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第43回食とみどり、水を守る全国集会「情勢と運動の提起」(基調報告)

2011年11月17日

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第43回食とみどり、水を守る全国集会 情勢と運動の提起

                                   藤岡一昭(全国集会実行委員会事務局長) 

 第43回食とみどり、水を守る全国集会の情勢と運動の提起をさせていただきます。本集会の主旨について共有していただければと思います。
 さて本集会は、「東日本大震災と福島原発事故についてどう向き合うのか」、ということを避けて通る訳にはいきません。
 おりしも、震災と原発事故が起きる3ヶ月前、昨年東京で開催した第42回全国集会では、
①経済効率を優先し、物質的な豊かさを求め続けてきた20世紀の政治と経済、社会の在り方について根本的な見直しを迫る議論と運動が重要である。
②私たちの基本的なテーマである、食・みどり・水は人類に欠かすことのできない公共財であり、市場主義に全てを委ねる訳にはいかない。
③日本の豊かな地域資源を活かし、地域が自立し繋がりあう社会をめざす。
 という考え方を基調に据えました。
 その3ヶ月後におきた東日本大震災は、岩手、宮城、福島の東北三県を中心に、2万人にも及ぶ死者・行方不明者とともに、これまで豊かな自然の中で培ってきた農林漁業と人々の生活に甚大な被害を与えました。農林、畜産、漁業の生産、加工、流通体制が失われる中で、被災地の多くの人々は仮設住宅に暮らしながら、地盤沈下対策や田畑の除塩、がれき処理などの作業にあたり、復旧・復興に向けた努力が続けられています。
 そして、東京電力福島第一原発事故は、原子力に依存したエネルギー政策の恐怖と、計り知れない放射能被害を生みだし、その被害と苦しみは9ヶ月を経た今も、深刻な状況は、むしろ拡大しているといえます。
 原発事故と放射能被害は、食・みどり・水を守る私たちの取り組みのすべての面で対極にあります。つまり、食、緑、水を守るということは、いかに原発と放射能から脱却するのか、ということを意味します。
 そもそも原発は、戦後の高度成から取り残され、出稼ぎと高齢化、財政危機に苦しむ町や村に押し付けられました。本来その町や村は、人間にとってかけがえのない豊かな自然環境を保ち、食・みどり・水の供給源でした。原発と引き換えにばらまかれた補助金は、地方自治体の持続的なまちづくりの機会を奪いました。原発依存のエネルギー政策の裏側には、原発を受けざるを得なかった地方の第一次産業の犠牲の歴史があります。
 これを考えると、昨年提起した、「物質的な豊かさを求め続けてきた社会の在り方を根本的に見直す」という具体的な作業を、脱原発という観点からも進めていかなければなりません。
 そして、今後私たちは、食、みどり、水のすべての面で放射能汚染被害と対峙していかなければなりません。

 さて国際社会は、アメリカ経済の後退、ギリシャ、イタリアなどEU加盟国内の経済危機、それと絡みながら経済発展を続ける中国、インドにあっても様々な国内矛盾を抱え、先行きは不透明感を増しています。
 とくに直近では、アメリカ主導の環太平洋経済連携協定(TPP)について、野田政権は参加する考え方で事実上動いています。TPPがアメリカ主導と申し上げたのは、今や世界の超経済大国となった中国経済に対抗する形で、アメリカを中心とした経済ブロックが政治的に形づくられようとしているからに他なりません。
 同時にTPP問題は国内の食料政策と農業分野に大きな影響が出てくることが懸念されます。食・みどり・水が市場主義の下で売り買いされ、日本のみならず各国の社会的な共通資本をも飲み込みながら、矛盾が拡大する懸念があります。
 本来、食料、水、環境は、国境を超えた公共財として、それぞれの国と地域の文化を認め合いながら、持続性を確保する努力が求められるべきです。
 その意味では、11日まで南アフリカで開催されていた、気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)では、温室効果ガス削減義務をめぐって、先進国と途上国、アメリカ、中国、EUなど経済的な利害が交錯しました。当面、京都議定書の削減義務の継続、削減義務がないアメリカ、中国、インドなどを含めて温室効果ガスの削減義務を課すための新体制の構築を確認して閉幕しました。私たちは、こうした国際関係の動きと日本政府の基本的な姿勢について、質していかなければなりません。

 本集会は、とくに東日本大震災の突き付けている諸課題と原発事故にともなう放射能汚染問題をすべての課題の共通テーマとしながら、第一に食の安全と安定確保、第二に農林業と食料政策、第三に森林・水など環境政策を中心に議論を進めていきたいと思います。
 
 第一の食の安全・安定確保の課題では、放射能汚染による食の安全について、食物をつうじた放射性物質が体内に取り込まれる、いわゆる内部被ばく問題を考えていかなければなりません。内閣府の食品安全衛生委員会による、「内部被ばく生涯累積被曝線量基準」は100ミリシーベルト以下となっていますが、厚生労働省は今後、放射線の食品残留規制値を定めることになっており、学校給食など点検体制の確立が大きな課題です。
 さらに、食品表示の課題では食品の産地や原料偽装、輸入食品の安全性、食品効能の過大表示、あるいは違法広告問題など課題は多岐にわたります。そこで、消費者・市民の立場に立った食品表示の一元化をめざす「食品表示法」といった法整備を求めていくことが必要です。
 さらに加えて、口蹄疫問題やBSEいわゆる牛海綿状脳症、放射線照射食品、遺伝子組み換え食品など、食の安全行政確立が求められます。
 食の安全を脅かすもう一つの背景は、低下する食糧自給率にもあります。日本のカロリーベースの食料自給率は39%と、先進国では最低クラスです。自給率の低下は一方で食のグローバル化が進み、輸入農産物を多用した外食や加工食品が急増しています。このことで若年層を含む生活習慣病やアレルギーなど急増しています。
 こうしたことから、学校や地域での子どもたちを中心とした「食育」が注目されています。食の背景にある農業まで含めた教育とともに、「食育推進基本計画」に基づき、学校給食に地場農産物や米を使う運動の拡大、栄養職員の教諭化の拡大などが必要です。また、子どもだけでなく、地域全体での地産地消運動など、食べ方を変えていく具体的な実践が求められています。そのためには、自治体での食の安全条例制定や有機農業の推進などの施策が求められます。

 第二の農林業・食料政策については、震災・原発被害からの再建が深刻な課題です。
そのなかで、今後の復旧・復興にあたって、これを機に集約化、大
規模化を図ろうとする動きがありますが、被災地域の農民、住民の意向を第一に進めることが重要です。
 一方、福島原発の深刻な事故によって放射性物質が拡散し、農地や作物への汚染をもたらしました。また、放射能に汚染された飼料を与えた肉用牛から規制値を超える肉が流通していたことが判明するなど、生産体制の管理徹底と検査態勢を確立するとともに、「原子力災害対策特別措置法」に基づき、「風評被害」も含めて、補償措置の速やかな実施を求めていく必要があります。
 さて、世界の食料価格は、今年2月には最高水準を記録するなど、ますます高騰し不安定になっています。こうしたことも要因の一つとなって、国連世界食糧農業機関(FAO)の推計では、食料不足に苦しむ人々は9億2500万人(2010年度)とされ、極めて深刻な状況が続いています。
 このため、穀物の需給ひっ迫と価格の高騰は今後も中長期的に続くと予想され、明らかに食料不足時代に入っています。地球規模での食料問題を解決するためには、自由貿易の拡大ではなく、各国が生産資源を最大限活用して自給率を高めながら、共生・共存できる「新たな貿易ルール」が必要です。
 こうしたなかで、貿易自由化をめざす交渉は、インド・中国など新興国と、アメリカとの対立から、近年はほとんど進展が見られません。
 ところが昨年10月、当時の菅首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を表明し、「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定しました。そして、野田首相は就任時からTPP交渉への参加姿勢を打ち出し、11月11日に「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」として、実質的な交渉参加を表明しました。
 TPPによって全ての関税が撤廃されれば、農水省の試算によると、国内農業生産は半減し、食料自給率は13%にまで下がるとされています。TPPはこのような国内農業・食料への打撃だけでなく、環境や地域経済への影響、医療や金融、労働分野など様々な影響が出ることが予測されます。
 こうした中で政府は農業における国際競争力をつけるためとし、農地集積による経営規模の拡大を進めています。しかし、地域の実情を無視した一律的な規模拡大政策は、これまでの技術や農業環境を否定し、かえって農業の再生を阻害する恐れがあります。
 一方、「農家の戸別所得補償制度」については、現在、多くの農家が加入するなど、定着化しつつあります。農業政策が短期間に転換することは、時を積み重ねることで成り立つ農業生産の見通しが立たなくなることから、制度の根幹を堅持しながら、必要な見直しを行う、という考え方が必要大切です。
 農林業は食料や木材の生産・供給だけでなく、国土や環境の保全、景観の形成、そして地域社会の維持や雇用の確保など多様な役割を果たしています。この多面的機能は、農林業が地域に定着し、営まれることによって確保され、それが地域の持続性を生み出します。
 また、再生エネルギー促進法が成立したことを受け、再生エネルギーの宝庫でもある農村地域で積極的に導入し、農村地域の活性化と雇用の拡大に結びつけていくことも課題です。
 
 そして第三の森林・水など環境政策は、いまだに収束したとは言えない東京電力・福島原発事故から放出された放射能の拡散が、大気や水、土壌、森林、河川、海洋など日本全土はもちろんですが、近隣各国へ大きな影響を与えている問題を抜きには進みません。膨大なコストと時間をかけなければならない除染とともに、放射性物質の影響調査や、放射能汚染物質の処理、情報開示など質していかなければなりません。
 一方、原発事故によって、これまで地球温暖化対策のためとしてきた原発推進政策は破綻しました。今後は自然エネルギー中心のエネルギー政策へ進めていく必要があります。すでにドイツでは脱原発の方向性を定め、自然エネルギーを2020年までに35%、2050年には80%に高めるとしています(ドイツの目標)。
 日本でも8月に再生可能エネルギー促進法が制定され、来年7月から再生可能エネルギーの全量買取り制度が始まります。これまでの原発中心のエネルギー政策からの転換の第1歩として捉えていくことが必要です。そしてこれを企業だけでなく、住民、市民、農民が主体となって自然エネルギーの事業を興し、地域がエネルギー政策の当事者として主張していくことが問われています。
 また、冒頭申し上げました、COP17で確認された温室効果ガス削減の新たな国際体制に向けて、2020年に温室効果ガスを25%の削減をめざすとした国内での実効性のある対策基本法を求めていかなければなりません。
 言うまでもなく、環境および食、緑、水を守るうえで、森林は重要な役割を果たしています。しかし、地球規模での森林の減少と劣化が進み、砂漠化や温暖化を加速させています。日本は世界有数の森林国であるにもかかわらず、大量の木材輸入により、木材自給率は30%以下に止まっています。一昨年12月に政府は「森林・林業再生プラン」を公表し、これをもとに、中・長期的な政策の方向が示されました。その内容では、10年後の国産材自給率50%をめざし、雇用も含めた地域再生を図ることにしており、今年度からは「森林管理・環境保全直接支払制度」の導入等も図られてきました。
 今後、自然エネルギー資源との調和を図りながら「森林・林業基本計画」の具体的な実施、林業労働力確保、国産材利用対策などを実現する必要があります。
 水の課題では、世界的な水不足、有害物質による汚染など、その質と量が大きな課題になっています。さらに、グローバル化のなかで、水の商品化、水道事業民営化の動きもみられます。健全な水循環とともに、水の公共性を守り、ライフラインである水道・下水道事業の公共・公営原則を守り発展させることが重要な課題となっています。
 一方、農林業の衰退が水の質と量に影響を与えていることから、水道から河川、耕地、森林までの一体的な政策推進が必要です。水資源の持続可能な自然の水循環を図る観点から、森林、河川、地下水も含めて関連する法体系を統合した「水循環基本法」(仮称)、汚染物質に対する総合的な規制のための「化学物質政策基本法」(仮称)の制定に向けた運動を強めていかなければなりません。
 さて、日本が食料や木材を大量輸入することで、輸出国の自然環境を傷つけ、同時に国内の第一次産業が衰退します。その結果、これまで述べてきたように、都市と地方の格差が拡大し、自然の生態系が乱れ、温室効果ガスの排出に歯止めがかからず、生物多様性が侵されます。
 昨年10月、ここ名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)およびカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)が開催され、生物資源がもたらす利益の公正な配分も含めて生物多様性を守る戦略目標も作られました。

 以上の課題と運動の方向にふまえ、食の安全と放射能被害対策、農林漁業と街づくり、みどり・水・環境政策の諸課題を一体のものとして捉えながら、大きくまとめると、
 第一に食・みどり・水・環境のすべてにおいて実効性のある放射能対策を地域から構築し、人々の命とくらしを守り維持する取り組みを進めます。
 第二に生産者と消費者が連携し、支えあい、利益を共有できる社会システムや法制度、具体的な施策を提起し、実現に向け政府に働きかけます。
 第三に地域の資源を活かし、地産地消、持続可能な地域社会の自立を目指し、地域と地域の強靭なネットワークで社会の多数派をめざします。以上の三点を基本的なテーマにこの後のシンポジウム、明日の分科会、フィールドワークで具体的な議論を深めていただ来たいと思います。
 
 食とみどり、水にかかわる個別の取り組みは、社会全体を維持し、かたち造るものとしてあります。だからこそ、それぞれの課題と運動が、タコつぼ型ではなく、連携しながら、地域の自立と共生に、そして社会全体へのメッセージとして発信されなければなりません。
 震災と原発事故後の開催となる本集会の意義を改めて確認し、冒頭にも述べましたが、戦後の日本社会の在り方、経済発展や途上国との関係など根本的な問題が突きつけられています。
 
 これらの課題に取り組むことを確認し、本集会はまとめの機会がありませんので、このあと予定しているシンポジウムのパネラーの皆様、各分科会、フィールドワークの講師の先生、報告者の皆さん、そして何よりもこの全国集会を開催するに当たりご尽力をいただいた、藤好実行委員長をはじめとする地元実行委員会の皆様に感謝とお礼を申し上げ、「情勢と運動の提起」とします。
 

 

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