を禁止する規定を新たに加えるなど、新たな規制も打ち出しており、与党が強調してきた虚偽や不法利用報道を理由とした規制がなくなったわけではありません。
 第2に、公民権停止者や未成年者の投票権を認めないなど投票権の保障に問題があることです。国の基本法という憲法の性格からいっても、公民権停止者や18歳以上の未成年者、場合によってはそれ以下の年齢にも拡げられるようにするかどうかが重要です。たとえば、市町村合併に伴い、全国各地に広がった住民投票条例では、在日外国人や15歳以上の投票権が認められ実施されました。
 しかし、2004年12月与党合意は20歳以上の公選法上の有権者とし、公民権停止者や未成年者の投票権を認めなず、在日外国人については意見表明権など国民投票運動の自由すらありません。自民党は4月12日骨子案でもその主張を続けています。
 第3は、憲法改正の発議から投票までの期間です。2004年12月与党合意は、国民投票の周知期間を「30〜90日」ときわめて短期で、議論の機会を奪うに等しいものとしていま。自民党4月12日骨子素案では、「60〜180日」に延長することを盛り込んだとされていますが、周知と十分な論議を保障するには最低でも半年ないし1年程度の長さが必要です。
 第4に、国民投票の方式についてです。憲法改正以外の国政の重要問題に関する「一般的な国民投票」も含めた制度として確立していくかどうか。また、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、個別の条項ごとに賛否の意思を表示できる投票方法とするのかどうかは主権在民の立場から重要です。しかし、与党は「一般的な国民投票」には反対し、一括投票か個別投票かについて2004年12月与党合意は明らかにしませんでした。
 衆院憲法調査特別委員会理事懇談会での「論点整理」は、改正条項が複数ある場合の投票方式については、国民主権の趣旨に照らし、国民の意思を忠実に反映させるためには「『個別の項目ごとに提出すべき』という趣旨の訓示規定を置くべきだ」との意見を示し、一括方式よりも個別方式に力点を置くとしましたが、憲法の基本原則を変更するような全面改正をも一括投票とする危険性がなくなったわけではありません。
 第5は、憲法改正の成立要件です。@発案権は、国会および国民とし、内閣の発案権は認めない、A各議院の「総議員」は法定議員数とし、欠員は反対票と同じ扱いにする、B国民投票の賛成は、少なくとも総投票数の過半数、C投票書式は「可」とするものに「○」を付す方式とし、白票は反対票とする、D国民投票が有効に成立する投票率に関する規定を設けるなど、できるだけ厳格にしているかどうかが重要な論点となります。しかし、2004年12月与党合意は、これらをあいまいにするか、あるいは規定を設けず、賛成投票数が有効投票総数の2分の1を超えれば承認というきわめて低い規準です。
 以上のとおり、2004年12月与党合意に基づく国民投票法案は、基本的人権の尊重や主権在民という憲法の理念に反するものであり、現在、協議のなかで若干の修正方向が打ち出されていますが、基本的な問題点は変わっていません。自公与党と民主党の間の隔たりはありますが、小泉政権は多数議席をバックに与野党合意をもとにした法案の制定を強力にはかろうとしています。

平和フォーラムの考え方
 これに対して、平和フォーラムは、憲法前文・第9条、「基本的人権の本質」を定めた第10章「最高法規」などの改悪に反対するとともに、憲法理念の実現をめざすことを基本的な立場においています。
 いつでも都合よく憲法改悪ができるようにするための危険な国民投票法の制定に強く反対し、「@憲法前文・第9条を改悪しないこと。国会は憲法理念の実現にむけて努力すること」「A拙速に「憲法改正国民投票法」を制定しないこと」をもとめて全国的な緊急署名運動を進めているほか、さまざまな運動を進めていきますので、みなさまのご協力をお願いします。

在日米軍再編 政府間協議の現状と反対運動の展望
地域の力で日米軍事同盟はとめられる

3月合意を阻止・破綻した日米の政治日程
 米国は、「世界規模での国防態勢見直し」を進めています。その一環として日米同盟を強化するための政府間協議が、一昨年から行われてきました。05年10月29日にはワシントンで「日米安全保障協議員会」を開き、@日米共通の戦略目標、A戦争の際の役割分担、B在日米軍基地の再編で合意し、「日米同盟:未来のための変革と再編」を発表しました。この文書では06年3月までに、基地再編の具体的な方法や日程を定めるとしていたのです。
 ところが日米政府は、3月中に合意に至ることできませんでした。そのため4月5日からは、米国ワシントンDCで審議官級協議が開かれましたが、協議は2日目に中断、4月13日・14日に東京で再開することになりました。報道各社によれば、合意を妨げている要因は、@普天間基地のキャンプ・シュワブ沿岸部移転について自治体の合意が得られないこと、A米国が沖縄海兵隊のグァム移転費用の日本負担分について折り合いがつかないこと――のようです。

名護市長は合意したが
 この解説を書いている時点で、島袋吉和名護市長と額賀福四郎防衛庁長官が、基地の滑走路を「V字型」にすることで合意したとのニュースが流れました。しかし稲嶺恵一知事は当初予定の沖合案でなければ認めないという姿勢を崩していません。基地建設に必要な海面工事の許可権は知事が有しており、知事の同意が得られなければ、日米合意は「空約束」にしかなりません。
 また米国は沖縄海兵隊8,000人、軍人家族を合わせて15,000人をグァムに移転するとしています。その費用を100億ドル(1兆1,800億円)と試算し、75%(8,850億円)の負担を日本に求めています。日米安保条約には、日本が攻撃を受けた場合は米国が日本を支援すること、見返りとして日本の負担で日本に米軍基地を置くこと――を定めています。しかし米軍が国外へ移転する場合の費用負担などは、どこにも書かれていません。
 日本は78年以来「思いやり予算」として、本来米側が負担する基地従業員人件費や光熱費、施設建設費を払ってきました。その額は年2,400億円に上ります。法的根拠のない支出を続けたことが、要求すれば日本はカネを出すという、米国の高圧的な態度につながっているのです。この要求に日本政府が屈服するのかどうかが、大きな焦点になります。

声を上げる自治体
 今回の米軍基地再編で、対象となる米軍・自衛隊の基地は21ヵ所あり、12の都道県と41の市町村が関係しています。この中で、神奈川県や東京都の知事は、日米協議に一定の理解をしめしています。しかし、他の知事は、国から詳細説明がないことや、当該市町村の反対を理由に、再編に反対しています。
 基地のある市町村では、首長や自治会なども含めた反対運動が活発化しています。神奈川県では小川勇夫・相模原市長が「戦車に轢かれても反対」、星野勝司・座間市長が「ミサイルを撃ち込まれても反対」と力強く表明しました。沖縄県では3月5日に県民総決起集会が開かれて35,000人が参加、保守系の首長も出席しました。山口県岩国市では3月12日に住民投票が行われ、投票率58.68%で89%が反対票を投じました。鹿児島県鹿屋市では2月26日、市も協力して8,200人の集会が行われました。地域ぐるみの反対集会は、全国各地に広がっています。

平和団体による反対運動の牽引がカギに
 日本政府は自治体を説得するために、「米軍再編特別交付金」の創設を決定しました。政府の切り崩しから自治体を守るためにも、自治体への支援、自治体間の連携強化、自治体内で更に大きな反対運動の組織化を行わなければなりません。
 また地域ぐるみの反対運動が各地で起きているにもかかわらず、新聞やテレビは動きを取り上げません。そのため各地の声を直接、国会や政府に突きつける動きが重要になってきます。当該地域の代表が一同に集まり、政府や国会に直接抗議することも必要になってくるでしょう。
 こうした反対運動をつくる重要な位置に、私たち平和フォーラムがあります。民主・社民への働きかけ、国会内外の連携、自治体と平和運動の連携、地域の動きを全国化する活動などです。
 21世紀の米国の軍事戦略の中心となる日米同盟強化のための政治合意日程を、地域の反対運動が阻止しました。在日米軍再編に反対し、基地の強化ではなく、縮小・撤去を実現する闘いは、これからが正念場です。

辺野古沿岸への基地建設を許さない沖縄県民の闘い
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック

辺野古沖への基地建設を阻止した闘い
 命を守る会、ヘリ基地反対協は県内外の大きな支援によって昨年の9月にボ−リング調査を中止させ辺野古沖への基地建設を断念させました。
 ボ−リング調査を阻止した闘いは2004年4月以降の陸上での座り込み行動、海上での船、カヌ−を出しての身を挺しての行動、海上に設置された単管足場での座り込み、さらに近隣漁民の海上阻止行動への参加などと1年6ヵ月近く完全非暴力の闘いで展開されました。この勝利した闘いは、座り込み行動、海上阻止行動に参加した県内外の人々と、そして海上阻止行動支援カンパなどで現地を支えた県内外の人々の闘いの大きな成果です。

日米両政府が辺野古沿岸で合意
 昨年10月29日、日米両政府は日米安全保障協議委員会(2+2)で普天間基地の移設先として辺野古沿岸とすることで合意しました。
 キャンプシュワブの沿岸部を中心にして大浦湾と辺野古沖の浅瀬を埋立てて1,800メ−トルの滑走路、駐機場、さらに桟橋をももつもので破綻した辺野古沖案より強化されたものになっています。まさに飛行場と軍港が一体となった海兵隊の最新鋭の基地建設です。
 この案に対しては保守の稲嶺知事も現行の計画以外なら「県外移設」を求めるとして反対、同じく保守の島袋名護市長も反対しています。さらに県議会や多くの市町村議会でも反対の決議が相次いだり、名護市ではこれまで海上基地を受け入れてきた人々の中からも反対の声があがっています。

県民の怒りの声が広がる
 昨年の12月23日にヘリ基地反対協は辺野古沿岸案反対の海上パレ−ドを建設予定地の大浦湾で行い56隻の船で300名が参加しました。海上パレ−ドには大浦湾の地元の汀間(ていーま)漁協をはじめ近隣の宜野座、金武からも大勢の漁民が参加し基地建設により漁場が奪われることに対して怒りの声をあげました。
 また、本年の1月15日には市民団体による地元2紙への意見広告が行われ、約5,000人が参加して辺野古沿岸を撤回せよと新聞一面でアピ−ルし、県民の立ち上がりをよびかけました。さらに名護市でも影響をうける地元の久志、豊原、辺野古の3区と共に他の区でも行政委員会での反対決議が相次いだり、村の一部が飛行ル−トにあたる近隣の宜野座村で反対の村民大会の開催が決定するなど反対の声が地域ぐるみで広がりつつあります。

3月5日の県民大会が成功
 3月5日に「普天間基地の頭越し・沿岸案に反対する沖縄県民総決起大会」が開催され35,000人が参加しました。この集会は95年10月21日の85,000人結集の県民大会に次ぐ盛り上がりで、若者、家族連れや基地建設で影響を受ける北部の多くの地域からの人々の参加が目立ちました。
県知事や県政与党の不参加で超党派の大会にはなりませんでしたが県民の総意として沿岸案反対を日本政府に強く訴えました。
 いま、日本政府は沿岸案反対の島ぐるみの声を無視して滑走路の向きを少し変える微修正案を提示して、名護市長に圧力をかけ沿岸案の受け入れを迫っています。このような中でヘリ基地反対協、命を守る会は市長に対し政府に屈服することなく選挙の公約でもある沿岸案反対を貫くよう連日の要請行動を展開しています。 

違法伐採を許すな!
森林と環境を守るための対策急務
全林野 犬飼 米男
いま、「違法伐採」という問題が林業関係者だけでなく、環境団体などでも注目されています。違法伐採とは、一般的には、それぞれの国の法律に違反して伐採される行為をさしています。たとえば、正規の許可を得ていない場合や、伐採が禁止されている区域や樹種の伐採などです。

インドネシアでは半分が違法伐採
 とくに違法伐採が多いと見られる地域は、東南アジア(インドネシア、マレーシア等)、ロシア、アフリカ(カメルーン、コンゴ等)、ブラジルといわれています。
 これは、地球温暖化対策などで重要な役割を果たす森林の持続可能な機能を著しく阻害するもので、森林の減少・劣化、それに伴う水循環や土壌浸食、河川の汚染、生態系など環境への影響、住民への生活基盤に支障をきたすとともに、日本などの木材輸入国の林業経営にも影響を与える社会的な問題点です。
 日本が木材を多く輸入しているインドネシアでは、1999年の調査で約50%以上が違法伐採と分析されたため、インドネシア政府も国際的な協力を求めています。マレーシアでは、輸出の35%が違法材であるとされましたが、森林法の改正により大幅に減少しています。それでもなお、インドネシアから違法木材を輸入して再輸出していると指摘されています。
 ロシアでは、NGOの調査で20〜30%が違法伐採であるといわれていましたが、政府はこれを認めませんでした。しかし、2005年の国際的な会合でロシア政府も深刻な違法伐採の実態を認めて、森林法の改正、管理体制を強化することにしています。

ヨーロッパでは合法的な木材を優先活用
 輸入国の違法伐採の対策としては、イギリスでは、「木材調達指導指針」を策定し、政府が調達する木材については、合法性が確認された木材に限るとともに、持続可能な森林経営がなされている森林の木材を可能な限り活用するとしています。EU全体でも、欧州閣僚理事会において、木材生産国との政府間協定を締結した合法性証明書の添付を義務づけることや、そのための支援を行うとした規則案を採択しています。
 日本では、2000年のG8九州・沖縄サミット以来、「違法に伐採された木材は使用しない」という基本的な考え方に基づき、違法伐採問題に取り組んでいます。具体的には、インドネシアとの間での森林や伐採状況を把握するなどの対策協力や、「アジア森林パートナーシップ(AFP)」(2002年発足)を通じた、アジア地域全体での合法性基準の明確化や木材の生産履歴追跡システムを開発しています。さらには、「国際熱帯木材機関((ITTO)」という国際組織を通じた、違法な木材取引の把握への支援などを行っています。
 昨年のG8グレンイーグルズ・サミットでも取り上げられ、そこで承認された「行動計画」を踏まえ、日本政府も温暖化対策のひとつとして、@「グリーン購入法」(国等が環境負荷の少ない物品を調達する法律)により、合法性、持続可能性が証明された木材を調達すること。A生産履歴追跡システムを開発し、確認・監視システムの構築に取り組む。B2006年中にG8の各国専門家による議論を推進するとしています。

消費者・市民も意識の向上が必要
 違法伐採の影響をまともに受けている原生林は、アジア太平洋地域では65%がすでに失われ、このまま破壊的伐採が続けば、今後10年以内に原生林は消滅すると言われています。
 違法伐採は輸出を目的とした商業伐採が大きな要因です。世界有数の木材輸入国である日本は率先し、業界や企業の社会的責任として行動規範を構築し、違法伐採木材を流通・貿易から排除する対策を講じ、社会全体による監視ができるよう取り組む必要があります。また、持続可能な森林経営を推進するため、それを評価する森林認証制度におけるラベリング(産出された木材にマークを付けて流通)された木材を利用するなど、消費者・市民も意識の向上を図る必要があります。

主文:被告は、志賀原子力発電所2号原子炉を運転してはならない
志賀原発2号機営業運転差し止め訴訟原告団代表  堂下 健一

 3月24日午前10時過ぎ、金沢地裁井戸裁判長は、主文と判決要旨を読み上げました。私は原告・弁護団席で聞いていましたが、一瞬何を言ったか理解できませんでした。だが、傍聴席のざわめきと誰ともなく勝ったという声を聞き裁判に勝ったとわかりました。メモを取る手が震え字になりません。判決要旨も、採用されなかった論点を先に述べていましたので、その時は勝利の実感がわきませんでした。
 判決要旨の朗読が終わり、弁護団のみなさんと握手を交わしたとき、ようやく勝ったという実感がわきました。地裁の玄関で弁護士と2人で「勝訴」の旗を高々と掲げたとき、1号機訴訟から18年、ようやく私たちの原発を止めて欲しいという訴えが認められ、喜びもひとしおでした。
 1号機訴訟で98年9月、高裁金沢支部の判決で、「原発は負の遺産」とし、「原発の推進、廃止は人類が選択すべし」と指摘。また、泊原発訴訟では札幌地裁が「人類の未来を考えると原発中止という選択肢もある」と踏み込んだ判決を下しています。そして、今回営業運転開始後9日目に運転中止を言い渡した画期的な判決でした。
 この判決は、全国の皆さんに限りない勇気と自信をもたらしたことでしょう。
 ずばり勝訴の要因は耐震問題でした。昨年9月の結審後、地震をめぐって更に1回審理を入れるという異例の展開で裁判は締めくくられました。裁判長の度重なる催促にも関わらず、北陸電力はまともな反証ができないまま判決を迎え、結果は耐震問題で原発の安全性の論証をできなかったことで運転中止という判決が下されたのです。
 国の耐震指針はマグニチュード6.5となっていますが、現実に起きている地震(宮城沖地震、鳥取県西部沖地震など)は想定をはるかに超えています。この整合性が説明できていないこと。また、志賀原発近くに邑知潟断層帯があり、発生する地震の規模はマグニチュード7.6と国が発表しています。この新しい知見の前に古い耐震基準は突き崩されたのです。これまでの耐震基準は何だったのか、全国の原発に対して見直しを迫ることは必至です。また、迫るべきです。
 判決文は明快に、国が定めた耐震指針を否定し、地震で原発事故が起こり、原告らが被ばくする可能性があると指摘しています。
 だが、判決で原告の主張もかなり却下されています。「スリーマイル原発、チェルノブイリ原発で事故が生じたからといって志賀原発で事故が起きるとはいえない。ABWRの危険性に対する立証が不十分である。MOXについては、プルサーマルの実施が不確定なので具体的な危険があるとはいえない」などがあげられます。原告としては、今後の課題としなければならない点です。
 さて、本件訴訟は名古屋高裁金沢支部に舞台を移します。今後は国と全国の電力会社を相手に、耐震問題を争点に総力戦となろうかと思います。判決にもありましたが、地震の前には、多重防護など何の役にも立たない。そして、被害は全国各地に及ぶと明記されていました。悪夢が現実にならない前に全ての原発を止めようではありませんか。
 原告団は引き続き、全国の皆さんと連帯しながら高裁の法廷内外で闘っていきます。
 また、今回の判決でプルサーマルの申し入れが若干延期となりました。だが、北陸電力はあきらめたわけではありませんので、プルサーマルについてもあわせて闘っていきます。

稼働した「六ヶ所使用済み核燃料再処理工場」と反対運動の取り組み
青森県反核実行委員会 事務局長 井上 浩

 「止めよう再処理!全国実行委員会」(原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、グリーンピース・ジャパン、同青森県実行委員会)と「青森県反核実行委員会」(渡辺英彦実行委員長)は4月9日、第21回「4・9反核燃の日」全国集会を県内外からの1,580人の参加で、青森市・青い海公園で開きました。集会では「アクティブ試験は危険な実験操業だ」として、3月31日に日本原燃六ヶ所再処理工場で始まった同試験の即時中止を訴えました。
 主催団体を代表して挨拶に立った原水禁国民会議の福山真劫事務局長は、「3月31日の暴挙により、今年の4.9反核燃の日集会は、怒りと抗議で迎えることとなった。環境を破壊し続ける工場の稼働には絶対反対」などと訴えました。
 また激励に駆けつけた社民党の福島瑞穂党首は、「人の命を傷つける危険な再処理を、知恵と力の結集でストップさせましょう」と呼び掛けるとともに、「(志賀原発2号機を巡る運転差し止め訴訟で)金沢地裁判決が示したように国の耐震構造・指針はでたらめ、プルサーマルや再処理工場も止めるべき」と訴えました。
 さらに海外ゲストの韓国環境運動連合のイ・サン・フン政策課長が「六ヶ所再処理工場は朝鮮半島非核化運動の障害となる」として、試運転の即時中止を強調しました。つづいて、原子力資料情報室のフィリップ・ワイト国際担当は、「再処理工場稼働で起きている事態を世界に発信しているが、早速反応があった」と国際的にも今回のアクティブ試験開始が注目されていることを報告しました。
 この他に金沢地裁で運転差止め判決を勝ち取った能登原発差止め訴訟原告団の多名賀哲也事務局長や、玄海原発でのプルサーマル阻止闘争を闘う佐賀県平和運動センターの伊藤昇事務局長による現地報告を受けた後、集会アピールを採択し、川村数彦・県平和労組議長の団結三唱で集会は終了しました。集会後、参加者全員で新町通りなど青森市の繁華街をデモ行進し、最後に県庁前で抗議のシュプレヒコールをあげて解散しました。
 また、同日午前中には原水爆禁止日本国民会議の「反核燃の日全国交流集会」が青森市のアスパムで全国から300人の結集で行われ、原子力資料情報室の西尾漠共同代表が「再処理の世界的動向と日本」と題して講演しました。
 前日の8日には、「再処理・プルサーマルの問題点」「青森が抱える原子力問題」の2分科会に分かれて問題点の掘り下げ交流を行ったほか、7日にはアクティブ試験強行に抗議する申入れを、昨秋の東京行動以降に集めた60,938筆の署名をそえて、青森県庁及び日本原燃?に対して行うなど、多彩な取り組みを4月7〜9日の3日間で展開しました。
 さて、六ヶ所使用済み核燃料再処理工場での試運転の最終段階である「アクティブ試験」が2006年3月31日14時58分に開始されたことにより、使用済み核燃料のせん断・溶解が既に始まり、4月1日には希ガスのクリプトン85(β線とγ線を出す)の大量放出も始まりました。全量放出のクリプトン85は使用済み核燃料のせん断・溶解時に、ガス状で封じ込められていた使用済み核燃料棒から開放され、150mの主排気筒から放出されています。その他の放射性物質の太平洋への放出も4月中に始まろうとしています。
 アクティブ試験は危険な実験操業です。日常的に大量の放射能の放出が始まる上、臨界事故や爆発事故などの危険性が伴い、今後は放射能の漏えい事故や労働者の被ばく事故とも向き合わなければなりません。そこで私たちは今後の闘いとして、これまでの全国の仲間の原発監視行動に学び、再処理工場の運転状況監視を強めるとともに、下請け・孫受けの被曝労働の危険性を広く地元住民に訴え、さらにプルトニウムの大量生産に抗議を続けて、国際連帯の輪も広げていこうと考えています。

原爆症認定裁判の判決迫る      
原爆症集団訴訟を支援する広島県民会議世話人  宮崎 安男

 原子爆弾がもたらした被害の全体像を、正確に国に認めさせようとして始まった「原爆症認定集団訴訟」が、地方裁判所段階で山場を迎えようとしています。
 2003年提訴を第一陣とする集団訴訟は、2006年4月現在、原告169人で、全国17都道府県、12地方裁判所において公判がすすめられ、05年12月大阪、06年2月広島で結審し、この5〜8月にそれの判決が予想されています。つづいて、千葉・東京・熊本などの結審も予定され、これらの裁判をさらに有利に進めるため、3月14日から第2次の集団申請・集団訴訟の運動も始まりました。

集団訴訟とは何か?
 原爆被害の最大の特徴は、人類史上例を見ない残虐な原爆死とともに、生き残った被爆者も生涯をガンをはじめとするさまざまな放射線後障害で苦しめられる人間破壊にあり、この「原爆症」が一般戦災者と異なる特徴と言えます。
 しかし、国は被爆者に対し健康管理上の医療給付はするが、その疾病が原爆に起因することを認めず、原爆被害を「小さく、軽く、狭く」押さえようとしています。これからの核政策を容易に進めるために、被爆者援護法では、「疾病や傷害が原爆に起因し、現に医療を受けている人々」に対し医療特別手当(月額13万円余)その治療者に特別手当(5万円余)を支給する認定被爆者制度を設けていますが、その受給者は全被爆者の約1.2%、2,000人余にすぎず、被爆者がどんな重篤な病にあっても、原爆とは関係ないと却下されてきました。
 この却下処分を不服とする裁判で、この数年、原告勝利の判決が続いていますが、国は提訴者一人のみに適用するだけで、認定基準そのものは変えませんでした。
 この現状を打開し、命あるなかで、この苦しみは原爆の故だと、国に認めさせたいとの思いを結実し、国の政策変更を求めるために日本被団協の提唱で始まった裁判が集団訴訟です。

裁判の争点は何か?
 援護法第10条では「原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、または疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。……」そのためには審議会の議を経て厚生大臣の認定を必要とするとされています。今日まで認定基準は極めて限定して運用され、被爆者の実態とはあまりにもかけ離れていました。裁判はこの認定審議の在り方と、使われる基準の争いであり、原爆被害全体の争いが核兵器廃絶へ向けた争いです。
 国は基準に「原因確率」なるものを用い、機械的に申請内容にあてはめ、審議は月に1回、1時間に約20件を処理、1件3分で、「専門的知見」によって却下するという通知が申請者に届けられるだけでした。この原因確率は、近距離の直接放射線量のみを用い、被爆者の疾病の現状や、内部被爆、誘導被爆をほとんど無視するもので、最高裁でもその機械的運用を戒められた代物です。

裁判は被爆者だけの問題ではない
 この裁判をたたかうのは、原告だけ被爆者だけの問題ではありません。最近の政府の国民保護計画によれば、「核兵器による放射能被害では、ハンカチで口を覆い、風上に逃げろ」「核兵器攻撃を受けても充分守れることを外国に知らせておく必要がある」「広島・長崎の原爆のときでも爆心地周辺でも生き残った人は沢山おった」などと、政府高官が発言を繰り返しています。熱線・爆風・放射能の複合的被害の原爆の全体像は余りにも隠ぺいされています。核兵器攻撃から安全などの道はありません。安全なのは唯一核兵器そのものを無くすことです。
 いま、愛国心で国家の政策を実行する人を賛美し、一方、戦争の被害を受ける国民は(原爆さえも)犠牲もやむを得ないという国策がよみがえろうとしています。原爆被害の全体像を明らかにする原爆症認定裁判の意義はますます大きいものがあります。
 原告のうちすでに22人が故人となられた、文字どおり命を懸けた裁判です。

第1回世界平和フォーラムが開催/カナダ・バンクーバー
求められる地方自治体 市民のイニシアチブ

2006年6月第1回世界平和フォーラム
 2006年6月23日〜28日、カナダ・バンクーバー市で第1回世界平和フォーラムが開催されます。NPT再検討会議準備会合が休会である本年、初の試みとして「世界平和フォーラム」が開催されるのは意義深いことです。世界平和フォーラムは、これまで過去多くの市民が持続可能な社会を求め結集した「世界社会フォーラム」をモデルとし、その「平和バージョン」として準備されてきました。
 2005年核不拡散防止条約(NPT)再検討会議の結果に前進的な実りはありませんでしたが、行き詰まった状況に「風穴」を開けるため、今こそ地方自治体・市民による継続的かつ地道な取り組みが強く求められます。
 核廃絶を求める市民団体・NGOによる国際ネットワーク「アボリション(廃絶)2000」は、次回2010年のNPT再検討会議に向けて、いかに「成功の機会を最大化」するかが検討されています。
 広島・長崎市長が提唱する世界平和市長会議は状況を打開するため2020年までに核兵器を廃絶させる条約の締結を求める「2020ビジョン」を推進しており、世界平和フォーラムの場でその取り組みが検討されます(世界平和市長会議には2006年3月現在、世界115ヵ国・地域1,306都市が加盟)(説明@参照)。
 核廃絶に取組む市民団体が残念ながらあまり多いとは言えない世界的な状況の中で、2006年世界平和フォーラム、そして2010年NPT再検討会議に向けた核廃絶運動の盛り上げと地道な前進は、私たち各々にかかっているのです。

東北アジアの平和に向けて〜米軍再編と横須賀原子力空母の課題〜
 原水禁・平和フォーラムは、この第1回世界平和フォーラムの場を利用して、韓国の平和団体〈2005年「10.21国際反戦反基地集会」の国際ゲストとして来日した平和と統一を開く人々(SPARK)〉とともに、重要焦点課題である米軍再編・横須賀原子力空母配備の問題に関わるワークショップを行います(説明A参照)。
 東北アジアの平和・軍縮に向けた海外の国々への、日本政府・自治体・市民からのイニシアティブならびに国際連携は未だ十分ではありません。
 日本が抱える米軍再編、原子力空母配備の問題や9条改憲等様々な課題について、日本国内の苦境を打破する機会として、国際的な連携強化と国際的な平和・非軍事の流れを強めていくことが必須です。
説明@:2020ビジョンと木のブロック・キャンペーンの国際展開 広島・長崎両市長が世界各国の都市に呼びかけを行ってきた「平和市長会議」は、平和へのメッセージを皆さんが書いた木のブロック「国際法を守る壁」プロジェクトの趣旨を「2020ビジョン」で支持し、取り組みを呼びかけています。2005年8月9日、長崎の爆心地(原爆中心碑)の周囲に積み上げられた海外分約7万個と国内1万5千個の木のブロックの一部が、再度、カナダ・バンクーバーの第1回世界平和フォーラムの場で展示されます。また2006年7月にはハーグで開催される国際司法裁判所(ICJ)による核兵器の違法性に関する勧告的意見10周年で展示予定です。

説明A:横須賀原子力空母配備の反対要請 核廃絶の問題とも絡む横須賀原子力空母の配備(2008年を予定)について、「原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会」・「原子力空母の横須賀母港化を許さない神奈川県実行委員会」・「原子力空母横須賀母港問題を考える市民の会」は、3月末に神奈川県と横須賀市に47万筆の署名を提出しました。同時に、(1)原子力空母でない選択肢の可能性は十分ある点(現在米国議会は、2006年会計年度国防認可法によって、空母12隻体制の維持と通常型空母ケネディーの艦命延長工事を海軍に命じています)、(2)原子力空母はきわめて危険である点(米海軍の原子炉は、国内の原子炉と異なり、日本国、自治体による安全審査体制や情報公開もありません)、(3)港湾管理権を市長は行使するべきである点等についてさらに要請を強めていく必要があります。

核問題についてのいくつかの考察(4)
運動の側が核兵器を知る必要
物質的条件がすべて整った日本
核武装へのフリーハンドを考え続ける外務省
 1994年の国連総会は国際司法裁判所に「核兵器による威嚇と使用は国際法に違反するか」の判断を求める決議を賛成多数で可決し、これを受けて国際司法裁は、96年7月8日に「核兵器による威嚇または使用は、武力紛争に適用される国際法の諸原則、とくに国際人道法の原則と諸規則に一般的に違反する」(E項)「厳格で効果的な国際管理のもとであらゆる側面での核軍縮をめざす交渉に誠意をもってあたり、協定を妥結する義務がある」(F項)との判断を示しました(注)。
 国際司法裁は1年半にわたる審議の過程で、国連加盟国に意見を求め、またハーグ裁判所大法廷での陳述の機会をつくりました。日本政府はこの意見陳述で、当初は「核兵器使用は国際法に違反しない」としていましたが、自民党を含む各党の批判を受け、その部分を削除したものの、最後まで「国際法に違反する」とは述べませんでした。
 この立場は、68年に発足した非公式研究会「外交政策委員会」の『核兵器については、NPTに参加すると否とにかかわらず、当面核兵器は保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに、これに対する掣肘を受けないよう配慮する』とした内容を引き継いだものといえます。しかし、その立場は広島・長崎の悲劇を教訓化せず、日本国民の安全を考えていない立場といえます。

核に関する無知が問題を厄介にしている
 一方、防衛庁などの日本核武装研究は、核兵器使用の影響をよく理解していると考えられます。81年7月の防衛庁防衛研修所の水野、内藤両名による「我が国防政策(戦略)のあり方」中間報告の一部、95年5月の防衛庁の「大量破壊兵器の拡散問題について」、03年9月の防衛研究所・小川伸一さんによる「再燃している日本の核武装をめぐる論議について」のそれぞれは、日本独自の核武装を否定する立場です。
 紙数の制限から、ここでは防衛庁の「大量破壊兵器の拡散問題について」の中の、「核は意義ある選択か」(24頁以降)だけを簡略に紹介します。この研究には03年の「再燃している日本の核武装をめぐる論議について」を発表した小川さんも参加していますので、現在の防衛庁の考え方を示しているともいえるでしょう。
 この「核は意義ある選択か」のなかで、国家威信のための核武装必要論や通常兵器の延長上に核兵器を位置づけるなど様々な考えがある背景には、『冷戦期間中至高の兵器として厳重な管理下に置かれ、その性能や使用の形態等についての情報が統制さていたために「神格化」したという事情もあろう』と述べています。
 そして『国土狭隘、人口周密、都市集中など極めて脆弱な地理的特性を有する我が国が他国と恐怖を均衡させることが可能か』『通常戦力の劣勢補完として核武装』は可能か?と問いかけ、いずれも否定しています。
 さらに日本をとりまく核の脅威として、中国、ロシア、北朝鮮を対象とした分析を行い、いずれも日本独自の核武装を否定しています。
 最悪のケースとして、日米同盟の破綻、核不拡散レジームの崩壊、各国が核武装へ傾斜――という三つの条件をあげ、『この場合であっても、国際社会の安定に依存する通商国家が、自国の核兵器により自らの生存を確保し、その権益を擁護することにどれほどの意味があるかは疑問と言わざるを得ない。……日本の核に対する地政学上の脆弱性が克服され、相手国と被害の交換をしても問題にならないまでに窮乏化が進んでいる、というような条件がみたされれば核のオプションもあり得ようが、それは条件の自己目的化にすぎず、検討に値しない』と述べ、最後に『いずれにせよ、核に関する無知が、核問題を厄介なものにしていることを認識することにより、核に対する政策を発展させることが期待できる』と結んでいます。

米国政府は日本の核武装に反対しない?
 筆者には防衛庁の安全保障論が、米国の核の傘を前提にしていることなど、支持できない部分が多々あるのですが、それでも国家理念の存在しない外務省の論理とは対照的と考えます。しかし無目的なナショナリズムが蔓延するなか、政治的に核武装へ振れていく可能性は大きくなっていると考えます。核武装への物質的条件は十分に整っています。また日本の核武装に米国が反対するだろうという甘い考えも通用しません。
 05年2月に離任したベーカー前駐日大使は、04年7月に米国人記者団との懇談で「もし日本が核兵器開発計画を進めても、米国からは反対の激しい反対は起きないと思う」と漏らしたと伝えられています。
 注:E項には、国家の存亡が危機に瀕するような極限状況では判断が下せない、との但し書きが付されました。 

小泉自公政権の暴走を止めよう
野党に奮闘してほしい
 民主党は、4月7日、代表・小沢一郎、代表代行・菅直人、幹事長・鳩山由紀夫の新しい体制をようやく選出・決定し、再出発しました。昨年9月の前原体制の発足以降、この6ヶ月間迷走し続け、野党としての役割を果たさないがために、与党に対抗する勢力全体を弱体化させ、結果として、私たち平和団体も、極めて厳しい闘いを強いられ、米軍再編成や核エネルギー政策等において、全国的に反対の運動が広がっていますが、小泉自公政権の暴走をとどめることができていません。後退局面をなんとしても、早急に立て直さなければなりません。米軍再編成を止める闘いは、まだ間に合います。5月には、沖縄で平和行進もあります。
 民主党は、野党として、市民や勤労者の味方として、平和と民主主義を創り出す政党として、今度こそ奮闘してほしい。最後のチャンスかも知れない。社民党やその他野党と連携して、小泉自公政権の「戦争のできる国づくり政策・市場万能主義政策」と対決してほしい。民主党が、第2自民党や保守政党になることなど誰も期待してはいない。

六ヶ所村の「再処理工場」を今すぐ止めよう
 1985年4月9日、青森県議会全員協議会が核燃サイクル施設受け入れを決定して以来、今年で21年目の4月9日を迎えました。私たち青森現地の仲間は、20年を超えて、核燃料サイクル路線・再処理工場稼働反対し、闘い続けてきました。心から敬意を表したいと思います。そして次から次に事故が続くと同時に、その政策の矛盾、非合理性、犯罪性が明らかになってきました。
 また昨年のNPT再検討会議を契機に、国際的な関心も深まり、六ヶ所再処理工場の稼動は、核拡散につながるとして、USC(憂慮する科学者同盟)を中心に、ノーベル賞受賞者を含むアメリカの著名な科学者たちも、「再処理工場稼動反対」の署名を集め、声明を発表しました。韓国でも、最大の環境保護団体の「環境運動連合」が韓国内で、反対運動を強めています。また国内的にも、青森現地の原水禁を中心にしながら、通算で162万筆の署名を集めました。
 しかし小泉政権は、この間、再処理工場稼動に向け、プルトニウム利用政策を強引に進めだしました。2005年10月、「核燃サイクル・プルトニウム利用政策推進」の原子力政策大綱を決定、2006年1月、再処理工場稼働の前提である「プルトニウム利用計画」の電気事業者連合と各電力会社からの発表、3月、佐賀県知事の玄海原発プルサーマル計画の事前了解、そして3月31日、日本原燃による「再処理工場稼動」とも言える「アクティブ試験」の実施です。
 私たちは、絶対に許すわけにはいきません。今年も4月9日、2,000名の仲間が青森に結集して、青森県庁を抗議の怒りで包囲しました。青森現地では、一日も早く、アクティブ試験をとめるため「監視活動」を続けています。全国からも、日本原燃に、政府に抗議の意思を届け続けましょう。
 平和フォーラム、原水禁も4月20日の総会を経て新年度も全力で頑張ります。