インタビュー・シリーズVol.10
日本の運動には創造力と想像力が必要
グリーンピース・ジャパン 星川 淳事務局長に聞く

【プロフィール】
1952年東京生まれ。グリーンピース・ジャパン事務局長、作家・翻訳家。インド、アメリカ滞在後、1982年より屋久島に定住。著訳書のテーマは、精神世界、環境思想、持続可能な社会、先住民文化、平和と多岐にわたる。著書に『日本はなぜ世界一クジラを殺すのか』(幻冬舎新書)、『魂の民主主義』(築地書館)、『屋久島水讃歌』(南日本新聞社)、『地球生活』(平凡社ライブラリー)、『環太平洋インナーネット紀行』(NTT出版)、共著に坂本龍一監修『非戦』(幻冬舎)、訳書にR・ライト『暴走する文明』(NHK出版)、B・ジョハン セン他『アメリカ建国とイロコイ民主制』(みすず書房)、P・アンダーウッド『一万年の旅路』(翔泳社)、J・ラヴロック『ガイアの時代』(工作舎)ほか多数。TUP(平和をめざす翻訳者たち)監修『世界は変えられる』(七つ森書館)に対し、日本ジャーナリスト会議より市民メディア賞受賞(04年)。
関連リンク:http://www.greenpeace.or.jp/

――まず初めに、星川さんご自身はどのようなきっかけで活動に参加するようになりましたか。
 高校時代には全共闘運動があり、60〜70年代は世界的に社会が揺れ動いた時代で、その波を受けて思春期を送りました。冷戦時代は子どもでしたが、米ソ間で高まる緊張感や核戦争の危険性がリアルな脅威としてありました。核戦争で人類や世界が滅びるような時代の中で、言わば滅びに向かう文明を感じていました。80年代の世界的な反核運動の高まりもまた、先進国の人々の間にあった日常的な核戦争の脅威が背景にあったのでしょう。私自身、このような核戦争に対する脅威から、核兵器や原子力、そしてその他の生命や自然を危うくする環境問題を何とかしたいと思うようになり、持続可能な社会、文化や文明作りを目指して世界各地で暮らしたあと、1982年に鹿児島県屋久島へ移住しました。

──屋久島ではどのような暮らしを?
 持続可能な社会への自分なりの実践・実験の場として30歳で移り住み、最初の5年間は自給的な有機農業やエネルギーなど、地球や自然にできるだけ負荷のかからない暮らしを整えることに集中しましたが、86年にチェルノブイリの原発事故が起こります。この時、どんなに持続可能な暮らしをしても、世界のどこかで原子力事故が起きれば元も子もないことに気づいたのです。

――どういった経過でグリーンピース・ジャパン事務局長に就任されましたか。
 グリーンピースとは、組織ができて間もない70年代の頃から縁があり、長く支援者の一人として関わってきました。2001年の同時多発テロ事件以来、平和というテーマで執筆にとどまらず情報を発信しましたが、2005年9月の衆院総選挙前に日本社会が放っておけないくらいに変質してしまったことを痛感し、国内外の政策決定に近い場所にしばらく身を置いてみたいと思うようになりました。そんな時、グリーンピース・ジャパンが事務局長を募集していることを知り、応募するに至りました。就任から1年2ヵ月になります。

――グリーンピースという組織について、また国内外での主要な活動はどうなっているのでしょうか。
 グリーンピースの原点は、米国がアリューシャン列島で行っていた地下核実験に抗議するため、1971年にカナダの市民が船を出した直接行動です。団体の大きな柱として、当初から核問題がありました。最初は「反核」が最大の活動のテーマで、その後70年代終わりから80年代にかけて捕鯨反対が加わり、同時に仏や旧ソ連、中国の核実験などに対する抗議活動を続けていました。「反核」、「反捕鯨」という二つの大きな柱となる活動に加え、現在は、乱獲漁業や海の汚染など「海洋生態系問題」、そして原生林保護など「森林問題」、新しい活動としては遺伝子組み換え食品・農作物の問題というように、徐々に活動の分野が広がっています。

――グリーンピースは何ヵ国で活動していますか?
 支部が置かれている国は39ヵ国です。ただし、例えばグリーンピース東南アジアはタイに支部があるのですが、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ミャンマーなど、複数の国にまたがって活動しています。小さな支所のような事務所もあり、活動はもっと多くの国々で展開しています。設立後しばらくはカナダや北米で支持を広げ、それから英国に移って、現在の国際本部はオランダにあります。現状では290万人いる会員数の大半が欧州ですが、欧米中心ではいけないという意識が早くからあったため、アジアや太平洋地域、中南米などへ積極的に活動を広げてきました。グリーンピース地中海のように、トルコやイスラエルからレバノン、北アフリカまで様々な国の人々が一緒に活動している支部もあります。

――労働団体の国際組織は大きなところもありますが、平和・市民団体でこれだけ大きな規模は珍しいと思いますが、今年の主要な取り組みは?
 以前は各支部が個々で活動することが多かったようですが、最近は各支部間の国際的な連携を強めようと努力しています。問題が1つの国で起きた時、その国だけでは解決しにくい場合も少なくありません。そこで世界各国から働きかけ、経験のある活動家が支援に入ることが効果を発揮することもあります。今年の主要な取り組みとしては、エネルギーや気候変動、地球温暖化の問題があります。次が海洋生態系、そして森林問題です。同時に、新たにアフリカへ活動を拡げようという取り組みも提案されています。平和・軍縮の活動は90年代から少し休止状態だったのですが、今年から改めて取り組みが始まりました。遺伝子組み換えの問題については、グリーンピース・ジャパンは昨年から始めました。欧州やアジアでは既にかなりの成果を上げています。今後は遺伝子組み換え食品・農作物の問題から、持続的な農業の育成という枠組みへ発展させることも決まっています。

――グリーンピース・ジャパンは、日本でどのような課題に取り組んでいますか。
 1989年に発足して18年目になります。東京の事務所に正職員が現在14名おり、会員数は約6,000名です。私達の活動は会員の皆さんの寄付に支えられていますが、欧州に比べ日本はまだとても小規模です。反捕鯨のイメージが強いかと思いますが、この問題は世代によってずいぶん認識が違います。日本の“調査捕鯨”は、科学の名目で、国際社会が商業捕鯨の永久禁止を決めた南極海サンクチュアリ(鯨類保護区)に世界で一国だけ乗り込み、商業捕鯨時代とまったく変わらない船団方式の捕鯨を行って、絶滅危惧種を含む年間900頭ものクジラを捕殺する国営偽装といえるものだからです。その暴走が、日本の近海漁業全体の復興を考えたり、先住民による「生存捕鯨」(国際捕鯨委員会もグリーンピースも承認)のように、本来の伝統文化と世界からも認められる捕鯨が国内で成立しうるかどうかの議論も妨げています。
 エネルギー関連では、原子力や核燃料サイクル、核兵器まで含めた核問題と、気候変動の問題があります。そして、遺伝子組み換え食品の問題。食に敏感な日本人には理解されやすい問題であり、日本で遺伝子組み換え食品がストップできれば世界的に良い影響を与えられるので、そこへ貢献したいと考えています。平和・軍縮の問題では憲法9条ですが、単に守るというだけでなく、どのようにして9条を活かすかを若い人へ問いかけ、一緒に取り組んでいきます。

――安倍政権でも、国会で「戦後レジームからの脱却」が語られ、戦後の平和・民主主義が変質しつつある中で、憲法改悪、国民投票法案、そして共謀罪などの問題があるかと思いますが、このような状況はどうお考えでしょうか。
 戦争体験、特に直接の体験が薄れていく中で、安倍政権が代表する戦前復古の動きがあると思います。共謀罪はその兆しでしょう。民主的な人々の連帯や意見交換などを根っこから崩す、戦争のできる国作りへの法案と感じて、共謀罪反対の運動に加わりました。もう一つは、市場原理主義やグローバリゼーションが跋扈する資本主義の独り勝ち状態から格差拡大や環境汚染などの問題が生まれ、放置されることによって危機的な状態にまでふくらんでいます。「グリーン(環境)」と、「ピース(平和)」はどちらも欠けては一方だけを解決することができないという原点に立って提言をし、活動していくことが大切です。

――グリーンピースの活動は、労働運動や反戦運動に関わってきた人にとってものすごく新鮮ですね。
 平和フォーラムも50年以上憲法問題に取り組んでいますが、条文は守っても実態は違っています。また、米軍再編によって集団的自衛権が実質的に変わるわけです。このような状況への危機意識もあり、70年代から大きく世界へ広がったグリーンピースのような新しい運動作りへの期待もあります。ですので、お互い取り組んでいる課題や活動で協力し、一層幅広い連帯と広い運動作りができるのではないかと感じます。
 平和フォーラム・原水禁の皆さんの、核兵器や戦争の被害などの現実を原点とした運動の積み重ねに敬意を表します。時代に合った運動を広げるには、日本社会全体、そして日本の運動にクリエイティビティ(創造力)とイマジネーション(想像力)が必要だと思います。「平和」は単に在るものでなく、努力や葛藤の中で創出し、「平和」や「核のない世界」を作る立場に立ち続けることが大切です。
 運動の課題としては、例えば9条などですが、守るというアプローチばかりでなく、過ちの分析と繰り返さないための方策がもっと必要です。人間の持っている良い活力を、どうすれば最大に汲み上げられるかですね。ぜひこれからも、若い世代や団塊の世代を含め、世代や社会的な枠を超えた運動の中で協力していきましょう。

〈インタビュ─を終えて〉
 星川さんとは以前に何度か短い言葉を交わしたことがありましたが、時間をとっての意見交換は今回が初めてです。対面して、話していると国際的に拡大するグリーンピース運動を背景として、「やさしさと決意」、何よりも運動に対する「信頼」が伝わってきます。「過ちは繰り返しませぬ」と広島の慰霊碑に書かれています。星川さんは語ります。「今の時代、日本の自公政権は過ちを犯し続けている。憲法まで改悪しようとしている。何とかしなければ」と。国の政策決定が行われる場所の近くに自分をおこうと決意し、グリーンピースの事務局長を引き受け、屋久島から東京へ出てきた。世界で290万人を超える会員、国内でも6,000人を超える会員。星川さんに期待がまた集まる。
〈福山真劫〉


被爆62年“核廃絶の壁”木のブロック・キャンペーン
─核廃絶の想いを形に─

 2005年8月9日、長崎の爆心地(原爆中心碑)の周囲に、平和へのメッセージを全国の皆さんが書いた木のブロックを積み上げました。これをスタートに、昨年8月9日にも全国から集まった1万5千個を積み上げました。
 この木のブロック・キャンペーンは2003年2月、イラク戦争勃発前夜に、ドイツの若者たちが「国際法を守る壁」プロジェクトのピースアクションとしてスタートさせ、広島・長崎市長が行う平和市長会議による核廃絶に向けた「2020ビジョン」でも支持され、取り組みが呼びかけられています。
 私たちは日本国内で“核廃絶の壁”木のブロック・キャンペーンとして広く参加を呼びかけています。ぜひ、ご家族やお知り合いなど、身近な方にメッセージを書いていただいて、平和・核廃絶への想いを広めましょう!

◎あなたも参加しませんか
 木のブロック(横8cm 縦4cm 幅2cm)を1個150円(送料別)でお分けします。これに思い思いのメッセージを書いていただき、長崎にお寄せ下さい。それを今年8月に、長崎の爆心地の周囲に木のブロックとして積み上げます。
 お申し込みの際には注文個数と送付先(団体名、住所、電話、FAX)を明記して、ご注文下さい。
「核廃絶の壁」木のブロック・キャンペーン実行委員会 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館1F原水禁気付(担当:石出)TEL:03-5289-8224 FAX:03-5289-8223

「改憲手続き法案」(いわゆる国民投票法案)の成立強行をSTOPしよう

 本年5月3日で憲法は施行60年を迎えます。歴史的にも意義があり、そして戦争絶えない今日の世界のなかで日本の平和憲法を高く評価する声は世界に広がっています。2000年のハーグ世界平和会議では、世界各国が憲法第9条を採用するアピールがされましたが、最近来日したモラレス・ボリビア大統領も、憲法改正で戦争放棄条項を加えることを表明しました。
 ところが、集団的自衛権の行使を現憲法の下でも強行するとともに、5年以内の改憲を打ち出して誕生した安倍首相は、今年の年頭のあいさつで憲法施行60年にあたり「新しい時代にふさわしい憲法を、今こそ私たちの手で書き上げていくべきだ」と「憲法改正」の必要性を強調。その第一歩として第166回通常国会での施行60年の憲法記念日までに、「改憲手続き法」(いわゆる国民投票法案)成立の考えを示し、7月の参院選で改憲問題を争点とするとしました。
 米国のブッシュ政権の戦争政策に追従する小泉前政権、それを継承した安倍政権によって、「戦争のできる国づくり」がすすめられ、イラク戦争への参加など憲法違反が常態化しています。自民党はすでに2004年の結党50年時に、憲法9条を変えて「自衛軍」を保持し、「集団的自衛権」をも行使できるようにする「憲法改正」草案を明らかにしています。自民党の憲法調査会はさらに2次草案で、「愛国心」を盛り込み、「公益」と「公共の秩序」を強調した人権の制限、靖国参拝を正当化する政教分離原則の変更など、憲法の基本理念を否定する内容を検討するとしています。

憲法記念日までに成立させる?
 国会では憲法調査会報告(2005年4月)を受ける形で、衆議院に憲法調査特別委員会が設置され、2006年の通常国会に、与党から「日本国憲法の改正手続に関する法律案」、民主党から「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」をそれぞれ提出されています(一般に「国民投票法案」と呼ばれるが、与党案は「改憲手続き法」が正確)。衆議院特別委員会には「日本国憲法の改正手続きに関する法律案等審査小委員会」が設置され、審議が加速され、現在の通常国会では参議院にも憲法調査特別委員会が設置されました。
 国のあり方の基本法である日本国憲法をどのようなものにするかに関わるきわめて重要な法律は、どの法にもまして、憲法の理念に立脚し、基本的人権の尊重や主権在民の原則に沿うものでなければなりません。また、議論も慎重かつ時間をかけて徹底的に行うことが必要です。
 しかも、とくに与党の改憲手続き法案には、憲法調査会に代わる常設の憲法審査会の国会への設置をただちに行うなど多くの不透明な問題点をかかえています。また、@報道や運動に表現の自由、投票者への情報提供や議論の場の保障、A公民権停止者や未成年者を含む投票権の保障、B憲法改正の発議から投票までの十分な期間、C国政の重要問題に関する国民投票制度とすること、D投票の方式について個別改正条項ごとの投票制とすること、E有効に成立する投票率の規定や記述方式などの厳格な成立要件、F「国民による発案権」の保障と、憲法改正そのものの是非を問う国民投票、G憲法改正案の修正動議要件、Hこの法案の是非をめぐる国民的議論を保障など、多くの点について問題があるとともに、ほとんど市民のなかで議論されていません。
 この間、与党と民主党の間の実務者協議による合意もすすめられましたが、安倍首相や中川自民党幹事長などは「憲法記念日までに成立させる」とし、民主党が協議に応じなくても単独採決の構えも示しました。この「強硬姿勢」に対して、民主党は安倍首相のもとでの成立を否定するなど全野党が対決姿勢を強めていることはもとより、与党の公明党や自民党内にも反発が広がっています。また、米国議会での従軍慰安婦問題討議への姿勢や6ヵ国協議での外交姿勢などもあわせて、国際的にも孤立したものです。すでに「憲法記念日までの成立」発言は修正しはじめているように、私たちのとりくみ次第で法案の成立を十分に阻止できます。まさに、がんばりどきです。

イラク─止まらない内戦─
フリージャーナリスト 志葉 玲

 「今のイラクは地獄のようです。いや、地獄よりも酷い・・・」。友人でバグダッド在住のイラク人ジャーナリスト、イサム・ラシードさんはそう嘆く。従来の米軍の掃討作戦に加え、昨年2月のアスカリ聖廟爆破事件以来、イラクは血で血を洗う内戦状態に陥っています。イスラム・シーア派とスンニ派の抗争が激化し、毎日100人以上が命を奪われているのです。「あちこちに殺された人々の遺体が放置され、それを野良犬どもが食いあさっています。私の息子は民兵達が罪の無い人々を虐殺するのを見てしまいました。しかも、彼の通う小学校の前で」(ラシードさん)。
 バドル団やマハディ軍といったシーア派民兵組織のメンバーらは、スンニ派住民を次々に殺害し、連日のようにシーア派地区でもスンニ派武装勢力によるものとされる爆破テロが起きています。暴力の連鎖は正に歯止めがかからない状態です。

警察や治安部隊による「スンニ派狩り」
 イラク政府のマリキ首相や、ハリルザード駐イラク米国大使は「国民融和」を訴えていますが、そもそもシーア・スンニ両派の抗争がここまで激化したのには、米国及びイラク両政権に大きな責任があります。イラク戦争以前は、少なくとも一般市民においては、スンニ、シーア両派の信徒達は平和的に共存し、互いに結婚することさえも珍しくありませんでした。ところが、一昨年4月末、有力シーア派政党「イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)」幹部のバヤーン・ジャブルが内務大臣に就任したことで、事態は一気に悪化しました。
 元内務省特殊部隊の指揮官のムンタザル・アル=サマライさんは私のインタビューに対し、こう証言しました。「ジャブル内相が就任後最初にしたことは、内務省からスンニ派を追放することでした。その後、警察や治安部隊による『スンニ派狩り』が始まったのです」。
 SCIRIのメンバーは、サダム時代に苛烈な迫害を受け、シーア派国家である隣国イランに亡命。そこで結成されたのが、「バドル団」でした。彼らはジャブル内相のもと、治安機関を牛耳り、「サダム支持層」として、スンニ派の一般市民や宗教指導者達を次々捕らえ、凄まじい拷問を加えたのでした。電気ショックやドリル、酸などを使い苦しめに苦しめた挙句、殺害していきました。

「援助」の名で内戦に加担する日本

 バドル団、そして今や最凶最大の民兵組織となったマハディ軍は、隣国イランの軍事的・経済的支援を受けているとされます。そして、イランとのパイプ役となったのが、イラク政府でした。ムンタザルさんは「(移行政権の)ジャファリ元首相は、公然とイランからの諜報部員や民兵を受け入れていました。証拠として、彼が民兵の入国を許可しサインした書類を私は持っている」と話します。マリキ首相も、有力シーア派指導者・ムクタダ・サドル師との関係が深いとされ、サドル師派の民兵組織であるマハディ軍を抑えることは、事実、難しいとみられています。
 強硬な反米勢力でもあるマハディ軍に対し、米軍は先月、大規模な掃討作戦を行いましたが、マハディ軍の大部分は事前に避難しており「空振り」でした。アラブ紙アルハヤトなどは、マリキ首相側から、サドル師側へと事前に情報が漏れていたと報じました。
 また、米軍も本当に民兵組織の凶行を止める気があるのか、疑わしい。例えば、昨年11〜12月に多発した、民兵組織によるものとされる大量誘拐事件では、目撃者や地元ジャーナリストの間では「バグダッド中に米軍の検問があるのに、なぜ、民兵達は自由に移動できるのか?」という疑問の声があがっています。
 日本の外務省は対イラク無償支援として、「警察車両」「防弾車両」等の供与、「ムサンナ州での警察訓練」など7,800万ドルを拠出しています。だが、イラク内務省下の治安部隊こそ内戦の大きな要因の一つです。こうした組織に日本の公的資金を投じることの是非が、なぜもっと議論がされないのでしょうか。
 前述の通り、イラクはある日突然、勝手に内戦状態に陥ったのではありません。米国の都合や、イラクの政党の党利党略、イランの思惑が複雑に絡み合い、日本も「援助」の名の下に加担しています。なぜ、イラクでは今なお血が流され続けるのか、状況は悪化する一方なのか、日本の市民やメディア、そして政治家たちは、今こそ目をむけるべきだと感じてなりません。

ますます深刻化する地球温暖化
脱温暖化型社会の構築を
気候ネットワーク事務局長 田浦 健朗

IPCC第4次評価報告書の警告
 今年2月、「気候システムにおける温暖化は疑う余地がない」「人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定」と記載されたIPCC第4次評価報告書が出されました。この報告書は、IPCC(気候変動に関する政府間バネル)が6年ぶりに公表したもので、最近50年間の気温上昇の長期傾向は過去100年のほぼ2倍など、これまで以上に深刻な温暖化の状況が記されています。
 今後の気温上昇の予想では、人類が環境を重視していく場合には1.8度(1.1〜2.9度)、化石燃料に依存し経済成長を重視する場合には4.0度(2.4〜6.4度)も上昇すると予測されています。これは、人類がどちらの道を選択するかにより、大きな差がでることを示しています。地球規模で環境重視の選択が求められているわけですが、多くの人が「地球温暖化を止めなければならない。環境を重視したほうがよい」と分かっていても、現実には、経済重視、化石燃料依存から脱却できない状況に陥っています。

ナイロビ会議から次の合意へ
 昨年12月に、第12回気候変動枠組条約締約国会議(COP12)および第2回京都議定書締約国会合(COPMOP2)がケニアのナイロビで開催されました。これは、京都で開催されたCOP3から9回目、また京都議定書発効後2回目の会議でした。会議では、2013年以降の先進国の削減義務について継続して交渉することとなり、今後の作業計画と07年の作業スケジュールが決まりました。京都議定書の見直し(途上国の削減義務化等)については、08年に第2回の見直しを行うこととなり、そのスケジュールを決定しました。
 世界的な約束事である「京都議定書」という枠組みは継続していくことになった会議と評価できます。しかし、今後、2013年以降の一層の削減を義務化する数値目標に合意できるかどうか、あるいは京都議定書に参加していない米国やオーストラリアが復帰することになるかどうかは未知数です。今年12月には、COP13/COPMOP3がインドネシアのバリで行われ、大筋の合意から具体的な合意に進めていかなければならない重要な交渉が行われます。

温室効果ガス削減の目標達成への提言
 昨年末から、国内では2008年からの第1約束期間開始に向けて、京都議定書目標達成計画の見直しが行われています。しかし、日本は温室効果ガスの6%削減の目標に対し、05年度の排出量は90年に比べて8.1%も増加しています。これは、これまでの対策が効果をあげず、逆効果になる政策を行ってきた結果です。
 このままでは、京都議定書の目標は達成できない恐れが大きく、計画の抜本的な見直し、政策の強化が求められています。気候ネットワークでは、NGOの立場からこの計画の実効性をあげるための提言をまとめ、計画に反映させたいと考えています。
 気候ネットワークは、昨年「2020年の30%削減社会ビジョン〜家庭・業務部門の削減シナリオと政策提言」の研究を実施しました。これは、中長期的な大幅削減(2050年に50%以上)が必要との認識のもと、家庭や事務所・公共施設等を対象にしました。その結果、ワークシェアリング等の働き方の多様化などによるゆとりの増大と市民社会の成熟による「やさしさ」を育む社会が望ましい、住宅の省エネ性能の向上や自然エネルギーの活用などで削減が可能、自然エネルギー電力固定価格買い取り制度と炭素税の導入、住宅・建築物の省エネ規制などが必要、等との内容をまとめました。
 同時に、気候ネットワークは、地域レベルの温暖化防止に関する調査・研究や実践活動も行ってきています。地域で省エネや自然エネルギー普及の活動を実践し、その輪を広めていきながら、温暖化防止政策・制度につなげていこうというものです。
 地球温暖化が深刻化している今、「できることからやりましょう」では不十分です。科学者の警告をしっかりと受け止め、「不都合な真実」を直視し、市民が中心的な役割を担って、脱温暖化型の社会・経済・政治を着実かつ迅速に作りあげることが求められています。気候ネットのサイト=http://www.kikonet.org

緊急性が増す高レベル放射性廃棄物の処分問題
住民の意思が通じない制度 誘致の動きに徹底対抗を

町民の反対を無視し、東洋町長が独断で初の応募

 原発などから出る高レベルの放射性廃棄物の最終処分場については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(高レベル処分法)によって、文献調査→概要調査→精密調査の3段階の調査で選ぶことになっています。実施主体の「原子力発電環境整備機構」(NUMO)は、文献調査を行なう地区を02年12月から公募方式で選定を行っています。
 これまで正式に手をあげた自治体が無いなか、1月25日、高知県東洋町の田島裕起町長が、議会の同意もないまま全国で初めて文献調査に応募をしました。町民の6割を超える反対請願署名が議会に提出され、その対応を協議する町議会全員協議会の日に独断で応募をするという暴挙です。その後、議会では、町長の辞職勧告決議がなされましたが、町長はいまだ居直りつづけています。
 東洋町の応募を受けてNUMOは2月28日に経済産業省資源エネルギー庁に最終処分地の選定に向けた事業の認可申請をおこないましたが、高知、徳島の両県議会は、経済産業大臣に調査を許可しないように申し入れています。
 今の制度では、どんなに反対があっても、手続き的には止められないという問題があります。市町村長からの応募があれば、NUMOが地質条件などを調査し、経済産業大臣に申請し、認可を受けるようになっています。その後、文献調査が行われ、報告書の作成、説明会の開催、地域住民などからの意見書受けつけとそれへの見解発表をへて最終処分計画の改定まできてから、やっと関係知事および市町村長の意見を聴くことになっています。
 「反対の意見を示している状況においては、〜(その)意見に反しては、概要調査地区等の選定はおこなわれない」との政府答弁書が「ある」とされていますが、申請がおこなわれれば、どんなに住民が反対していても、事業は着々と進められることになっています。原水禁などがNUMOへ申し入れをした際にも、「法律に則って進める」と繰り返し、経済産業省も、「NUMOから上がってきた書類に不備がないかどうかをチェックするだけ」としています。当該の首長が申請を下ろさない限り、法律に基づき進められ、住民の意志はまったく反映されない非民主的な制度です。

各地で起きている誘致の動きに全国的な連携を

 最終処分場をめぐって、滋賀県余呉町や高知県津野町では、地元住民の反対で、誘致に向けた動きを押し返すことができました。他にも長崎県対馬市、同県新上五島町、福岡県二丈町、青森県東通村などで誘致の動きがでています。青森県を最終処分場にしない協定がある青森県東通村を除いて、当該の首長は反対の意志を示していますが、今後も注意が必要です。
 また、文献調査にともなう交付金が、4月以降、年間10億円に増額されることから、新たに応募する自治体が出てくる可能性があります。特に財政が逼迫する自治体や公共事業が欲しい地方の企業を中心に、動きが活発化することが考えられます。すでに、表面化した地域では、六ヶ所への視察旅行が繰り返されています。水面下の動きも各地で起きていると思われます。
 こうした各地で起こる誘致の動きに対抗するため、2月17日に原水禁は廃棄物問題の全国交流集会を岡山で開催しました。各地で起きている状況の報告と今後の対応について話し合い、誘致の動きの早期キャッチと運動の集中が重要とし、全国的な連携の強化が確認されました。東洋町の動きについては、誘致阻止の運動を支援していくことが確認され、今後の動きを注視していくことになりました。集会では、高レベル廃棄物の拒否を求める要望書を決議し、全自治体に送付し、処分候補地に応募しないよう求めています。
 さらに、政府や事業者などへの取り組み強化と迅速な対応も図り、交渉・要請を強めて当該地域への情報提供などを進めることが必要です。今の通常国会には、放射性廃棄物処分法案の改定も出されることから、それへの対応も重要になっています。


世界は大きく動こうとしている
6ヵ国共同文書の持つ意味
孤立する日本の危険

北朝鮮政策を根本的に変えた米国
 07年2月13日、6ヵ国協議で採択された共同文書は、米・ブッシュ政権がこれまでとってきた北朝鮮への敵視政策を根本的に変えるものです。
 この共同文書には、核兵器への直接の言及もなく、ウラン濃縮問題にも触れていません。これまでブッシュ米大統領が「完全な、検証可能な、不可逆的な破棄」(CVID)を要求してきたことを考えると、驚くべき変化です。早速ネオコンのボルトン前国連大使を始め政権内からも北朝鮮に妥協しすぎだとの批判が出ました。しかし今回の共同文書は米・民主党が支持しているのですから、流れは変わらないでしょう。
 さらに共同文書で「北朝鮮と米国は完全な外交関係を目指すために協議を開始する」とあり、これは05年9月の「共同声明」よりも、米朝の国交正常化への意欲がより強く前に出ていると言えます。
05年9月の「共同声明」の直後には「偽ドル」が北朝鮮によって作られているとして、バンコ・デルタ・アジアの北朝鮮口座が凍結されましたが、この問題もほぼ解決へ向かっています。逆に「偽ドル」そのものがCIA自身によるものではないかとの疑惑が強まっています。
 3月5、6日と米朝の作業部会が開催されましたが、内容はほとんど報道されず、同時期開催された日朝作業部会のみが大きく報道されました。しかしキム・ゲグァン北朝鮮外務次官は、3月8日に成田経由で帰国した際、韓国・中央日報記者に「テロ支援国解除問題はすでに(米国と)合意した問題」とし「時間をかけてみればだんだん解けるだろう」と語っています。
 日本では拉致問題が解決しなければ、米国の「テロ支援国家」解除はないと語られていますが、状況ははるかに進んでいるのです(作業部会は始まったばかりで、多くの紆余曲折が予想されるとしても)。

ますます変わる米国、日本はどうする?
 米・ブッシュ政権の変化は中東でも顕著です。いまブッシュ米大統領の頭は、泥沼化したイラクをどう収束させるかで一杯で、米国内の反対を押し切ってイラクへの兵力増派を行っていますが、破壊、殺りく、混迷は進む一方です。
 そして2月28日、ブッシュ政権は3月10日にバグダッドで開かれる「イラク安定化国際会議」にイラン、シリアとともに、米国も参加すると発表しました。昨年の秋までは考えられなかった事態の進行です。
 これまで米ブッシュ政権(というよりネオコン)にひたすら忠誠を示してきた日本政府はどうするのでしょう。米軍再編に積極的に協力していますが、米軍再編を主導したラムズフェルド国防長官は退任しました。
 日本国内ではマスコミも含め、北朝鮮問題によって偏狭な民族主義が助長されてきました。教育基本法と憲法改正によって、日本は戦前回帰を果たそうとしているかのようです。そして国際的に孤立するほど、日本の核武装論は出てくるでしょう。そのような日本にしないためにも、日本での非核3原則の法制化と朝鮮半島の非核化は急がれるし、核5ヵ国の核廃絶・核軍縮への努力が求められるのです。

6ヵ国協議共同文書要旨(07年2月共同通信より)
・6カ国は2005年9月の共同声明を段階的に実施していく措置をとることで一致した。
・6カ国は初期の段階で次の措置を60日以内に取ることで一致した。
・北朝鮮は寧辺の各施設の放棄を目的に活動停止、封印を行い、IAEAとの合意に従い、必要な監視、検証のためIAEAの復帰を求める。
・北朝鮮は共同の核計画の一覧表について5ヵ国と協議する。
・北朝鮮と米国は完全な外交関係を目指すための協議を開始。
・米国は北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する作業を開始し、対敵国通商法の適用を終了する作業を進める。
・北朝鮮と日本は日朝共同宣言に従い、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎に国交正常化のための協議を開始する。
・北朝鮮に対する経済、エネルギー、人道支援での協力で一致、5万?の重油に相当する緊急支援の最初の輸送は60日以内に開始される。
・6ヵ国は次の作業部会を設置し、30日以内にすべての会合を開催することで一致。@朝鮮半島の非核化A米朝国交正常化B日朝国交正常化C経済およびエネルギー協力D北東アジアの平和および安全のメカニズム
・初期段階と核施設の無能力化を含む次の段階の期間中、北朝鮮に上限100万?の重油に相当する経済、エネルギー、人道支援が提供される。
・初期段階の措置が実施された後、共同声明の実施を確認、速やかに閣僚会議を開催地域の永続的平和と安定のため共同の努力を行う。当事者は適当な話し合いの場で朝鮮半島の恒久的平和体制を協議。
・第6回6ヵ国協議を3月19日に開催する。

原水禁元副議長 宮崎安男さん逝く
平和運動に人生をかけた人
広島県原水禁代表委員 片山 春子

 原水爆禁止日本国民会議の元副議長、宮崎安男さんが2月16日に逝去されました。78歳でした。宮崎さんは全電通中国地方本部委員長などを務め、1974年から広島県原水禁事務局長、代表委員経て、96年から04年まで原水禁国民会議副議長に就任、その後も広島県原水禁顧問を務められました。また、広島平和会館・原爆被害者相談所の相談員としても、被爆者健康手帳申請の証人捜しや原爆症認定集団訴訟支援、在外被爆者援護に奔走し、常に被爆地の反核平和運動を牽引し、被爆者援護に最後まで尽力されました。
 宮崎さんの追悼の辞を、運動をともに進めてこられた片山春子さん(広島県原水禁代表委員)に寄せていただきました。

400回を超える座り込みで「核兵器廃絶」訴え
 「平和運動は、1人でも出来る」といっておられた宮崎安男さんが、2月16日に78歳で突然亡くなられました。悲報を受けた時に、まさか、なぜと疑い、ただ呆然とするばかりでした。
 先日も原爆慰霊碑の前で座り込みをご一緒したばかりでありました。いつもと変わらない声で「ヒロシマががんばらなくては。自分は1人でも出来る平和運動は座り込みをすることだと参加している」と力強い口調で挨拶されました。400回を超える座り込みの肩の襷は日焼けの布に「核兵器廃絶」の文字が薄れ、「この人こそ平和を愛する人だ」と思いました。
 宮崎さんは、労働運動をきっかけに平和運動に全力をささげられた方です。なかでも被爆者ではないのに被爆者問題に親身になって取り組まれ、相談事業に20有余年にわたって携わってこられました。被爆者健康手帳の申請のために、証人捜しなど多くの功績を残され、被爆者の方々から尊敬された方でした。
 また、ヒロシマにとって忘れてはならない「原爆被害者福祉センター平和会館」の設立や、意義・歴史などについて編集・発行され後世への財産となりました。
 不平不満を顔に出さないで、いつも穏やかな、前向きに物事を考える人、実践する人、良き指導者でした。2003年に宮崎さんが少し体調を崩されたときに、宮崎さんを顧問に迎え、私は広島県原水禁の代表委員に就任しました。多くの実績を持つ宮崎さんの後任として、任務が果たせるか戸惑いました。そんな時いつも「後に戻るな、前を向いて進め」とアドバイスしてくださいました。困ったときには原点に返れと教えてくださったのは宮崎さんでした。

被爆地ヒロシマを次世代に語り継ぐ

 1982年反核・平和の火のリレーをスタートさせた時に、このリレーは必ず全国、世界に広がるとして応援してくださったのも宮崎さんでした。いつも若い次世代に運動を語り継ぐことが自分の役目だと話しておられました。
 被爆地ヒロシマを思い、被爆者の問題にふれ、平和運動に人生をかけられた人でした。原水禁運動の足跡を残そうと「原水爆禁止運動50年の歩み」を関係者の方々とともに取り組まれ、これからの平和運動の財産として残してくださいました。私たちはこの50年の歩みを参考にしてこれからの運動に生かしていきたいと思います。
 宮崎さんが志半ばにして急逝され、さぞ無念だと思うことは、原爆被害者認定をめぐる集団訴訟の最終結論を見られなかったことです。でもきっと宮崎さんの思いは通じることと思います。その思いは世界に響き渡っています。
 長い間ご苦労様でした。ありがとう。宮崎さん、安らかにお眠りください。見守ってください。ヒロシマ原水禁に結集して仲間が力を合わせてがんばっていきます。

人権侵害を追及するアムネスティ
「テロとの戦い」のレトリックに打ち勝つ
アムネスティ・インターナショナル日本 川上 園子

「テロとの戦い」の影で拷問や虐待
 2002年5月、米中央情報局(CIA)対テロセンター所長は9.11調査委員会でこう語りました。「9.11後、手加減はなくなった。制限なく攻撃的に、容赦なく、米国を脅かすいかなるテロリストも世界中で追跡することが、唯一我々がとるべき道だ」。
 この言葉は忠実に実行され、米軍はアフガン攻撃の最中に「テロ」容疑者として誰彼かまわず拘束し、キューバにあるグアンタナモ米軍基地内の収容所に移送しました。米当局は、被収容者は「敵性戦闘員」だから、戦争捕虜の人道的な取り扱いを規定するジュネーブ条約は適用されないと主張しました。今も約400人といわれる被収容者のほとんどは犯罪容疑で起訴されることもなく、無期限に収容され続けています。
 さらに米国は、拷問を正当化する珍妙な主張を作り上げました。02年8月、司法省による米大統領法律顧問宛の覚書には、大統領は拷問を命じることができ、尋問官は「拷問の域に達しない程度の深刻な苦痛を与えることができる」と書かれていました。これを根拠にラムズフェルド国防長官(当時)が承認したのは、「頭に袋を被せる、裸にする、感覚を遮断する、隔離拘禁する、苦痛を伴う姿勢をさせる、ストレス誘発のため犬をけしかける」などでした。
 CIAは世界各地で「疑わしい」人(多くがイスラム教徒で中東・アフリカ系)を誘拐し「失踪」させ、ある国から別の国へと秘密裏に移送し拘禁しました。拘禁された人々には、弁護士をつけたり裁判を受ける権利が完全に否定されています。
 米国のあからさまなやり方は、世界に影響を与えています。多くの国が「テロ対策」として基本的自由を厳しく制限し、人権を無視する法律を作り、政府に批判的な人を「テロ」や国家安全保障の敵とレッテルをはって投獄しています。スウェーデンでは01年10月、当局が難民申請中のエジプト人男性2人を米諜報機関の情報に基づいて拘束し、米当局に引き渡しました。エジプトに送還された2人は拷問を受け、公正とは言えない裁判で有罪判決を受けました。
 拷問は国際法上絶対的に禁止されていますが、実際には各地で行われています。国際基準を満たさない司法手続きも少なく、その意味で、拷問を止めろ、司法手続きを保障せよという運動はさほど新しくはありません。新たな挑戦は、拷問や虐待、司法手続きや司法管轄権を否定する行為が対テロの名目で公然と再定義・正当化されて世界に蔓延しつつある、ということでした。

ヨーロッパなどで高まる批判
 国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルは、米主導の「テロとの戦い」の名による人権侵害を徹底的に追及しました。グアンタナモの被収容者や強制的失踪の被害者証言を集め、CIAの非公開のフライト記録を確認し、秘密移送と拷問の実態を暴き、世界中で、オレンジ色の囚人服を着た活動家たちがグアンタナモ収容所の閉鎖を要求しました。
 06年、人権を無視したテロ対策への批判がようやく高まってきました。CIAの秘密移送に加担した欧州各国は説明責任を問われ、欧州評議会と議会が調査を実施。ドイツ、イタリアなどは自国の官僚がどのように加担したか調査を行い、デンマークは許可なしのCIAの飛行機が自国領空と空港を利用することを禁止しました。イタリアは数十人のCIA諜報員に逮捕状を出しました。
 また06年のベルリン国際映画祭では、グアンタナモの収容の実態を描いた『グアンタナモ、僕達が見た真実』が銀熊賞を受賞し、収容所からの生還者に惜しみない拍手が送られました。一方でブッシュ政権はグアンタナモや秘密移送に固執し、アムネスティをはじめ世界の市民社会からの批判に耳も口も閉ざしています。
 「テロ」による暴力は許されません。しかし「テロ」と戦うために、先人が築いてきた人権の枠組みを後退させることは許されるのか? それは本当に「テロ」を減らすことにつながっているのか? 「テロとの戦い」は誰の利益になっているのか? 私たちはそうした問いを、粘り強く米国やその他の政府、そして日本政府に突きつけていかなくてはなりません。
 アムネスティ日本のサイトで、グアンタナモの閉鎖を求めるアクション展開中です。ぜひ参加してください! 
http:www.amnesty.or.jp

時は4月、私たちは春をつくれるか
平和フォーラム・原水禁の組織と運動の強化を
 平和フォーラム・原水禁は、3月1日〜2日、200人の仲間で、全国活動者会議を開催し、「2006年度の活動経過と2007年度方針」の原案を提案し、討議を行いました。そして各地の取り組み報告もしてもらいました。脱原発をめざしての闘い、米軍再編成に反対しての青森や岩国、沖縄などの闘い、原子力空母横須賀母港化反対の闘いなどなどです。全国各地ですばらしい闘いがあります。参加者の皆さんは、私たちも含めて、「取り巻く情勢のめまぐるしさと背負い込もうとしている課題の多さ」に、「私たちに担うことが可能なのかどうか」とたじろぎました。でも全国で仲間たちは、「私たちが今がんばらねば誰ががんばるのだ」との思いで闘っている仲間の報告を聞く中で、闘おうと決意を新たにしました。本当にすばらしいことです。
 平和フォーラムも新しく再出発してから、7年をこえました。今後の「平和フォーラムのありかた」や「連合との関係」なども、討議をしてきました。そして「平和と民主主義をめぐる状況を考慮すれば、平和運動の大きな一翼を担う平和フォーラム・原水禁の果たさなければならない役割はますます重要になっています。そうした認識にたって、平和フォーラム・原水禁の組織と運動の重要性を再認識し、組織と運動の強化をめざします」とし、また連合との関係は、「引き続き、連合との関係の深さを十分踏まえた上で、連合と連携強化と共同の取り組み課題の拡大をめざします」とまとめました。
中央、地方の全体で、「組織と運動の強化」にがんばりあいたいと思います。また当たり前のことですが、組織と運動の改革も必須です。

安倍自公政権の暴走を許すな
 通常国会が開会し、2ヵ月が経ちました。安倍自公政権は、「2007年度予算」を強行成立させ、次の焦点は、憲法改悪のための国民投票法案、米軍再編関連法案、教育関連法、イラク特措法の延長になろうとしています。国民の生活を無視しながら、「戦争する国づくりへ」暴走を続けています。米国では、イラク侵略戦争の泥沼化を踏まえ、ブッシュの「軍事力による世界支配戦略の見直し」が始まっています。私たちはブッシュが犯した数々の悪行を決して忘れないし、絶対に許しません。
 一方、日本では、自公政権は、「古いブッシュの路線」に追従したままです。なんとしてもそうした安倍自公政権の政策転換と政権交代をめざさなければなりません。政権周辺スキャンダルもあり、安倍内閣の支持率は朝日、毎日、NHKの主要3報道機関が、世論調査で、「不支持率が支持率を上回った」と報道しました。しかし野党の支持率も上昇していません。野党や私たちの更なる頑張りが求められています。民主党、社民党の野党がなんとしても、「憲法改悪路線」と対決し、安倍政権を包囲してほしいものです。
 今春闘が終盤に差し掛かっています。「格差解消春闘」として、連合など労働団体も奮闘しています。
 統一自治体選挙も始まりました。最大の焦点は、東京都知事選挙です。石原の三選をなんとしても阻止しなければなりません。すべての力を「浅野史郎」候補の勝利に向けて、結集し、できることを何でもやろう。そして私たちの力で「春」を呼び寄せよう。
 また全国各地で私たちの仲間が自治体選挙で奮闘しています。みんなで支えあいましょう。