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平和フォーラムの当面の制度・政策要求

2008年4月25日

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フォーラム・平和・人権・環境第10回総会

 以下は2008年4月25日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第10回総会において決定された当面の制度・政策要求です。
 
Ⅰ 憲法(全体)に関する制度・政策

  1. 憲法前文・9条をはじめ憲法の理念を擁護し国際的な人権・民主主義の到達点に立って発展させること。(全省庁)
    (解説)前文、第9条、第10章「最高法規」などに示された、戦争放棄と非武装・平和主義、基本的人権の尊重、主権在民を3大原則とした日本国憲法の理念を擁護し、人権や民主主義の国際的な確立の到達点に立って発展させていきます。「はじめに憲法改正ありき」や「衣の下の鎧」の姿勢、「憲法の理念に反する実態への迎合」ではなく、国際化時代に適応しながら、憲法の有効性を高め、市民生活に生かしていくことが必要です。
  2. 憲法の有効性を高める場を国会はもとより広く認め合い、とりわけ、市民の意見を活かす場を尊重し、保障すること。(全省庁)
    (解説)憲法の有効性を高め、そのための議論を行う場は、国会の憲法調査会に限りません。国会の他の委員会でも必要です。また、立法だけでなく、行政(政府だけでなく自治体を含む)・司法の三権それぞれにも必要です。それらに市民の意見が活かされることが重要であり、そのためにも市民自身が憲法とその運用について、検証する活動を保障することが必要です。
  3. 憲法第96条に示された憲法改正のための国民投票など、憲法上の制度・整備にあたっては、憲法理念に基づき民主主義、人権尊重を貫くこと。参議院特別委員会で18項目もの附帯決議のついた「改憲手続き法」による憲法審査会の活動は行わず、審議を一からやり直すこと。(衆議院・参議院・総務省など)
    (解説)憲法上に示された制度・整備も、一般法で行われるため、政治的目的で振り回される危険性があります。すでに、昨年5月に安倍内閣のもとで強行成立した「改憲手続き法」は、参議院の特別委員会で18項目もの附帯決議がついたように、多くの問題点があることを制定した側自身が認めています。それ自身が憲法改正のハードルを下げるものであり、こうした「ためにする法律」は抜本的に審議のやり直しが必要です。

Ⅱ 国際化に対応した制度・政策の基本事項

  1. 憲法の理念を国際的な平和・人権・民主主義の到達点に立って発展させるため、国際諸条約を完全批准し、また、発効に向けて努力すること。国連の決議・決定を尊重すること。(内閣府、外務省、法務省、厚生労働省、防衛省ほか各省庁)
    a)CTBT(包括的核実験禁止条約)などすでに批准済みのものは発効に向けた国際的な努力をいっそう強めること。
    b)未だ批准していない人権諸条約(30条約中18条約、自由権規約選択議定書=個人通報制度、自由権第2選択議定書=死刑廃止、ジェノサイド条約、戦争犯罪者時効条約、奴隷条約、無国籍者条約、移民労働者条約、障害者権利条約など)を早期に批准すること。
    c)人種差別撤廃条約などの国内留保条項について撤廃すること。女性差別撤廃条約の選択議定書を早期批准すること。
    d)「紛争の防止、解決と平和構築に女性が重要な役割をもつことを再確認し、それらの意志決定機関の参画を高める」とした「国連安保理決議1325号」を尊重し、日本でも具体化すること。
    e)劣化ウラン弾、クラスター爆弾など非人道的使用の兵器や小火器兵器の禁止・規制などの諸条約の制定に積極的に取り組むこと。劣化ウラン弾の国際的な影響調査を行うこと。
    f)国際諸条約(とくに人権諸条約)の早期和訳・公表を行うこと。
    (解説)世界でいっそう確立している平和や人権の高い水準、到達点を日本の市民が日常的に認識する機会を増大することが必要です。憲法は、「この憲法が保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」(第97条)としていることからも重要です。
  2. ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の2015年までの実現など、国際的に連携した「人間の安全保障」の取り組みと国内適用、ODA基本法等を制定すること。(内閣府他全省庁)
    (解説)冷戦後の世界で広がっている「人間の安全保障」の取り組みのなかで打ち出された国連のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs=2000年9月「極度の貧困と飢餓の撲滅」「普遍的初等教育の達成」「ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上」「幼児死亡率の削減」「妊産婦の健康の改善」「環境の持続可能性の確保」「開発のためのグローバル・パートナーシップの推進」の8目標、18ターゲット、48指標)は、2005年9月の世界サミットで、2015年までの達成を再健認するともに、平和構築委員会や人権理事会の設置、人道犯罪からの「保護する責任」の確認などが合意しました。この実現に日本も全力を尽くすことが必要です。日本での具体的な取り組みは「貧困」「健康・医療」「災害」「難民」に関する対外的な支援に限定されており、あわせて重要な「抑圧・差別からの自由」に向けた国境を越えた確立の取り組みは軽視されています。「抑圧・差別からの自由」に向けた取り組みに連携することが重要であり、とくに「内なる国際化」の点から、1.の国際人権諸条約の完全批准による国内適用が必要です。また、ODA(政府開発援助)も、貴重な国際協力ですが、日本は、「環境と天然資源の持続可能な利用に関する分野別政策」や「ODAから恩思を受けると思われる人びとの参加の確保のための、詳細な政策およびガイドライン」を持っておらず、欧米諸国に立ち遅れています。「無償援助の原則」「受益者の権利」などを含んだ「ODA基本法」を制定する必要があります。
  3. 憲法記念日・週間(5月)、世界人権デー・週間(12月)、国連の設定した国際年などにおける諸取り組みをはじめ、政府・自治体行政による平和・人権啓発の取り組みを徹底すること。(内閣府・総務省他全省庁)
    (解説)政府・自治体が率先して平和・人権について啓発を、機会あるごとに行うことが必要です。とくに、5月の憲法記念日(週間)や12月の世界人権デー(週間)、国連で毎年設定される国際年や10年単位の取り組みは重要であり、政府・自治体による諸取り組みを行うべきです。
  4. 在日外国人が増大し、裁判をはじめ法律に関与する場面も増大していることを踏まえ、憲法をはじめ基本六法などの多国語訳化(英語はもとより中国語・韓国語・ロシア語・スペイン語なども)を行うこと。(内閣府・総務省・外務省・法務省)
    (解説)国境を越えたヒトの移動が進み、コミュニケーションが不可欠になっています。一方では、在日外国人が増大し、裁判をはじめ法律に関与する場面も増大しています。日本語や英語だけでは通じない場合が多いので、在日外国人にも、法律を理解する機会を増大し、権利保障を行うことが必要になっています。

Ⅲ 平和・安全保障に関する制度・政策

  1. 米国一辺倒ではない、多角的な外交政策を進めること。国際紛争は国連の場で平和的に解決できるよう、国際社会に働きかけること。日朝国交正常化や日ロ平和条約の締結など、東北アジアの平和環境を醸成する友好外交を推進すること。(内閣府・外務省・総務省)
    a)日本独自の平和外交政策を策定すること。
    b)「日朝ピョンヤン宣言」に基づき、早急に日朝国交正常化を図ること。
    c)東北アジアの非核化をはじめ、積極的に核軍縮の実現をめざすこと。
    d)自治体・民間団体・NGOなどの国際交流や外交を促進し、地域の平和システム作りに努力すること。
    (解説)冷戦終結後は「対話と協調」が、世界的に外交の主流になっています。しかし一方で米国によるアフガニスタン侵攻やイラク侵攻が行われました。またイスラエルはパレスチナやレバノンに対して、軍事侵攻や指導者の暗殺を行っています。日本は、米国の外交政策に無条件に付き従うのではなく、平和環境を醸成する積極的で多角的な独自の外交を行うべきです。また米国の一国主義・先制攻撃戦略に反対し、国家間の問題は国連の場で解決するよう、国際社会をリードしなければなりません。東北アジアの非核化と軍縮の推進にも積極的に寄与するべきです。そのためには、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と韓国の「6・15南北共同宣言」に基づく対話や、米・朝・韓・中・ロ・日の6カ国協議を支持・推進すること、「ピョンヤン宣言」にのっとった日朝国交正常化を進めること、ロシアとの友好条約を早期に締結することが必要です。
     現在、政府は「日米同盟」を外交政策の柱とし、「日米同盟」が無ければ日本の安全は保てないと言っています。しかし国際社会と国連を無視し、一国主義と先制攻撃戦略を推進する米国に従うことは、米国とともに国際社会から孤立することを意味しています。日本は憲法前文と第9条の精神に基づき、国連を中心とした、平和的な外交を積極的に推進しなければなりません。国際社会の平和と安定に寄与し、軍事によらない国連の平和活動に貢献し、友好外交で周辺諸国の信頼を勝ち取ることが、日本の安全を保障する唯一の道です。
     日朝関係では、日本は世界の中で北朝鮮とだけ、国交を持っていません。これは異常な事態です。日朝国交正常化は、東北アジアの平和を飛躍的に前進させます。日本人拉致・不審船・核開発など日朝間の一連の問題は、「ピョンヤン宣言」を含めた国際諸条約・合意を基本に、対話を重ねることで解決を図ることが必要です。
     東北アジアには、米・中・ロの核兵器が存在し、また2006年10月には北朝鮮が核実験実施を発表しました。朝鮮半島の非核化については、南北合意や6カ国協議合意、米朝合意など、これまで積み上げてきた枠組みを崩壊させてはなりません。非核三原則を持ち世界の核軍縮をめざす日本が、積極的にリードし、東北アジアの非核化を実現しなければなりません。
     世界のボーダレス化が進んでいます。これからは国家間関係だけではなく、自治体・民間・NGOの国際交流や外交が重要になってきます。また自治体の「非核・平和条例」などは地域から平和を築くものであり、多角的な平和外交の基礎となります。政府は、こうした国際交流・外交を促進し保障するべきです。
  2. 在日米軍再編合意などの日米安全保障条約による軍事同盟関係強化をやめ、日米友好条約への転換を図ること。(内閣府・外務省・防衛省)
    a)在日米軍再編合意を白紙化すること。
    b)日米安全保障条約を終了し、かわって日米友好条約を締結すること。
    c)日米間をはじめ諸外国との安全保障に関する協力合意に当たっては、必要な条約を締結するなど国会承認事項とすること。
    d)在日米軍再編に反対する自治体に対して、財政上の差別的取扱いを行なわないこと。
    e)米軍基地の縮小・撤去をすすめること。
    f)日米地位協定を抜本的に改正すること。「思いやり予算」を廃止すること。
    g)米軍艦船の民間港使用を許さないこと。
    h)新テロ特措法を終了し、海上自衛隊の補給艦・護衛艦をインド洋から撤退させること。イラク特措法を終了し、航空自衛隊をイラクから撤退させること。
    i)原子力空母の横須賀母港化を行わないこと
    (解説)日米両国政府は在日米軍再編協議の中で、共通の外交政策・共通の戦略目標を持つことを確認しました。しかし「核を含む先制攻撃」を基本とする米国の外交・安全保障政策は、平和憲法を持つ日本と相容れません。憲法上実行不可能であり、直ちに放棄するべきです。また在日米軍再編は、憲法・国内法・日米安保条約のこれまでの枠組みを超えるものです。しかし日米安全保障協議委員会(2+2)のみで決定し、憲法や日米安保条約の改定は行なわれませんでした。日本とオーストラリアは軍事協力のための安全保障協力共同宣言を発表しましたが、この時も条約締結や国会議論は行なわれませんでした。外交・安全保障政策に関する重要事項は、政府間合意で済ませることなく、条約締結や国会論議を行なうべきです。
     日本国政府に対しては、日米安保条約の終了を通告し、かわって両国の平和的な交流推進と、国際紛争に平和的に対処するための日米友好条約の締結を求めます。その前段階として、日本政府は米軍基地の縮小・撤去を進めるべきです。
     日本政府が「思いやり予算」として支出している基地の維持費は、本来は米国が負担するものです。また米国領グアムに基地建設するた費用を、日本が支出する理由はありません。米軍に対する不適切な支出を全廃すべきです。
     米軍兵士とその家族に特権的な地位を認めている地位協定は、刑事事件や訓練中の事故の温床になっています。米軍に対しても日本国内法の適用を認めるように、地位協定を抜本的に改定するべきです。
     日本政府は、海上自衛隊の補給艦をインド洋に派遣して米同盟軍に燃料補給を、航空自衛隊の輸送機をイラクに派遣して国連と米同盟軍の物資輸送を行なっています。自衛隊の活動は、米同盟軍の戦争支援であり、憲法に違反します。直ちに撤退するべきです。
     米政府は現在横須賀を母港としている通常型空母キティホークに換えて、後継艦のニミッツ級原子力空母ジョージワシントンを、2008年8月19日に配備すると発表しました。これに対し当初配備計画の撤廃を求めていた横須賀市長や市議会は、「配備は国の専権事項」として一転配備容認に転じ、現在受け入れの条件整備として浚渫工事などが進んでいます。一方で、米ブッシュ政権は2006年に予定していた通常型空母ジョン・F・ケネディの退役を凍結し、艦暦延長工事を行うとし、これによって、「原子力空母しか選択肢はない」との米政府の当初の考え方が必ずしも妥当でないことが明らかになりました。東京湾に100日以上、30万KW級の原子炉が浮かぶことになります。原子力空母については原子炉の構造も含めて、日本側には一切の情報が明らかにされていません。また、安全対策についても日米地位協定によって管理権が及ばないために必ずしも明確になっていません。事故が起これば東京湾沿岸部だけではなく、関東一円の人々が被曝する恐れのある原子力空母の配備を、日本は認めるべきではありません。
  3. 自衛隊を縮小すること。自衛隊の任務を限定し、海外派兵を禁じること。平和基本法を制定すること。(内閣府・防衛省)
    a)自衛隊を縮小すること。任務を限定し、海外派兵を禁じること。
    b)専守防衛の範囲を超えた装備の購入を行なわないこと。
    c)日本のミサイル防衛(MD)計画を中止すること。
    d)日本版NSC(国家安全保障委員会)の設置や、自衛隊海外派兵恒久法の制定など、戦争のための準備を行なわないこと。
    e)集団的自衛権の行使をしないこと。
    f)自衛隊に対する文民統制(シビリアンコントロール)を徹底すること。自衛隊員の人権に配慮すること。 g)「平和基本法」(仮称)を制定すること。
    (解説)冷戦体制の終結後、世界各国は大幅な軍備縮小を行っています。しかし自衛隊は「コンパクト化」という名目で隊員定数を減らす一方、装備の近代化や巨大化を進めています。また米軍支援のために、ペルシャ湾やイラクまで自衛隊が派兵されています。これは明らかに「自衛」「専守防衛」の範囲を超えており、近隣諸国にとっては「脅威」になっています。自衛隊の強化・拡大を止め、大幅な軍縮・改編を実現することや、自衛隊の任務を、「自衛」「専守防衛」に限定することが必要です。憲法前文・9条の理念を守り、自衛隊の任務を限定して軍縮を行い、多国間協議や平和外交を実現するために、「平和基本法(安全保障基本法)」(仮称)の制定を求めます。
     米軍再編をはじめとして、米軍と自衛隊の一体化が進んでいます。このままでは自衛隊は、米軍の行なう戦争を支援するための軍隊になってしまいます。自衛隊海外派兵のための諸制度・諸法案の新設を行なうべきではありません。また文民統制とは、単に内閣(防衛大臣・総理大臣)による自衛隊の統制ではありません。議会による自衛隊の統制です。自衛隊の活動にあたっては議会での協議と報告が必要です。また最近、自衛体内のいじめや自殺が多発しています。自衛官の人権を守るために、軍事オンブズマンなどの制度を整備することが必要です。
     日・米が推進するミサイル防衛計画は、ロシアや中国など周辺国を刺激し、核軍縮に逆行する動きを促進し、新たな軍拡を生み出す恐れがあります。日本はMD計画への参加は、米国の軍事システムに組み込まれるものであり、憲法の禁じる「集団的自衛権の行使」につながります。さらに技術的にも信頼性が薄く、経済的にも多額な予算が投入されるなど、実用化、経済性にも問題があります。日本はミサイル防衛計画に参加せず、東北アジアの非核化と軍縮を進めるべきです。
     「平和基本法」(仮称)には、a.非核三原則(原子力推進艦艇の寄港をふくめた非核証明要求)、b.武器輸出三原則(対米武器技術供与をふくめた厳格運用)、c.宇宙の平和利用限定原則(ミサイル防衛からの撤退)、d.集団的自衛権(軍事同盟と海外派兵)の禁止、e.攻撃的兵器と攻撃的軍事戦略の不保持、f.文民統制および市民監視の徹底(オンブズマン制度導入など)、g.非軍事的国際貢献の積極的推進、h.人間の安全保障の具体的展開などを基本政策の原則とします。

Ⅳ 多文化・多民族共生社会に向けた事項などその他の制度・政策

  1. 戦後補償・戦争責任を明確にすると同時に歴史認識を共有するための努力を行うこと(内閣府・総務省・文科省・厚労省・最高裁判所など各級裁判所)
    a)戦争に関する資史料を情報公開し、歴史的事実の解明に寄与すること。
    b)戦前、戦後の日本の戦争責任を明確に謝罪し、援護法からの国籍条項撤廃などすべての被害者に差別のない補償を国の責任で行うこと。
    c)欧米各国、フィリピンなどの議会で相次ぐ「慰安婦問題」決議を真摯に受け止め、首相は公式謝罪表明し、戦争責任を明確にした歴史教育をすすめること。
    d)強制連行など戦争時の韓国・朝鮮人犠牲者の遺骨の調査を進め、早期返還を実現すること。
    e)中国人強制連行、慰安婦、残留孤児問題をはじめさまざまな裁判に当たり、裁判所による事実認定は確定してきており、国家無答責、時効や条約などを理由とした国・企業の責任回避をせず、被害者に対する救済措置を図ること。
    f)千鳥ヶ淵墓苑を、外国人を含むすべての戦争犠牲者の無宗教の施設として国賓などが追悼できるようにすること。
    g)アジアや世界の人々とともに戦争にかかわる歴史認識を共有するための資料公開施設や相互の教科書意見交換などを行う官・民、内外の活動を奨励すること。
    h)2008年度使用高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決」に関する「教科書検定意見」を撤回すること。また、教科書検定において沖縄県民の感情に配慮するよう「沖縄条項(仮称)」を設けること。
    (解説)欧米では第2次世界大戦時の情報公開が大きく進められていますが、日本では遅々としています。国立国会図書館法一部改正による恒久平和調査局設置など、歴史的事実の解明のための制度・措置が必要です。
     日本の戦争・戦後責任について、政府の対応は95年の村山談話以後は、それから後退する動きにあります。もともと、軍人恩給など日本の援護法は戦前の軍隊の階級にそって支給されるうえ、国籍条項が残されており、戦争を推進・貢献したものほど厚く、旧植民地出身者や犠牲者には何も補償がないという極めつけの差別構造があります。各種戦後補償訴訟の判決は立法措置を求めており、援護法の国籍条項撤廃など、早急に行うことが必要です。とくに、この10年、中国関係の各種の裁判に広がり、地裁・高裁段階での判決が各地で出始めています。その多くが、国家無答責や時効などで国や企業を免責する原告側敗訴の判決がつづいています。また、西松訴訟最高裁判決以後、中国側の見解と明確に異なる「日中共同声明で個人補償破棄」と解釈しています。日本の国・企業のあり方が問われています。
     また、1985年、中曽根首相(当時)が公約しながら放置され、2004年12月に盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領が改めて要求した遺骨調査・早期返還は、わずかしか行われませんでした。一方で日本人の遺骨調査について大規模予算のもと実施しているの比しても、日本の最低限の戦争責任・モラルが問われています。政府は真摯にとりくまねばなりません。
     さらに、靖国神社は、宗教施設であるとともに、対アジア・太平洋戦争のA級戦犯を神として祀った施設であり、政府要人の参拝は、違憲であり、戦争礼賛行為です。先の「追悼・平和記念のための記念碑等施設のあり方を考える懇談会」(追悼施設懇)報告は靖国神社は宗教施設であり無宗教の追悼施設を必要としたことや、戦争で命を失った民間人や外国の将兵をも加えるなど、評価すべき点が多いものです。千鳥ヶ淵墓苑を、外国人を含むすべての戦争犠牲者の無宗教の施設として国賓などが追悼できるようにしていくことが必要です。(しかし、この点で答申は遺族に引き渡すことのできない戦没者の遺骨を納めるための施設であるので、異なるとしている点は問題点です)
     日本の戦争責任を否定する「つくる会」扶桑社版など教科書問題は、日本人の歴史認識を問うものです。世界、とりわけ東アジアとの新たな共生時代をつくるためにも、官・民、内外の歴史認識を共有するための活動が不可欠であり、それを積極的に奨励していかなければなりません。
     2008年度使用の高校歴史教科書の検定にあたって文科省は、沖縄戦の「集団自決」に関わる記述について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」として、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除するようを求めた。このことに反発した沖縄では、県議会・全市長村議会が検定意見撤回の意見書を採択、立場の違いを超えて県民11万人を集める「県民集会」を開催し、検定意見の撤回を求めました。文科省は、出版会社および執筆者の「訂正申請」という形で文言の修正に応じましたが、検定意見の撤回はしませんでした。08年3月28日に出された「大江・岩波沖縄戦裁判」の判決においても、「集団自決」に対する日本軍の関与は明白とされました。この裁判が係争中であることは、文科省が検定意見を付す際の理由にしていたもので、判決によって日本軍の関与が明白となった以上検定意見を撤回することは当然です。沖縄戦の体験者が高齢化する中、二度とこのような事態を招くことのないように、教科書検定に際して「集団自決」に際しての日本軍の関与を明確に記述するよう求める「沖縄条項(仮称)」を設けることが必要です。
  2. 在日定住外国人などの人権確立、多文化・多民族共生の民主主義に向けた制度・政策を確立すること。(法務省・総務省・文部科学省)
    a)憲法の理念に反して改悪された教育基本法を実効化しないこと。憲法の理念のもとに国際化時代に応じた多文化・多民族共生と平和・人権の教育を推進・奨励すること。
    b)国連人権委員会ディエン報告の人種差別に関する改善勧告を実現すること。定住外国人の地方参政権を確立する法律の制定、入管法や外登法などの生体認証(指紋押捺)、「在留カード」制など個人情報管理をやめるなど入管制度の抜本的改善、難民の受け入れなどを積極的に行うなど、在日外国人の権利を確立すること。子どもの権利条約の趣旨に基づき朝鮮学校をはじめ在日外国人学校の学校教育法「1条校」化をすすめること。
    c)実効性ある人権教育啓発の具体化、「国連人権の10年」につづく次の「10年」に向けた取り組みをおこなうこと。独立性と実効性のある国内人権機関の設置と差別禁止法を制定すること。社会的・文化的差別をなくす男女共同参画社会計画を実行すること。1047人のJR不採用問題について、ILO勧告などを踏まえて解決すること。
    (解説)「日本の伝統」や「愛国心」「国際競争力」を一面的に強調し、世界や日本の各地の多様な民族や文化を軽視し、新たな子どもの格差・差別をもたらす国家主義的な教育基本法の改悪が行われました。教育基本法は、準憲法的な性格を有し、他の教育関係法をはじめとする一般法よりも上位に位置づけられる法律です。日本国憲法や子どもの権利条約、国際人権規約などの国際法に反した内容は許されません。改悪教育基本法を実効化させず、国際化時代に応じた多文化・多民族共生と平和・人権の教育を推進・奨励することが必要です。
     2006年1月の国連人権委員会ディエン報告書は、日本における人種主義・人種差別・外国人嫌悪/排斥の問題を、法的側面にとどまらず、社会的・歴史的文脈にまで踏み込んで指摘し、日本政府に対して、人種差別の存在を公式に認めそれを撤廃する政治的意志を表明すること、差別を禁止・処罰する法律の制定と、問題に対処するための国内機関の設置、歴史教科書の見直しなど、24項目にわたる包括的な勧告を提示しました。在日外国人は300万人を超え、いっそう拡大する動きにあります。納税などの義務を課せられていながら、人権の保障はなお部分的にしかされていません。欧米諸国では常識化しつつある定住外国人の市民権を日本でも確立する必要があります。当面、「永住外国人地方参政権付与法案」を成立させなければなりません。また、在日外国人の権利規制は、出入国管理などでは厳しいものがあり改善が必要です。これまで前進してきた指紋押捺の廃止に逆行する、テロ対策を口実とした入管法改定案を成立させてはなりません。さらに、北朝鮮バッシングのなかで朝鮮学校をはじめ在日外国人学校の卒業資格を制限する動きがありますが、国際化に逆行するものであり、子どもの権利条約の趣旨に基づき「1条校」化しなければなりません。
     男女共同参画など世界的な人権確立の動きは日本でも少しずつ広がってきました。しかし、意識変革の遅れやバックラッシュのなか、被害者の救済など実効性ある人権制度は確立していません。女性、子ども、障害者などをはじめ当事者参加などを重視した制度の確立が必要です。国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定とあわせて、差別を犯罪として明確に禁止する「差別禁止法」(仮称)を制定が必要です。また、政府や全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」やジェンダー定義を後退をさせずに「男女共同参画」計画を策定・実行していくことが必要です。JR不採用問題は、政治公約に反するとともに、人道上も重大問題であり、早期解決させなければなりません。
  3. 司法制度・地方自治などの民主主義についての制度・政策を確立すること。(裁判所・法務省・総務省・衆議院・参議院)
    a)最高裁判所裁判官国民審査の投票を○×式にするなど、投票した人の意思が結果に反映する方法にすること。司法改革で、市民に開かれたものとする原則を確立すること。狭山差別裁判など、えん罪事件を起こさせないため、再審制度の確立や、代用監獄の廃止などを実現すること。当面、「取調べの録画・録音による可視化」を実現すること。
    b)「共謀罪」設置のための法律や「テロ対策」を口実とした人権侵害法を制定せず、「盗聴法」(組織犯罪対策法)などを廃止し監視社会の危険性から脱却すること。
    (解説)現在進められている司法改革もその理念をうたっているように、ともすれば閉鎖的だった司法を開かれたものとしていかなければなりません。裁判員制度は裁判官の恣意などに左右されない制度・人数配分にしていくことが必要です。また、日本では、狭山差別事件をはじめえん罪事件が絶えません。なかでも警察の留置所を未決拘禁者の代用監獄とするシステムは国連からも人権侵害の指摘を受けています。代用監獄を存続・恒久化する未決拘禁法などに反対し、廃止を実現する必要があります。当面、密室の取り調べをなくすため、国会に上程されている「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(取調べの録画・録音による可視化法案)を成立させることが重要です。
     盗聴法(組織犯罪対策法)の制定、住基ネットの開始などにつづいて、自由な議論や思想・信条の自由にも抵触する「共謀罪」制定の動きなど監視社会につながる危険性が増大しています。また、チラシまきなどでの警察公安による微罪逮捕や不当逮捕、自衛隊による取り調べが増大し、人権侵害事件が多発しています。盗聴法については廃止。住基ネットにはついてはプライバシー保護や離脱権など自己情報についての権利の確立が必要です。また、少年法は、適用年齢変更(2000年)、14歳未満少年への警察関与(2007年)の改定につづいて、少年審判への被害者などの傍聴を可能にする改定が国会上程されています。少年の成長を促す少年法の理念を否定し、警察監視社会に子どもをさらすもので、制定させてはなりません。

Ⅴ 核兵器廃絶に関する制度・政策

  1. 東北アジアの安全保障を構築するために非核政策の強化・実現について
    (内閣府、外務省、経済産業省、文部科学省、防衛省)
    a)非核三原則の法制化と具体的行動を行うこと。
    b)東北アジアに非核地帯を創設すること。
    c)MDの共同研究参加と導入を中止すること。特に、イージス艦や地上発射のパトリオット、Xバンドレーダーの導入や配備を中止すること。
    d)北朝鮮の非核化に向けて、六ヵ国協議をさらに進展させること。
    (解説)2006年10月の北朝鮮の核実験は、東北アジアをはじめ世界に大きな衝撃を与えました。それを梃子に、閣僚などから相次ぐ日本の核保有発言や敵地への攻撃論など好戦的な世論が煽られました。しかし、東北アジアの平和と安定は、武力では決して創り出すことはできません。対話を中心とした信頼醸成が必要であることは明らかです。現在進められている六ヵ国協議を重ね、解決の糸口を多国間の保証の中で作り上げることが重要です。今後の動向が注目されています。日本も日朝国交正常化を促進し、信頼醸成を深め東北アジア地域の安全保障の第一歩としての非核地帯化構想を具体的に議論の俎上に載せることが必要です。しかし、当の日本は、アメリカの「核の傘」の下にあり、約44トンものプルトニウムを保有し、六ヶ所再処理工場の稼働は、さらに余剰プルトニウムを抱えることになります。このことにより、日本の核武装や核拡散への懸念が周辺諸国に拡げることになります。明確な歯止めをかけるためにも、再処理政策の放棄とともに非核三原則の法制化や厳格な非核政策の実行を迫ることが必要です。同時に相次ぐ核疑惑艦船の入港に対しては、アメリカに対して日本政府として非核証明を求めるなど、非核政策の具体化を求めていくことが必要です。
     そのことは、日本の非核の内実を世界に示し、さらに核軍縮の積極的なリーダーシップを内外に示すためにも重要であり、国際的な影響力も大きなものを持ち得るもので、被爆国として当然の責務でもあります。
     アメリカのミサイル防衛構想への参加は、アメリカの軍事戦略の一環に組み込まれ、日米の軍事同盟の強化がもたらされるとともに、相手国の核軍拡と宇宙空間における軍事化を引き起こすものです。現在進められれている日本のミサイル防衛は、日本の安全保障のあり方を大きくかえ、憲法で禁じられた「集団的自衛権」にも抵触するるものです。また、ミサイル防衛技術そのものは、機密の壁に阻まれ不透明な技術といわれ、実際の効果について疑問視されています。多額の巨費を投下しても、無駄に終わる可能性が高いものです。イージス艦の導入や青森県車力村へのXバンドレーダーの配備、各地のパトリオット配備などの中止を求めます。
  2. 核兵器保有国・軍縮に対する日本の態度を明確にすること(内閣府、外務省、経済産業省)
    a)CTBT(包括的核実験禁止条約)などすでに批准済みのものは発効に向けた国際的な努力をいっそう強めること。
    b)核兵器保有国に対し、未臨界核実験の中止を求めること。
    c)米ロの核の警戒態勢の解除を求めること。
    d)核保有国に核の先制不使用宣言を求め、消極的安全保障を求めること。
    e)カットオフ条約の即時交渉開始を働きかけること。
    f)核兵器全面禁止条約締結のための交渉の早期開始を求めること。
    g)核拡散につながる六ヶ所再処理工場の建設の中止を求めること。
    h)インドやパキスタン、イスラエル、イランなどの核開発と核兵器の放棄を具体的に求めること。
    i)北朝鮮の核開発放棄にむけて、六ヵ国協議を中心に、対話と信頼醸成を深めること。
    j)NPT(核不拡散条約)体制の根幹を揺るがす米・印原子力協定に日本として支持しないこと。
    k)劣化ウラン弾やクラスター爆弾など非人道的兵器の使用の禁止を国際条約とすること。
    (解説)「唯一の被爆国」を標榜する日本政府は、国内外でその責任を果たさなくてはなりません。2005年のNPT再検討会議は不調に終わりましたが、2000年のNPT再検討会議で約束した「核廃絶の明確な約束」など13項目は生きており、次の2010年のNPT再検討会議にむけて、その履行や国際的な核軍縮の流れを具体的に要求することが求められています。アメリカが進めている使える核兵器としての小型核の開発中止や核の先制使用の中止を求め、未臨界核実験を含めあらゆる核実験の中止を求め、行動することを要求します。さらにNPT未加盟国のインドへ原子力分野での協力を促進する米印原子力協力は、NPT体制を空洞化させ、新たにパキスタンや中国など南アジアでの軍事的緊張を高めるものです。これまで国連の場などで、NPT体制の強化を提唱してきた日本は、自らそれを放棄することは、被爆国政府としても問題です。
     現在も米ロ間では、冷戦崩壊以降も両国の核の警戒態勢は解かれていません。特にロシアは、管理システムの旧式化や管理体制の問題が懸念され、いまだ偶発的核攻撃の危険性が存在しています。早急に両国の警戒態勢の解除を求めることが必要です。同時に通常兵器や化学兵器などに対抗して核兵器使用の選択が放棄されていません。全ての核保有国に対し核の先制不使用宣言を求めることも必要です。
     CTBT(包括的核実験禁止条約)などすでに批准済みの条約の発効の促進は、核軍縮の前進を図るうえで重要です。大国の身勝手を許さず、国際的な世論を高めることが、被爆国日本の果たす役割で、国際的な努力をいっそう強めることが必要です。
     カットオフ条約は、2000年のNPT再検討会議において、「ジュネーブ軍縮会議でのカットオフ条約交渉を早急に始め」、その交渉開始から「5年以内に」妥結すべきだと確認されました。ジュネーブ軍縮会議は、全会一致を原則とする会議で、いまだその具体的な動きがありませんが、積極的なリーダーシップが日本に求められています。
     米国などが湾岸戦争やコソボ紛争、アフガン攻撃そして先のイラク攻撃などで使用した劣化ウラン弾のヒバクの影響について国際的な関心が高まっています。人体に対する影響について国際的な調査を組織し究明していくことが重要です。また、劣化ウラン弾は、すでに1996年8月、国連人権小委員会で劣化ウラン禁止が決議され、すでにベルギー議会も禁止決議をあげています。さらに、非戦闘員に対する被害を拡大させているクラスター爆弾の禁止も世界的な動きとなっています。それらを非人道兵器として使用禁止を求める国際条約として成立させていくことが必要です。特にクラスター爆弾は、自衛隊もすでに保有していますが、実際に国内で使用することが本当に想定できるのか問題です。その放棄を求めていくことも必要です。
  3. 軍縮・核不拡散教育の強化とヒロシマ・ナガサキの実相を国内外に広めること。
    (内閣府、外務省、文部科学省)
    a)学校教育の中で平和教育を充実させること。
    b)被爆の実相を伝える国内外での動きを強化すること。
    c)軍縮・核不拡散に向けてNGOや市民団体、自治体などとの連携の強化を図ること。
    d)ヒロシマ・ナガサキの実相を広く国内外に伝えること。
    (解説)国際社会においては軍縮・核不拡散についての教育の重要性は広く認識されつつあります。外務省も国連軍縮フェローシップや専門家の会議を招集しています。この流れを強化することが必要です。
     また、ヒロシマ・ナガサキの被爆から60年を超える中で、被曝の実相が風化されようとしています。二度と繰り返してはならない人類の悲劇を、しっかりと伝えることで核兵器の使用を止めさせ、核軍縮への契機を与えるものです。そのためにも、国内外での原爆展・ヒバクシャ展やヒバクシャの証言活動などを展開することなど、実相の普及を国として積極的に取り組むことが重要です。

Ⅵ ヒバクシャの権利確立に関する制度・政策

  1. 広島・長崎の被爆者援護法の抜本的改正と被爆者の権利確立について(内閣府、厚生労働省)
    a)原爆症認定訴訟の全ての控訴を取り止め、被爆者の置かれている実状にあわせ、原爆症認定基準及び認定作業の抜本的見直しをすること。
    b)被爆者援護法に国家補償を明記すること。
    c)被爆二世以降および在外被爆者とその後代への適用を明記した「被爆者援護法」に改正すること。
    d)全ての在外被爆者に被爆者援護法を適用し、被爆者の平等な援護と居住国での申請を可能にすること。
    e)国交のない朝鮮民主主義人民共和国の被爆者に対しても、実態の把握とともに速やかに被爆者援護法の適用をはかること。
    (解説)被爆者の現状は、高齢化が進み、重篤な病に罹る人が増え、社会的に弱い立場に常に置かれており、援護施策の充実が求められています。また、被爆者健康手帳を新たに申請する被爆者も年間千人を上回る現状にありますが、その中で原爆症で認定される人は、あまりに少数でしかありません。現行の認定基準と認定制度の問題の中で、認定被爆者は被爆者全体の1%も満たないものです。原子爆弾の被害者のすべてが手帳を取得し、核廃絶の告発者としての役割を果たせるように、手帳の取得に一層の支援と、基準・制度の根本的な見直し、改正が求められていました。相次ぐ原爆症認定訴訟が進められ、大阪、広島など6つの裁判所で認定制度が断罪されました。また、世論の動きもあり、これまでの「原因確率」を主とした認定制度が改められましたが、しかし、これまで司法の場でも認められた被爆者が新基準でも切り捨てられるという状況が生まれ、司法の判断に制度が追いついていないのが現状です。被爆者の願いからもいまだかけ離れています。さらに、国側は、いまだ控訴を下ろさず、高齢化する被爆者をますます苦しめています。引き続き裁判の支援強化とともに、被爆者援護法の抜本的改善が必要です。
     被爆者援護法は、前文で核兵器の廃絶と恒久平和実現の決意を示し、「国の責任において、(被害者に対する)総合的な援護策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記する」と述べていますが、死者への弔いと償いは実現せず、被爆者に対する諸制度はほとんど旧原爆二法と変わらないなど、「国家補償的配慮」という最高裁判決(孫原爆訴訟・1978年)までは否定することができない、矛盾に満ちた内容になっており、引き続き国家補償法へ改正することを求める運動を継続強化していかなければなりません。
     在外被爆者に対して援護法適用の具体的な施行規則を定める政令・省令が2005年3月1日からスタートしました。さらに在外公館での手続きができることになりましたが、手帳取得のために日本へ来なければ手帳取得ができないなど、被爆者が置かれている実態(高年齢、遠方、病気などで、日本に来られない人が多いなど)といまだ乖離したものとなっています。そのことは根本的解決を図ろうとする態度ではありません。差別や区別のない被爆者援護法の完全適用と実態に即した対応を求めていくことが必要です。さらに在朝被爆者に対する援護は、国交がない中で進んでいません。人道的見地からも早急な対応が求められています。
  2. 被爆二世・三世への援護の推進について(内閣府、厚生労働省)
    a)単年度措置で行われている被爆二世健康診断を法制化し、ガン検診など制度の充実をはかること。 b)被爆二世にたいして「被爆二世健康手帳」を発行すること。
    c)放射線影響研究所において、被爆者・被爆二世の健康調査の継続ならびに内容の充実を図り、その施設環境を整えること。また被爆三世についての健康調査を検討すること。
    d)在外被爆二世に対する「被爆二世健診」については、居住国の医療機関で受診できるような措置を講じること。
    e)被爆三世以降についても援護の充実をはかること。
    (解説)全国に30万人-50万人ともいわれる原爆被爆二世は、被爆者の定義であるa.直接被爆者b.入市被爆者c.看護被爆者d.胎内被爆者からすれば、被爆者ではありませんが、原爆被爆の放射線の影響という観点からは「第5の被爆者」といえる存在です。被爆二世問題は、「健康問題」、「遺伝的影響」、「社会生活上の問題」、「人権問題」など病気と貧困というさまざまな問題が未解決なままに放置されています。まさに援護なき差別の状況に置かれています。
     また、被爆二世に対する唯一の援護措置としての被爆二世健康診断は、単年度措置が繰り返されすでに22年が経過し、今後も継続が必要でとなっています。しかも、このような長期に渡る単年度措置は異例であり、早急に制度化することが必要です。さらに放射線影響研究所において行われた被爆者・被爆二世の健康調査の解析では、その被爆の影響を完全に否定することはできませんでした。今後も被爆二世に対する遺伝的影響を解明するためにも継続した調査が必要で、政府へ「継続」を働きかけていくことが必要です。
  3. 被爆実態に関する調査研究及び啓発活動の促進について(内閣府、厚生労働省)
    a)原爆被爆の実態を把握するための被災調査の促進並びに被爆二世・三世に対する実態調査・研究を促進させること。
    b)被爆の実相について、国内外に認識を広め、理解が得られるよう啓発活動の推進をすること。
    (解説)政府・厚生労働省は、被爆二世の健康実態調査を実施することについて、「不安を増大させ、差別を助長する」としてその実施を拒み、対策をおろそかにしてきました。問題を闇の中に放置することによって不安の増大や差別の助長を招くものであり、現状の根本的な改善こそ差別を克服する道です。
  4. ビキニやJCO臨界事故ヒバクシャ、放射線作業被害者などに対する実態調査と援護について(内閣府、経済産業省、厚生労働省)
    a)被曝(爆)の実態を把握するための調査を行うこと。
    b)被曝(爆)が原因で起こる様々な障害については被爆者援護法と同等の措置をとること。
    c)放射線作業の被曝基準(線量限度)の低減を図ること。
    (解説)いまだ国の責任において広島・長崎の実態調査がなされていません。無差別大量殺戮行為で、しかも幾世代にも渡る後遺障害をもたらし、明らかに国際法に違反する残虐な兵器の実態を明らかにすることは、人類の使命です。また、広島・長崎の原爆被害者以外の核被害者は、放射線の影響や社会的影響という観点から同質の問題を孕んでいながら、いまだなんら援護の対象になっていません。被爆者援護法と同等の援護措置が求められています。
     商業用原発で働く原発労働者の総被曝線量の95%以上が、電力会社の社員でない下請け労働者の被曝です。大部分が下請け労働者で、原発は支えられています。放射線従事者の中央登録センターのデータによれば、年間に4カ所とか5カ所の原発をわたり歩く労働者の平均被曝線量は、1カ所だけで働く人の4-5倍となっています。さらに、一般人の20倍や50倍を浴びること自体も問題です。今後老朽化する原発も増え、原発解体にともなう被曝労働者と被曝線量が増加することが予想されます。

Ⅶ 原子力政策の転換に関する制度・政策

  1. プルトニウム利用政策の見直しについて(内閣府、経済産業省、文部科学省)
    a)プルトニウム利用政策からの完全な撤退を行うこと。
    b)六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の中止と核燃料サイクル計画の見直しをすること。
    c)もんじゅの運転再開を中止し廃炉とすること
    d)玄海原発及び伊方原発などのプルサーマル計画を白紙撤回すること。
    (解説)2006年の原子力政策大綱によって、プルトニウム利用路線を押し進めることが確認されましたが、その中心となる高速増殖炉は、2050年の実用化が目標とされています。しかし、その実現性は不確定で可能性の低いものです。その政策の間をつなぐプルサーマル計画は、2010年までに16-18基の原発において順次実施することになっていますが、すでにその計画は破綻しています。東電や関電などの事故隠しや刈羽村の住民投票などによって計画そのものが白紙撤回され混迷を深めている中で、玄海原発や伊方、島根、浜岡、高浜、泊などの原発で計画を進めようとしていますが、プルサーマル計画を進める上で重要なポイントとなる東電で実施できない状況では、プルサーマル計画そのものの意味を失い、プルトニウム利用計画もその整合性がすでに失われています。
     また、プルトニウム利用政策の要である再処理工場や「もんじゅ」もその存在意義を失っているにもかかわらず建設の推進や運転再開に向けての動きが出ています。特に六ヶ所再処理工場は、ウラン試験から実際の使用済み核燃料を用いたアクティブ試験に移行し、2008年6月以降に本格稼働を狙っています。約44トンもの余剰プルトニウムを抱える中、さらに余剰を生み出そうとしています。使うあてのないプルトニウムをつくりだすこれらの行為は、巨額の血税と大量の放射能をもたらすだけで、まさに、国民に対する犯罪的行為とも言えます。プルトニウム利用政策の放棄とともに、「もんじゅ」運転再開の中止と廃炉、六ヶ所再処理工場の建設・稼働中止、プルサーマル計画の中止を求めます。
  2. 原子力政策の根本的な転換について(内閣府、経済産業省、文部科学省、総務省)
    a)原子力政策大綱の根本的な見直しと脱原発に向けた政策転換をはかること。
    b)原子力の安全管理の徹底と情報公開をおこない、安全行政の独立と透明性を高めること。
    c)原子力の安全規制行政を原子力推進行政庁の経済産業省から分離し、内閣府または環境省へ移行させること。
    d)原発の新増設を中止すること。
    e)BWR(沸騰水型原子炉)型原子炉全面停止と総点検と臨界事故の徹底調査をはかること。
    f)現行の高レベル廃棄物の埋設処分を中止しすること。
    g)中間貯蔵施設建設を中止すること。
    h)原発震災に対する対策を強化すること。特に中越沖地震が襲った柏崎刈羽原発は廃炉とし、東海地震が想定される浜岡原発や、老朽化原発は運転中止にすること。
    i)原発テロなど国民保護計画で想定される内容を、安全審査基準に盛り込むこと。
    j)自然エネルギー推進のための法制度の確立と研究開発を強化すること。
    (解説)2002年の東電などの事故隠しに続き、2006年秋にまたもや東電をはじめ各地の電力会社による事故隠し、データ改ざんが発覚しました。特に東京電力や北陸電力では、臨界事故を起こし、組織ぐるみで隠ぺいをはかるなど悪質なものでした。業界体質として、繰り返される事故隠し、データ改ざんは、安全性や地域住民を軽視するもので、許すわけには行きません。さらにそのような不正を一切見抜けなかった安全行政も問題です。安全確保と信頼性を高めるためにも、現在の推進省庁の外局に安全規制の行政機関を置くことには、大きな問題があります。規制と推進の完全な分離を行い、規制行政の透明性を高め徹底することは、国民の期待に添うものです。
     また、BWR型の原子炉制御棒の脱落が各地で報告され、福島原発、志賀原発では臨界事故にまで至りました。BWR型の構造的欠陥であり、事故の再発防止に向けて同型炉を全面的に停止し徹底究明をはかることが必要です。さらに臨界事故を起こした原発は、事業許可の取り消しを含め事故の徹底追及が必要です。
     大間や上関原発の新設や浜岡5号、敦賀3、4号などの増設の中止を求めることは、電力消費の低迷や電力の自由化の面からも見直しが必要です。さらに一連の事故隠しによる原発の停止や地震、事故による停止にともなう大電力を一挙に喪失することにつながるなど、大電力の一極集中となる原発は、エネルギーセキュリティーの面からも見直されるべきものです。
     浜岡原発は、東海地震の想定震源域にあり、この100年の間で大地震が予測され、早急に運転停止をすべき原発です。さらに浜岡1、2号は特に老朽化した原発であり、古い耐震設計思想のもとに作られた炉であり、耐震性の問題が指摘されています。現在耐震補強工事が行われていますが、対処療法的な対応では根本的な解決にはなりません。すみやかに停止・廃炉が必要です。また、2007年3月に起きた能登半島地震は、志賀原発から20キロに震源がありました。同年7月の中越沖地震が襲った柏崎刈羽原発は、活断層が敷地内にも延びているとも言われおり、耐震上問題です。あらたに、各地で見直される原発周辺の断層は、これまでの耐震性に大きな疑問を投げかけています。さらなる断層調査と公平な判定が必要です。
     さらに、各地にある老朽化した原発は、事故の危険性や被曝労働の増加もたらすなど様々な問題を抱えます。耐用年数を引き延ばすのではなく、廃炉にすることが求められています。
     国民保護法に基づき、各地で「基本計画」が立てられています。国民保護法が持つ人権の侵害や軍事の日常化など様々な問題点がありますが、脱原発の観点からは、原発テロが想定され、それをてこに有事体制が強化されるなか、原発テロが安全審査では一切想定されていないという矛盾があります。政府のダブルスタンダードによって、原発と有事体制が強化され、ますます原子力三原則からも離れ、民主主義社会の根幹を掘り崩す事態となっています。本来ならば、有事体制も原発もいらないのですが、現にある矛盾を突き、どちらも矛盾だらけであることを明らかにすることが必要です。
     技術も未確立なうえに、国民的合意もないまま進められている高レベル廃棄物の処理・処分計画は、処分場の候補地の公募が始まり、高知県東洋町が応募しましたが、応募取り消しが行われました。また、全国各地でも反対の声があがっていますが、いまだこのような声を無視して進められる計画は問題です。高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設は、常に水面下で行われ地域住民の意向は常に無視されています。原子力政策の破綻の象徴である高レベル放射性廃棄物の処理・処分計画は、原子力政策の根本的転換と国民的議論がまず必要です。そのこと抜きの強引な計画推進に対して、反対して行くことが必要です。
     原子力発電は、温室効果ガスを排出しないことなどをメリットとして強調される一方、災害時の危険性や放射性廃棄物の処理、処分など多くの根本的な欠点をもっています。脱原発の視点から省エネルギー施策の推進とともに、エネルギー関係の予算の大半が原子力開発関係に振り分けられている偏ったエネルギー研究開発費を、再生可能エネルギーなど自然にやさしいエネルギーを中心とした新エネルギーの開発・利用に向けるようにすることが必要です。

Ⅷ 環境・食・水・森林、農林業問題に関する制度・政策

  1. 温暖化問題について(環境省、経済産業省)
    a)温室効果ガスの削減のため、企業への排出削減の義務づけ、温暖化に関する課税(環境税・炭素税)など、削減効果のある具体的な政策を推進すること。
    b)太陽光・風力など自然(再生可能)エネルギーや食品・木材など残廃物のバイオマス資源等の利活用を推進するため、法制度の整備とともに必要財源を助成すること。
    (解説)本年度から地球温暖化防止のためのCO2等の温室効果ガスの削減を定めた「京都議定書」の約束期限となります。しかし、日本は森林の吸収や企業の自主的努力に任せて、積極的な削減策を打ち出していません。環境税についても環境省は導入をめざしていますが、経済産業省や経済界は反対しています。自然エネルギー推進も欧米に比べて大きく遅れていることから、自然エネルギーからの電力を高く買い取る義務づけなどが必要です。また、温暖化対策を名目とする原発推進には強く反対します。
  2. 森林・水問題について(環境省、厚生労働省、経済産業省、農林水産省)
    a)国土の保全、木材の供給、水資源の涵養および二酸化炭素の吸収・固定など、森林の有する多面的機能を高度に発揮させるため、「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の推進、地域材の利用促進、労働力対策等の目標達成に向けた各種施策の着実な推進と、その必要財源を確保すること。
    b)違法に伐採された木材の輸入・使用は行わないこと。そのため、合法的に伐採された木材の認証システムを確立すること。また、WTOやFTA交渉で木材の関税削減・撤廃を行わないこと。
    c)健全な水循環の構築のため、水の公共性を位置づけた、水に関係する上位法としての「水基本法」を制定すること。
    d)合成洗剤をはじめ、有害な化学物質を規制・管理するための「化学物質安全基本法」(仮称)や表示制度を制定すること。
    (解説)日本の木材自給率は20%であり、採算性の悪化、担い手不足から森林整備が十分行われていません。森林の公益的機能、とりわけ、温暖化防止に果たす森林の役割が重要であり、森林・林業基本計画の具体的対策と連動させた地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策を推進するための予算等の拡充が求められています。また、東南アジアやロシアでの違法伐採は森林の減少・劣化をもたらし、地球規模での持続可能な森林経営を阻害する要因となっています。さらに、WTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)による木材製品の貿易自由化が森林の荒廃を招かないようにする必要があります。
     水の質と量の確保が21世紀の大きな課題になっています。水基本法は自治労、全水道を中心に、連合も制定を求めている課題です。一方、化学物質の生産量が増大するなかで、健康被害も増えています。EUでは昨年から、全化学物質の安全性評価と登録を義務付けるなどの規制(REACH)が発効することになりました。日本でもREACHのような予防原則に基づく総合的な化学物質政策が必要です。
  3. 貿易自由化にともなう環境問題について(環境省、外務省、経済産業省、厚生労働省)
    a)FTAの関税削減リストから有害廃棄物を削除すること。また、廃棄物や中古品は「国内処理の原則」を適用し、開発途上国に処理を依存しないこと。
    b)廃棄物の発生削減を最優先とし、国内循環を基本とした3R政策(リデュース、リユース、リサイクル)を推進すること。また、リサイクル目的を含めて有害廃棄物を輸出することを禁止する「バーゼル禁止修正条項(1995年)」を批准すること。
    c)貿易による環境への影響を調査し、公表すること。
    (解説)日本はタイやフィリピンなどとのFTA協定で、焼却灰、医療廃棄物等を含む廃棄物が関税削減リストに含まれています。日本は有害物質の輸出を禁止するバーゼル条約(1989年)は批准していますが、リサイクル目的であっても輸出を禁止する「バーゼル禁止修正条項」には、アメリカなどとともに強硬に反対して批准していません。その結果、パソコン・家電などの中古品や廃棄物を途上国に押しつけ、環境や健康被害をもたらしています。
     日本の大量の農林水産物の輸入にともない、輸出国での土壌や水、環境の破壊・損失、輸送に関わるエネルギー消費による温暖化への影響などを招いています。このような実態を明らかにして、貿易自由化の弊害を含めて検討する必要があります。
  4. 食の安全について(内閣府、厚生労働省、農林水産省)
    a)食品安全委員会の審議に、市民の意見を反映させること。そのため、消費者の申し出制度を新設し、措置請求権を保障すること。また、安全性の評価にあたっては、「予防原則」の立場に立って、予想される結果が重大な場合は、科学的根拠が不十分であっても規制を行うこと。
    b)食品表示に関する法律を一本化した「食品表示法」(仮称)を制定するとともに、製造年月日表示を義務付けとすること。
    c)BSE(牛海綿状脳症)問題にともなう、アメリカ産牛肉等については、全頭検査、危険部位の完全除去など、日本国内と同等の検査体制の徹底を求め、輸入条件の緩和には応じないこと。
    d)牛肉およびそのすべての加工品の販売、外食、中食において、原料・原産地表示を義務化すること。また、学校給食へ米国産等の牛肉の使用をしないこと。
    e)放射線照射食品の認可拡大は行わないこと。
    f)遺伝子組み換え食品は、国内における商業的作付けを禁止するとともに、表示制度をヨーロッパ並みに改善すること。
    g)食品安全基準は、国際基準によって緩和されることのないよう規制を強化するとともに、食品の検査・検疫、表示制度の充実を図ること。
    (解説)食品安全委員会の審議内容に対し、消費者・市民等の意見が採り入れられるような仕組み(リスクコミュニケーション)の具体的内容が求められています。特に食品の偽装事件が相次ぐ中で、食品表示に関する法律がばらばらであることから、これを一本化し、消費者の正しい情報を得る権利、選択の主権を盛り込み、消費者に軸足を置いた「食品表示法」の策定が必要です。
     また、食品安全の国際基準がそのまま国内基準として制定される傾向が強まり、BSEでも緩やかな検査基準が採用されようとしています。こうした動きに対して、食の安全への懸念や食生活の実態に応じた独自の基準作りが求められています。特にBSEのアメリカ産牛肉等については、同国のずさんな対策が明らかになっており、日本国内同等の検査体制を求めることが必要です。また、アメリカは20ヶ月齢以下の牛に限るという輸入条件の緩和を求めていますが、強く反対する必要があります。牛肉の原料原産地表示は、現在は生肉と簡単な加工肉への表示が義務づけられますが、外食等はガイドラインによる推奨だけです。
     放射線照射食品は原子力委員会が推進しようとしていますが、安全性など問題が多く、反対運動が続けられています。遺伝子組み換え食品の表示は、日本では5%までの混入は表示の必要がありませんが、ヨーロッパは1%以上は必要です。
  5. WTO(世界貿易機関)・FTA(二国間自由貿易協定)交渉について(外務省、農水省)
    a)食料の安全保障のため、国内の食料自給率の向上と農業・農村の多面的機能の発揮、各国の多様な農林水産業が共存できるような貿易ルールに改め、急速な市場開放には絶対に応じないこと。
    b)EU、アメリカの輸出補助金等の速やかな撤廃や、実質的な輸出補助金に相当する国内助成政策の是正など、農産物輸出国への規律を強く求めること。
    c)FTA交渉においては、これ以上の農林水産物の関税撤廃・削減を行わないこと。とくにオーストラリアとの交渉にあたっては、重要な農産物は交渉から除外すること。
    d)WTO・FTA交渉についての情報公開を徹底し、各国の農業者や消費者・市民の声を反映すること。
    (解説)WTO交渉では、アメリカ等の農産物輸出国は関税率、国内助成の大幅削減を要求しています。食料の安定・安全、自給率の向上、農林水産業の持つ多面的機能の発揮が図られるよう、WTOルールの改正に向けて交渉に臨むことが必要となっています。また、アメリカやEUの輸出補助金、国内助成政策によって途上国に負担を強いている現状を変えさせ、食料輸入国と輸出国との不公平性をただすことも必要です。
     FTA交渉は、秘密裡に交渉が進められており、その公開と、自由貿易一辺倒ではなく、労働、人権、環境等も含めた幅広い論議をすべきです。とくに農産物輸出大国のオーストラリアとの交渉では、小麦、牛肉、乳製品、砂糖、米などの除外を求め、それが受け入れられなければ、国会決議に基づき、交渉を中断するべきです。
  6. 食料・農業・農村問題について(農林水産省)
    a)新農政の実施にあたっては、食料自給率の引き上げ、食の安全・安定、環境問題などに配慮した施策を展開すること。
    b)食の安全性確保と環境に負荷を与えない有機農業の推進に向けた施策の確立や環境保全型農業への直接支払いなどの奨励制度を作ること。
    (解説)政府は「農政改革」を進めるため、昨年度から「経営所得安定対策」と「環境等の保全向上対策」を実施していますが、政策対象者を大規模層に限定したり、要件が厳しいことなどから、様々な問題が生じています。また、規模拡大・効率化の結果が食の不安や環境悪化を引き起こしている現状から、食の安全や環境問題に配慮した政策への転換が必要です。
     一昨年、「有機農業推進法」が制定され、実施されていますが、財政支援を含めた具体的な施策の充実が求められています。

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